荒木飛呂彦の漫画術

読んだ本の感想。

荒木飛呂彦著。2015年4月22日 第一刷発行。



王道漫画の描き方。荒木先生は、以下の本を参考にしたらしい。



第一章 導入の描き方
漫画の最初の1ページ目は漫画の「予告」である。

絵やタイトル、セリフの工夫。タイトルにイメージを集約し、漫画の内容が伝わるようにする。主人公の名前が入ったタイトルは、作者が主人公を大切にしている感じが伝わるとする。

1コマ目の基本は、「5W1H」が明確になる事が基本。複数の情報を出し、読者が興味を持つようにする。

荒木先生のデビュー作『武装ポーカー』では、表紙に「弾を受けて引っ繰り返っている男」を描く構図にし、1ページ目に語り部を登場させた。普通に主人公を描くのでなく、「異色」の要素を入れたかったらしい。

第二章 押さえておきたい漫画の「基本四大構造」
以下が基本四大構造。

①キャラクター
②ストーリー
③世界観
④テーマ

上記を「絵」で統括し「セリフ」で補う。

基本四大構造の内、一つを中心に漫画を描く事も可能とする。キャラクターの行動や性格だけで動く漫画(サザエさん、こちら葛飾区亀有公園前派出所等)や世界観を中心に描く漫画(AKIRA、蟲師等)があるが、基本四大構造のバランスを意識する事が大切とする。

第三章 キャラクターの作り方
漫画のキャラクターでは「動機」が大切。どのような目的でストーリーの中にいるのかを、最初の1ページ目か2ページ目で読者に伝える必要がある。

少年誌の場合、動機が正義や友情のような自然な倫理観に照らして好ましいものである必要がある。その上で主人公の弱点や欲望等を加味していく。

「卑怯」や「間抜け」は嫌われる。「勇気」が最も共感される。そして、悪のキャラクターは、秘められた欲望を存分に発揮する存在であり醜い感情を解放させる。そうして主人公と敵役を対比する。

キャラクターを作る際に、身上調査書によりキャラクターの属性を可視化する。荒木先生の場合、60近くの項目があるらしい。長所だけでなく短所も設定し、それを克服する努力も描けるようにする。

◎空条承太郎
『ジョジョの奇妙な冒険 第三部』の連載一回の目的は、「空条承太郎」というキャラクターを描く事にあった。冒頭の3ページで、幼少期には素直だが、成長して乱暴になり、その次には牢屋に入っている事を描く。読者の意表を突く目的。

牢屋を頑丈に描き、擬音でインパクトを出す。空条承太郎のファッションは学ランにして現代の話と理解出来るようにして、体の大きさで神話性を表し、学ランの日常性と対比させる。

◎魔少年ビーティー
荒木先生初の連絡作品「魔少年ビーティー」は最初は人気が無く、最終話の読者アンケートのみ高評価だった。その理由を、最終話の敵が、それまでの肉体派とは異なる頭脳派で、先の展開が読めない事と「主人公が友情のために戦う」という動機付けにあると分析。この経験で王道についての理解が深まったとする。

第四章 ストーリーの作り方
仮に漫画でストーリ展開ばかりを描くと密室推理小説のようなものになり、キャラクターが動かない欠点が出てくる。キャラクターがストーリーを決定するのが自然で、その逆は王道に戦いを挑む事になる。

しかし、キャラクターは時代性を反映するものであり、キャラクター中心の漫画は時代遅れになる可能性がある。そうした漫画は新しいエピソードを加えて現代風にアップデートし続ける必要がある。エピソードはキャラクターの悩みや冒険を担う。エピソードの連なりがストーリーになる?

以下は、ストーリーの流れ。

起:
主人公を読者に紹介する。

承:
主人公が敵に出会う。

転:
主人公が窮地に陥る。

結:
勝利等のハッピーエンド。

次に、「プラスとマイナスの法則」があり、主人公の気持ちや置かれている状況が上がっていくように心がける。ストーリーの基本は、主人公は常にプラスであり、プラスを積み重ねるアイディアがストーリー作りの要となる。

主人公が停滞して留まっていると読者がうんざりしてしまう。

1980年代には、プラスが積み上がる状態を作り出すために、トーナメント制が流行した時があるらしい。順当に勝ち上がる事を表現出来る。トーナメント制の欠点は、一度、優勝という頂点を極めると、次の戦いはまた一から始める事。上がりきった後にマイナスになってしまう。

そこで、荒木先生は、『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部で「双六方式」を採用する。その場その場で違う敵と戦うが、必ずしも前より強い敵とは限らないので常にプラスというインフレ状態にならない。プラスになっているのは、主人公達が常に地図上の目的に近付いている事である。

プラスマイナスが0になるパターンも読者の感動を呼び難いとし、壁にぶつかってヒーローを辞めたり、主人公の偽物が登場する展開は、最終的には元の状態に戻るため面白くないとする。

しかし、あえてマイナスを描くためにゾンビ映画のように、ひたすら人間を捨てていくマイナスだけを描く展開もありとする?

