現実を生きるサル 空想を語るヒト

読んだ本の感想。

トーマス・ズデンドルフ著。2015年1月5日 第一版



人間を人間たらしめる要因に関する著者の考察。

以下の2つ。

(1)シナリオ構築能力
シナリオを作り出して熟考する能力

(2)自分と他人の「心」を結び付たい欲求
シナリオを他者に伝えたい欲求

以下の6領域からの分析。

①言語
人間以外の動物にも、言語を使用して意思疎通する種があるが、人間には表象的洞察能力がある。人間の描く絵は、何かを象徴しており、写実的に何かを模写するが、他の動物は具象画を描く事が出来ない。

人間は、絵を手掛かりに、絵が指し示す物を推察出来る。さらに概念を象徴する言葉を使用する事が出来る(メタ表象)。

「再帰性」という文法の性質に著者は注目しており、例えば「○○している◆◆」という言葉に「▼▼という性質を持つ」という言葉を付加する事で複雑な情報を伝達可能。

○再帰性の無い言語
アマゾンに住むピダハン族やオーストラリアのグヌィング族の言語には再帰的構文が無い?そのため、「彼等は突っ立ていた。彼等は私達を見ていた。私達は闘っていた」のように文を続ける表現が為される。「彼等は突っ立て、私達が闘うのを見つめ続けた」のような表現が出来ない。

***************

人間以外の動物は、特定の言語音を発しても、概念を表す表現や、語の効率的な組み合わせを可能にする文法規則が見られないとする。

②先見性
人間の記憶には、手続き記憶(物事のやり方)、意味記憶(事実についての記憶)、エピソード記憶(出来事についての記憶)があり、エピソードを記憶する場合は、記憶の要点を利用し、過去を組み立て直して再構成する事になる。

そして人間はエピソード記憶に基づいて未来を見通す事が出来る。現実とは別のあり得る世界を想像する能力。

③心の読み取り
心の社会的ネットワークに自らの心を結び付たい欲求。

「心の理論」は人間特有のもので、人間だけが行動を心的要素で解釈し直す能力を持っているのかもしれない。著者は類人猿と人間の「心」の違いについて確信を抱けていないように思える。

人間だけが目標や理想を他者と共有したがる欲求を持つ可能性。

④知能
人間の知能には、情報を蓄積して処理する根本的能力があり、推論や演繹によって理論的に解決策を探る事が出来る。

シナリオを情報の塊として複雑を抽象化し、階層的認知を実現する。例えば、「学位を得る」という情報は、講義や勉強、試験という様々なシナリオを包括しており、さらに下位の情報を含んでいく。

こうした階層的認知が個別情報を捨象した抽象的思考の本質である。

⑤文化
個々人を超えた社会によるサポートにより、高次シナリオを構築する事例。

文化は生物学的遺伝とは異なる遺伝システムとして機能する。

猿等の動物も行動的伝統を持つ事があるが、社会的に維持される行動特性は少ない?さらに人間には余計な行動まで真似る過剰模倣の傾向があり、それが文化を蓄積する事に役立つとする。過剰模倣は人間が他者と心的に結び付きたいと思う事により生じるのかもしれない。

⑥道徳性
考えや行動を善悪に分ける判断。

人間には互恵や大義を好む習性がある。さらに自らが学んだ規範を他者に教えたがる。

集団が規範に従おうとする共有性志向が人間特有の性質である可能性。

*******************

心中でシナリオを作り出し、他者と効果的に共有する特性を人間の本質とする?

著者は、実験情報や化石、遺伝子情報に基づいて客観的な誰もが納得出来る理論を構築したいのだと思う。しかし、自らの理論がどこまでも仮説でしかない事に悩んでいるように思える。

そうした人間思考の限界を考える本であるのかもしれない。

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