最初の哲学者

読んだ本の感想。

柳広司著。2010年11月25日 第一刷発行。



オイディプス
父を殺し、母を娶ったオイディプスの物語。

異邦の王子
スキュタイの王子アナカルシスが、アテナイに学んでアテナイの習俗に順応したが故に、スキュタイで死ぬ話。

P30:
彼らは言葉を軽やかに投げ合うことで、手に触れられるこの世界とは別の現実を作り出そうとしているのだ
(中略)
広場で騙し合う行為は、品物に“価格”という本来存在しないものを張り付け、金銭に交換するためのものだった

P32:
「あれは、私と獲物との間に馬を乗りいれたのです」
……それは、スキュタイの地では射殺されても仕方のない振る舞いであった


クレタ王ミノスの娘アリアドネが、裏切りの誘惑によって、アテナイ王アイゲウスの息子テセウスを裏切り、一人でアテナイへ帰還させる話。

P45:
クレタには、アテナイより一千年も早く文明が花開きました。長い文明の営みは、ときおり人の手には負えぬ謎を産み落とすことがあります
(中略)
わたしはクレタという爛熟した一つの文明が生み出した謎。あなたにはけっして理解できない不可思議な人の欲望

亡牛嘆
クレタ王ミノスと王妃パシファエの迷宮に閉じ込めらた息子の話。

ダイダロスの息子
ミノタウロスを閉じ込めた迷宮を作ったダイダロスの息子の話。イカロスという自分の名前を歴史に刻むために、閉じ込められた迷宮から脱け出す翼を太陽に向け死ぬ。

神統記
祖父ウラノスや父クロノスのように、息子に打ち倒される宿命から逃れるために、懐妊した妻メティスを自らの腹中に収めたゼウスの話。生れてくる息子と一つになる事で王位継承の循環は断ち切れれた。

P80:
ゼウスは憂鬱だった。
いまにして気づいたのだ。決して打ち斃されることのない王―すなわち変転するこの世界の中で動かない存在が、いかに惨めなものであるかを

狂いの巫女
トロイアの王女カサンドラを連れ帰ったアガメムノンが、娘を生贄にした恨みから、王妃のクリュタイメストラに殺される話。

アイギナの悲劇
女神像を取り返しに行ったアテナイの軍勢が追い返され、一人だけ生き残ったミュシアスが、アテナイの女達に殺される話。

P107:
彼女たちはそうして、自分たちの夫はどこにいるのだと詰りながら、ひとりひとりが着物の留め針でミュシアスを刺した

最初の哲学者
ミレトスのタレスが、イオニア学派を立ち上げる話。

P114:
タレスは、はじめて神や霊を持ち出さずに世界の成り立ちを説明してみせたのだ

オリンポスの醜聞
鍛冶の神ヘファイストスが、自分の妻アフロディナと、妻の浮気相手である戦争の神アレスを罠にかけ、ベッドの中の網に搦めとってさらし者にする話。馬鹿らしくなって、自らの仕事に戻る。

P131:
美醜などというものは、見る者と見られる者の関係性のうちにはじめて存在するものであった。いや、そんなものは畢竟、自らを顧みた時に心に生じる幻影にすぎないのだ

ソクラテスの妻
処刑されたソクラテスの妻クサンティッペの独白。

王女メデイア
コリントスの王となるイアソンの妻メデイアの話。自分を裏切った夫に復讐するため、我が子を殺す。

ヒストリエ
ヘロドトスの話。

P164:
すべてのものは、場所によって、民族によって、或いは時代によって、さまざまに変化しているのだ

P175:
美化や歪曲、創造が入っていたとしても、人間にとって世界とはきっとそのようなものだのだ

P176~P177:
ちっぽけな存在である自分が、この世界について直接得ることのできる知見は限られている。大きなものを語ろうとすれば、自分の外に出て材料を集めるしかない

P183:
ヘロドトスの記録が残されていなければ、ギリシアの人々のペルシア戦争に関する断片的な記憶は語られる内に次第に変形し、神話世界の御伽噺に吸収されるか、さもなければ日常的な些細な記憶に矮小化されるか、いずれかの道をたどったはずである

P187:
目の前の対象を徹底的に数え上げることと、時間を遡り、ギリシア人と異邦人を等しい立場で対話させること。二つの異なる記述が、縦糸と横糸になって、その交点に、これまで誰も見たことがない世界が立体的に立ち上がってくる

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