私たちは今でも進化しているのか?

読んだ本の感想。

マーリーン・ズック著。2015年1月25日 第1刷。



「人間の進化段階が原始時代に適応しているため、生活を原始時代に戻した方が健康になる事が出来る」という意見への批判?

実験心理学の分野では、適応が数世代で発生する事例が観測される。著者が研究しているコオロギは、5年(20世代未満)で、羽の突然変異によって雄が鳴かなくなった。

現代人は、古代人についての情報を「現代世界を生きる狩猟採集民」に求める事があるが、人類学者の意見では現代狩猟採集民の生活は、数世紀前の先進国の生活を反映しているという。

<乳>
人間以外の哺乳類は、一定年齢になれば乳を飲まなくなる。ほぼ全ての乳にはラクトース(乳糖)という糖が含まれており、消化するにはラクターゼという酵素を必要とする。

成人のラクトース消化能力は子供の10%とされる。ラクトースが分解されないまま大腸に進むと、食物を消化する微生物がラクトースを発行させてメタンと水素ガスを作る。ガスが胃腸管の下方に溜まると腹部の張り、痙攣、下痢の原因となる。

人間では成人が乳製品を消化する能力を持つ地域は、北欧(特にスカンジナビア半島)、アフリカや中東の一部に集中しているらしい。現存する最も古い畜牛の骨は、紀元前7000年程度のものとされ、短期間にラクトースへの適応が生じた事になる。

ラクターゼ活性持続遺伝子を持つ人々の繁殖成功度が3%上昇すると、約7000年(300世代~350世代)の後には、ラクターゼ活性持続遺伝子が広範囲に普及するらしい。

さらにアフリカ由来のラクターゼ活性持続進化は、欧州とは異なる遺伝子から生じている(ケニア南部、タンザニア北部で家畜が飼育され始めるのは紀元前1000年頃)。

⇒収斂進化の一例。文化が進化を規定する

<澱粉>
澱粉摂取量が多い地域の人間集団と、少ない地域の人間集団ではアミラーゼ遺伝子が異なる。澱粉摂取量が多い人間集団では、70%以上の人間が少なくとも6個のアミラーゼ遺伝子を持つが、澱粉摂取量が少ない人間集団ではアミラーゼ遺伝子を持つ人間の割合が37%まで低下する。

チンパンジーの唾液に含まれるアミラーゼの量は人間の1/6~1/8であり、同様に初期人類もアミラーゼ遺伝子の数が少なかったと推測される。

人間の体内に潜む微生物の遺伝子が人間と混ざり合う事例も観測されており、一日平均14gの海藻を食べる日本人では、海藻の炭水化物を分解する微生物の遺伝子が腸内細菌叢(腸内フローラ)から見つかるらしい。

<走る事>
人間は長距離走に適応しているという意見。短距離では四足動物より不利で、単位体重当りで同程度の酸素量を消費する生物と比較すると、走る時には倍のカロリーを必要とする。

しかし、犬やハイエナ、ヌー等を例外とすると、長距離走では馬よりも人間の方が有利かもしれない。

人間は汗をかく能力(体表面から水分を蒸発させて体を冷やす働き)を発達させており、体全体を効率的に冷やす事が出来る。さらに、人間は走る速さを滑らかに調節可能(馬は速足、はやがけ等の数種類しかない)であり、消費酸素が大きく変化しない。さらに、移動速度に合わせて、呼吸方法を変えて肺への酸素供給量を調節出来る。

⇒獲物を長時間追跡し、獲物の体温が上がり過ぎた時に休ませない狩猟方法を連想させる

南アフリカの科学者ルイス・リーベンバーグがカラハリ砂漠のブッシュマンを取材した記録。3人~4人が水を大量に飲み、気温が39℃~42℃の間に狩りを開始する。獲物が日陰で休息出来ないように追跡し続け、獲物を疲れさせる。2時間~5時間の狩りで、移動速度は平均時速6.3㎞だったが、80%程度の狩猟成功率で、ライオンや猛禽の狩りよりも成功率が高いらしい。

<現代でも発生している人間進化>
進化が発生する機構を以下の4つとする。

①遺伝子浮動(偶然発生する遺伝子頻度変化)
②遺伝子流動(遺伝子を持つ個体の移動による変化)
③突然変異(環境変化等による遺伝子変化を引き継ぐ)
④自然選択

米国マサチューセッツ州で米国立心臓肺血液研究所が行うフレーミングハム心臓研究では、1948年から継続的にフレーミングハムの住人を対象に2年~4年おきに健康診断を行っている。

健康診断結果を調査すると、フレーミングハムの女性達は、世代を経過する毎に低身長、小太りになる一方でコレステロール値と血圧が低下していた。閉経の年齢も上がっていき、生殖可能期間が長くなっている。

⇒自然選択の一例を調べた研究

工業化以前の社会では身長が高くなる選択が働いたが、マサチューセッツのような工業化された土地では、低身長の女性の方が出産率が高い?

チベット人の高地適応も自然選択の一例とされ、紀元前4000年頃~紀元前1000年頃にチベット高地に住み始めた人々が安静時の呼吸を早くすることによって高地に適応しているらしい。

以下は、「スポーツ遺伝子は勝者を決めるのか?」の記事へのリンク。アンデス、チベット、エチオピアの高地に住む人々についての記述がある。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2013.html

幾つかの遺伝子が纏めて受け継がれたと思われる領域(セレクティブ・スイープ)を見つける事で、人類の自然選択を検知出来るかもしれない。

*****************

著者は、進化に終点があるという意識を問題視する。何かに秀でても、その技術を失わずに次の段階に進める訳ではない。

全ての遺伝子は常に変化しており、完成系はあり得ない。

過去を賛美する人間は、人間の遺伝子と環境が協調していた時代が存在した事を前提にしているが、そのような時代は存在しなかったとする。

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