食糧と人類

読んだ本の感想。

ルース・ドフリース著。2016年1月8日 1版1刷。



文明を動かす究極のエネルギー源は食料である。人類史は、食料を増産し、それによって発生する矛盾を解消し続ける道程と言える。

1800年に約9億5000万人だった世界人口は、1900年には15億人を上回り、2010年には70億人程度になった。人口爆発は、2050円頃に90億人程度で落ち着く見通し。その頃には、全人口の70%程度が都市居住者となる見込み(1950年時点で50%程度)。

以下の循環。

〇炭素
炭素循環は、地中のマグマから始まる。二酸化炭素を含むマグマが火山ガス(二酸化炭素)とともに噴き出し、雨となって二酸化炭素が降下し、生物等に取り込まれた炭素が海へ辿り着いて海底で堆積物となる。沈殿した堆積物は海洋プレートとともに地球内部に沈んでいく。
炭素循環は温度によって変化し、寒冷期には緩やかに進むので、大気中の二酸化炭素が増えて暖かくなる。

〇窒素
窒素は蛋白質を構成し、筋肉や酵素、ホルモンの材料となる。植物も細胞や組織を作るために窒素を必要とする。

窒素は空気中に多く存在し、土壌微生物である根粒菌が窒素ガスをアンモニアに変換し、アンモニアを他の微生物(ニトロソモナス)が亜硝酸塩に変換し、亜硝酸塩を他の微生物(ニトロバクター)が植物に吸収され易い硝酸塩に変換する。

植物に吸収された窒素は、動物にも吸収される。細菌や菌類が糞尿や動植物の死骸を分解し、亜硝酸塩は土壌に戻る。土壌の亜硝酸を緑膿菌などが脱窒し、窒素原子に還元して大気に戻す。

〇リン
リンは植物細胞を構成し、光合成に必要なエネルギーの受け渡しをするATPに使用される。リンは動植物の死骸から海底まで流れ、リン灰石となり、海底プレートの移動とともに地表に出現する。

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人間の農耕の歴史は、上記の窒素やリンを土壌に鋤き込む歴史と言える。

以下は、1669年にドイツの錬金術師ヘニッヒ・ブラントがリンを抽出した過程。バケツ50杯分の尿が必要だったとする。

①尿を煮詰めてシロップにする
②シロップを熱し、赤い油分を取り除く
③残りを冷まし、下方の塩分を捨てる
④上方の黒海綿状の部分に、②の赤い油を混ぜる
⑤上記④を16時間熱する
⑥白い煙、油、リンが現れる

窒素については豆科植物が窒素を土壌に補給する事が知られており、排泄物で養分を補う方法も知られていた。

<肥料における第一の転換>
遠隔地から輸入した肥料の使用。

19世紀初頭の英国では都市に流入する人口が急増した。都市居住者の排泄物は一部しか農村部に戻らず、水洗式便所の普及も排泄物を回収困難にした。

そこで、以下の肥料が輸入された。

①グアノ
南米西海岸沖の海鳥の糞。固定窒素とリンを豊富に含む。1850年代の最盛期には、英国は年間30万トンのグアノを輸入したとされる。1880年代にはグアノは枯渇し、英国の年間輸入量は年間2万トンにまで低下した。

②硝石
アンデス山脈で発見された。1880年代にはチリとペルー、ボリビアが硝石鉱脈を巡って戦争をしている(硝石戦争)。

③バッファローの骨
ジョン・ローズが1840年に骨を硫酸で処理した「過リン酸肥料」の特許を取得した。

④リン鉱石
骨や歯の化石を含む。

<肥料における第二の転換>
人工的に合成した肥料。

20世紀初頭に、ドイツの物理化学者フリッツ・ハーバーが空中窒素を固定する方法を発見した(金属触媒を利用したアンモニアの生成)。フリッツ・ハーバーの研究は、化学メーカーBASFに買い取られ、同社のカール・ボッシュがアンモニアの大量生成に成功(メタンガスから抽出した水素と窒素ガスを混合し、金属触媒に幾度も通す)。

⇒21世紀初頭で、ハーバー・ボッシュ法による肥料で作られた食糧で生きる人間は全人類の40%程度

過剰なリンや窒素は、淡水湖の富栄養化(藻類の大量発生)や酸欠海域の問題を発生させている。大気中にも大量の窒素が分解された窒素ガスが還元され、温暖化の原因となっている。

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<食生活の変化>
生活が豊かになるにつれ、澱粉(小麦、米、玉蜀黍、じゃが芋)の摂取量が減り、肉や卵、乳の摂取量が多くなる傾向がある。

牛肉1ポンド(0.45kg)を得るためには、32ポンド(14kg)の餌が必要とされる。2007年時点で地表の約35%が食糧生産に用いられているらしい。

脂肪分と糖分に対する人類の欲求は凄まじく、20世紀初頭には牛乳や肉由来の脂肪分が主だったが、20世紀半ばからより入手しやすい綿花や大豆、トウモロコシ由来の油脂が得られるようになり、各種の油が容易に入手出来るようになった。1970年代には、澱粉から糖を分離して大量生産する方法が発明され、清涼飲料水が玉蜀黍を原料に大量生産されるようになる(1965年~2002年で、米国人が一日に飲料水から摂取するカロリーの平均値は222カロリー増加した)。

その結果、世界全体で肥満が進行している(肥満率は右記のように推移している。ブラジル:1975年の24%→2003年の38%、バングラデシュ:1996年の3%→2007年の12%、ケニア:1993年の15%→2003年の26%)。

21世紀初頭において、人類は飢餓人口(10億人以下)よりも肥満人口(10億人以上)が多いという奇妙な時代を迎えている。

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