ヤバい経済学

読んだ本の感想。

スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー著。
2006年5月11日 発行。



統計情報に基づいて見解を策定する試み?客観的であろうとしながら、主観との兼ね合いが難しいように思えた。

序章 あらゆるものの裏側
本書が社会常識とされている事柄を検証する本である事について。

道徳は理想的な世界を提示するが、経済学は現実を表すとする。

第1章 学校の先生と相撲の力士、
    どこがおんなじ?

八百長をするインセンティブが高い。

インセンティブには、以下の3種類があるとする。

①経済的(報酬や罰金)
②社会的(周囲の反応を気にする)
③道徳的(自らの内なるルール)

報酬や罰金を設定する事により、道徳的インセンティブが経済的インセティブに移行し、逆に意欲低下を引き起こす事例がある。

<イスラエル ハイファにある保育園10カ所での実験>
最初の4週間の観察では、俳句塩1カ所あたり、週8件の遅刻があった。そこで、5週目以降に子供を迎えに来るのが10分以上遅れた場合、3ドルの罰金を課すことにした。すると、週あたりの遅刻件数は20件にもなった。

⇒道徳的インセンティブが経済的インセンティブに移行し、少額の罰金が免罪符になってしまった

同様の事例が以下にもあるとする。

①シカゴ教育委員会(CPS)
1996年から年毎の標準テストを導入。点の低い学校は観察処分を受け、生徒が進級するにはアイオワ基礎学力テストで足切り以上の点を出さなくてはならなくなった。

著者は、上記がインセンティブとなり、多くの教員が部分的に生徒の解答用紙を改竄している可能性について考える。

1993年~2000年のCPS管轄下の学校で学んだ3年生~7年生の生徒全員の解答を調査(毎年約3万人)。すると、同じクラスで後半部分の解答が全く同じパターンが見受けられ(前半部分は間違いだらけでも後半は正解しており、後半の他の部分は空欄である生徒もいる)、シカゴ全体で最低でも全体の5%は解答用紙を改竄している可能性が高い事が分かった。

②大相撲
1989年1月~2000年1月に行われた上位力士281人による取組3万2000番を分析。

すると、千秋楽になって7勝7敗の力士が8勝6敗の力士に勝つ確率は79.6%(期待勝率は48.7%)であり、9勝5敗の力士に勝つ確率は73.4%(期待勝率は47.2%)であった。

著者によると、八百長は個別の力士の成績でなく、力士が所属する部屋同士でも行われているようで、ある部屋の力士が勝利すると、その部屋に所属する別の力士が負けた力士の所属する部屋に勝ちを進呈する傾向があるらしい。

さらに、八百長報道のすぐ後に開かれた本場所では、7勝7敗力士の勝率は50%程度になるらしい。

<ポール・フェルドマンの話>
1984年からベイグルを販売する商売を始める。ベイグルと代金入れを会社のカフェテリアに届け、ランチタイムの前に代金と売れ残りを回収する。

彼が商売を始める前に在籍していた会社での代金回収率は95%だったが、他では90%を上回っていれば良い方だった。

代金回収率は1992年から緩やかに低下しており、2001年夏には約87%だったが、2001年9月11日を境に回収率は2%上がり、それ以降はそれほど下がっていない。

また、小規模オフィス(数十人規模)の方が大規模オフィス(数百人規模)より回収率が3%~5%高い。小さな地域社会は犯罪を抑制するインセンティブが高いとする。会社での地位が高い人間がいるフロアの方が回収率が低いらしい。

さらに、悪天候だと回収率が低下し、クリスマスの週には回収率が2%下がるとする(休日や祭日は同様の傾向)。

第2章 ク・クラックス・クランと不動産屋さん、
    どこがおんなじ?

