不滅の書

読んだ本の感想。

萩耿介著。2012年6月25日 初版発行。



作者の意図を慮る事が難しかった。

金銭や信頼、身分、異民族との区別等について。

ウパニシャッド(ヒンドゥー教の聖典)が、ペルシャ語に翻訳され、さらにラテン語に翻訳され(ウプネカット)、ショーペンハウアーによる「意志の表象としての世界」として世界中で読み継がれる。

輪廻転生をテーマにしているようで、各人物は生まれ代わっているようだ。

第一章 扉
2009年?の日本。

帝国不動産販売に勤務する滝川隆(30代半ば)は、吸収合併された会社に在籍していたため、肩身の狭い思いをしていた。滝川隆には、15年以上前にインドで行方不明になった5歳上の兄がおり、残された荷物の中にあった『智慧の書(意志と表象としての世界)』が精神の安定を保つ糧となっている。

白鬼:
滝川隆の同僚。帝国不動産販売の売上二位。肌が白いために白鬼と呼ばれている。

P20:
『個体化の原理』がとり払われた人は、もはや自分と他人を区別することはなく、他の個体の苦しみに彼自身の苦しみと同じくらいの関心を持つ。そしてただ慈悲深いばかりではなく、自分を犠牲にして他の人が救われるなら、自分自身の生命をすすんで犠牲にする心構えさえある

P38:
誰でも青年期の夢から覚めれば、この人間界が偶然と誤謬の国であることを、そして偶然と誤謬は大小を問わずこの世に無慈悲に跋扈し、痴愚と悪意がこれと並んで鞭をふるっていることを認めるようになるだろう

第二章 言葉
1789年~1800年までのフランスが舞台。東洋学者アンクティル・デュペロン(1731年~?年)がウパニシャッドをラテン語に翻訳し、それがショーペンハウアーに引き継がれる。

彼は弟の義父であるメルボワと出会う。金と言葉のどちらが大切か。

デュペロンの弟デランドは、革命政府によって捕らえらる。デランドはメルボワの「金の思想」?によって解放される。しかし、デュペロンの想い人であるエグモン夫人を処刑から救う事は出来なかった。

P79:
あらゆる過去と伝統のすべてが敵。
(中略)
言葉は過去と切り離せない。今も生きている。彼らは言葉も敵に回すのだろうか。これまで使ってきた言葉。百年、千年と受け継がれてきた言葉。それさえ敵と見なすのだろうか。言葉を敵に回すということは知恵を敵にするということだ。

P118:
利益の追求は自由であり、商いはあらゆるものから自由でなければならないということだ。敵からも味方からもな。従ってアンティクル商会の行為は罪に値しない。
(中略)
賄賂など力の本質ではない。金はもっと自由なのだ。敵も味方もなく、国境さえ超えてどこまでも行く。そういう生き物なのだ。とてもわれわれが飼い慣らせる相手ではないのだよ。ダヴィッドとはこの点で一致を見たのだ。

P142:
孤立しているが、それぞれが大きな宇宙の原理の一部と考えれば、孤立は解消され、大きな原理に支えられる。その原理を古代インド人はブラフマンと名付けた。神でない壮大な仕組みとして。その原理の前にはすべては平等である。誕生し、滅び、変転し、再び生まれる。その輪廻からの解脱は原理の認識によって可能になる。

第三章 信頼
1656年~1659年のインドが舞台。

ムガル帝国の皇太子ダーラー・シコーが、ウパニシャッドをペルシャ語翻訳するもの、王位を奪われて処刑されるまで。

P193:
ウパニシャッドとは、もともと『近くに座る』という意味でございます。おそらくは師の教えを聞くためでございましょう。ですからこれ以外の題名は不要と存じます
(中略)
『智慧の書』はいかがでしょう。どこの言葉で書かれようとも、ここに記された智慧は広く読まれるに値します

第四章 憧れ
再び、2009年?の日本。

滝川隆は有給休暇を利用して、兄の足跡を辿るためにインドへ行く。主人公は兄の幻影と出会い、『智慧の書』の原典を入手するが、『智慧の書』はそれを必要とするものの所へと消え去ってしまう。

P279:
金を稼ぎ、家族を養う人生。悪意を浴びながら義務を果たす人生。それは道に生きる牛の人生より上だろうか。考えることを知らず、あるいは考えることをやめてしまった牛の顔は自分の顔より愚鈍だろうか

P291:
聖なるものは俗なるものを越えなければならない。超えきれず、敗北しても執拗に挑み続けなければならない。人は聖なるものに触れて初めて満たされるからだ

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難しい本だった。各個人が個人であって、同時に全体となる。異質は思考を促すが、考える事が反発を生む。

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