地政学で読む世界覇権2030

読んだ本の感想。

ピーター・ゼイハン著。2016年2月11日発行。



以下は、本書にて使用される地図の一覧へのリンク。

http://zeihan.com/the-map-room/

米国を贔屓し過ぎていると思った。

第1章 私たちが知っているつもりの世界
第二次世界大戦後に始まったブレトンウッズ体制について。

米国の圧倒的な軍事力の下で自由貿易が保障される。体制に参加する国が増えるに連れて維持費用が増加し、自由貿易の時代は終わろうとしている?

①交通の均衡
繁栄する国は、国内の交通容易性と国外からの侵入困難を両立する。

②遠洋航海術
遠洋航海によって地域経済を大規模化し、安全保障上の脅威を回避出来る。

③工業化
機械を利用した生産性拡大。

第2章 エジプト:ここから向こうまでの行き方
海上交通には優位性がある。コンテナ船がコンテナ一基をマイルあたり0.17ドルで輸送出来るのに対し、セミトレーラーでは2.4ドルがかかる(米国の多車線高速道路前提)。全米州間高速道路網の年間維持管理費は1600億ドルだが、米国全土の水路維持管理費は年間27億ドル(2014年)。

1600年代初頭の産業革命以前では、主要都市は20.5K㎡より小さく、正方形とした場合、重い荷を背負った人間が2時間かけて進める距離(4.5㎞)より短かった事になる。

*************

ナイル川は安定した水を供給し、紀元前4000年頃にはエジプトに都市国家を生んだ。それらは紀元前3150年頃にナイル川沿岸を支配する王国となる。砂漠による外部からの侵入困難がエジプト文明を長期化させた。やがて家畜化された駱駝と帆船がエジプトを破壊する事になる。

第3章 技術革命:遠洋航海術と工業化
遠洋航海術が確立するまでは、①国内に航行可能な河川がある国、②内海のように閉鎖的な海域を持つ国が長期間存続した。

以下が、状況を変えた。

①コンパス(14世紀)
②クロス・スタッフ(15世紀)
天体と水平線の角度を測り、緯度を産出。
③カーヴェル造り(15世紀)
木製の肋材で船の骨格を造る。
④砲門(1500年頃)

上記によってスペインやポルトガルが栄える。大洋は巨大河川に変貌し、大規模交易が実現した。

以下は、工業化技術。

①蒸気と石炭
②化学
硫酸(1746年)と炭酸ナトリウム(1791年)の大量生産は、化学肥料による収量増加に繋がった。
③互換性のある部品

欧州中央に位置し、あらゆる異民族との緊張を経験するドイツは、工業化によって発展した。

①地方政府
②インフラ(鉄道)
③品質の追求(義務教育や常備軍)
④資本の獲得

ドイツは地理的に分断され、外部からの脅威があったために帝国化によって工業国になり、1900年までに欧州の他の全てを合わせたよりも多くの地方工業都市を有した。

第4章 偶然の超大国の登場
米国の地理的優位性について。

①水路ネットワーク
米国の温帯を流れる川長は合計2万4000㎞くらいで、ドイツと中国の約3200㎞より長い。さらに、メキシコ湾と東海岸の3/4以上の距離を連なる防波島が潮位の変化を緩和する。

②土地
温暖な気候泰に属し、ロッキー山脈やアパラチア山脈には峠があって交通困難ではない。アラスカ以外の土地の90%では航行可能な水路から240㎞以内に位置する。

通常、山地とされる標高1500m以上の土地では、航行可能な水路は無くなる。0.25%の傾斜でも機関車が牽引可能な貨物量は半分以下になる。

③緩衝地帯
南部には砂漠と高地が続き、メキシコとの国境から800㎞以内である程度の規模を持つメキシコの都市はチワワとモンテレイの二つ。カナダとの国境も山や森が移動を妨げる。

メキシコ全土はロッキー山脈の延長で統合が困難。カナダの輸送はセントローレンス川に依存しているが、この川は米国領の五大湖から流れる。

外部から北米大陸に侵入するには3億人以上の人口と戦う兵力と、地球の反対側まで移動する輸送や工業力を持たなくてはならない。米国は大西洋と太平洋の二大貿易圏に自由に接続出来る。

