シフト

読んだ本の感想。

マシュー・バロウズ著。2015年11月19日 第1刷発行。



米国国家情報会議(NIC)の元分析・報告部部長である著者が、2035年を予測した本。

米国国家情報会議が4年毎に作成する長期予測『グローバル・トレンド』は、これまでに5版作成され、著者は3版で主筆を務めたという。

米国の相対的衰退を予想しており、それほど目新しい意見は無い。

第1部 メガトレンド
2035年に向けた以下の大きな変化。

①個人へのパワーシフト
インターネットの普及は、権力に対する個人の力を強めている。

個人へのパワーシフトは、中間層の拡大に表れている。中間層(1日の世帯支出が10ドル~50ドル)は2014年現在?で10億人程度だが、2030年には20億人超になると見込まれる。

国家に対する組織としては宗教団体等があり、特に途上国では自国文化への自負心が強いとする(2013年の調査では、インドネシアと韓国では90%、インドでは80%が自国文化の優位を信じていた)。

宗教が強化される背景にあるのは都市化であり、農村共同体が提供していた社会サービスを宗教団体が提供している。

②新興国台頭と多極化
世界が多極的になっても現在の国際秩序を維持すべきとする。

中国やインド等の台頭により、2030年までにアジアが4つの尺度(GDP、人口、軍事費、技術投資)で北米と欧州の合計を抜くとする。他に台頭する可能性がある非西側諸国(コロンビア、インドネシア、メキシコ、トルコ、ブラジル、南アフリカ、ナイジェリア、イラン、エジプト)もある。

しかし、国民の健康度が教育水準等のソフトパワー指標で中国が米国を抜くのは2040年~2045年頃とする。新興国は莫大な人口を抱えているため、GDPが経済大国になっても生活水準はそれほど急激に上昇しない。

その結果として、巨大都市や地域組織等の中間共同体の力が拡大し、共通する価値観が無い状態で大きな問題に対処する事になる。全ての政策領域で共通の利害がある事から、地域協力が無くなる事は無いとする。

③技術革新による倫理変化
情報技術や遺伝子工学の進歩による影響。

ここの件は、著者自身の確信が感じられなかった。『召使』という映画では、主人が召使の言いなりになり堕落していく姿が描かれていとして、計算機械による人間支配を心配している?



④人口爆発と気候変動
異常気象は増加する。

今後、多雨地域の降水量が増え、少雨地域の日照りが増える。降水量は、21世紀半ばまでにアルジェリアで-4.9%、サウジアラビアで-10.5%になる見込み。

そのため食料不足に対する懸念はエネルギー資源不足よりも深刻であり、肉食を基礎とする食生活を維持するには、バイオプリントした肉を認めなくてはならないかもしれない。

第2部 ゲームチェンジャー
以下の4つの波乱要因。

①中国の成長鈍化
中国は莫大な人口によりGDPが膨らんでおり、経済成長しても個人の生活水準が伸び難い矛盾を抱えている。2014年現在?65歳以上が総人口に占める割合は8%だが、2030年には16%を超えるとする。

2020年までに一人当たり所得が1万5000ドルを超えると予想されるが、この水準は政治的自由化運動が起きる分岐点と考えられる。著者の行った共同研究では、中国が改革に失敗すると世界の総所得が27兆ドル減少する。アジア開発銀行の楽観シナリオでは、中国が中所得国の罠を乗り越えた場合、2050年には世界経済は約2倍に拡大し、米国の一人当たり所得は1万ドル増える。

②技術進歩
2035年までに、3Dプリントやゲノム解読等による産業革命を超える激変が発生するとする。

著者は、農業における確信に期待しているようで、また、中国がエネルギー技術い貢献するとしている。これは著者が中国に訪問し、中国政府関係者と議論した結果であり、政府の投資増大が重要なのだそうだ。

③第3次世界大戦
現在は、とても平和な時代だ。過去500年間で大国による平和が最も長続きしている。

その原因は、米国の突出した軍事力にあるとする。しかし、相対的に米国の力は弱まっており、人口増大地域(サハラ以南のアフリカ、中東と南アジアの一部、パプアニューギニアやフィリピン等)では紛争が起きるかもしれない。

また、国全体としては老いてもいても、平均年齢が若い少数民族を抱えているトルコ、レバノン、タイ南部等は内紛を抱えている。

◎南アジア
インドは人口の約半分が24歳以下で、2030年までに毎年1000万人~1200万人が新たに労働市場に加わる。同様に人口が急増するパキスタンやアフガニスタンと共に混乱の可能性がある。

(1)危機脱却シナリオ
パキスタンがインドと貿易関係を正常化し、自らも持続的な成長を始める。
(2)イスラミスタン誕生シナリオ
パキスタンのイスラム原理主義勢力とアフガニスタンのタリバンの影響力が増す。
(3)崩壊シナリオ
パキスタンとアフガニスタンの分裂。インドはパキスタンの好戦的勢力への対応に追われる事になる。

◎東アジア
東アジア諸国は、経済的には中国、安全保障では米国に引き裂かれていくと予想。
1995年以降、日本、韓国、オーストラリア、インドなどは通商面では中国に接近し、安全保障では米国との関係を強化する保険戦略を取ってきた。中国の経済成長が継続し、法治主義が拡大した場合、東アジア全体で米国に頼る必要性が低下する。

(1)現状維持
米国優位を基礎とする安全保障体制が維持される。
(2)激しい争いを伴う勢力均衡秩序
米国の孤立主義や衰退により、米国不在を補うための核開発などが行われる。この場合、東アジアは中東よりも大規模な地域紛争に向かう。
(3)地域秩序構築
中国の政治的自由化が前提。ただし、安全保障の要として米国が必要。中国への不満が高まっている事を考えると、これが最も現実味が薄いとする。
(4)中国中心の地域秩序
中国が近隣諸国と二国間関係を築く事が前提。アジアに籠る閉鎖的地域機構樹立。

インドが台頭するか、日本の相対的衰退が止まらなければ中国中心の秩序が生まれる可能性が高まるとする。しかし、著者は中国が近隣国と大戦争を始める可能性は50%を大幅に下回るとし、中東圏での核競争等を懸念すべきとする。

④米国支配の終焉
第二次世界大戦は約50%だった米国のGDPが世界に占める割合は約18%まで低下した。

覇権国が存在しない世界が現出する事になる。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、米国を中心とする貿易協定であり、アジア諸国が譲歩する事で米国を繋ぎ留める方策とする。しかし、それが中国を孤立させる手段として利用されると危険な結果を齎すとする。

今後は、衰退しつつある欧州が強大な力を維持している国際秩序でなく、新興国のプレゼンスが大きい国際秩序を構築すべき。そうでなければ世界は地域圏に分裂していき、世界的課題に対処出来なくなる。

第3部 2035年の世界
幾つかのショートストーリーが掲載されている。

◎ジャミル・ホウリー
レバノン人の医師がスパイとして勧誘され、サウジアラビアがイランの核製造施設を攻撃する事件に巻き込まれる。米国のパワーダウンが中東における紛争を引き起こすとしたいのかな?

◎ベン
アスペルガー者の研究員が細菌テロに巻き込まれる話?この話でアスペルガーを出す必然性は無いと思った。技術進歩により、生物テロが発生し易くなるとしたい?

◎カルロッタ・カスティージョ
IT企業が利益を大衆に分配すべきという話?技術革新により格差が拡大するという予測?

著者は、米国の相対的衰退による中東やアジア等の不確実性増大というシナリオに自信を持っているのだと思う。協力の枠組みの無い紛争が多発する世界。

一方で、技術革新については自信が持てない?政策決定が人口知能により行われる未来や、遺伝子操作された人間が生まれる未来とはどのような世界なのか?

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