インドシナ文明史

読んだ本の感想。

ジョルジュ・セデス著。1969年12月5日 初版第1刷発行。



かなり古い本。インドシナ = インド + 中国(シナ)であり、ガンジス河以東の半島において、アジアの二大文明の影響を強く受ける地域があった。征服による中国化と文化的浸透によるインド化。

インドシナ半島の大部分はインドの影響が強いが、ヴェトナムは初期から多くの文化要素を中国から受け継ぐ。中国化したヴェトナム人はインド文明に影響されるというよりも、異なる文明を破壊する傾向があった。

インドの影響が強いのは中央集権的政府が存在した地域であり、インド文化を身に付けた王族が、村落レベルまで統治権を及ぼした。それまで部族の域を超えた社会集団が存在しなかった地域に、集団間の障壁を破る国が誕生したものと思われる。

以下は、文明が広範囲に影響する王国を形成する要因。

①公共事業
排水、灌漑、道路等の地方的レベルを超えるインフラ整備を行う制度や技術。
②権威
インド法におけるダルマの概念は、異なる慣習の上に画一性を課す事無く、精神的権威として君臨する枠組みを提供した。

インドシナ土着社会の内部には、インドにおけるカーストに相当する社会区分が存在しており、インド文明が浸透し易かったとする。独自性を失う事無しに統合される枠組み。インド文明は共通語としてのサンスクリット語によって統一性を保持しながらも種々の文化を達成した。

インド的観念では王の位格は神聖とされ、九世紀初頭に形成されたアンコール王朝は、全世界の支配者である唯一人の王として集権的国家を作りだした(その前の扶南王は六世紀に全大地の所有者の称号を名乗っている)。

インドが齎したのは、諸概念、方法、用語であり、中央集権国家形成のための法体系を創るために必要な道具だった。武力によらない文化的浸透は強い力を持ち、多神教の伝統を持つ一般民衆は、ヒンドゥーや仏教の神々が土着の神と並んで崇拝されても気付かなかったかもしれない。

<インドシナ半島の地形的条件>
インドシナ半島の土壌は一般的に貧しく、農業に適した地域は主要な河(紅河、メコン河、メナム河、サルウィン河、イラワディ河)のデルタ地帯と中流平野、シナ海の沿岸平野とトンレサップ盆地である。

山岳地帯と高原では水不足により、焼畑耕作以外の耕作形態が馴染まなかった。対して平野とデルタ地帯の大部分では水稲耕作が行われた。

交易においてはシャム湾に面したヴェトナム南部の西海岸や、ベンガル湾に面したインドシナ半島西海岸に良港が多くあり、支配権を巡ってメナム河下流域の国家とイラワディ河下流域の国家で衝突が発生する傾向がある。

また、北部においては中国との境は通り難いわけでなく、守備防衛は困難。紅河渓谷は雲南地方への通路であり、フランスがトンキンに勢力を置いた。広西省の西江の支流がランソン省に流れ込んでおり、中国から紅河デルタへの進出は容易。イラワディ渓谷やサルウィン河が貫流するビルマ方面も自然の通路であり、第二次世界大戦中は援蒋ルートがあった。

そして半島東部では安南山脈や1000mを超える峠が交通を困難にしており、大規模な同質的社会集団の発展を妨げた。半島西部ではメナム川が交通路として機能し、中央部のメコン河は南と北の連絡路となる。

〇ヴェトナム
紀元前221年の始皇帝による中華統一後、江南地方は中国による遠征の対象となり、紀元前214年には広東地方を南海(広東)、桂林(尋州)、象(南寧)の三郡を中心に支配された。

秦始皇帝の死後、ヴェトナムの支配者達は独立を模索する事になる。0年~25年まで交州を統治した錫光は中国化を行い、中国人植民者の影響により紅河デルタの文化は中国化していく。学校や鋤の使用、中国式結婚儀礼、中国風軍隊、etc。

〇タイ人
カンボジアの支配下に置かれたメナム中部の民族。北部から南部への民衆の地滑り運動によって移動したと思われる。アンコールワットの寺院には、王に随伴する軍の戦闘に、クメールとは異なる服装の兵士集団が示されており、碑文はシヤームとしている。

タイ人は遅くにインドシナ半島に到達したので、クメールやモン、ビルマのようにインド文明の支脈と見做す事は出来ない。他民族の文化要素に同化する事に熱心で、八世紀に南詔王国を雲南に建国した民族の基盤とされる。

<十三世紀>
モンゴルの侵略等により、インド化された諸国が衰退していく。1282年がモンゴル軍による最初の侵略とされ、タイ独立の契機となる。1287年にモンゴル軍がミャンマーの都市パガンを奪取すると、その領土は分割され、それを利用したタイ人がパガンの東方の米作平野の小さな領土の幾つかで権力を掌握していく。

モンゴル軍による動揺は変化を速めただけであり、十二世紀からインド文明から離れた独自色を帯びる土着民が人口を増加させた事が根本的要因とする。

王個人を崇拝するヒンドゥー教や大乗仏教は大衆と関係無い宗教になっていき、セイロン仏教が広まっていく。それがモンゴルによる同様によって作用し、クメール帝国やチャム王国、ビルマ王国が新しい国家に代替されていく。

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