大東亜の矛

読んだ本の感想。

林譲治著。

以下は、『鈴木康士 - ELEGANT - So-net』へのリンク。

http://www016.upp.so-net.ne.jp/elegant/

以下、ネタバレ含む。

すっきりしない終わり方だった。弾魔や羅呑とは結局なんだったのか?

【あらすじ】
第二次世界大戦中の日本に、パラレルワールドの日本(倭国)から空母二隻(亜山、偽山)が漂着する。空母には25人の船員が乗船していたが、一人を残して死亡して発見される。残された一人である導姫を乗船させる事で、空母は卓越した戦闘力を発揮する。

ガラパゴス沖で戦闘活動を行う導姫は、日本国内で潜伏活動をしていた倭国の魁姫の勢力も吸収し、パラレルワールドから渡来した怪物 弾魔を殺害し、人工知能搭載の無人機 羅呑も破壊する。

導姫、魁姫等の思惑は、日本と倭国の異次元通路を破壊し、倭国の日本への拡張を止める事にあった。

【登場人物】
住田隼夫:
憲兵中佐(後に大佐)。日本国内で活動している倭国の秘密組織を追い、魁姫と接触する。日本敗戦後は住田電機という会社を創設する。

前川靖則:
海軍中佐。導姫に気に入られ、パラレルワールドへ行く。

導姫:
倭国の女王候補。パラレルワールドから二隻の空母を伴って日本に現れる。

魁姫:
倭国の宰相候補。パラレルワールドから精子と卵子のみを日本に送られ、日本での工作活動を管轄するために日本人として生まれる。

執権:
倭国の宰相代理。魁姫の遺伝上の父親。羅呑や轟天を日本に送り込んだらしい。

ジャイナ:
パラレルワールドのレジスタンス。倭国の植民支配からの脱却を目指しているらしい。平仮名以外の文字を使用出来ず、抽象的思考が苦手。

<倭国の政治体制>
パレレルワールドにあって東半球(10億人)を支配する。植民地を支配するために、被支配民族に表意文字を教えない等の愚民政策を採用しているが、国家間での競争に勝つために領内の高度情報化を進めた結果、民族主義運動も盛んになっている。倭国人は二億人しかいないため、人材不足が問題化。

八人の女王候補(導姫)を盾、それぞれの下に宰相候補となる魁姫が付く。八人が四人になり、最後に二人の導姫で女王を争う。複数の有力者達を二大陣営にまで収斂させ、利害関係を単純化させる意味がある。

<倭国による日本植民計画>
三十年ほど前から倭国は日本を観察していた。当初、パラレルワールドから昆虫よりも大きい動物を移送する事は不可能であり、倭国から持ち込んだ受精卵を日本人女性の体内で着床させる事で、一万人の倭国人を日本に誕生させた。

植民計画は持ち出しの方が多いが、日本の満州国と同様に、建設した拠点を放棄し、再度立ち上げる費用が膨大であるために、止める事が出来なくなっていた。

日本の資源は、倭国人と酷似した日本人の遺伝子である。本国で減少している倭国人を日本から調達する事が倭国の目的。

人間を倭国から送る技術が確立した段階で、植民地を無理に拡大する懸念や、日本人から憎まれる可能性等を考慮し、パラレルワールドとの門を破壊する思惑が生まれる。

-ソロモン諸島の激闘-
2012年9月30日 第1刷発行。



昭和十七年六月、ミッドワー海戦での敗北後の日本軍が二隻の空母を発見する。空母は日本の技術水準を遥かに超える技術で作られており、艦内での唯一の生存者 導姫を乗船させる事で全能力を発揮する。

同時期にガタルカナル沖では、竜に似た怪物 弾魔が日米の艦隊を無差別に攻撃している。

弾魔はパラレルワールドから米国艦隊を攻撃する目的で移動させられた怪物だが、途中で日本潜水艦に攻撃された事で、日米両方を敵と見るようになった。弾魔は、魁姫と住田の雷撃によって倒される。

⇒何者かが、日本を勝利させるために米国艦隊だけを攻撃する洋調整した弾魔を太平洋に放した事になっており、P127で導姫は弾魔を退治するためにパラレルワールドからやって来た?と言っている?しかし、後にその設定が無かった事になっているように思える。

