虎と月

読んだ本の感想。

柳広司著。2009年2月第1刷発行。



中島敦の『山月記』を基にした話。

770年の話?虎になった李徴の14歳の息子が、父の真相を探るべく、虎となった地に赴く。

李徴が残した以下の詩が真相示していた。

偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃
今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高
我為異物蓬芽下 君己乗輙気勢豪
此夕渓山対名月 不成長嘯但成嘷(嚆)

最後の一文字が、虎になったという李徴の友人 袁傪氏の記録では「嘷」になっているが、主人公が発見した詩では「嚆」になっている。

袁傪氏は、李徴が口述した詩の最後を書き写し変え意味を変えた。

嘷(猛獣が吼えるの意味):
思いがけず、狂気に見舞われて獣になってしまった。災難と病気が重なって逃れる事が出来ない。今や俺の爪や牙に敵う者はあるまい。思えばあの頃は、君も俺も秀才として誉めそやされたものだ。ところが、今は俺は獣となって草叢にいて、君は役人として車に乗る身分だ。今夜、野山を照らす月の下で君に会ったのに、俺は詩を歌う事も出来ず、獣として吼えるばかりだ。

嚆(矢が鳴るの意味):
思いがけず目にした苦しみによって、俺は君の仲間ではなくなった。災難が重なって逃れる事が出来ない。今、俺の部下達は武器を持っていて君達では敵わないだろう。思えばあの頃は、君も俺も秀才として誉めそやされたものだ。ところが、今は俺は政府の敵として草深い土地にいて、君は役人として車に乗る身分だ。今夜、野山を照らす月の下で君に会ったのに、俺は詩を歌う代わりに、弓弦の音を響かせなければならない。

********************

李徴は虎になったのでなく、圧政に逆らう反政府活動家になっていたという話。李徴が口述した詩を書き写した部下を誤魔化す必要があった。

村で伝えられた話では、李徴は山犬から村娘を守るために本当に虎になったらしい。

P41~P44:
建国以来、百年あまりにわたって長安の町は平和と繁栄を享受してきました
(中略)
安禄山の反乱が伝えられたときも、長安の人たちは、まさか彼らが長安まで攻めのぼってこようとは、思ってもいなかった
(中略)
もうすぐこの国が滅びてしまう。それなら、いまのうちに騒げるだけ騒いでおかなければ損だ、といわんばかりの羽目のはずしぶりなのです。もちろん、“太平と信じていた世の中が、辺境守備に当っていた一将軍の謀反によって一夜にして瓦解してしまった”その衝撃は、わからなくはありません

P53:
劉さんが名前を呼ぶたびに、森の中から呼ばれた木々が一本一本現れてくるみたいだ

P177:
“ものたち”に名前をあたえることは、かれらが本来もっているはずのさまざまな多様性を切り捨て、ある一つの類型におしこめることになる
(中略)
名付けることで、“ものたち”は無名性の世界から引き上げられ、私の世界に立ち現れてくる。

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