**************

荒木先生のストーリの作り方として、「主人公が勝つ」という着地点だけを決めて、「どのように勝つか」は決めずに描き始めるとする。「どのようなキャラクターがいるか」を考え、「そのキャラクターを困難な状況に放り込む」。

キャラクターが出来上がっていれば、ストーリーを作者が考えていなくても、主人公が勝手に動いていく。

第五章 絵がすべてを表現する
絵の描き方には以下の2つがあるとする。

①リアル化
リアリティを追及する描き方
②シンボル化
一目でそれが何か分かるように描く

全てにリアリティを追及していると、読者がどこを見てよいか分からなくなる。大事な部分はリアルでも、すっきりさせる箇所は白く描く等する。

人物画のデッサンは、顔の長さの1/2が目の位置であったり、人体の肘は腰の位置にある等、美術用の解剖書籍等で人体の法則を学ぶべき。

第六章 漫画の「世界観」とは何か
世界観は背景描写であり、キャラクターを置いてみたい場所である。

世界観はリアリティであるので、架空の世界なりに筋が通っている必要がある。そのため、架空の世界を描くには、細かい箇所までの調査が必要である。

そして調べた事を全て描くとは限らない。キャラクターの行動や運命を描くべきで、世界観の説明を延々と続けてはならない。世界観は、キャラクターの行動やセリフに盛り込んで描くべき。

第七章 すべての要素は「テーマ」につながる
テーマとは、作者の考え方であり、自分がどう生きるべきかという事である。

『こちら葛飾区亀有公園派出所前』のテーマは、大人でありながら子供の心を持った警察官が起こす日常騒動のスケッチを描く事で一貫しており、冒険物語として亀有から離してしまう等のブレが無い。

サッカー漫画を描いていて、友情を描こうして人気が出なかったとする。この時、微妙な戦法を描く等の別のテーマに移行すると作品が破綻してしまう。自分のテーマを強く信じる事が大切で、本当にどうしようもなくなったら色々変えるのでなく、そのテーマをリセットするしかない。

実践編その1 漫画ができるまで
 ―アイディア、ネーム、コマ割りの方法

漫画の始まりはアイディアである。以下をメモしておく。

①自分が良いと思った事
②自分と違う意見、疑問に思う事、理解出来ない人
③怖い出来事、笑える出来事、トラウマになりそうな出来事

そして、アイディアを元に編集者と打ち合わせし、編集者と意見交換した事を書き足していく。その後、シナリオ、ネームと続いていく。欧米の漫画のネームは「良い構図の絵」が重要視されるが、日本の漫画のネームは「キャラクターの心の動きや表情」を細かく描くとする。

実践編その2 短編の描き方
 ―「富豪村」(『岸部露伴は動かない』)を例に

「富豪村」のエピソードは、観光地における別荘族の会話から生まれたとする。別荘族に見られる人間の自惚れ、それに相対する自然への敬意、マナーが一体になった話 = マナーの戦い。

「岸辺露伴を別荘地での試験で誰かと戦わせる」という状況設定のみを決めて、最後に岸辺露伴が勝つ事は決まっていても、そこにいくまでの過程は描きながら考えていく。

導入となる最初の3ページは予告として、岸辺露伴が準備体操をする姿を描き、その異様を暗示する。

続くページに女性編集者との打ち合わせシーンを挿入し、岸辺露伴との会話を通じて女性編集者の自惚れを描く。

そして富豪村の空撮写真のカットで世界観と異様な状況を表現する。読者にはまずキャラクターに興味を持って貰うため、空撮写真はキャラクター紹介の後に挿入する。

そして、富豪村にて案内役を登場させる。豪邸なのに小さい男の子という事で意表を突き、非情に礼儀正しい事が逆に不気味と思わせる。

ここでセリフや行動でマナーの先生のチェックを受けたらしい。

富豪村に着いてからは、基本的に岸辺露伴から見た視点で背景を描き、岸辺露伴と共に「中に向かっていく」という空間構成にしている。そしてカットバックという効果線を入れていき、絵にスピード感や迫力を出す。

そして、マナーに則て勝つというルールは決して外さない。

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