ユーラシアの双子


読んだ本の感想。

大崎善生著。2010年11月15日 第一刷発行。





面白くはなかった。

作者は意図的に二種類の読み方が出来るようにしているのだと思う。双子、マトリョーシカは読み返すと別の意味合いになる事の暗喩?

2009年6月7日~2009年7月7日までの旅行がメイン。主人公の石井隆平(52歳)が、日本からシベリア鉄道を経てリベリアまで旅行する。
石井隆平は5年前に19歳だった娘に自殺されている。娘が自殺したのは石井隆平の誕生日7月7日だった。

旅行の初期に、自分よりも2日ほど先行して葉山エリカという19歳の日本人女性が、自分と同じルートを旅している事を知る。葉山はエリカは7月7日にリスボンで投身自殺する計画らしい。

結局、葉山はエリカは自殺せず、日本に帰還する。

<ユーラシアの双子>
作中作?相川アリア作。五歳違いで生まれた二人の女の話。生まれる前は一つの魂で別々の時間を生きる双子。妹はユーラシアを通ってポルトガルに行く旅行を実行し、その途中に姉の足跡を感じ、最終的にはポルトガルで投身自殺する。

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二つの読み方が出来る。

娘を追う父親、父から逃げる娘。

石井隆平の娘 香織と葉山エリカの人生が共時性を持っているとした場合、石井隆平の回想は違う意味合いを持つ。

石井香織は3歳くらいで妹が生まれた時から、情緒不安定になり、石井隆平と入浴する時にのみ精神が安定したと記述される。一方で葉山エリカは3歳で母親が再婚し、義父から性的虐待を受けたとする。

そして、石井香織は13歳の時に友人の万引きに巻き込まれた事で引き籠りになったとするが、葉山エリカは13歳から本格的に性的虐待が始まったとある。

おそらく石井隆平の主観と客観は異なる。娘を虐待した父親が、自らの所業に無自覚であるという事?

石井香織は高校生になって精神的に安定するが、この時期に石井隆平は同じ職場の川村紗江と不倫関係になる。そして、石井香織は18歳で妊娠・堕胎し父親の不倫を知ると自殺する。

この部分の記述は不自然で、石井香織は自らの妊娠を母親に内密にして、父親の石井隆平に相談する。堕胎に至るまでの過程が、恋人の倉本幸太郎と異なっており、石井香織は彼に言われるままに堕胎したと言い、倉本幸太郎は石井香織が勝手に堕胎したと言う。

葉山エリカは、16歳で義父が事故死してから、憎む対象を喪失した事で虚無感を抱くようになったという。マドリッドで葉山エリカは石井隆平を誘惑するが、これは憎悪対象の代替物として石井隆平を選んだという事かもしれない。

作者は、こういう見方が出来るように作品を作ったのだと思う。

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上巻P148:
娘の死を完全に包みこんでしまえる紙。それは客観性なのではないかと……。自分自身を客観視すること。冷たくあざ笑うこと。冷静に見つめること。それをひたすら繰り返すのだ。
(中略)
それを繰り返し、厳重に何度も何度も紙で包み、

上巻P216:
マトリョーシカ
(中略)
五重の殻を被っている六体目を、まるで自分のようんだと表現した少女の感覚
(中略)
正しい比喩をみつけること

上巻P295:
“絶望には蠅がたかり”
“希望には蛆がわく”

下巻P29:
宗教破壊が行き着く先が、レーニン廟と自らの神格化であったのなら、自由のたどり着いた先は新しい壁の構築ということになる

下巻P148:
モネは絵画の中に時間を描き込もうとしたといわれる。
(中略)
時間が膨張しそれゆえに永遠なのだとしたら、モネの絵の中にはその永遠が描かれているということになる。永遠を描きとめ世界と同時に絵画を膨張させようとした、そこのモネの発想の原点があるのではないだろうか

下巻P153:
父親との接触が極限に不足している分だけ、空想でその不足している体験を補おうとする傾向がある。人間というのは不思議なのもので、そういうことを繰り返しているうちにそれは年月とともに実体験だったような錯覚が生れ、その錯覚が自分の不足していることを満たしていってくれるようになる

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