記憶破断者/忌憶(垝憶)

読んだ本の感想。

小林泰三先生の「田村二吉シリーズ」。

一流企業に勤務する普通のサラリーマンが、チーマーに頭を強打される事で、前向性健忘症(新しい事を長期記憶不可能)となり、様々な事件に巻き込まれる。

小林先生の物語は、様々な並行仮想世界の出来事であり、事件毎に別の世界の出来事と考えなければ辻褄が合わないようになっている。

作品のテーマは、人間の人格と記憶が分離した場合、人間本体は記憶であるか人格であるかを問う事だと思う。外部媒体に自分の記憶が移植された場合、外部媒体が自らの本体となるのか?

忌憶(垝憶):
小林泰三著。平成19年3月10日 初版発行。



田村二吉は前向性健忘症になっていた。記憶した事は、10分後に半分が無くなり、30分後には記憶から消える。

万城目総合病院の医師の話では、前向性健忘症は7年3ヶ月継続しているらしい(現在の年齢は37歳~38歳?)。自らの記憶を補助するノートを3ヶ月前から記録のため使用しているらしい(同時期に田村二吉と知り合いの患者が、急に病院に来なくなった)。

ノートには、自分が殺人を犯した事が書いてある。遺体は二台の冷凍庫の中に保管してあり、一台には解体済みの遺体、もう一台には解体未済の遺体が保管してある。

やがて、田村二吉の部屋に北条夏生の母を名乗る人物が訪れる。北条夏生は心因性の病気になっており、半年以上も帰宅しておらず、病院で北条夏生が親しくしていたとされる人物の部屋を訪れたらしい。

そして、田村二吉は過去のノートを発見する。その筆跡は自分のものと違う。田村二吉は、他人が書いた記憶ノートを自らの記憶と思い込んで行動していた事になる。

しかし、それでは説明出来ない事がある。何故、田村二吉は明らかに自分の筆跡でないノートを引き継いで書き写したのか?

大きな森の小さな密室:
小林泰三著。2011年10月21日 初版。



(遺体の代弁者):
田村二吉が、「スピーカー・フォア・ザ・デッド・システム」の実験台になる話。遺体の海馬を、生きている人間(田村二吉)の海馬に接続し、遺体の記憶を思い出させる。

移植された田村二吉の記憶は、前任の記憶移植被験者マイケル・ハーバートの記憶であり、この話は入れ子構造になっている。

(路上に放置されたパン屑の研究)
田村二吉が岡崎徳三郎の訪問を受ける話。田村二吉が、定期的にパン屑を街中に落としており、その理由を本人に推理させる。前向性健忘症のために、田村二吉には記憶が残らず、今まで何回も同じやり取りをしているらしい。

パン屑を落とした理由は、気に入ったパン屋の場所を覚えておくためであったらしい。家に筆記用具を取りに戻った所で記憶を失う事を繰り返しているのだとか。

記憶破断者:
小林泰三著。2015年8月5日 第1刷発行。



田村二吉が、記憶を操る超能力者(雲英光男)と対決する話。

この作品世界における田村二吉は、北川話し方教室(講師は北川京子)に通っている。通う理由は、病院の待合室で知り合いの北条から話し方教室の話を聞いた事が切っ掛けであるらしい。

敵役の雲英光男は、人間に触り話しかける事で偽の記憶を植え付ける事が出来る。雲英光男は、能力を活用して様々な犯罪を犯している。しかし、前向性健忘症である田村二吉は、前向性健忘症となった以降の記憶を長期保全出来ないため、雲英光男の超能力が効かない。

ノートの記録から雲英光男が人々の記憶を操る様を知った田村二吉は、デジタルカメラで雲英光男の姿を記録する等の戦いを始める。

田村二吉の切り札は、協力者(岡崎徳三郎)の存在であり、ノートに書かなければ協力者の存在自体を田村二吉は忘れてしまう。岡崎徳三郎は、田村二吉の筆跡を真似出来るらしい。

⇒『忌憶(垝憶)』にて田村二吉が自分の筆跡以外のノートを書き写した事の種明かし?ノートの書き写しは岡崎徳三郎の所業?

忌憶(垝憶)にて、田村二吉が元の自宅以外に住んでいる理由も説明されている。岡崎徳三郎が自分の家付近のマンションを世話したらしい。

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『記憶破断者』には、『見晴らしのいい密室(忘却の侵略)』のアイデアが使用されていると思う。

田村二吉が、記憶失い目覚める度に、周囲の人間達の姿や人格、能力が変動している?

P39~P47では、田村二吉の恋人という黄色い歯をした女、夏生(馬面で小さい目、長身で30代~50代、土色の脂ぎった肌)が訪ねて来る。

P58で北川京子の外見は、30代半ばでとびきりの美人ではないが、ひよこを思わせる可愛らしい顔つきとある。

多分、こうした外見は田村二吉が記憶を失う毎に再構成されているのだと思う。

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このシリーズは、まだ続きがあると思う。

P343~P345で責任の話がある。

田村二吉は前向性健忘症であり、殺人を犯しても忘れてしまうために罪の意識は無い。

同時に、記憶操作能力者である雲英光男が、自らの記憶を操作して善人になった場合、裁かれないかもしれない。

⇒このやり取りは強引に思えた

P346で、北川京子が目を輝かせた理由が分からない。忌憶(垝憶)での遺体と含め、後続作品で様々な解釈が語られるのだと思う。

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