読書を仕事につなげる技術

読んだ本の感想。

山口周著。2015年10月21日 第1刷発行。



【著者の略歴】
20代を大手広告代理店、32歳から外資系戦略コンサルティングファームで過ごした後、40代に入ってから組織開発専門の外資系コンサルティングファームで仕事をしている(1970年生まれ)。しかし、大学で学んだのは美術史であり、経営学は独学で学んだらしい

第1章 「仕事につなげる読書」6つの原則
原則1 成果を出すには「2種類の読書」が必要
以下の2種類。

①ビジネスの基礎体力をつけるためのビジネス書
名著を繰り返し読み、読書ノートはとらない
②個性を形成するための教養に関連する本
雑多な本を幅広く読み、読んだら読書ノートをとる

ビジネス書は規定演技であるが、差別化には教養を用いる。ビジネス書は名著とされる本の数が少ないので、狭い範囲を繰り返し読む事が出来る。教養書は幅広いため、定番を全て読む事は出来ない。

原則2 本は「2割だけ」読めばいい
目次やまとめを読んで、全て読む必要は無い。

原則3 読者は「株式投資」と考える
読書は投資行為であり、時間に値しない本を全て読むのは時間の無駄。

原則4 「忘れる」ことを前提に読む
記憶に頼らず、読んだ内容を記録する。

原則5 5冊読むより「1冊を5回」読む
1回読んだだけでは必ず忘れる。広く浅く読んで、価値ある本を深く読む。パーソナルコンピューターの概念を考えたアラン・ケイは、そのために『グーテンベルクの銀河系』という本を半年間読み返したらしい。



原則6 読書の「アイドルタイム」を極小化せよ
10冊以上の本を同時進行で読む。読みかけの本が沢山されば、気分に合う本を常に読んでいられる。

第2章 ビジネス書は「これだけ」読めばいい
著者は外資系コンサルティングファームに転職後、200冊弱の本を読了したが、その1割の読書でも9割の成果を出せたという。

重要なのは古典であり、著者の思考過程を追体験する事で考え方を学ぶ事が出来るし、新刊のビジネス書に書いてある事のほとんどは古典に書いてある。

第3章 古典には読む「順番」がある
著者はビジネス書の読書ノートを作らない。すぐに使う道具は倉庫にしまわない、良書のメッセージは単純なので忘れない。ただし、名著は偏った考え方を採用している事が多いため、概説書を最初に読んでおいた方が良い。

例えば、経営戦略の大家であるM.E.ポーターは「企業の収益性は状況によって決まる」というスタンスで、J.Bバーニーの「企業の収益性は企業の能力によって決まる」という意見と対立する。両方とも極論であるため、最初に様々な考え方を俯瞰的に持った上で、一部の思想を掘り下げる意識を持つべき。

第4章 好きな本を読んで「ライバルと差別化」する
仕事環境の変化に、ビジネス書で得られる知識はほとんど役立たない。教養書の示唆する人間の性や組織の特質がヒントになるとする。

以下の7つのカテゴリー。

①哲学
構造主義以降の現代思想は経営コンセプトにも影響している。BCGが一時期提唱していたデコンストラクションは、哲学者ジャック・デリダが提唱した「脱構築」がもとになっている。

②歴史
③心理学
④医学・生理学・脳科学
⑤工学
著者が作成したプロジェクトマネジメントのマニュアルは、宮田秀明氏(東大名誉教授、アメリカンズカップ日本艇の元テクニカルディレクター)のシステム工学の考え方が基になっているらしい。

⑥生物学
著者の『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』は、蟻の巣の運営方法等を参考にしている?



⑦文化人類学

面白いと思えるテーマについて読んでいく。それは自分の興味の方向性を探る試みでもある。全てに詳しくなる必要は無い。知的生産は複数人のチームで行う。

第5章 情報の「イケス」をつくれ
教養書を仕事につなげるために抽象化を行う。細かい要素を捨てて基本的な仕組みを抜き出す。

以下は抽象化の例。

事実:
ルネサンス期において、多くの建築物は行政組織で無くパトロンがスポンサーになっていた。

抽象化:
歴史的に偉大な作品は、会議よりも審美眼を持った単独者の意思決定によって生まれる?



