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なれる!SE

読んだ本の感想。

夏海公司著。

以下は、Wikipediaの『なれる!SE』の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/なれる!SE

新人SEの成長物語という体裁だが、読んでいて気分が暗くなった。成功する勝者の物語であり、潰される弱者の視点が無い。

著者が新卒でSEになるも激務によって数年しか勤務出来なかった事を頭に入れて読むべき。

主人公の勤務する会社の社長が、社員の名前を正確に記憶出来ない事が伏線になっている。SEの仕事を誰にでも出来る単純作業と思い込んでおり、社員を使い捨ての道具と見做している。

傲慢で無知な上層部(ビジネスや政治を担当)に逆らえず、理不尽に苦しむ事によって人は成長するという名分によって末端(システム管理者)が無茶を解決出来る天才であると強調されていく。

そうした中で主人公がいつの間にか理不尽を押し付ける側に変化していて、発生する問題は女性社員達を酷使する事によって解決する。

結果として主人公の勤務するスルガシステムは、社員30人ほどの小規模ソフトハウスでありながら、天才ばかりが勤務する超集団となり、それなのに主人公達は酷使され、儲かった金が何に使用されているのかも明確化しない。

物語の矛盾が顕在化するのは、『6 楽々実践?サイドビジネス』のエピソード1で、主人公が同級生の色仕掛けに騙されて酷使されて体調を崩す場面だと思う。主人公は、自らへの好意に鈍感な設定のはずで、周囲の女性社員達が自発的に主人公を助けているはずが、同じ事をされた主人公が、同級生を裏切者と思って病んでしまう。

以下は、「大石哲之さんのブログ」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-992.html

以下は、「部下を鬱病へと追い詰める上司の傾向」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-1188.html

上記のリンクにある記事では、多くの人間が成功者を夢見て使い潰される様や、大量退職の中で若くして昇進した者が自らを過大評価するようになる様が記述される。

主人公達が独立して本当に働き易い会社を独立起業する展開が実現しなかったのは、著者が自発的に働く人間を信じていなかったからなのではないか。

<スルガシステム>
主人公達が勤務する会社。御茶ノ水駅周辺にあり、四年ほど前に設立される。社員数は30数名ほどだが、社員は天才ばかり。

【登場人物】
桜坂工兵:
主人公。C大学(中央大学?)を卒業後、スルガシステムに勤務する。『なれる!SE』では、彼の勤続二年目の六月頃までが記述される。

室見(七隈)立華:
主人公の先輩。17歳~19歳?不登校児だったが、SEだった父親の影響でプロジェクトチームを代替出来るほどのネットワークスキルを持つ。

藤崎伊左次:
主人公達の配属されるSE部の部長。40歳くらい。日本最大手のソフトハウスNBLに勤務していたが、社内政治等に嫌気が差して転職。

賀茂芽依(かもめ):
SE部の庶務担当。ライターから電気工事、リーマンブラザーズ?勤務等の多彩な経歴を持つ。

姪乃浜萌:
主人公の一年先輩。21歳~23歳?新卒二年目だが、運用を担当するOS部での評価は高い。仕事で関わる人間に高度な要求をして病院送りにする事から「プロジェクトメンバー殺し」の異名を持つ。

六本松建造:
スルガシステム社長。52歳。強力なコネがあり、多くの仕事を受注し、社員を疲弊させている。彼の思想が明確に記述されないため、スルガシステムが良く分からない謎集団になっている。

1 2週間でわかる?SE入門
2010年6月10日 初版発行。



主人公 桜坂工兵は就職が中々決まらず、7月まで募集していたスルガシステムに半ば騙される形で就職する。就職直後から無茶な仕事を振られトレーナーの室見立華と対立するも、二週間のOJT期間を経て合格を言い渡される。

2 基礎から学ぶ?運用構築
2010年10月10日 初版発行。



姪乃浜萌登場。構築部と運用部の中が悪い話。構築部にとって開発に関するリスクは悪い物でないが、運用部ではリスクが0である事を望む。リスクが0である事はあり得ないので、構築エンジニアと運用エンジニアの間には信頼関係が無ければならない。

