有機農業コツの科学

読んだ本の感想。

西村和雄著。2004年11月1日 初版第1刷発行。



第一章 生きている土
1 土とはなにか
地球では岩石が風化して土になる。雨の中の炭酸ガスから遊離した水素イオンから、岩石からカリウムやカルシウム等を溶かし出す。
植物も根から養分を吸収する時に水素イオンを放出する。植物は根から吸収した養分を上に運び、葉で光合成を行い、葉が落ちると生物が葉を分解して養分を放出する。これを森林の自己施肥機能と呼ぶ。

2 土の団粒構造をチェック
団粒構造:
土の粒子が、微生物の粘液や分解された有機物、糞と一緒にくっつき(団粒)、隙間だらけの塊が出来た状態。隙間の中に水分を溜める事が出来る。

団粒構造の中には様々な微生物がおり、隙間が多くなる事で土が軽くなり、農作業が楽になる。

<団粒構造の見分け方>
①ペットボトルの用意
丸よりは四角いものの方が良い。
②土の採取
③ペットボトルに土を入れる
ペットボトルに口から数㎝を残して水を入れ、土をその中に落とし込む。スプーン三杯ほど入れたら、口の上まで水が盛り上がるように水を追加する。
④ペットボトルを引っ繰り返す
ペットボトルに蓋をしてペットボトルを引っ繰り返す。土が沈んだら、再度、引っ繰り返し、それを五回繰り返す。
⑤判定
ペットボトルの反対側に新聞をあて、何秒後に見出し文字が見えるか計測する。30秒後までに見えたら合格。団粒構造が発達した土は濁らない。

3 土を育てるには
土作りには有機物が必要であるが、窒素が無いと微生物が体を作れないため、有機物を分解出来ない。そのため、窒素が少ない有機物だと微生物が作物の分まで窒素を奪ってしまう。

さらに有機物によって分解速度が違う。ムギワラが分解して窒素が出るまで7年~8年、イナワラだと2年、おがくずだと30年は必要。

4 育土
著者の経験。

マメ科植物(セスバニア、クロタラリア)を播種する。両者ともに10アールあたり12kgほどの窒素固定能力を持つ。セスバニアの根は背丈と同じくらい潜るため水はけが良くなる。

他にヘアリービッチやソルゴー等。

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動物は体の維持に骨格を必要とするため、リンとカルシウムからリン酸カルシウムを作り出し、骨の材料とする。植物は受光体制を整えるために多糖類を基本構成要素とする高分子(セルロース、ヘミセルロース)で体制を構築する。

そのため、リンを不必要に投与すると吸収しきれずに土壌酸度が上昇する可能性がある。土壌酸度が上昇すると、ホウ素やカルシウムの不溶化をもたらして植物の体制を軟弱にする。

5 有機農業に必要な二つの法則
第一の法則:木は木にかえし、草は草にかえす
果樹のようにゆっくり育つ永年植物には、ゆっくり分解する有機物を与える。

第二の法則:生き物には存在する意味がある。
様々な有機物を入れるよう工夫する。

6 育土の具体例
草生栽培:
草を利用して土を育てる。マメ科植物(深根性)とイネ科植物(浅根性)は相性が良いらしい。マメ科植物が作った窒素を、イネ科植物がヒゲ根を利用して鋤き込む。

注意点は、マメ科植物でもそだつには養分が必要であり、根粒菌が窒素固定をするのに必要なエネルギーは、マメ科植物が光合成で作るエネルギーの20%程度である事。

草を大きくし過ぎると分解し難くなるため、株本から10㎝ほど残して刈る。原則は刈敷きで、土の中に鋤き込むと微生物が分解し過ぎて酸素不足になるかもしれない。

以下の注意点。

①蔓延らせない
牧草は適度に刈る事。
②根を切る
数年おきに牧草の根を切る。牧草の根がマット状になると土中に水が入り難くなる。
③水はけ
水はけが良過ぎるの内では、深根性のマメ科植物によって、イネ科植物が水不足になるかもしれない。
④ミミズ
土壌中にミミズが増えると土竜や鼠が穴を掘って、苗が枯れてしまう。5年に一回は全面を耕起して土竜退治が必要かもしれない。共存する方法として牧草を生やす場所と作物を植える場所を交互に使い分け、作物を植える場所は刈敷だけを行う。すると牧草を生やす場所の方が有機物が多いので、土竜が移動する?

