人はなぜ神を創りだすのか

読んだ本の感想。

ヴォルター・ブルケルト著。1998年12月20日印刷。



序文
自然科学が発達し、生物が知識と操作の範囲内となっても宗教は消滅していない。歴史的で文献的な研究と生物学的人類学を結び付る?

1 文化の地勢―宗教の位置づけ
文化の向こう
宗教はあらゆる時代のあらゆる集団に普遍的に存在する。宗教的現象には、崇拝に適切な形式化された儀礼的行為(供物、誓願、祈祷、歌、説話、礼拝)が含まれる。

以下の特性

①経験的に確認出来ないものを扱う
宗教的行為は不可知を共有するものである。明らかでないという障壁を乗り越えるために、特殊な経験(霊験)に訴える。

②畏れ多い者に立てられる
明らかでない交渉相手が導入され、認識される。

③真剣に扱う事を求める

社会生物学?
社会生物学の基本仮説は、遺伝と文化の絶え間ないフィードバックによる共進化である。宗教を適応のための制度とみるか、幸福幻想を見せる麻薬と見るかは考察態度によって異なる。

共通の世界―還元と検証
言語発達により、人間は思考、計画、概念、価値観を共有可能となり、共通の精神世界が出現した。宗教は、この精神世界に帰属し、高い地位を要求する。
言葉は、直接的証拠を超えた概念を生み出す。言語は遠く離れた対象や過去・未来の証明不可能な現実にも言及出来る。超自然的存在は、共通の精神世界の中で多くの人間に還元され、その過程で単純化される。

二元論的体型(全ての現象は二つに分類出来ると仮定)と階層構造・因果関係の連鎖は複雑を減少させる。

2 回避と捧げもの
指の犠牲
2世紀に、ペルガモンにあるアスクレピオスの聖域で過ごした心気症患者の話。夢中の神の啓示により、死を避けるには指を捧げなくてはならないが、神の慈悲により指輪を捧げた。

多くの文化では、指を犠牲にする主題があり、イラクにある新石器時代の遺跡アルパチアからも、石で出来た5本と指と一本の人間の指の骨が発見されているらしい。自分の身体の一部を切断する習慣。

生物学、幻想、儀式
身体の一部を切断する行動様式が、大袈裟に見せるための儀式に変化した可能性。蜥蜴も、敵から逃げるために尻尾を切断する事があり、捕食者の注意を逸らす行為として、宗教と動物学はつながっているのかもしれない。

本能的に生じる事を意識的に行うのが、呪術儀式?

去勢と割礼
去勢も自己切断である。生殖はによる存在増殖が、個体を取り換えがきくもと見做してしまうため、宗教的に疑惑の目で見られる?

割礼については、旧約聖書の逸話の中で、モーゼが幼い息子と共にミディアンからエジプトに戻る時、モーゼを殺そうとした神に息子の包皮を捧げた事に由来するとする?切断により追っ手を撃退する。

贖罪の山羊
パルス・プロ・トトの原則として、全体を救うために一部を犠牲にする。それは壮大な物語や儀式を支配する主題の一つである。

命には命を
人命への脅威は、別の人間を差し出す事でしか避けられないという信仰。動物の群が肉食動物と相対した時、一頭が殺されると、残った群れはしばしの安心を得る。

3 物語の核
物語への傾倒
ヴィルヘルム・シャップにより1953年に出版された本。

人間が思い出し、動かされるのは物語であり、知識は物語の形式を取る。神話は個人的なものでなく一般化されており、特定集団の共同所有物である。

プロップの継起順序-探索物語
『昔話の形態学』(ウラディーミル・プロップ著)。物語は損傷、欠如、欲望から始まり、旅立った主人公が試練を与えられ、援助を受け、敵と戦い勝利する事で目的を達成するとする。
このシーケンス(継起順序)は様々な物語で一定らしい。

生物学上のプログラムから意味の連鎖へ
プロップの継起順序は、動物が食物を探索する過程と似ている?食物探索という重要なプログラムは、一連の行動として最も容易に想像可能であり、言語表現出来るとする。

以下は、プロップの刑事順序の奇妙な特徴。

①魔法を提供する援助者
②往路と帰路の非対称性(帰宅時は異なる経路)

シャーマンの物語
恍惚状態におけるパフォーマンスでシャーマンは超自然的次元での探索を実体化する。シャーマニズムは探索物語の普遍的プログラムが特別に発達したものとする。

通過儀礼の物語-処女の悲劇
コレ・ペルセポネ神話(処女の悲劇):
処女コレは魔法をかけられた館に、母デメテルによって閉じ込められ、ゼウスに妊娠させられれ、その後はハデスに誘拐され冥界の女王となり、ディオニュソスを生む。

この物語は、以下の順序とする。

①若い女性の生活が突然中断する
②隔離の時期
③男性が侵入し妊娠させられる
④苦しい試練
⑤救出

「ラプンツェル」も処女の悲劇の一形態とする。子供から大人へ移行する女性の生物学的ライフサイクルを示すらしい。性的成熟は母子関係を崩壊させる。

4 階層構造
序列意識
宗教とは神への依存であり、上位存在に相対する下位存在の承認である。服従によって崇められる主は、庇護を与え、安全を保証する。こうした序列制度は様々な霊長類の社会で観測出来るとする。序列が高い猿ほど、安全な木の上部に居住しており、これが天界のイメージの元からもしれない。

