世界の辺境とハードボイルド室町時代

読んだ本の感想。

著者:高野秀行、清水克行。2015年8月31日第一刷発行。



以下は、「辺境・探検・ノンフィクション 作家 高野秀行オフィシャルサイト」へのリンク。

http://www.aisa.ne.jp/takano/

ソマリア内戦と応仁の乱は似ており、日本史を探求する事で、現代の辺境を理解出来るとする。

第一章 かぶりすぎている室町社会とソマリ社会
日本の室町時代とアジア・アフリカの辺境は複数の秩序が鬩ぎ合っている事に共通点がある。西洋式の近代的法と土着的な掟、或いは幕府法と地域社会の慣習の対立。

<中世日本の法的矛盾>
支配者である荘園領主は、自領内で盗難が発生すると、それによって生じる穢れを除去するために犯人を領外に追い出そうとする。犯人を処罰すると新たに穢れが発生するし、拘留すると穢れが領内に閉じ込められる。一方で、住民には盗難の現行犯殺害を容認する価値観があった。

⇒私刑による治安維持はソマリランドでも行われており、辺境は治安が良いとする

互いに監視が利く田舎は実は安全。自前のルールが無い都会の方が危険な面がある。氏族による庇護と報復のシステムは都会には無い。互いを知らない都会では復讐の心配が少ないのだ。

これは日本中世も同じで、自力救済が横行する社会から、復讐が公に認められる社会、復讐が制御され禁止される社会へと変化していく。賠償(金銭による補償)が無かった事が日本中世の特徴。

墓所の法理として、鎌倉末期から南北朝期に、殺人被害者の属した宗教集団が、犯行現場を被害者の墓所として加害者に請求した事例くらい。不吉な殺人現場を聖なる場にする事で、昇華する措置。

第二章 未来に向かってバックせよ!
日本中世史は、沢山の人間が集まって無から社会を構築する過程と言える。

古代日本は中華文明を範としたが、平安時代くらいから離脱を始め、専制国家から分権的封建社会に移行していく。文明化の名残で知識が下方分有された事が中世にも影響する?

辺境であった事で、律令の国である中国や韓国に無い神判(呪術的裁判)が日本や東南アジア、アフリカには確認される。技術革新によって人間が操作出来る部分が増えると神の領域が狭まっていく。



日本における変化は16世紀に発生していて、中世までは「サキ」という言葉には過去の意味しか無かった。未来は「アト」と表現され、未来を予測出来る前ではなく、背中側(後ろ)と表現していた。過去が前にあって未来が後ろにある認識は、多くの民族が共通して持った感覚であり、未来が制御可能という自信を得て感覚が変化した?

映画のタイトル「バック・トゥ・ザ・フューチュアー」は、古代ギリシャにおける未来が後ろにあり、「未来にバックする」という言い方に由来する。

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世界認識が変化すると支配論理も変わる。軍事政権は暴力の論理で社会を支配するが、自分より強い存在が出現すると支配出来なくなるため長続きしない。倫理や法による支配が求められる(北条泰時の御成敗式目や徳川綱吉の朱子学等)。

ソマリでは農耕文化が発達しない流動性の高い社会であったため、階級社会に移行しなかったとする。日本では、中華文明や欧米文明の流入が民族的自己同一性を刺激し、国を纏める意識が醸成されたのかもしれない。

小規模な例では、日本では応仁の乱前後の社会的緊迫によって地縁による地域共同体が形成された。村のルールが作られ自治が行われる。現代はそれに代わる寄る辺が求められる時代でもある。

第三章 伊達政宗のイタい恋
髭によって文化が分かる。

日本の絵巻物語に登場する中国人は「頬髭」を生やしている。日本人は口髭と顎鬚であり、中国文化に傾倒した日本人は頬髭を伸ばしたがる傾向がある(足利義持や豊臣秀吉は頬髭が長い)。

イスラムでは顎鬚が信仰の深さを表す象徴になっている。

日本で髭が一般的で無くなるのは元禄年間で、この時期に同性愛文化が廃れていく。日本の同性愛は男らしさの表れで戦国文化。

伊達政宗にも男色趣味があり、「愛の証のために腕に刀を立てても良い」とした手紙が残っている。

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中世から近世にかけての日本では新米より古米の方が高かった。古米は水を吸うと新米の1.1倍~1.3倍になり、それが新米との価格比と一致する。

現在でもタイやミャンマーでは古米の方が高い(タイ北部は新米派が優勢)。古米を籾米で保存していた時代は、風味が落ち難かった可能性。

流通が発達し、玄米で米を保存するようになった事で変化が発生した可能性。室町時代に特産物が発生するのは、流通の発達により、都市部で好まれる商品作物を栽培するようになったから?気候が寒冷な東北地方でも商品作物である米を作るようになると、飢饉が発生し易い。江戸時代に醤油が好まれるようになり、大豆を作るようになった影響もある。米を売って雑穀を購入した江戸時代の農民よりも室町時代の農民の方が米を食べたかもしれない。

織田信長の頃から銭中心の経済が石高制にシフトする。室町の貨幣経済は中国から輸入した通貨を使用していた。室町時代後半から中国が銭経済から銀経済に移行し、安定して銭が供給されなくなった影響。

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イスラムでの筋腫は、酒に都会的な印象があるため?街は物欲で満ちていて、そこに酒があるイメージ?日本の禁酒令のように食料品となる米を確保するためとは違う?

コーランでは酒に関する扱いが箇所によって異なる。「酔っぱらってモスクで祈ってはならない」、「出来るだけ飲まない方が良い」、「飲酒は悪魔の所業」の順に酒を禁止した?曖昧を嫌うイスラム。

第四章 独裁者は平和がお好き
現代でも独裁者は平和を求める。支配者には平和が好ましい。

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日本の農民は定住するが、タイの農民は離合集散が激しい。家督相続にも決まりが無く末子相続が多いのは末っ子が最後まで家にいる傾向があるから。上座仏教では死後は輪廻するために墓は作らない。

そのため、タイでは農民に税金をかけ難く、所得税や関税が中心?

第五章 異端のふたりにできること
著者達略歴について記述されている。

歴史学者は古文書を読んで理解しなくてはならないため、独学では厳しく専門的に学ぶ必要がある。特に現在では緻密になっているため、大学の文学部史学科等で専攻し、大学院で訓練する。

数学では若き天才が現れるが、歴史学は読み込んだ史料が重要であるため遅咲きが多い。

それでも作者の主観が介在する事は避けられず、帰納的に結論に至る事が出来ない場合、最初に結論を提示し、そこから傍証に繋げていく。物語を上手く書く事が重要になる。

著者達のスタンスとして、問題を軽く洒落のめしたいらしい。

第六章 むしろ特殊な現代日本
日本では中世から自殺が多い。イスラムやキリスト教では自殺は禁止されている。

真実を証明するために自殺する事も日本独特で、欧米では負けを認めた事になる。その人が自分の主張に思いを込める事が重視される?

日本は島国であり、外部から他民族が頻繁に攻め込まないため、国家統合が進んだ。議論が苦手なのはそのため?植民地支配された事の少ないタイやエチオピアも同様の傾向があるとする。

日本の応仁の乱前後の村社会形成も関係しているかもしれない。他人と違う事をしようとすると駄目だと言われる社会では自由は重荷になる。

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