カルメン/セルバンテス

読んだ本の感想。

メリメ著。昭和47年5月20日 発行。



『セルバンテス』を読んでいて、メリメの作品とセルバンテスの作品が類似しているように思えた。

カルメン
セルバンテスの「美しいヒターノの娘」に似ている。

カルメンではバスク出身の軍人ドン・ホセがロマ人の女カルメンに魅了され、盗賊団に入り、嫉妬からカルメンの亭主である「片目のガルシア」を決闘で殺し、終にはカルメンまで殺める。

「美しいヒターノの娘」では、貴族の息子ドン・ファンがヒターノ(ロマ人)のプレシオサに魅了され、戦争に出征するという口実で家を出て、ヒターノの泥棒稼業に身を投じる。嫉妬に苦しむ下りや、剣での殺害の場面も似ている気がする。ただし、「美しいヒターノの娘」では、プレシオサが誘拐された代官の娘である事が明らかになり、祝福ムードの中で殺害は有耶無耶になり、幸福な終わり方をする。

P77~P78:
ガルシアはさっそく、鼠をはらう猫のように、腰を折っていました。防御用に左手に帽子を握り、小柄を前に突き出して構えました。これがアンダルシア流の構えです。私はナヴァレ風に構えました。つまり相手の前に直立し、左手は高く掲げ、左足を前に、小柄は右の太股にぴたりとつける構えです。この構えになると、私は自分がどんな巨人よりも強くなったような気分でした

P89~P90:
あんたはまだわたしに惚れておいでだけれど、だからあんたはわたしが殺したくなるのよ。わたしはなんとでも嘘をついて今度もあんたをだますことくらい造作ないんだけれど、わたしにはもうそれさえする気がないのよ
(中略)
カルメンはいつだって自由な女よ。カリとして生まれてきたカルメンは、カリとして死んでいきたいのよ
(中略)
いまわたしはだれにも惚れていないの。わたしはあんたに惚れた自分をいま憎んでいる
(中略)
あんたをこのうえ愛しつづけるなんて、とてもできないことだわ。あんたといっしょに暮らすのがわたしにはもういやなんだもの

タマンゴ
『ドン・キホーテ』に似ている。

欧米人と奴隷貿易で取引するアフリカ人タマンゴの話。酒に酔って自分の妻アイチェを奴隷商人ルドゥに渡すが、酔いが醒めて妻を追いかけて捕らえられて奴隷になる。

奴隷達を扇動して反乱を起こし、終には船を乗っ取るが、動かし方を知らないために船は漂流し、タマンゴだけが生き残って救出され余生をジャマイカで過ごす。

タマンゴの風体や精霊によって船を動かして故郷に戻ると主張する箇所が『ドン・キホーテ』と似ていると思う。

P105:
タマンゴは白人の船長を歓迎するために着飾っていた。彼はいまだに軍曹の金筋のついたままの青い制服の古ぼけた上着を着こんでいた。左右の方にはそれぞれ金色の肩章が一つのボタンに止められて、一つは前方に一つは後方に揺れながら下がっていた
(中略) 
こうした風体でこのアフリカの戦士は、ロンドンやパリの生粋な伊達男とエレガンスを競うつもりでいるのだった。

P107:
奴隷たちはフランスの水夫たちに引渡された。彼らは急いで奴隷たちの木叉をはずし、かわりに鉄製の首枷と手錠を与えた。この一事によっても、ヨーロッパ文明の優位が、はっきり誇示されたものだ

マテオ・ファルコネ
コルシカ人社会にて、逃げ込んだ犯罪者を時計を渡されて密告した息子を殺害する父の話。『ドン・キホーテ』を念頭に入れて読むと違う解釈が可能になる。

他に収録されている『オーバン神父』、『エトリュスクの壺』、『アルセーヌ・ギヨ』も、セルバンテスの「嫉妬深いエストレ マドゥーラ男」や『ドン・キホーテ』の中の短編小説「無分別な物好き」を念頭に入れて読むと印象が変わる。何かを模倣しなければ愛する事が出来ない者達。

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ABCDEFG

Author:ABCDEFG
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード