独裁者の教養

読んだ本の感想。

安田峰俊著。2012年10月25日 第一刷発行。



著者のワ州(ミャンマー)旅行記と、各国の独裁者について調べた内容がチャンポンになっている。アヘン王国と呼ばれるワ州でミニ独裁を体験し、自らの知識と融合させようとしたのかもしれないけど失敗している。

以下は、各国の独裁者の知識や体験への考察。

スターリン:
1878年頃に生まれる。寄宿舎制の東方正教会付属学校で教育される。校内では宗教と無関係な教養が禁止され、監督制度も存在した。独裁者となってからも、「正しい〇〇とは―」という問答を部下に仕掛ける事を好んだが、これは司祭が一般信者に正統的教義理解を問う方法と似ている。正しい見解が最初から定まっており、それに反する意見は許容されない。

カトリックでは死後の世界を天国、煉獄、地獄の三つに分けるが、東方正教会では天国・地獄の二元論的世界観を持つ。この世界観は、社会に出るまで神学以外の教育を受けなかったスターリンに強く影響したとする。

批判はあるものの、スターリンは愛国主義を唱え、大祖国戦争に勝利し、ロシア史上最大の版図を確立した。

ヒトラー:
1942年の「ラインハルト作戦(ユダヤ人問題の最終解決)」に先立つ事、三年前、「T4作戦」として障害者等を殺す作戦を実施している。一年半で約七万人の障害者等を抹殺処分した。

ヒトラーの思想を形成するドイツ民族主義や反ユダヤ主義、優生学思想等は当時の常識であり、多くの人々が望んだ正義だった。ヒトラーは常識を寄せ集めて政治に反映させたに過ぎない。

毛沢東:
少年時代は「水滸伝」、「三国志演義」、「隋唐演義」、「岳飛伝」等の中国の英雄伝に興味を示す。正規の大学教育や留学の経験は無い。読書家ではあったが、教養のほとんどを独学で蓄積していた。

中国的な反乱のスタイルに拘り、農村にて短期間の恐怖現象を作り出すべきとした。共産主義の平等な社会を中国思想の大同(天下を一つの家と見做す平等思想)と解釈し、人民公社は屯田制、共産主義革命は水滸伝の豪傑による蜂起と理解した。

ポル・ポト:
かつては大帝国を築きながら、タイやヴェトナムに圧迫されるカンボジア人の民族主義がポル・ポトを生み出したとする。

ポル・ポトの一族は、従姉が皇太子の男児を出産するなど権力との距離が近く、その縁でポル・ポトは上座部仏教の寺院や木工作業の専門学校、フランス留学等の教育を受ける。

フランス共産党のスターリン主義の影響により、都市人民を農村で再教育する等の政策を行う。中国・北朝鮮式の共産主義を本家以上に真面目に実践した結果、悲劇が生じた。

革命の中心に行政経験者はほとんど存在しないため、正しい理想を掲げれば、現実はついてくると考えた?

ニヤゾフ:
人口520万人程度のトルクメニスタンで、1991年から2006年に没するまで実権を握る。

1940年にトルクメニスタン最大部族のテケ族に生まれ、1962年にはソヴェエト連邦共産党に入党し、レニングラード工科大学に進学する。1970年にトルクメニスタン共産党中央委員会へメンバー入りすると、1980年にはアシュガバート市共産党委員会第一書記に就任。

これらの政治経験のためか、2007年のトルクメニスタンの一人当たりGDPは約5000ドルとそれほど悪くない。ソヴィエト連邦以外の政治体制を知らないため、自身への個人崇拝を行う小さいソヴィエト連邦を作り出した?

トルクメニスタンでは、20世紀初めまで部族社会が維持されており、権力とは共産主義政権か遊牧政権のイメージしかない。ニヤゾフも族長的鷹揚で石油資源からの富を分配した。

リー・クアンユー:
1923年に生まれる。当初は現地人が通う華人小学校に入学するが、華語が理解出来なかったため、英語系のテロク・クラウ小学校に編入する。後にラッフルズ学院中等部に入学し、トップの成績となる。

1942年にシンガポールが日本に占領され、天皇が無限の忠誠を捧げる存在として一夜にして至高の存在と設定された事が強烈な印象になったとする。

さらに当時のシンガポール住民の大部分が日本を恨んでいたが、圧倒的な力の統治に対して実際に反抗する者がほとんど存在しない事実が、権力の意味を考えさせたらしい。

後にマレーや華僑の伝統文化を希薄化させた英語圏の国としてシンガポールを設計していく。

フセイン:
1937年に生まれる。育ての父である叔父ハイルッラーのアラブ民族主義、愛国主義の影響を受けたとする。

青年時代にはバグダードのストリート・ギャングの頭目となり、後にはバアス党の秘密警察の拷問担当者となる。

カダフィ:
1942年にリビア北中部のベドウィンの一家に生まれる。遊牧民族の口承文学として、反イタリア戦争の英雄アブー・ムニールの伝説を好んだとする。

イスラーム学校で教育を受け、エジプトのナセル大統領の影響が強かったとする。

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