臓物大展覧会

読んだ本の感想。

小林泰三著。平成21年3月25日 初版発行。



臓物大展覧会に迷い込んだ人間が、様々な臓物の話を聞く。

透明女
高校を卒業して五年が経つ今川義子が、高校の同級生 小田信実の呪い(祝福)を受ける。

小田信実は、高校時代に「透明女」という仇名をつけられて孤立していたが、今川義子、北条康子、木下秀代、長尾輝香に文化祭で同じグループに誘ってもらった事を感謝している。

そして、ウロボロヌスの儀式によって、自らの身体を食して本当に透明人間(実際には幽霊になっているようだ)になり、素晴らしい透明人間に恩人達を変身させるべく、身体をバラバラにして透明の用具を取り付けていく。

今川義子が、背後に何人もの気配を感じて物語は終わる。

P62~P63:
苦しむ人間を見ると、相対的に自分の幸せが引き立つ
(中略)
錯覚よ。だから、苛めたことも忘れなくてはならないの。誰かを苛めた記憶は自分が不幸だったことの証拠だから、不快な思い出
(中略)
苛めた側は苛められている人間を見てカタルシスを味わう。苦しみと苦しみからの見せ掛けの脱却という物語の儀式はそこで完結するので、もう価値はなくなる。後はそのような儀式を行った記憶を消せば完璧よ。でも、苛められた側は違うの。あるのは苛められた苦しみだけ、苦しみを終わらせるカタルシスがなければ物語は完結しない。物語が完成するまで、記憶は消えはしない
(中略)
「そして、カタルシスによる物語の完結を望んでいる」
「カタルシスって具体的には何よ?」
「復讐よ」

ホロ
喫茶店で話す男女の会話。

物語世界では、幽霊(ホロ)システムが実現しており、ホログラフィックで人間と似た存在が当たり前のように行動している。幽霊(ホロ)は多くの姿と言動を観察した情報から組み立てられており、死者さえも現実化可能。

男女の会話は、「他人の心」の非存在という哲学から、男性が自らの身体に埋め込まれている機械を操作する事で周囲の全てを消去出来る事から、世界は男性の生み出した幻影であると主張するも、本当に実体なのは女性の方で、女性は男性が周囲を疑わないように二十年前のデートの場面から世界をやり直す。

少女、あるいは自動人形
四十年ほど前に、自動人形の少女マリアと出会った男性の話。

マリアを紹介した老紳士も自動人形で、語り手の男性も自動人形だった。

攫われて
小学生の恵美、幸子、馨が誘拐されて監禁される。

誘拐途中で誘拐犯に殴られた幸子は半死半生になる。恵美と馨は逃げ出して助けを呼ぶために、誘拐犯が脱出口の前で寝ている内に幸子の死体を窓から落とし、馨が幸子の服を着て死体に成り済まし、犯人が馨を探している内に逃げ出す作戦を立てる。

目論みが犯人に見抜かれるも、半死半生になった幸子が現れ、犯人が驚いている隙に恵美が犯人を刺す。

ここで、話が中断し、恵美と「僕」との会話が始まる。「僕」が記憶を取り戻した犯人であるのか、馨であるかは定かではない。幸子の別人格なのかもしれない。

P190:
恵美、やっと二人きりになれたね

釣り人
主人公がN氏と一緒に釣りに出掛け、宇宙人に攫われるも殺されない。キャッチ・アンド・リリースされたようだ。

SRP
警察の厄介者が押し込められるSRP(科学捜査研究隊)の話。

所属するフジ・ユリコとイノウ・ブキチが、イノウ・ブキチの操るカプセル妖怪で怪異と戦う。怪異の正体は、プラズマ型宇宙人による地球探索だった。

地球生物とは形態が違い過ぎて、互いに認識出来なかった。

十番星
冥王星が、太陽系第九惑星とされていた時の話。

経津主事司が、同級生の甕星物也に、太陽系で冥王星の次の十番目の惑星を見つけたと言われる。

十番星は火星よりも地球に近い位置にあるが、優れた科学力を持つ生物が存在を秘匿していたため、地球人は存在に気付かなかった(十番星人も地球の存在に気付かない)。

十番星の偽装は三十億年前からで、彼等はその頃の環境を保っており、酸素が多い地球の環境を醜として、植物を滅亡させ、酸素を二酸化炭素に置き換えようとする。

甕星物也は、地球環境を戻す事を了承し、人間は十番星人と同じ生物に変化させられる。

造られしもの
生まれた時からロボットに囲まれて暮らす男の話。

当人は気付いていないが、周囲の人間はロボットであり、男は芸術がロボットには出来ない人間独自の行為と思い込み、芸術に打ち込んでいる。

男は幸福の中で死んでいき、ロボット達は新しい人間を作る事を決める。

P319:
われわれには人間が必要だ。われわれの第一の使命は人類を存続させることなのだ。だが、二人以上の人間がいた場合、彼らは諍いを起こし、互いに不幸になる可能性がある
(中略)
人間を造る場合には、いくつかの欠陥をわざとシステムに組み込んでおかなくてはならない

悪魔の不在証明
人口五十人ほどの過疎村に移り住んだ文筆家が、自分よりも後に移住しておきながら好かれている貫不見真一が気に入らず、彼の信仰を貶めるべく、公開討論を行う。

議論では勝てないが、貫不見真一の目の前で聖書を破き、神罰が下らない事で神の不在を証明する。

神の不在を信じた貫不見真一は大量虐殺を行うも、文筆家は煉獄の存在を説き、自殺すれば煉獄に行き、魂が清められれば天国に行けると告げる。

文筆家が正しい事を言っていれば天国に行き、間違っていても死んで無になるだけなので、貫不見真一は自殺する。

P352:
こんな微妙で複雑なものが独りでにできる訳がない
(中略)
でも、これのモデルになった遥かに巨大で精妙で複雑なもの―宇宙は自然にできたとおっしゃるんですね

P359:
神は人間の創りだした定理などにとらわれません。なぜなら、神は全知全能だからです
(中略)
今ここで神の無矛盾性を証明してみろ
(中略)
それはできません。わたしは神ではないのですから、全知全能ではありません

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