ドイツのように熾烈な競争を勝ち残らなくても、米国は有利な位置にあった。

第5章 地政学を独占する
第二次世界大戦後の米国は経済や生産、軍事力が集中していた。そして、以下のシステムを構築した。

①米国市場への接続
②全ての海上輸送の保護
③戦略的なソヴィエト連邦からの保護

ドイツと日本は資源と市場への接続のために第二次世界大戦を始めたが、戦う必要は無くなった。米国のシステムは地政学的競合を減少させ、ブレトンウッズ体制参加国を自国の自由貿易を守る義務から解放した。

このシステムは米国が維持費用を負担する事によって成立しているが、NAFTAやFTA等の自由貿易協定から米国は手を引き始めている。ソヴィエト連邦が崩壊した現在では体制を維持する見返りが少ない。

第6章 人口の激変
人口動態によって未来を予測可能とする。

米国では1990年~2005年の間に、人口比で最大のベビーブーム世代と、人口比で最小のジェネレーションX世代のために消費鈍化と資本蓄積という現象が発生し、大規模なバブルが起こったとする。

米国における極端な経済成長と安い資本は、ジェネレーションZ世代が、現在のベビーブーム世代と同じ年代に達する2065年頃までは発生しないとする。多くの先進国ではベテラン労働者の層が膨らんだために余剰資金が大量に生み出されたとする。

著者は、ジェネレーションY世代の人口の多さから、2030年頃に米国の財政は改善すると予想する。それが発生するのは米国で、多くの国が高齢化によって大量消費を止めるとブレトンウッズ体制を維持する経済的動機が薄れるとする。

第7章 シェールの台頭
シェール資源についての説明。

2035年以前にシェール資源採掘が北米以外で始まる事は無いとする。

①巨大資本市場
シェール油井の採掘には低くても一つにつき600万ドルが必要。
②熟練労働力
③法整備
④輸送、分配に使用されるインフラ

シェールによるエネルギー自給は米国の対外依存度を引き下げるとする。

第8章 世界的な混乱期の到来
ブレトンウッズ体制の下で、1946年以降、体制参加国間での軍事衝突が減少し、経済成長に力が注がれた。

しかし、人口減少によって世界経済は2020年~2024年の間にピークを向かえ、世界トップ25の内、13ヵ国が不況になるとする。そして米国が体制を維持しなくなると、欧州やアジアにはエネルギー危機、中東には安全保障上の危機が発生する。

各国は地域強国に従うか、軍事で資源を獲得するかの選択を迫られる。

第9章 パートナーの国々
2020年~2030年における以下のカテゴリ。

①破綻国家群
シリア、ギリシア、リビア、トルクメニスタン、キルギス等。
②分解国家群
ロシア、中国、ボリビア、ナイジェリア等。
③弱体化国家群
ブラジル、インド、カナダ、ハンガリー等。大衆の合意形成システム、政府の正統性、食糧やエネルギー等を欠いているとする。
④安定国家群
英国、フランス、デンマーク、スウェーデン等。
⑤興隆国家群
米国、オーストラリア、アルゼンチン、アンゴラ、トルコ、インドネシア、ウズベキスタン等。
⑥攻撃的国家群
ドイツ、日本、ウズベキスタン、サウジアラビア、ロシア、トルコ、アンゴラ等。勢力拡大を行う可能性。

〇北米大陸
米国の貿易相手国上位はカナダとメキシコであり、米国の貿易流通維持は容易。

〇南米大陸
アンデス山脈と熱帯によって分断されている。コロンビアとベネズエラの人口密集地帯はカリブ海を通じて世界と接続しており、実質的に米国の支配下にある。

〇欧州
貿易上の要地にあるデンマークとオランダが重要とする。

〇アジア
タイは孤立した湾に面した擂鉢状の平野と、隣接した高地、ジャングルによって形成されている。海沿いを走る鉄道でしか国外に出られず、天然の要害によって外部からの干渉を抑える。バンコクと内陸部が政治的に対立しているため深刻な脅威とならず、米国にとって理想的な同盟国とする。ミャンマーは航行に利用可能なエーヤワディー川を持つ。

