伊藤くん A to E

読んだ本の感想。

柚木麻子著。2013年9月25日 第1刷発行。



見眼麗しいが夢見がちな伊藤誠次郎(27歳~28歳?)をめぐる女性達の話。伊藤君がどんどん非現実的になっていくので、伊藤君は実在せず、女の願望を投影した幻のようにも思えてくる。

基本的な人間関係は、女―友人―伊藤君という三角関係で推移する。

伊藤くんA
百貨店店員 島原智美(27歳)の話。

矢崎莉桜の『ヒロインみたいな恋をしよう!』に基づいて伊藤君という男性にアプローチするが、上手くいかない。伊藤君は矢崎莉桜が主宰するワークシップのために20万円が必要だと言い、最終的に島原智美は伊藤君と分かれる事にする。

伊藤くんB
塾講師をしている野瀬修子(23歳)の話。

同僚の伊藤君にアプローチされている。同室の宮下真樹と喧嘩し、学芸員として就職するために、自分を変える事を決意し、高価な鞄を買う。

伊藤くんC
クッキー屋に務める相田聡子(22歳?)の話。

友人の神保実希が大学の先輩の伊藤君と恋愛している事を知り、伊藤君を誘惑する。伊藤君とうまくいかなくなった神保実希と喧嘩し、相田聡子は孤独になる。

P116:
自信欲しさで、ずっと傍にいてくれそうな後輩に手を出しただけだろう

P119:
聡子には一度でも彼女の男と寝たという自信が残る
(中略)
実希と自分を比べて落ち込むたびに、立ち直るきっかけの核ができる

伊藤くんD
神保実希(23歳?)の話。

処女を理由に伊藤君に振られたと思った神保実希は、大学の同級生の久住健太郎(クズケン)とセックスする事にする。行為の直前に伊藤君に電話し、乱入した伊藤君によって場は滅茶苦茶になる。

P174~P175:
スカーレットは親友、メラニーを病気で失っていた。その寂しさから、レットのぬくもりにすがりたくなったと考えるのが自然な気がする。幸か不幸か、実希のメラニーはまだ生きている

伊藤くんE
矢崎莉桜(33歳?)の話。

若手脚本家だが、仕事が無くなり、自分のワークシップに通う伊藤君を見下す事が、プライドを維持する手段になっている。伊藤君が本当に脚本を書き上げて投稿した事を知り、伊藤君の仕事を邪魔する。

P208~P209:
「頑張らなくていい。このままでいい」と甘やかしてもらうためなのだ
(中略)
こうやって莉桜は伊藤を創ってきたのだ
(中堅)
ただひたすらプライドの高い自分を持て余していた。自分は人とは違う、という漠然として意識はあるものの、それをどう表現していいかわからず、かといって安全な場所を逸脱する勇気もなく
(中略)
莉桜は伊藤を完成させた。恋をすることも、何かになることも、あきらめることさえまともにできない正真正銘のクズ。それが伊藤だ

P228:
楽しいより、充実感を得るより、金を稼ぐより、傷つけられない方が本当は重要なんです

P231:
伊藤は勝ち続ける。周囲の人間を傷つけ続ける。たぶん、一生。勝てるわけがない。だって、伊藤は永久に土俵に立たないから。愛してもらえるのを、認めてもらえるのを、ただ石のように強情に待っているだけ。自分を受け入れてくれない人間は静かに呪う。結局、自分から何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ

P233:
孤独を満喫しているつもりなのだろうが、通行人にあらぬ恐怖を与えたり、悪臭を放っていることに無頓着だ。ただそこに座ってさえいれば、なんとかなるという傲慢さは伊藤や父にも、そしてさっきまでの自分にも共通する

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