一般大衆には分かり難い情報を握っている事が似ているとする。秘密組織や難解な市況情報等。

人種分離政策を推進するKKKは1915年に公開された映画『国民の創生』によって気高く描かれた事を機に、1920年代には構成員800万人を誇ったとする。

1940年代に、ステットソン・ケネディという人物がKKKに反対する運動をするため、使っている合言葉や符牒、儀式を明らかにした。ラジオ番組『スーパーマンの冒険』にて、KKKの合言葉等をネタにして笑い者にする事でKKKの勢いを削いだとする。

そうした情報の非対称性(一般大衆は自分達の事を知らない)は、不動産屋についても当て嵌まり、インターネットによって情報優位が揺らいでいる。

第3章 ヤクの売人はどうしてママと住んでるの?
稼ぎが少ないため、麻薬の売人は家族と同居せざるを得ない。

1989年からシカゴ大学社会学博士課程に学んだスディール・ヴェンカテシュの研究。貧困研究の実施調査。

ギャング・リーダーJTへ取材。

ギャング組織は、ほとんどの米国企業と変わらなかった。JTの組織は、さらに大きな組織傘下の100ある下部組織の一つで、20人ほどからなる中央組織(取締役会)の配下だった。

JTは、与えられた12ブロックで麻薬を売る権利の使用料として、売上高の20%近くを上納していた。JTには3人の幹部(用心棒、金庫番、運び屋)がおり、売人を25人~75人、売人予備軍を200人ほど抱えていた(予備軍は上納金まで支払う)。

スディール・ヴェンカテシュが記録した4年間で、JTの組織は売上が4倍にもなった(月平均1万8500ドルが月平均6万8400ドルになった)。他に上納金やミカジメ料もあり、3年目の月次収益は3万2000ドル程度で、麻薬原価や傭兵費等で月平均1万4000ドルの費用があった。そしてメンバーへの取り分を払うと、JTの月次純利益は8500ドルになる。

JTの所属するブラック・ディサイプルズには、こうした下部組織が100あり、20人のボス達の年収は50万ドル程度、JTのようなリーダー層は年収10万ドル程度になる。しかし、JTは50人ほどの歩兵達に月次で7400ドルしか支払っていない。歩兵の時給は3.3ドル程度になり最低賃金より低い。

ギャング組織では、上位2.2%(120人)が収益の半分以上を取る事になる。さらに、底辺のメンバーは4年間で4人に1人は殺されている。

JTのギャングが商売をしている界隈では、56%の子供が極貧の生活をしており(全国平均は18%)、78%は片親の家庭であり、所得平均値は年1万5000ドルで米国の全国平均の半分以下だ。

彼等にとって麻薬の売人は比較的良い商売だ。そして上位層は平和を望むインセンティブが高いが、下位層は抗争で手柄を立てるために争うインセンティブが高い。

1970年代に安価に純化コカインを生成する技術が発見された事で、ギャングが長く勤められる組織になったとする。その結果、1980年代に黒人の乳児死亡率が急に上がり、白人児童との成績格差も広がり、犯罪発生率も上がったとする。

第4章 犯罪者はみんなどこへ消えた?
中絶によって犯罪が減少する可能性について。

1990年代に米国の犯罪発生率が減少し、非暴力犯罪は40%下がったとする。著者は以下の意見を検討する。

①好景気(あまり有効でない)
1990年代に米国の失業率は2%低下したとする。失業率が1%低下すると、非暴力犯罪が1%減るという研究がある。そして、暴力犯罪の低下を説明出来ない。1960年代は好景気だったが犯罪発生率も増加した。

②刑罰の強化
犯罪減少の1/3が説明出来るとする。1960年代に有罪判決の比率が下がった事を犯罪発生率上昇と結び付ける。

③画期的な取り締まり戦略
割れ窓理論等。著者は、あまり効果が無いとする。ニューヨーク市の殺人率は、1990年の30.7件/10万人から、2000年の8.4件/10万人まで73.6%低下した。しかし、割れ窓理論が採用されるのは1994年からだが、それまでに暴力犯罪は20%近く減少していた。

④警官の増員
1990年代の犯罪減少を10%程度説明するらしい。米国における人口一人あたりの警官の数は1990年代に14%増加した。1960年~1985年にかけて警官の数は犯罪の数に対して相対的に50%以上も下がっている。