台湾と韓国については天然資源を輸入に頼り、産業基盤を維持するには国外市場が必要であるため、米国が同盟を維持するには海洋パトロールと貿易保護を継続しなければならない(毎月、超大型タンカー20隻分の原油が必要)。オセアニア圏からの資源供給が必要かもしれない。

第10章 プレーヤーの国々
<ロシア>
大人口と移動困難による低い資本創出力のために、大集団が力を振るう。支配には以下の課題がある。

①広大
国土の安全を保障するには広大な土地を支配しなければならない。バルト海沿岸、ポーランド、黒海、カフカス山脈、中央アジア、アルタイ山脈と天山の間の盆地等が全て地理上の弱点になる。
②多くの民族集団
2040年までにロシア国籍保持者数は1億2000万人いかに減少し、ロシア民族は国内で辛うじて多数派を維持すると予想。

人口減少により、数年内には兵力を境界地域の多くの場に配置し直す必要があるとする。

<トルコ>
1950年~2000年にかけてアナトリア半島を開発。

イラク(イランの衛星国になるか、軍事独裁制による再統一)、レバノンやトルコの崩壊等。ブルガリアとルーマニアとの関係を強化すれば、ドナウ下流域に影響力を及ぼす事が出来る。

日量70万バレルの石油が必要で、イラク北部のキルクークを確保するかもしれない。他にアゼルバイジャンからの確保やウクライナという選択肢。

<ウズベキスタン>
石油、穀物の完全自給が可能。アムダリヤ川とシルダリヤ川が国内を流れるが源はキルギスとタジキスタンにあり、2025年までに両国の氷河が亡くなると両河川が干上がり、水の奪い合いが発生する可能性がある。

タジキスタンには多くのウズベク人がおり、キルギスにはシルダリヤ川の全ての源流がある。トルクメニスタンのアムダリヤ川ソ位には100万人のウズベク人がおり、カラクム運河をせき止める可能性がある。

仮に水資源を支配すればウズベキスタンは地域大国になる。

<サクジアラビア>
ブレトンウッズ体制によって世界中に原油を販売出来るようになった事で成立した国家。自国民の労働者が過小であるために産業基盤、税基盤が無い。イランとの緊張関係は、米国の存在希薄化によって顕在化するかもしれない。

<日本>
多くの産業が国外に移転し、収益を本国に送る(国内に残る企業がGDPに占める割合は15%程度)。自由貿易体制が終了した場合、割安で移転先の国に所有権を譲ると予想する。

原油については、2020年前に高齢化で需要が消滅する日量50万バレルを除いても、日量400万バレルがひつようで、樺太(日糧30万バレルの原油)、満州(大慶では日量100万バレルの原油を生産)がターゲットになる?

<アンゴラ>
アフリカではほぼ全ての海岸近くまで大地がサマリ、サハラ砂漠南部を流れる川で航行可能な川は無い。アンゴラを支配するキンブンド人は、クワンザ川(外洋船の航行には適さないが、急流が少ない)沿岸部を支配し、首都ルアンダも保持しているため、沖合の石油収入によって内戦(1975年~2002年)に勝利した。彼等の三倍の人口を持つ民族を同化や抹殺によって国家統一を目指している。

南アフリカは温帯であるために疫病から逃れているが、アンゴラと敵対関係になるかもしれない。

<イラン>
水資源や広大な平地が無く、住民は山間の渓谷に居住する。何世紀もかけてペルシア人としてまとまり、降雨量で年毎の収穫が激変するために、人口が増大した年には国外遠征によって人口を調整したとする。
16世紀には他勢力の強大化によって規模拡大は小規模になり、18世紀までに現在の国境がほぼ確定。多様な集団を纏めるために100万人規模の軍隊を持つ。
山国であるために海軍を持たず、米国の脅威とならないために同盟国足り得るとする。国民の16%はアゼルバイジャン人で分離主義の危険がある。

