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オナニーマスター黒沢

読んだ本の感想。

伊瀬勝良著。2013年10月10日 初版発行。



学校の女子トイレで自慰行為をする趣味がある男子中学生の物語。

以下は、ニコニコ静画の『オナニーマスター黒沢』のページへのリンク。

http://seiga.nicovideo.jp/comic/6164

『過ぎ去りし王国の城』の主題を継続して描いた話だと思う。

以下は、『過ぎ去りし王国の城』の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-3206.html

いじめを肯定する事で、いじめを解決する話。

自分以外が被害者である場合でも、いじめの傍観者である事は不可能。傍観者である事で、いじめを肯定しているのだから、第三者にはなれない。

それだから、被害者の悪に着目して、虐待されても仕方がない悪人と見做し、加害者の善に着目して、成敗する善人と見做す。その理論を飾り立てる過程が必要。

【あらすじ】
主人公 黒沢翔は密かに女子トイレで自慰をするのが趣味の中学生。

黒沢翔は、クラスでいじめられている同級生 北原綾をいじめる者に制裁を加えるため、彼女をいじめる者の制服に、変質者の仕業と見せかけて精液をかける復讐を行う。

やがて自慰の日課が北原綾に露見し、彼女が憎む者の私物に精液をかける復讐の手助けをするよう依頼されるようになる。途中までは嫌がっていた黒沢翔だが、好きだったクラスメイトの滝川マギステルが、見下していたオタクの長岡圭史と交際するようになった事で逆上し、滝川マギステルを一とする北原綾が憎む者達の私物に精液をかける行為を積極的に繰り返すようになる。

やがて、その行為に終わりが見えなくなり、黒沢翔は全クラスメイトの前で、自分が女生徒の私物に精液をかけていた事を自白し、暴力を伴ういじめを受けるようになるが、罰を受けた事で周囲から許され、北原綾をいじめていた須川麻衣子と交際するようになる。

一方で、北原綾に対するいじめは継続し、やがて北原綾は精神に異常をきたして登校拒否になり、高校入学後も引き籠るようになる。

黒沢翔は、同窓会に出席するよう引き籠る北原綾を説得し、同窓会に出席させる。

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罰による罪の代替。あるいは、部族儀式の生まれる過程かもしれない。

「いじめ」にどのように対するのか?

主人公は当初は傍観者に徹し、いじめ被害者に加担するようになるが、二人だけで世界と戦う事に限界を感じ、多数派の側に与するようになる。

その方法は、集団からの罰を受ける事。

自らの罪を認めて罰を受ければ、罪を自白出来ない北原綾との相違が生まれる。北原綾が主人公と同格になるためには、自らも罪を認めるしかないがそれは出来ない事になっている。

主人公が同級生達の私物に精液をかけていた事について、誰も理由を聞かない。ただ暴力を振るう事で満足し、或いは痛めつけられるのを見ただけで許容する。

これは原始部族の成人儀式だ。大人となり、成人の仲間になるには、子供であれば耐えられない痛みに耐える事を示し、未成人との差異を証明しなければならない。

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主人公は、序盤では、北原綾へのいじめを誰も助けない事に憤るが、終盤になり、クラスメイトの小林隆太が「自分には関係無いから」という理由で、自らをいじめなかった事に感動する。

これは逆転の構図だと思う。

『聲の形』の構造と似ている。

以下は、『洗脳する「聲の形」』の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2484.html

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或いは『オイディプス王』、易でいう「天風姤」。

その意味は、呪われた女との出会い。

以下は、『易経入門-孔子がギリシア悲劇を読んだら』の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2091.html

テーバイの王オイディプスは、王である故に苦しみ争う者達が等しく愚かに思え、自らこそが争いを解決出来ると思う。

やがて、母(妻)は自殺するが、自らは眼を突いて放浪の旅に出立し、そこで道は分かたれる。

天から隕ちるのは、志が高くて、自分の運命を知ろうとして止めないからだ。

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