*************

混作として、防虫のために大根と葱を一緒に育てる方法や、ニンニクを薔薇の根本に植える方法があるらしい。

トマト、ナス、スイカ、エンドウ等は、数年間他の作物を植えないと、同じ土地では育たない。輪作のヒントはマメ科植物を挟む事。じゃが芋の後作に白菜を植えて、養分吸収力が弱いじゃが芋が吸収し損なった養分を、白菜のように根系を発達させて養分を吸収する植物で吸収させる方法。

土壌中に養分が残存している状況も良くないため、ヒマワリやソバに養分を再吸収させて、有機物の形にし、土壌に戻す事で作物が吸収し易い形にする方法もある。

7 土が育つまで
有機物の分解には、炭素と窒素の比率(C/N比)が関係している。窒素が多い有機物は分解がはやい。

8 緑肥植物
マメ科やイネ科植物を肥料として活用する。

9 ボカシ肥のつくりかたと使いかた(農業者編)
効果がすぐに出る肥料。

有機物を混ぜて発酵材料と合わせて作る。

10 ボカシ肥のつくりかたと使いかた(家庭編)
生ごみを堆肥化するには、乾燥した材料と混ぜて水分を取る必要がある。発酵補助材料には米糠等を使う。他に油粕を混ぜれば成功率は上がる(比率は、1:1:1)。

以下は詳しい作り方。

【材料】
①油粕、米糠を米袋二杯分
米糠はリンの含量が多いので、全体の二割に留める。植物は動物ほどカルリスムやリンを必要としない。
②微生物
落ち葉の下等の豊かな土をスコップ二杯。10l~20lのバケツに入れて泥水にする。
③蓋付バケツ複数
④ポリ袋
⑤セメントを練る際に使用する舟

【作り方】
①混合
油粕や米糠を4:1の割合で50kgを目安として混ぜる。出来上がりを手で握った時に水が滴り落ちない程度(水分含有量40%)。
②発酵
混ぜた材料を蓋付のバケツに入れる(空気を抜く)。バケツの上端から10㎝ほどを残して満杯にし、空いた上部に水を入れたポリ袋を置いて堆肥が空気に触れないようにする。
③出来上がり
堆肥の表面に黴が出れば出来上がり。堆肥の賞味期限は三か月程度。

第二章 植物の栄養
1 栄養のバランス
作物の必須栄養素は16種類ある。

2 植物の必須栄養素
(1)炭素・酸素・水素
植物の骨格を作る。葉から吸収した炭酸ガスを、分解した自ら得た水素で還元し、糖を作る。水を分解した時に発生した酸素は葉から放出する。

(2)窒素
骨格の一部。ただし、植物は窒素をあるだけ吸収してしまうので、栄養過多だと葉や茎が成長し過ぎる分、開花が遅れる事がある。

(3)リン
細胞膜や遺伝子の核酸等に使用される。リンが不足すると遺伝情報を保存するための部品が足りなくなり、発育が悪くなる。リン(陰イオン)が過剰の場合、陽イオンの鉄や亜鉛と結合し、陽イオンの欠乏を引き起こす事がある。リンを多量に含む鶏糞を多用する農地では、カルシウムがあるにも関わらず、不足症状が発生する事があるらしい。

(4)カリウム
細胞液のイオン濃度を保つ。酵素が立体構造を維持して化学反応を触媒として機能する。

(5)マグネシウム
葉緑素に使用する。葉が緑色である理由。

(6)カルシウム
細胞壁を固めるペクチンの成分の一つ。

(7)イオウ
アミノ酸成分の一つ。過剰の場合、硫化水素となって食物を傷める。

(8)塩素
カリウムだけでは細胞液が強アルカリ性になるため、塩化物イオンでバランスをとる。

(9)鉄・マンガン・亜鉛・銅・モリブデン
細胞内で有機物に作用する。特に鉄の欠乏が発生し易いとする。

第三章 作物づくりのコツ
1 作物をうまく育てるには?
作物の故郷を知る事が大切。

2 ナス科
ナス:
蒸し暑いモンスーン地域が原産地。高温多湿を好む。ただし、排水が良い場所を好む。

トマト:
南米の高原原産。日本には1700年頃に渡来。昼は照り付け、夜は冷え込み、雨が降り難い場所(赤道に近い高原)を好む。濃い土壌養分を少ない水で吸い上げるが、日本ではハウス栽培でしかこうした条件を実現出来ないらしい。

