なぜ大国は衰退するのか

読んだ本の感想。

著者:グレン・ハバード、ティム・ケイン。
2014年10月24日 1版1刷。



結論が先にある気がする。

人類史における帝国の衰退は、内部経済の不均衡から始まるとする。政治面での過剰な中央集権化は衰退の一般的要因であり、通常は集権化の百年以降から衰退が始まるとする。

大国の衰退は経済的衰退であり、それは制度の衰退の結果とする。

制度は経済的行動を体系化する制約であり、法的保護、市場、規制、政府構造、社会規範、宗教信条等から構成される。

エンタイトルメント:
全ての一般市民に対して保障される政府支出。

レントシーキング:
特定集団が政府を自分達の利益になるように操作して資金を得る事。

過大な政府支出によって、現代国家の礎が脅かされているとする。

歴史から以下の法則が見出せるとする?

①限定合理性
支配者の能力は大衆の無知によって限定され、また、大衆の選択は支配者候補の器によって限定される。

②自己同一性
国民意識は強力な制度形成を促すが、構造的変化に抵抗する保守主義も含む。

③損失回避
指導者が革新を行う事は稀。損失回避のために大国ほど消極的になる。

④時間選好
当局者は改革を必要としても、実行は遅らせてしまう。

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◎国富とは
本書の中で、①GDP、②GDP成長率、③人口一人当たりGDPを掛け算によって組み合わせ、一つの変数にする方式が提唱されている(GDP成長率は、平方根にする)。

⇒著者が提唱した方法では、2010年の米国74%とすると欧州は54%、中国は30%、日本は11%である

言葉ではなく数字で国を評価する思想は、1650年代にオリバー・クロムウェルに仕えた英国人ウィリアム・ペティ(『賢者には一言をもって足る』、1665年出版)から始まる。人口、収入、土地等の資産から国力を試算。

数値データから、オランダは人口が十倍もあるフランスより国力があるとした(対外貿易や資産、都市化等)。

アダム・スミスはウィリアム・ペティの思想と重農主義者による一定期間内の経済的生産量を国力を一面とする見識を組み合わせ、年間労働量を年間消費量の基盤とした。富を手元資金の蓄積とした場合、国の成長可能性を把握出来ない。

そして、20世紀になり鉄道や自動車、電話等の技術革新や大恐慌等から、経済を把握する指標としての国民総生産が考案された(公式になるのは1940年代の終り)。

1944年のブレトンウッズ会議では、GNPが国際経済安定化の成果を計測する指標とされた。

⇒現代でも富を生産力のフローではなく、資産のストックとして捉えてしまう誤りはあり得る。また、質の定義が課題

GDPを過去の値と比較し、各国間で比較すれば広範囲の長期的変化を想像可能。1950年~2010年では以下のイメージ。

①米国は人口一人当たりのGDPで常に優位
②欧州の主要国は同じような動き
③韓国は先進国に移行している唯一の国
2000年頃に1万5000ドル程度だった一人当たりGDPが、2010年頃には3万ドル近くになっている。
④中国はインドよりも早く成長している(特に2000年以降)
⑤ラテンアメリカ諸国は、生産性最高水準の20%~30%の
水準で足踏みしている

⇒成長の著しい国でも、米国の75%~80%の水準で一人当たりGDPが落ち着く。中央統制的資本主義で成長を加速させても、そこから発展するには起業家精神に基づく別種類の経済活動が必要になるようだ

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<ローマ帝国>
ローマ帝国の主要制度は、以下から成るとする。

・軍隊
・交易による労働の専門化
・都市化

ローマ帝国内の街道が上記を促進し、対応する市場や法律、官僚制度を生んだ。古代ローマの発展は紀元前500年~紀元200年に渡り、国土の膨張を伴ったとする。しかし、新技術開発が無かったために、人口過剰の圧力により、三世紀前半には平均所得が減少した可能性がある(全盛期のGDPは250億ドル?、200年頃の人口は2760万人?)。

著者は、ローマの経済不均衡の原因の内、影響の大きいものを以下の3つとする。

①ハドリアヌスの長城
122年のブリタニア中央部における長城建設。
②銀貨改鋳
二世紀末にセプティミウス・セウェルス帝が行った。
③経済の支配・統制
三世紀末にディオクレティアヌス帝が行った価格統制令等。

ローマ帝国の終りは、117年のトラヤヌス帝死去から始まったとする。この時にローマ帝国の地理的規模が最大になったらしい。次のハドリアヌスが内向きになり、経済規模拡大が終わったとする。

⇒軍隊が権力を独占した事で、一部の特権階級の権力が他を犠牲にする形で最大化されたとしている?