第11章 歴史はヨーロッパへ回帰する
欧州人口の大半は北ヨーロッパ平野に居住する。多くの航行可能河川のために高い資本創出力を持つ。

以下の問題。

①共通通貨ユーロ
川は欧州全ての地域を流れていないので、イベリア半島、イタリア南部、ギリシアのような地域は常に経済的に弱体。
②銀行
大規模金融が国家の支配下にある。そのため政府に資金を融通する部分が大きく、企業に融資する部分が小さい。
③フランスとドイツの主導権争い
④資金不足
高齢化による資金不足。
⑤ドイツの危機
ブレトンウッズ体制崩壊後のエネルギー確保が課題。
⑥攻撃的な近隣諸国
ロシアやトルコ。
⑦ポーランド
ドイツとロシアに対抗するためにスウェーデンと手を組む可能性。しかし、人口が1000万人に満たないスウェーデンと4000万人弱のポーランドでは力不足で米国の援助が必要。

第12章 アルバータ問題
カナダは、ロッキー山脈、盾状地、拡がるセントローレンス川によって寸断されている。

バンクーバーはトロントやモントリオールよりも、米国西海岸と多く貿易を行っている。ケベック州のフランス語話者は交通の便が悪いために独自文化を保持出来た。

カナダの出生率は1965年以降下がり続けており、移民流入率が世界最高レベルで推移しているために人口が増加している。年間25万人の移民が入国し、3500万人の人口が維持される。それでも高齢化は継続し、低い消費活動と高い生産性による輸出増加により、加ドルは上昇し、2003年の0.65米ドルから2011年の1.05米ドルまで上昇した。

エネルギーブームが続くアルバータ州の収入が高く、2012年には国家予算への唯一の純拠出者となり、160億加ドル貢献した。人口動態も若いが、米国のシェールガスとエネルギー産業との競合が予想される。

著者はアルバータ州が米国に編入する可能性を検討している。

第13章 北米麻薬戦争
高温多湿である事の不利や山脈による分断。

熱帯気候に対処するために、人々は高地に移動し、地方は細分化されている。人口が100万人以上の都市は10しかない。中心部のメキシコシティは海から320㎞しか離れていないのに、標高は約2400m。

しかし、以下の利点があるとする。

①中国の人件費高騰
2002年以降、中国の人件費は6倍に上昇し、メキシコの1/4増しになった。
②シュールガス
米国産シュールガスがメキシコに供給される可能性。
③若い人口構成
④麻薬戦争による人件費抑制

アメリカ・メキシコ国境は3200㎞もあり完全封鎖は不可能。著者は移民の合法化が解決策と提案している。

第14章 中国戦争
黄河は平らな氾濫原を流れるために洪水を起こし易い。そのため、中国の政治組織は洪水被害を食い止めるために発展し、国民を厳しく締め付けた。

長い年月のうちに堤防に囲まれた川にシルトが堆積していくと、河床上昇のために堤防を高くしていき、河床が周囲の土地より高い水道橋のようになった。1931年には一回の洪水で100万人の死者が出ている。成功した勢力でも治水工事に力を注がなくてはならないために防衛力が弱く、資本蓄積に乏しかった。

長江は中国で唯一の航行可能な河川であり、資本蓄積が進んでいる。しかし、多くの山脈や尾根によって流域が細切れになっており、一つの統一体になる事が難しく、統一された北部に各個撃破される傾向がある。

南部の起伏が激しい地形は政治的統一を困難にし、強大な勢力が南部から興った事はほとんど無い。しかし、膨大な人口を持つ内陸部が結集した時の衝撃は大きい。

以下の問題。

①財政システム
人為的に低く抑えられた金利。融資も不良債権化しているものが多い。
②人口(少子高齢化)
③米国への依存
ブレトンウッズ体制崩壊により、自由貿易維持費用が増す。

第15章 移民とテロリズム
あらゆる国で移民が増加するとしている。

著者は国際武装組織はグローバルな移動が困難になり、米国は孤立化するためにテロの脅威が減少するとしている?

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