⑤高齢者の増加
人口構成に占める高齢者の割合が増えた。平均的65歳が逮捕される可能性は10代の1/5程度。

他に銃規制強化や麻薬市場の変化等。

◎中絶
1960年代後半に、一部の州が中絶を認めるようになり、1973年の「ロー対ウェイド」裁判の判決で中絶の合法化が全国に広がった。

1980年に中絶の件数は年間160万件(生まれた子供2.25人に対して1件)であり、そこで横這いになった。

中絶された子供は、他の子供より貧乏である可能性が50%高く、片親である可能性が60%高かった。そして、中絶が一般的になった世代が10代後半になる頃に犯罪発生率が下がり始めたとする。

それは、中絶を1971年から認めていたニューヨーク、カリフォルニア、ワシントン、アラスカ、ハワイ等で顕著であり、1988年~1994年で他の州より凶悪犯罪が13%減少しているらしい。中絶率が高い州は低い州に比べて犯罪発生率が30%減少している。

第5章 完璧な子育てとは?
遺伝子によって子供の性格や能力の50%が決まるとする。養子を調べると、育ての親より産みの親の影響の方が大きいらしい。

ただし、人種間の文化の違いがあり、黒人には「シロい振る舞い」 = 勉強等をしている事は裏切り行為と見做される可能性があるとする。

養子に関する調査の続きでは、育ての親の方が教育水準も所得水準も高いが、それが子供の成績とは相関しない。しかし、養子
が大人になる頃には、養子に出されていない同じような子供と比較すると、教育水準や所得水準が高い傾向があるとする。

第6章 完璧な子育て、その2-あるいは、
    ロシャンダは他の名前でもやっぱり甘い香り?

名前の付け方について。

黒人経済学者 ローランド・G・ライヤー・Jrは、黒人が成功出来ない理由を考えた。黒人と白人では子供の名付け方が全く違い、その違いは1970年代以降であり、黒人至上主義運動と関係している可能性がある。

ある年にカリフォルニア州で生まれた黒人女子の40%は、その年に生まれた白人女子約10万人に一人も見られない名前をしていた。

そうした黒人特有の名前を付けるのは、黒人が大多数を占める地域に住む、未婚、低所得、低学歴、10代の女性であり、黒人特有の名前を付けるのは地域社会との連帯の意思表示である。

以下は、白い名前、黒い名前の1位~5位。

白い女:
①モリー
②エイミー
③クレア
④エミリー
⑤ケイティ

黒い女:
①イマニ
②エボニー
③シャニース
④アライヤ
⑤プレシャス

白い男:
①ジェイク
②コナー
③タナー
④ワイアット
⑤コディ

黒い男:
①デショーン
②デアンドレ
③マーキス
④ダーネル
⑤テレル

監査調査では、白い名前で履歴書を送付した方が、黒い名前で履歴書を送付するよりも就職面接に呼ばれ易い。幅広く情報を分析すると、名前と親の社会・経済的地位と相関がある。

以下は、親の教育水準が低い白人女子の名前1位~5位。

①エンジェル
②ヘヴン
③ミスティ
④デスティニー
⑤ブレンダ

全体的な変化としては、名前の数が増えており、出入りが激しい事(黒人男児の名前で1990年に上位10にあった名前の内4つが2000年にはリストから落ちている、この4つに変わって入った内の3つは2000年の1位~3位になっている)。

明確なパターンとして高所得、高学歴の親で流行った名前が、やがては低所得・低学歴の親にお伝わるとする。名付けに影響しているのは有名人ではなく、近所にいる裕福な家族だ。

終章 ハーヴァードへ続く道
第5章で引き合い出した白人児童(シカゴで生まれ賢い堅実な両親を持つ)、黒人児童(片親で10代は不良だった)のその後について

黒人は、第7章に登場する経済学者ローランド・G・フライヤー・Jrになり、白人はテロリスト テッド・カジンスキーとなった。

両者ともハーヴァード大学出身だ。

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