球形の季節/六番目の小夜子/現代女性作家⑭恩田陸

読んだ本の感想。

恩田陸著。平成11年2月1日発行。



編者:現代女性作家読本刊行会。発行:2012年2月20日。



【舞台】
東北内陸部に位置するI市の町 谷津。ほぼ正方形で、四つの辺の内、三つを蛇行する紅川に囲まれており、残る一つは鉄道と谷津駅に蓋をされて閉じられている。

別世界である「本来の谷津」を内包しており、ふとした弾みに別世界を垣間見る事が出来る。

【経過】
谷津という町にて、子供達に広まる噂の出所を「谷津地理歴史文化研究会」が探る。

一つ目の噂:
5月17日に如月山にUFOが来て、エンドウという生徒が誘拐される

⇒遠藤志穂(16歳)が行方不明になる

二つ目の噂:
7月14日、サトウさんの上に隕石が落ちてくる

⇒長篠高校一年生 佐藤保が高校教師 結城貞之に突き飛ばされて車に撥ねられる

三つ目の噂:
8月31日、教会にみんなを迎えにくる

⇒大勢の学生が教会を目指す

主人公 坂井みのりは谷津の物語の語り手となる。それは学校時代が嫌いだったと語りながら、学校時代を描き続ける恩田陸に重なる。

【示唆】
①緑は危険(クリスチアナ・ブランド)
P10で陸軍病院という密室を舞台にした推理小説が登場する。

②本来の谷へ行く方法
本来の谷津へ行くには境界である川を飛び越える必要がある。以下の重要ポイント。

駅南の教会:教会 = 境界と読み取る事も出来る。

如月山:紅川を超えた場所にある。

間加部:I市から電車で40分離れた場所にある。

閉塞的な現実世界からの脱出。現在という空間と時間は球形に閉じられており、本来の谷津に入る事は、現実の外に出る唯一の方法である。

<六番目の小夜子>
平成13年2月1日発行。



学校は新陳代謝を繰り返しながら活性化を図る生命体のような存在であり、規則正しいリズムの中にある。『六番目の小夜子』における学校は川や桜の木に囲まれる事で境界を形成し、周囲とは一線を画している。

転校生 津村沙世子は、快活と負の両極端を体現し、来訪神として学校の意志を表す神となる。本人は人間であっても、共同体が彼女を異形と認めた事で意味を持ち始める。

春に津村沙世子は卒業し、解放される。

【サヨコ伝説】
15年ほど前に、学園祭で『小夜子』の一人芝居が好評で、その年の大学合格率が良好だった。その三年後、『小夜子』を再上演しようとするが主役の女生徒が死亡し、上演は中止、その年の大学合格率は史上最低となる。

その後、小夜子の役割が引き継がれていくようになり、三の倍数の「サヨコ」は、役割を引き継ぐだけでなく、定められた役割を果たさなくてはならない。

卒業式で卒業生に花を渡す二年生が、花を渡す時に鍵を押し付けられ、その数日後に匿名で手紙が郵送される。

サヨコの役割:
始業式に赤い花を自分の教室に飾る。そしてサヨコの芝居を準備し、サヨコを凌ぐ芝居を用意出来るなら、9月の始業式に、赤い花を活け、昔のサヨコを再上演するなら空の花瓶を置き、何も出来ないなら何もしない。

赤い花を活けた場合、学園祭実行委員長にオリジナルの台本を郵送する。

登場人物 関根秋の兄は「三番目の小夜子」、その5年後に姉は鍵を渡すだけの小夜子をしている。

【解明されない謎】
以下、気になった事。

①加藤彰彦の謎
本来の「六番目の小夜子」は、加藤彰彦という男子生徒だったが、4月には小夜子の呪い?で心臓発作を起こして学校に来れなくなり、留年が確定する。

P57:
加藤はクラスに必ず一人か二人はいる、地味で社交性がなく冴えないが、その割に自意識過剰で自尊心が強い、というタイプの男子生徒である

⇒このような男子学生が「小夜子」に選ばれた経緯はなんだったんだろう?

加藤彰彦が留年し、卒業していないという事が気になる。他の登場人物達が高校から解放されるのに、加藤彰彦だけが学校に残る。

②五番目の小夜子
「五番目の小夜子」は『無言の小夜子』と呼ばれ、赤い花を活けたが何もしなかったとされる。

恩田陸の『図書室の海』に収録されている「図書室の海」では、関根秋の姉 関根夏が「小夜子の鍵」を演劇部の後輩である桜庭克哉か、自分に鍵を渡した志田啓一の幼馴染である浅井光に渡すか考える場面がある。

桜庭克哉も浅井光も、それなりに活動的に描写されているが、『無言の小夜子』になってしまったのは何故だろう?

そして、ここで①の疑問に返る。『小夜子』が選抜されているのだが、地味で非社交的な加藤彰彦が選ばれたのは何故だろう?

<麦の海に沈む果実>
「海より帰りて船人は」は、レイ・ブラッドベリの短編の邦題。

航海中に妻を失った船長が水葬を望むが、彼が葬られたのは小麦畑の一角だった。

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ABCDEFG

Author:ABCDEFG
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード