ゼンデギ

読んだ本の感想。

グレッグ・イーガン著。2015年6月20日 印刷。



週刊東洋経済 2016.9.17の特集『IOT発進!』で紹介されていた本。

読み難い本だった。

『バーナード嬢曰く。』という漫画の一巻 P56で、グレッグ・イーガンの本は、皆、実は結構良く分からないままに読んでいるというような記述があったが、僕には全く解らなかった。



科学的記述というよりも、作者が自分が取材した事を無理に詰め込もうとしているため、無駄で無意味な贅肉が多いメタボリックな印象。

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IOTや人工知能というよりも、一神教の世界観について考察している本だと思う。

主人公が、自らの仮想人格をコンピュータ上に作り出し、死後も生き続けようとする話。

【登場人物】
○マーティン・シーモア
奇数章(+第2章)の主人公。1959年生まれ?のオーストラリア人。ジャーナリストとして2012年からイランで生活を始め、後に本屋(啓典の民)を運営する。死後も息子であるジャヴィード(2021年生まれ)を指導するために、自らの仮想人格をコンピュータ上に作り出そうとする。

○ナシム・ゴルスタニ
偶数章の主人公。1987年生まれのイラン人コンピュータ科学者。マーティンの妻マフヌーシュのまた従妹。父はイランで処刑されている。母のサバは経済学者で『石油後』という本を書いている。政変後のイランにおいて、ヴァーチャル・リアリティ関連のプロジェクトを手掛ける。

○オマール
イランにおけるマーティンの友人。女性や異民族に差別的であるとマーティンから思われている。息子はファルシード。

○マフヌーシュ
イランでのマーティンの妻。ゴスメタルのバンドをしていたために両親から勘当されたらしい。2027年に交通事故で死亡する。

○ネイト・キャプテン
米国の企業家。自らの人格をコンピュータ上にアップロードする計画を立てている。太陽系における最初の超越的存在になる事を目指す。

【用語】
ゼンデギ:
VRエンジン。

バシジ:
イランにおける準軍事的団体。デモを暴力で制圧しようとする。

恵み深き超知性ブートストラップ・プロジェクト(BSBSP):
自らよりも優れた人工知能を設計・製作出来る人工知能を作成し、神の如き力を持つ存在を創り出す計画。

サイドローディング:
活動中の脳をスキャンし、その情報に基づいて、特定の脳をコンピュータ上に再現するための訓練課程。

ファーシフォネ・ファリバ:
20人のイラン人女性の脳をスキャンして作った仮想人格。滑らかに話、数千の平凡な事実に通じる。

シス・ヒューマニスト同盟(CHL):
自主性無き意識はあってはならないとして、ゼンデギへのハッキングによる妨害活動を行う。

【あらすじ】
①2012年
イラン:
オーストラリア人ジャーナリスト マーティンは、政変下のイランで以下の行動をする。
 ・政治家ハッサン・ジャビリの同性愛の相手の
  国外逃亡を手助けする
 ・暗殺された大統領ダリウス・アンサリの弟クーロシュに
  インタビューする
 ・エヴィン刑務所にて友人のオマールを救出する

米国:
MITの研究者ナシムは、脳スキャン応用技術の研究をしている。ある日、キャプテンという男から、脳アップデートに関する依頼を受けるが拒絶する。

その後、ナシムはイランでの政変を受け、イランに戻る事を決意する。

②2027年~2028年
マーティンとその妻が、交通事故に遭い、妻が死亡する。マーティンは自分の余命が僅かである事を知る。

一方で、ナシムの手掛けるVRエンジン「ゼンデギ」は他社との競争により苦境に陥っており、起死回生の切り札として人間の人格をアップロードした仮想人格を検討する。

ナシムは、サッカー選手アジムの仮想人格をネットワーク上に再現し、それに感銘を受けたマーティンは自身の仮想人格を息子を指導するために残そうとする。イランで育つ息子が、友人であるオマールのように差別的になって欲しくないという感情。

やがて仮想人格に対する抗議運動が起る。宗教的感情や失業への懸念等。

そして、マーティンは仮想世界上で、息子のジャヴィードを名乗り、自らの仮想人格と向き合う。そして、意図的に仮想人格の前でゲームキャラクターを殺す。それを見て口汚く罵る仮想人格を見て、息子の指導役としては不適格と判断。仮想人格は、完全には自分と同一にならない。

そして、マーティンはオマールと、息子(ジャヴィード)がマーティンと同じ考え方をするように育てるよう約束する。

ゼンデギは、ハッキングによる妨害等を経て、仮想人格の活用を断念するが、仮想世界上に「神」を再現しようとする活動と、反キリストを恐れる活動との対立が継続する事を示して物語は終わる。

*********************

<一神教的価値観>
主人公のマーティンは、無神論者と自称しているが、実際には一神教徒だ。彼自身が友人であるオマールを侮蔑しており、自らの価値観を至高としている。

そして、自らが永遠に生き続ける「神」として息子を支配し続けようとする。

以下は、「仏教の冷たさ キリスト教の危うさ」の記事へのリンク。一神教的な自らが絶対的に正しいと思う思想が争いを引き起こす事について。「ゼンデギ」の世界では、一神教が産み出す憎悪が具体的に描かれていると思う。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2437.html

以下は、「人工知能」の記事へのリンク。父なる神としての機械知能を恐れる事について。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2325.html

以下は、「社会はなぜ左と右にわかれるのか」の記事へのリンク。人間の倫理観が帰属する文化に支配される事について。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2253.html

以下は、「マッテオ・リッチ記憶の宮殿」の記事へのリンク。『第五章 第二の絵 エマオへの道』にて、子供や妻を支配する事は出来ないとしている。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2442.html

「ゼンデギ」の世界における「神」は父なる存在として、指導し導く存在であり、それが自らが父として支配する側になりたいという欲求と結び付くのか?

「ゼンデギ」が読み難い理由の一つは、登場人物の姿形や雰囲気、背景情報が省略されているからだと思う。それは西洋的認識の特徴なのかな?

以下は、「木を見る西洋人 森を見る東洋人」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-722.html

例えば、P67から、ナシムと友人達の会話が記述されているけれど、ジュディス、マイク、シェン、と名前だけ書かれていて、どのような人間であるかを想像する事が出来ない。

情報が圧縮されている?

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