服従の儀礼
神に対して謙譲を表す形を取る。服従のために、自らを大きく見せる服装や行為を止め、平伏して自らを小さく見せる。

賛美の戦略
屈服の極にあるのが、神を高める賛美である。上位者を高めるほど、下位者は身を低くしなくてすむ。賛美とは上位者の前で騒ぎ立てる事が承認された形式である。音楽は賛美に最も頻繁に付随するものである。

二重の権力
宗教と権力は連合しており、専制君主は神からの特別な庇護を主張する。見えざる権力は現実の権力構造のモデルである。神は統治者に対して、統治者は被統治者に対して最高権力を持つ。至高権力への服従が、支配者の世俗権力を堅固にする。

言語の権力-使者
言語による伝達機能の基本の一つは命令である。権力の根幹は命令して従わせる事。権力の連鎖が拡大して細分化すると、権力源に個人が入り込めなくなる依存のシステムが始まる。
至高神が下位の神々を伝達役にして統治者にお告げを伝え、王がそれに応じて行動する。宗教の創始者は神の使者なのだ。

5 罪と因果関係
宗教的治療と罪の追求
治療における以下の段階。

①災厄の体験
②専門家の介入
③審判(災厄の原因を明示)
④償いを儀礼にて行う。

病気を個人の生理学的状態に限定せず、社会的場全体の状況が悪いと解釈する。

現在の苦痛
病気は宗教との結び付きが強い。「なぜ」を解明する物語を宗教は提供する。出来事を筋道立てるため、元となる過失を説明し、災厄がどのように現れ、適切な手段をどのように乗り越えるかが述べられる。

教団の成立
因果関係に由来する信仰の成立と仲介役の存在。回復と安心を司る共同体。

仲介役-危険と好機
より多くを知る者が仲介役となる。伝統、儀式、知識、信念に従い、災厄を解釈する枠組みを提供する。

説明のためのモデル-拘束、怒り、けがれ
災厄を烏賊のように説明する。

①拘束(罠にかかった恐怖)
②神の怒りによる災厄
罪を告白する必要がある。
③穢れが伝染した
清めが必要とされる。

穢れと清めは、攻撃源を曖昧にしたまま状態を緩和する文化かもしれない。穢れへの恐れは原始的であるが、罪の概念は自意識の目覚めを反映するため現代的である。

穢れを作り出せば、重要人物の対面を保ちながら、間接的に責任を負わせる事が出来る。泥に足を突っ込む事は誰にでもあり得る。

「なぜ」という問いに答えるための上記の方法論。出来事が無意味である事への抵抗。

6 贈与の相互性
贈与の実相
序列や地位の表現方法。贈り物は常に返礼を必要とする。そのため、贈る事によって自らの地位を高める事が出来る。そして、報復も贈与の一形態である。

宗教における贈与
人間と神の交渉は、人間からの祈りと、神からの見返りを旨にする。

道徳体系の系譜?
相互性道徳体系の一形態である。相互性は初めから認識されており、協力が続く事を可能にする。

失敗する相互性-宗教的批判
宗教における神への贈与が返礼を伴わないという批判。それは贈賄であるし、豊かな者ほど神に愛される事になってしまう。しかし、人間に頼らない神を仮定しても、贈与が信仰から駆逐される事は無い。共同体内部での贈与品循環や序列意識を反映しているからだ。

成り立たない相互性-儀礼の諸々の事実
神の世界は人間世界とは隔たっているため、宗教的行為は欺瞞であるかもしれない。その矛盾を解消するために、神への捧げ物を火で焼く等して破壊する事がある。他にリサイクルや耐久性のある記念碑等。

贈り物と供養
供犠の主要な儀礼は聖なる屠殺である。供犠には饗宴がともない、食物を分け合う狩猟民の習慣が起源のようにも思えるとする。

忌避と供物-恐怖から安定へ
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の供犠の土台となるイサクの供犠の話は、脅迫に従う物語である。神の要求には説明や代償が無い。これは人類全ての不安に対する対応、追撃下で貴重品を投げ捨てる行動に遡るとする。

7 記号の有効性―意味の宇宙
記号の受け入れ- 占い
生物は周辺環境から合図を捉え、しかるべく反応する。人間では自然物の中に図象を見る。記号は媒介として兆と解釈される。記号は送り手と指示内容という意味論の構造で理解されるのだ。

記号を介した決定-神判
神判とは、自然を介して神々に語らせる手段である。神が監督する自然に委ねられた判断。

記号の創造-テリトリーと肉体
自らの領域にマークを付ける事は多くの哺乳動物に共通する所作である。人間が作り出す目印も「知覚に適する」世界を創造し、曖昧を消し去って、現実を本能的必要や意識的概念に一致させる。

保証される言語-宣誓
宣誓を有効にするための宗教。宣誓は、様々な社会的相互作用において必要不可欠であり、契約や条約、司法手続きの基礎となる。独立した証人 = 神が真実を保証すると仮定する。

結論
宗教は、不可視存在と真剣に意思疎通するための原始からの伝統である。

その基礎となる元とは情報共有の基礎となり、文字は客観性を創造した。書く事が一般的になると、文章と現実の齟齬を説明するための講釈が必要になる。

現代社会では、情報技術の発達により、共有情報やプログラムが個人から独立して存在するようになった。その結果、有効性の確認は神ではなくなるため、自然と人間を接続するための宗教は機能停止するかもしれない。

しかしながら、生物の基礎的条件が廃棄されないのなら、宗教的意味は存続するのではないか。

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