携帯ゲーム リドルリトルのシステム障害に姪乃浜と室見が共同で対処し、構築と運用に並行期間を設ける案を主人公が提案して手打ちする。

3 失敗しない?提案活動
2011年1月10日 初版発行。



主人公が入社一年目の六月なのに、業平産業株式会社(業界第三位の電子部品専門商社)への提案活動を手掛ける事になる。災害普及サイト(DRサイト)構築の提案書(RFP)を提出し、他社と比較・検討される。

当初は受注を諦めていた主人公だが、競合他社であるJT&W社の梅林の傲慢な態度に怒り、業平産業システム本部課長 橋本文月(29歳)に近付き、今回の提案活動の目的が、それまで業平産業株式会社のシステムを担当していたレギオネットシステムの社外取締役に業平産業株式会社のライバルであるウェルデバイス社の役員が就任した事に伴う報復措置だったと知る。

レギオネットシステムと連絡を取り、業平産業株式会社のシステムに関する情報を取得し、それに合わせた提案を行った主人公は提案活動に勝利する。

4 誰でもできる?プロジェクト管理
2011年5月10日 初版発行。



7月になり、主人公達は出版社ベターメディアの本社移転作業に携わる事になり、案件担当のプロジェクトマネージャーが逃げ出したため、代わりに主人公がプロジェクトマネージャーを務める事になる。

当初は教科書通りの管理手法を実施しようとするが、現場のリソースに合わせて管理用資料をテーラーメイドして極小化する事を学び、さらにプロジェクトメンバーを①サーバ(自分で判断して動く)、②ツール(指示通りに動く)、③クライアント(リーダーを奉仕者とみなす)と分けて考えるようになる。

対立していた扶桑通建の薬院加奈子とも和解し、スケジュール上は無理のあった構築作業をスルガシステムで行う事によって問題を解決する。

5 ステップ・バイ・ステップ?カスタマーエンジニア
2011年9月10日 初版発行。



10月になってオーディオ機器メーカー オリヴィエのサーバリプレース作業のため、全国各地に出張し、通信機器を現地設置する作業を行う。

地元の静岡県での作業で担当者の手違いで回線が用意されていなかったため、室見が回線を届け、主人公の実家に宿泊する。

6 楽々実践?サイドビジネス
2012年2月10日 初版発行。



短編集。

エピソード1 楽々実践?サイドビジネス
主人公が大学時代の同級生 西新伊織に頼まれて、彼女の会社「椰子の木」のシステム構築を手掛けるが、西新伊織が自分に気がある振りをしていた事に気付き、高額なシステム構築を行って代金請求をして縁を切る。

西新伊織と同じ事を、主人公が室見立華や姪乃浜萌にしている矛盾がある。好意を女性側の勘違いとして逃げるのは卑怯だと思うし、それがハードワークの原因であるなら勘違いを解消しなくては不誠実だ。

エピソード2 今すぐ始める?検証作業
株式会社グレイフェスの犬塚光晴から、新型ルータ グレイボックスを押し付けられる話。問題がある機器だが納品が決まってしまったため、二台を同時に起動する事でパワー不足を補う事にする。

エピソード3 絶対合格?採用面接
主人公と室見が採用面接を行う。賀茂芽依の親戚 賀茂玲が応募してくる。

エピソード4 心に残る?3分間スピーチ
橋本文月から結婚式のスピーチを上手くやる方法について相談を受ける。ヒトラーの演説を参考にして成功したらしい。

エピソード5 完全?禁酒マニュアル
姪乃浜が禁酒しようとして失敗する話。

7 目からウロコの?客先常駐術
2012年8月10日 初版発行。



11月になってNBL社の客先常駐に行く。主人公達は自分達の派遣が仕組まれたもので、案件を担当する大濠を失脚させ、彼が所属する高宮本部長派の力を弱めるために、力の弱いソフトハウスから人員を派遣させる目的があった事を知る。