トウガラシ:
中南米の熱帯地域原産。乾燥と過湿に弱い。

ジャガイモ:
南米のアンデス高原原産。日本へは1600年頃にオランダ船が持ち込んだ。昼間は20℃、夜間は7℃くらいが生育の適温。温暖地では春秋の涼しい期間だけ栽培可能。芋のように澱粉を作る作物は多量のカリウムを必要とする。

3 ネギ類(ユリ科)
ネギ:
中国西部原産?乾燥地帯で水分が蒸散し難いように円柱状になった。養分吸収が得意でないため多量の肥料が必要。

タマネギ:
北西インド辺りが原産地。エジプトから欧州に伝わり、明治期に米国から日本に渡来。

ニラ:
秋から冬にかけて休眠する。耐寒、耐暑性、いずれも強い。植えたまま何回か刈り取れるが、三年ほどたつと根系が混んで株が弱まるためアブラムシが発生し易くなる。二年を目途に掘り下げ、古い根を落としてから植え直す。

ラッキョウ:
吸肥力が強いので、肥沃な土地では大きくなり過ぎて分球しない。砂地が栽培に適している。

ニンニク:
0℃~15℃の低温に一か月以上あうと、側球する。

4 アブラナ科
ダイコン:
中央アジア原産?古代ギリシア時代には食べられていたらしい。冷涼な気候を好む。

カブ:
日本書紀にも登場する。水溶性カルシウムが多く、牛乳以外のカルシウム補給源。

キャベツ:
地中海沿岸が原産地。石灰岩が多い土地を好む。日本には明治初期に渡来。カリウムを多く含むため、便通を良くする効能がある。

ハクサイ:
原産地は北東欧州、ロシア、トルコ、イラン高原あたりとされる。シルクロード経由で中国に渡り、そこで様々な品種が生れた。キャベツよりも冷涼な気候を好む。

ツケナ類:
タカナは南方アジア、他は東アジア。日本での中心は京都。

5 ウリ科
キュウリ:
ヒマラヤ山脈の南麓が原産地。根付きを良くするために生殖生長を遅らせて栄養生長を充分に行う必要がある。成長調整のために花芽を摘む。

カボチャ:
以下の三種類。

①日本カボチャ
中米原産。暑さに強い。
②西洋カボチャ
南米高地原産。冷涼を好む。
③ペポカボチャ
メキシコ高冷地原産。

根系が発達するため、養分を多く吸収する。

6 その他の野菜三種
ホウレンソウ:
アフガニスタン周辺の中央アジアが原産地。高温や酸性土壌を嫌う。著者は雨で流され易い粉の石灰でなく、カキ殻等の固形物で土壌をアルカリ性にする事を推奨している。

ニンジン:
アフガニスタンの南側、ヒンドゥクシュ山麓が原産地。中央アジアから元朝を通じて日本に入った種と、中近東からスペインを通じて日本に入った種がある。

イチゴ:
新大陸出身。

7 マメ科
窒素固定する特徴があるが、生育初期には養分を与える必要がある。草丈が50㎝になるまで80日ほどかかるため、他の草との競争に負ける可能性があるので、最初の一か月間は除草する。

8 本ものの野菜
栄養価の高い野菜の見分け方等。

9 種の保存方法
保存用の種は無肥料で育てる。栄養が少ないと、種に多くの養分がいく。

著者は瓶の中に豆を一杯に入れて栓をして保存する方法を推奨する。種が呼吸して炭酸ガスが出て、その休眠作用で虫も眠る。

10 自然観察が役に立つ
野草や虫から天候を予測する。

江戸時代には寒試しという技法があり、節分の初め頃に、村人が天候や気温の水位、降水を記録して、一年間の転校を予測した。

第四章 病気、虫について
病害虫を避けるには、作物を健康な状態に保つ事だという。

トマトと大豆の混作では、深根性の大豆が深い場所から水を吸収するためにトマトが好む乾いた土壌になり、トマトが出す匂いで大豆の防虫になるらしい。

第五章 ぐうたらの独り言
化石燃料で成立している現代農業への疑問等。

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