以下は、情報のイケスを作るための読書技術。

【1回目 線を引く】
気になった文章に線を引く。

【2回目 5つ選ぶ】
線を引いた箇所に優先順位を付けて、5つ選抜する。

【3回目 転記する】
選抜した文章を転記し、仕事への示唆を書き出す。記録にはエバーノートが最適とする。

第6章 「書店を散歩する」技術
著者は、月に1回は書店を訪れ、2時間程度はビジネス書以外のフロアも回るらしい。



第7章 「本棚」で読書を仕事につなげる
読みかけの本はタワー状に積んでおき、鞄の中、本棚へと回す。そして、積んでいる本で半年間に一度も読まなかった本は整理する。

以下は、著者の推奨する読書マンダラ。

〇超基本の6冊



全体像を知るための本。グロービスシリーズを全て読む必要は無い。



ビジネス用語の基礎知識。



具体的計算を省き、思想を紹介。



会計を通じて経営を見る。



マッキンゼー社内のトレーニング資料に近いため、本書を読めば他のマッキンゼー流を読む必要は無い。



分析結果の表現方法等

〇経営戦略、基本の4冊



顧客要望にフォーカスする事でイノベーションが阻害される事を示す。



結論を導くための論理展開が参考になるらしい。



上記と同様。



様々な経営論の流派の偏向を解説。

〇経営戦略、応用の4冊



『経営戦略の思考法』をさらに詳細化。



経済学と経営学をつなぐ事を目指した本。経営をミクロ経済学の枠組みで説明する。紹介された本の中で最も知的体力を要求するらしい。



M.Eポーターの限界を理解する本。



当たり前を確認する本。ビジネスにおいては前例や欲望による意思決定により、当たり前が蔑ろにされる事がある。

〇マーケティング、基本の3冊



新規事業立ち上げ時の覚悟も持ち方。溝(キャズム)をいかにして乗り越えるか。



イノベーション普及の条件。



マーケティングとは、顧客の認識への働きかけ。

〇マーケティング、応用の4冊



ブランド論を言語化する方法。



人間は他人との差異を示す記号を手にするために消費する。



ブランドの育て方。



アイデアを生み出す基本的ルール。

〇財務、会計、基本の3冊



京セラの管理会計システムの背後にある思想。



ファイナンスの思想。



百科事典的に個別ポイントについて、定番としてどのように扱っているか知るために読む本らしい。

〇財務、会計、応用の4冊



「選択しない」という選択を価値計算する視点。



企業買収の実務に関わらない場合、百科事典的に読むべきとする。



1990年代以降の米国企業の採点基準。



「金利はプラスである」という前提が脆い事を示す。

〇組織、基本の5冊



意思決定の品質は空気で決まるとする。



形式知と暗黙知の枠組みを初めて提示した本。組織内で知恵が生み出され、共有され、伝承されていく過程をモデル化。



組織は「良い計画」よりも「良い人」が大事とする。経営戦略は予定調和しないので、優秀な人を集めて走り始めたら計画は創発的に生まれるとする。



組織論に関する辞典。必要に応じて関連項目を読むべきとする。



「怖いから、やりたくないから」組織が変われないとする。

〇組織、応用の6冊



企業組織内部の活動をミクロ経済学で整理する本。関心のある記事をつまみ食いし、人の営みという具象を抽象化して捉える視点を学べる。



自己を認識するための方法論。



事業部制導入時の経緯に関する事例研究。



空気と組織のパフォーマンスについて意識的になる。



企業文化を変えようとする取り組みは必ず失敗すると主張する。



土方歳三の組織運営の事例研究。

〇リーダーシップ、基本の3冊



規律を重んじるエースとペテン師が争い、後者が勝利した理由を探る。



スタッフと管理職の仕事は違うのに、多くのスタッフは管理職になっても方法を変えない。それが指示命令型指導者発生の理由。管理職がやるべき仕事を明示する。



難局にある組織を引っ張る話。

〇リーダーシップ、応用の5冊



人を集め鼓舞する指導者。



経営について哲学的に考える。



指導者を演じる方法。



スティーブ・ジョブズがスタッフと接した記録。恐れられ、避けられ、憎まれる事も必要かもしれない。



忌避される指導者像。

〇意思決定、基本の4冊



意思決定を経済性にフォーカスした場合、数値化が可能になるが限界もある。



プロ野球球団のスカウトに数学を活用。



ゲーム理論について。



失敗事例から、意思決定するために組織が満たすべき条件を探る。

〇意思決定、応用の3冊



火事を消す能力で無く、煙を見つける能力を備える。



シナリオ・プランニングの限界。分かり易さを提供出来るが、依存するのは危ない。



統計リテラシーについて。

〇ゼネラルマネジメント、基本の4冊



ヤマト運輸創始者の、自分で考える経営態度。



企業文化が変え難いものになっていく過程。



リーダーシップは言葉が全て。明快な目標を立てて繰り返し語る。



南極越冬等の体験。

〇ゼネラルマネジメント、応用の2冊



GM中興の祖の体験。



インテル創業者の体験

〇その他(経済学/心理学/社会学等)、基本の4冊



経済学に関する俯瞰図。特に第一章のイントロダクションが経済学的思考を知るために有用とする。経済学の制約等。



人間の判断が歪められる事について。



人間の持つ可能性への希望。



ネットワーク理論。

〇その他(経済学/心理学/社会学等)、応用の7冊



功利主義と道徳倫理のどちらの利得が大きいか数学的解を提供する。



人間の認知バイアスについて。



夢中になるための条件。



意欲を高める時、利得も罰も有効でないとする。



経済成長のために必要な事。



飢饉は食料生産でなく、分配によって発生すると主張。



資本主義が発達した社会はプロテスタントとする。

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