撤退するために、NBLの社内ベンチャー 株式会社スピリッティアの貝塚悠里(31歳)にNBLのネットワーク情報を渡して仕事を引き継ぐ。

8 案件防衛?ハンドブック
2012年12月10日 初版発行。



アルマダ・イニシアティブの次朗丸縁登場。主人公と同じ新人でありながら、スルガシステムの顧客を次々と奪っていく。その手法は、コンサルティング名目で顧客のシステムを分析し、既存システムより良いシステムを提案するもの。

業平電気工業の案件で競合になり、主人公達は株式会社JT&Wの梅林に頼んで、アルマダ・イニシアティブと真逆のコンサルティング結果を提出してもらい、その信頼度を低下させる事で勝利する。

9 ラクして儲かる?サービス開発
2013年5月10日 初版発行。



スルガシステムにて、IPv4とIPv6の読み替えを行うシステムサービスSRG46を開始する。競合にサービスを模倣されるも、総務省の電子行政案件にSRG46を導入してもらい、ブランド価値を高める事で勝利する。

10 闘う?社員旅行
2013年8月10日 初版発行。



短編集。

エピソード1 闘う?社員旅行
11月に、熱海温泉旅館『常春の湯』に社員旅行に行く。その宿は、社員旅行中にシステム障害が多発するというジンクスのある宿だった。

エピソード2 もう悩まない?システムサイジング
社長指示で麻布総研の広域通信網リプレース作業見積もりを出す話。多忙であるために人員単価を多く見積もって、意図的に仕事を失注するはずが、社長判断で単価が半額になったために仕事を受注してしまう。

エピソード3 インタビュー?ウィズ・ニューリクルート
アルマダ・イニシアティブの新人社員 次朗丸縁へのインタビューを、新卒就活情報サイト『フレッシャー・ナビ』で行う。次朗丸が新人らしくないため、企画はボツになる。

エピソード4 誉=コンティンジェンシー
主人公の妹 誉がスルガシステムを訪れ、自転車でルーターを江東区 新砂の物流センターに届ける。

11 絶対?管理職宣言
2013年12月10日 初版発行。



エリザベート・ラピス・アカサカ(赤坂)が登場。

スルガシステムが、デジタル・ヴィレッジ(インフラ構築が主業務)という会社を買収し、主人公が部長代理として交通費や残業代管理等の管理業務を行うようになる。

デジタル・ヴィレッジは、人事総務系パッケージを外販するアルテリカコーポレーションと協働していて、パッケージ購入会社へのSEサポートを行っていたが、アルテリカコーポレーションとの関係が切れ、優良顧客を奪われたために苦境に陥っている。

主人公は、アルテリカコーポレーションに対し、優良顧客を返さなければ、既存顧客のパッケージを別会社のパッケージに変えるとして、経営を安定させる。

この話では、主人公達が管理者の観点で動き、理不尽を作業員に押し付け、ビジネスで相手を潰す動きをする葛藤がある。

12 アーリー?リタイアメント
2014年10月10日 初版発行。



室見立華が退職する。叔父である七隈陣に、大学進学を勧められたためであるが、主人公達の説得によりスルガシステムに帰還する。

この巻では、社長が社員を使い捨ての道具としてしか見ておらず、高い技術があるほど使い潰されてしまう矛盾があり、最後までそれは解決されない。

13 徹底指南?新人研修
2015年8月8日 初版発行。



二年目になった主人公が、スルガシステムの新人10人を指導する話。

自己主張が強い茶山春木や、プライベートを重視する箱崎宮乃等に戸惑うが、各人の個性を把握する試みによって1人の退社に留める。

この話では、主人公が強者になった事の矛盾が出ていると思う。上役からの理不尽には絶える事が出来るが、下っ端からの理不尽には耐えられない。

O松という新人が、ビジネスメールを書く練習として、研修期間中にも関わらず、顧客のメールアドレスや顧客資料を渡され、メールを誤送信した事で責められるが、これはスルガシステムの管理体制に問題があると思う。

会社が社員のキャリア形成を考えていない事を指摘された主人公は、「会社は学校じゃない」と怒りを爆発させてしまうが、これは誰かが会社全体の問題として指摘しなくてはならない問題であり、主人公はそこから逃げてしまった。

