『炎帝 花山』/『鹿鳴館のドラクラ』

読んだ本の感想。

萩耿介先生の本を読んでいる。

『炎帝 花山』と『鹿鳴館のドラクラ』は二冊とも、君主の解脱 = 人間社会の柵からの脱却がテーマになっており、死によって救済されるという物語だと思う。

強大な外敵が存在せず、血統によって権威が保証された花山天皇と、簒奪者であるために殺さなくては権力を維持出来ないヴラドの対比が成り立つ。

<炎帝 花山>
2009年12月11日 第一刷。



以下は、Wikipediaの「花山天皇」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E5%B1%B1%E5%A4%A9%E7%9A%87

花山天皇の一生と死後を、安和二年(969年)~寛弘5年(1008年)まで描く。物語の要所で火事や焼身が発生する。

<反抗期>
花山天皇が生れて即位後しばらくするまで(~985年頃)。姉の望まぬ結婚や、即位後の改革が上手くいかない事等に失望し出家する。花山天皇の権威は伝統によって担保されるものであるので、伝統に逆らえない。制度改革等は評価されず、陰陽道に従った改元等を実行せねばならない。当時の政府は、実際的な役割を期待されていない。

<求道期>
986年頃、お気に入りの女御 藤原忯子の死を切っ掛けに出家するが、直後に出家を勧めた僧 厳久と藤原兼家の結託を知る。厳久の目的は、自分の出世だけでなく、奔放な花山天皇を仏教によって救うためでもあったらしい。

比叡山や熊野の修業でも浄土を覚える事は出来ず、仏道へ身を捧げる証明としての焼身自殺を行うが、死にきれない。

<転換期>
995年頃~。叔母の理子や中務、その娘の平子と愛人関係になる。死後の極楽浄土を希求する仏道から、一切の肯定をする仏道への転換(理趣経の影響?)。

愚連隊である紅蓮集を組織し、人間を殺す事で解脱(度脱)しようとするが殺す事が出来ない。

<そして死へ>
長保四年(1002年)に、書写山で性空上人と会う。解脱のために他者に殺される提案?源氏物語を読む。1008年には厳久に毒殺される。死後、理子に源氏物語の写しを届けさせ、死後の白を伝えるべく、終章に「見えこぬ魂の行方たづねよ」という下の句を付け足す(上の句は、夢にも現れない紫の上の魂を探して欲しいという源氏物語に登場する句であるらしい)。

【登場人物】
花山天皇(師貞、入覚):
主人公。物狂いとされる冷泉天皇の息子。

厳久(943年~1008年?):
比叡山延暦寺の美貌の僧。藤原兼家とともに花山天皇を騙して出家させるが、やがて花山天皇に魅入られ、堕落していく。

義懐:
花山天皇の叔父。花山天皇に付き添って出家し、息子が花山天皇の手下になるなど、奇妙な忠誠心を発揮する。

理子:
花山天皇の母 懐子の異母姉妹。972年時点で、花山天皇の祖父 伊尹の葬儀に出席している事から、花山天皇よりかなり年上らしい。花山天皇と、その9歳下の弟 為尊親王の愛人になる。

P413:
日本書紀などの歴史書はこの世の一面しか書かれていないと非難し、これらの物語にこそ人々の営みが記されているという。たいした自信ではないか。内裏の女房達がこぞって筆写し、読んでいるのは、暇をもてあましているからではない。識りたいのだ。深く。人について。一方、男は人を知っても仕方がないと思っている。男にとって人とは知るべき対象ではなく、この世の仕組みの中で自ら生きるべきものだからだ。生きることに忙しければ物語など読む筈がない。

<鹿鳴館のドラクラ>
2015年10月25日 初版発行。



以下は、Wikipediaの「ヴラド・ツェペシュ」の記事へのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A5

明治一七年(1884年)の日本に、中世欧州(1459年~1475年)からブラド公が吸血鬼として蘇る。鹿鳴館に飾られている絵と接する事で、成仏する?

当時の日本と、中世のワラキアは外国の脅威にさらされている共通点があるらしい。殺人に躊躇いがあり、周囲からの忠誠を疑わない花山天皇とヴラド公は大分違う。

【登場人物】
ヴラド公:
中世ワラキアの王。明治の日本に甦るが、記憶を失っており、寧子等との交流によって記憶を取り戻していく。

イリシュ:
ヴラド公の部下の大蔵卿。ヴラド公に同性愛的忠誠を持ち、彼を守って死ぬ。水晶玉を使用した占いを得意とする。

ベルナデッド:
スナゴヴ修道院の尼僧。太政官ウルフィラの妹。1459年時点で30代半ばだが美貌の持主。死後、ヴラド公にアダムとイヴの絵を寄贈し、表を別の絵で隠す。

寧子:
外務省に勤務する父を持ち、薩摩閥の警察官僚 志郎(36歳?)の妻。志郎は、かつて恋人だった悠二(西南戦争にて死亡)の兄。女学校に通う妹 時子がいる。

*******************

『炎帝 花山』と『鹿鳴館のドラクラ』は、同じ個性を持った人物達が、異なる役柄で登場する話だと思う。

花山天皇 = ヴラド、厳久 = ベルナデッド、義懐 = イリシュ、理子 = 寧子、藤原兼家 = メフメト(オスマン帝国スルタン)、藤原道長 = マチュアシュ(ハンガリー王)等。

作品内で説明されないベルナデッドの内面描写は、厳久の内面描写と同一であり、イリシュの水晶占いによって尼僧の姿が映ったのは、作者の当初の構想ではベルナデッドの奸計でヴラドが陥れられたからだと思う。

その他の登場人物達の内面も二作品を照らし合わせる事によって浮き彫りになる。

その基本は模倣だ。

『鹿鳴館のドラクラ』において警察官僚 志郎は弟の恋人だった寧子に求婚するが、『炎帝 花山』では花山天皇の弟 為尊親王が兄の愛人である理子に求愛する。ヴラドは寧子の妹である時子を最初に魅了し、その模倣を促す事で寧子を篭絡していく。

登場人物達の「愛」は近親者の模倣によって成り立っている。

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