他に、中国、スペイン、オスマントルコ、日本、英国等。

どれも中央集権化が行き過ぎ、支配層が損失回避的になった結果、制度改革が行われなくなったとしているように思える。特に英国に関する視点は面白く、英国市民権を与える範囲が狭すぎたために、米国独立を誘発し、英連邦の他の国々も取り込めなかったとしている?

〇カリフォルニア州
衰退しつつある地域として。

2010年時点のカリフォルニア州のGDPは1.7兆ドル程度で世界10位程度。さらに21世紀初頭の経済成長率は平均3.7%であり、人口一人当たりGDPも5000ドルを上回り、米国、中国に次ぐ世界三位の経済力と言える。

二十世紀初頭の映画スタジオ設立(ハリウッド)や軍隊の訓練に適地だった事からの防衛産業集中等により、集積効果 = 人的資本の集積地になったとする。1900年時点のカリフォルニア州の人口は149万人だが、2011年には3769万人程度になった。

1992年に政治の構造的転換を経験。それまで保守党が強かったが、民主党のビル・クリントンが勝利。以後、州民の基本層が左傾化していく(無所属以外の有権者の民主党員は43%で共和党員は30%)。1970年~1980年代にかけて南部他州は共和党支持に転向している。

以後、カリフォルニア州議会の民主党員は、累進的課税、全米最高レベルの最低賃金水準、手厚い福祉政策等を導入し、2013年時点?でカリフォルニア州の失業率は9.8%程度、未払い債務総額は1000億ドル以上と経済的打撃を受けたとする。特に年金債務問題は深刻で、未積立年金債務総額は、本書執筆時点で5000億ドルにもなる?

財源が無いにも関わらず年金支出等を増やした民主党の問題?累進課税が年収百万ドル以上で13.3%という米国で最も累進的である事にも問題があり、好況期に所得税収が増加し過ぎるため、それを基準とすると不況期との差が激しくなる。

カリフォルニア州では議員の任期が六年と全米で最も短く、長期的に考えない政策や官僚強権化の温床になっているという指摘。

さらに、ゲリマンダー(特定集団が有利になるように選挙区の区割りをして歪んだ区割りが出来上がる事)の問題もある。カリフォルニア州の2002年の選挙区改定では、浮動的選挙区が無くなり、議員が再選され易くなったとする。

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<米国>
米国の中心は、米国憲法の第一条に宣言されている①宗教の自由、②言論の自由、③集会の自由であり、米国憲法採択後にこの核心が修正された事は無いとする。

これらの権利は天賦であり、政府とは自由を抑制する存在と認識する。連邦政府は中央集権に敵対する構造になっており、州知事は大統領に任命されず、各州で選出される。

さらに、予算権限を憲法上与えられ、課税法案を最初に審議するのは最も民主的な下院のみである。

以下は、米国の分極化を指摘する意見。

①中道の消失
1960年代に極右や極左に帰属する議員は稀だったが、2013年?現在では連邦議会で中道の立場を取る議員はほとんどいない。

②政府の信頼低下
支持政党の無い米国民が増えている。無党派層は1990年の29%から2012年の38%に増大した。

著者が問題視するのは、過大な政府支出であり、1935年にフランクリン・ルーズベルトによって法制化された社会保障が数十年かけて増大し続けている。エンタイトルメント支出の対GDPは2000年代の8.7%から2040年代の17.9%まで増えるという予想。

・米国政治における囚人のジレンマ
本当は増税と財政支出削減を両立させる事が好ましいが、民主党は高い政府支出を主張し続け、共和党は減税を主張し続けている。仮に共和党が政府支出削減を主張すると低税率維持を主張する民主党が有利になり、民主党が増税を主張すると高い政府支出を主張する共和党が有利になる。

⇒議員達が短期的な党派争いに拘った結果、長期的財政均衡が犠牲になっているとする。

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以下は、著者が主張する歴史の教訓。

①何事も必然ではない
②人間は皆同じ
歴史的記録には一貫した傾向がある
③脅威は内部に存在する
④無知は究極の限定
⑤政府は最も危険な派閥
均質な国家としても内部には明確な区分があり、多様性を排除する事は不可能
⑥損失回避は革新を脅かす
⑦小さくなり過ぎる事は大きくなり過ぎる事より脅威
内向きになると革新が起きなくなる?

さらに、以下の戦略。

①税法改正により投資を主導(低税率)
②経済規模拡大(提携協定促進)
③起業促進

政府規制増大が企業減少の潜在的原因になるとする。

著者は、米国憲法を改正し、総議員の3/5の賛成を得た緊急事態を除き、政府支出の上限額を前7年間におけるインフレ調整後の歳入中央値と一致させるべきとする。さらに、財政均衡により、前10年間の財政ギャップ平均値を7年かけて1/7ずつ縮小させる経路を示すべきとする。

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