14 世にも奇妙な?ビジネスアライアンス
2016年1月9日 初版発行。



短編集。

エピソード1 世にも奇妙なビジネスアライアンス
次朗丸と梅林が協力してアズマ電器のシステム構築を受注する話。社内ワーキンググループが怠惰なシステム運営実態を隠蔽するために、苦情を揉み消している実態を利用して梅林は復権するが、次朗丸も案件に絡んでおり、システム構築を次朗丸、回線・機器提供を梅林が行う形式になる。

エピソード2 ガテン系?女子の幸せ獲得術
薬院加奈子が合コンに出る話。

エピソード3 社長が働く?日
六本松建造が営業担当をする話。現場が迷惑するため、社長のメールを密かに五分遅れで送信するようにして、内容確認し、社員全員でフォローする。

エピソード4 立華ズ・ブートキャンプ
太った主人公が室見立華にダイエットについて教えを乞う。ツナ缶が良いと言われるが、ツナ缶一缶のカロリーは500㎉強あり、室見立華が痩せているのは体質である事を納得する。

15 疾風怒濤?社内競合
2017年1月10日 初版発行。



赤城物産と神楽商事の合併に関するインフラ提案作業をスルガシステムで行う。藤崎・室見のチームが直販で、主人公はイグゼク・ソリューションズの下請けとして次朗丸と組んで案件受注を目指す。

直販と下請けという別ルートからの案件受注のため、社内競合にて主人公と室見が競い合う展開になる。

SDN(Software Defined Networking)を使用し、ネットワークを一括管理する事で運用費用を低減する戦略を採用するが、藤崎・室見チームはセキュリティの安全性を顧客に主張して専用回線によるネットワーク構築を採用させて規模の不利を無効にする。

藤崎・室見チームは高い技術力を背景に、必要最低限の機器導入による廉価なシステム導入を提案して他社よりも三割ほど安い費用を実現。

主人公達は、スルガシステムが瑞穂電機(大手電機メーカー)の適格性審査を名義借りして、提案活動に参加している事を指摘して、審査を仕切り直す事に成功する。

しかし、藤崎・室見チームは、NBL(国内大手ソフトハウス)に働きかけ、主人公達のネットワークを担当するJT&W社がネットワークを提供出来ないようにする。

この巻でもスルガシステムの異常性が示される。藤崎・室見チームで主人公が入社するまでに300ほどの案件を同時進行させていたというが、それで深夜残業や休日出勤が当り前になっているのなら、顧客にも不誠実だし、自分で自分の体を壊している。

何故、それほど働かなくてはならないのか?稼いだ金は何に使っているのか?

16 2年目でわかる?SE入門
2017年8月10日 初版発行。



前回の続き。

NBLが主人公達の案件に介入したのは、これから多発すると思われる商社再編の主導権を握るためだった。NBLが主導して各総合商社再編時の担当業務割り振り案を作成しておき、無駄な価格競争を排除する。割り振り案に合わないJT&W社には金融顧客を与える代わりに商社の仕事から手を引かせた。

主人公達は、次朗丸の勤めるアルマダ・イニシアティブの社長チェスター・ローズ(アトランタコンピュータ元日本支社長)の人脈を利用し、JT&W社の関連会社JT&W社プログレスの通信回線を使用する事でネットワークサービスを提供する目途をつける。

さらに主人公達は、ファームウェア(ネットワーク装置制御ソフト)にTストリーム(新機能サポートフォーム)を使用して、低価格機器の問題をソフトウェアで補う方法を提案し、藤崎・室見チームに勝利してプロジェクトを受注する。

しかし、その直後に主人公は総務に異動するよう内示され、システムの仕事に関わり続けるために退社して技術派遣でスルガシステムで働き続ける。

これも主人公(著者?)の逃げで、重要プロジェクトのキーマンであるはずの主人公が総務に異動になるのは、会社がSEの仕事を誰にでも出来る単純作業として、SEを取り換え可能な道具としてしか見ていない証拠であるとして、SEが成長し尊重されるよう変革を起こすべきというアルマダ・イニシアティブ社長の意見は無視されてしまう。

室見立華のために会社に残るという主張は言い訳にしか聞こえない。

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