-ニューギニア航空戦-
2013年3月30日 第1刷発行。



昭和十七年九月、パラレルワールドから高性能航空機 羅呑が渡来し、導姫を攻撃する。日本国内では、憲兵隊によって富士山麓の倭国基地が見つかる。日本軍は倭国の技術を使用して米国との戦闘に勝利しても、補給の問題から勝ちきれずにいた。

魁姫は、富士山麓の倭国基地に潜入した憲兵隊員 小椋をラバウルに呼び寄せる名目で、富士山から旅客機を呼び寄せ、羅呑と一緒に撃墜する。

⇒ここで、魁姫が富士山麓の倭国基地の秘密を守るために、味方と一緒に小椋を殺そうとした事になっているが、その設定が後に無かった事になっているように思える。

小椋は撃墜された後も生きており、羅呑に搭乗していたレジスタンスのジャイナと日本に向かう。

P84~P87:
我々の兵器が高性能であるのは、部品の信頼性が高いからです。兵器を構成する複雑な機構が、すべて高い信頼性を発揮できる―だからこそ高性能なのです。
(中略)
日本の工業力が欧米列強と比較して劣っているのは何かご存じですか?
それは欧米に比べて極端に高い中小企業の比率です。労働者1000人以上の工場は日本全体でわずか0.三パーセントにすぎません。
それが工業生産額の三割弱を生産し、労働者全体の二割を占めているにせよ、工業生産の七割と、労働者の八割は中小企業です。
もちろん中小企業の技術水準が高ければ問題ありません。ですが、現実は違う。中小企業のうち、万単位の企業が機械力を有していない。簡単な道具だけで部品加工を行っている。
(中略)
日本にも真空管の規格はあります。しかし、それはかなり杜撰なもの。大きさと電極の寸法を指示した程度にすぎない。電極の材質の等級や製造手法の共通化などは何もない。大きな工場でも、この有り様です。
電子技術ではなく、国の根幹となる鉄はどうか?日本で一日の生産量が十三万貫―つまり五00トン以上の溶鉱炉は二基にすぎません。アメリカには一九二九年の時点でも一六三基もある。
つまり大工場に集中したとしても、抜本的な改革が必要になる。
そして先にも述べましたように、日本は中小企業の比率が高い。大工場も部品を傘下の中小企業に依存している現状では、大企業の生産手法を改善するためには、中小企業の改善も不可避なのです。
この状態で、誰に技術を伝授しろと?問題が日本側にあるのは明らかです

-太平洋封鎖戦-
2013年8月30日 第1刷発行。



昭和十七年十月、パラレルワールドから水中軍船 轟天が送り込まれる。その目的はテロの生き証人であるジャイナの殺害であるが、移送中の船を攻撃中に、倭国の武器によって轟天は撃沈される。

⇒ここで、ジャイナを操る黒幕の存在が示唆される。正体を知られる事を恐れてジャイナを殺害するとか、助けに来るとかしているが、最後まで謎のまま終わった気がする

南洋でも作戦中に、導姫の操船する亜山と偽山が消息を絶つ。導姫と魁姫、執権の目的は、倭国への日本植民を止める事であり、そのために南洋と富士山にあるパラレルワールドへの門を破壊する。

現状でも植民地維持に手を焼いている倭国が、パラレルワールドまで手を広げる事は自殺行為という判断。多くの人間が納得出来る停止理由のために、謀反人による策謀という建前が必要だったのだとか。

⇒色々と矛盾している気がする。弾魔は何だったの?

結局、魁姫が倭国にて導姫となり、導姫は現世界で集落を作り、二十年後に前川と倭国に帰還したらしい。

P78~P79:
倭国語には、日本語と同様にひらがなのような表音文字と、漢字のような表意文字があった。
そして表意文字が使えるのは倭国人だけで、植民地人は表音文字しか学校で教わらない。
同音異義語が多いこともあり、植民地人は複雑な概念を表現する手段を著しく制約されているらしい。
(中略)
だからジャイナには『国』と『故郷』と『邦』の区別がない。すべて『くに』なのだ。そのため彼女の『そこくのどくりつ』とは、独立国を作ることでなく、概念としては倭国から派遣された地方の行政官を追い出し、自分たちで村を維持するようなものらしい。
しかも、彼女たちの中で行政官は行政を行うのでなく、命令を下す存在であり、地方行政という概念はない。
社会を維持する地方政府とか行政機関は単なる命令者でしかなく、その内部の機構については彼女は何も知らなかった。
(中略)
占領したことはあったものの、行政機関を運用できる人材がいないために、独立運動は自壊したという。

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:ABCDEFG
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード