天皇陛下の経済学

読んだ本の感想。

著者:B・A・シロニー、山本七平監訳。
昭和61年4月20日 初版1刷発行。



天皇は成した事ではなく、伝統を象徴するが故に尊重され、国家統合を可能にするという意見。天皇家が継続する事は、日本の分化が継続している事を意味し、奉仕すべき共同体が存在する事を暗示する。

◎南北文化論
軍隊は南下し、文明は北上する。

著者は、文明を北部的要素(軍人が多く、質実剛健、勤勉、勇敢、組織力)と南部的要素(商人や芸術家が多く、軟弱、暢気)に分ける。侵略戦争の多くは北から南に進み、世界の宗教は南から北に流れる傾向がある。

古代ローマは地中海地方の北にあり、地中海南部を征服していった。ローマは戦法や組織を象徴し、ギリシャは商業や宗教を象徴する。やがてローマより北方のゲルマン諸族がローマ文明を取り入れて、能力を発揮するようになると、南方へ進んでローマ帝国を征服する。

著者は、現代のイスラエルは東洋系(セファルディ)と西洋系(アシケナジイ)の混合とする。

南北の違いは宗教の受容にも見られ、南の民族に受け入れられた小乗仏教やカトリック(儀礼を優先)、北の民族に受け入れられた大乗仏教、プロテスタント(単純化され実用的)という傾向があるとする。

日本は軍隊の組織化と農地統制の混合的文化を江戸時代に作りあげ、それが欧州の社会体制と共通していたために、近代化に成功したとする。

◎日本とユダヤの共通点
鎖国とゲットーの共通点として外部文明との隔絶がある。日本とユダヤ人は両者ともキリスト教を受容せず、長期間に渡って外部から隔絶された文化であり続けた。

孤立のために外部文明を書物から学ぶ伝統が作り出され、古と新の両方に固執する保守主義となる。

◎抑制の文化
日本では抑制と慎みが高く評価される。全ての仏教宗教派の中で、日本で受容されたのは最も簡素化され、最も抑制の強い禅宗や浄土宗だった。念仏や座禅という単純で簡単なところまで宗教を引き下げ、多くの宗教に欠かせない儀式を捨て去った。

禅の価値観とはありふれた物の中に美を発見する事であり、盆栽の最小主義や、限られた言葉を使う俳句の暗示にもつながる。

さらに社会集団による抑制がある。西洋社会では宗教原則に則り神の道具として国が作られるが、東洋社会においては社会原則に則て国家が構築され、社会の最小単位である家族の延長となる。

儒教において犯罪が禁止される理由は、聖書のような聖典が戒めているからでなく、そうした事が家族の中で起るはずがないからである。

中国と日本では世俗社会として、宗教は人生の終りの時のみに役割を果たし、人は子供が父親に従うように、目上の者に従わなくてはならない。

そして、中国と日本を比較すると、中国の儒教原則はより理論的であって、国家は科挙で選抜された賢人によって運営されるが、日本では国家は一つの家族であり、天皇は父親である事が徹底され、貴族は兄のようなもので地位は生れながらにして定められ変更は許されない。

天皇は抑制の象徴であるがために、最も制約を受ける立場にあり、実際の権力という面からは空虚な存在であった。国家の父であるために権力を用いずに、権威を全国に広めた。

明治期以降の日本においては、天皇は政治干渉せずに政府の業績は全てが天皇に帰せられ、失政の責任は正しく勧告しなかった政治家に帰せられたため、カリスマ的支配者が生まれなかった。それは一人の人間が権力を独占出来ない事を意味する。

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