なぜ人類のIQは上がり続けているのか?

読んだ本の感想。

ジェームズ・R・フリン著。2015年6月12日 第1刷発行。



人類の知能指数は時代とともに上がり続けている。

以下は、「知能は伸び続けるか」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-854.html

以下は、「周期的な変動が発生する原因は何か?」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-858.html

1 はじめに
時代と場所が人間の知性にどのように影響するか。

2 知能指数と知能
以下は、主要な知能検査。

①レーブン斬新的マトリックス検査(RPM)
1938年に、米国の心理学者レーブンによって考案される。法則性のある幾何学図形が与えられ、一箇所かけている図柄を選択肢から選ばせる。

⇒特別な知識を必要としない「流動性知能」を測定する

②ウェクスラー成人知能検査(WAIS)
米国の臨床心理学者ウェクスラーによって考案される。適用年齢は16歳~89歳。1955年に「WAIS」が発表され、その後に改訂版が発表される。児童向けのウェクスラー児童知能検査(WISC)もある。

⇒経験や知識の豊かさ = 「結晶性知能」を測定する

③WAIS-Ⅲ
1997年に発表される。言語性IQと動作性のIQの和で現される。2008年に発表された「WAIS―Ⅳ」では言語性IQと動作性IQの区別が撤廃され、下位検査は4つの群指数にカテゴライズされる。

以下は、「知能検査を利用した特性理解」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-1162.html

上記の様々な知能検査は向上し続けており、その現象を「フリン効果」と呼ぶ。RPMでは、20世紀中にIQが50ポイント上昇しており、WAISでは類似(共通性を分類する能力)の項目が同程度に上昇している。

世界的に、物事を分類して理解する科学的見方が一般化してきており、自分の利益に主眼を置く実用的な見方が廃れている?法則性を見い出し、仮定的問題や抽象的な事柄に論理を当て嵌める。具体的な根拠の無い推論を苦手とする人間には困難な課題。

⇒世界を操って利用するものとする見方から、世界を分類するという見方への変化

著者は産業革命が社会に及ぼした影響としている。

○BIDSアプローチ
「脳」、「個人差」、「社会動向」を3つの異なるレベルとして扱う。

・個人差
各人の能力差は、課題の認知的複雑性(流動性)と認知的複雑性(結晶性)に応じて、互いに相関している。

・社会動向
現実世界で求められる認知能力は時代によって異なる。

・脳
認知能力の訓練によって特定の神経細胞群の発達具合が異なる。

3 途上国
先進国と途上国のIQには大きな差がある。

それは知能の延びが原因?1917年の米国人の平均IQは72だったが、2010年頃?には平均IQが100になっている。

WAISの下位検査では、現代的下位検査(理解、絵画完成、積木模様、符号、類似)の項目が視覚文化の広まりによって向上した?著者は科学的見方が一定程度の普及した結果、今後は類似がIQ上昇を説明する因子では無くなりようになると推測する。

米国における知能検査では、以下のようになる。

WISC:
1948年~1978年では類似の上昇(13.85ポイント上昇)は現代的下位検査の上昇(6.78ポイント上昇)の2倍程度だったが、1995年頃にはほぼ等しくなっている(1989年~2002年で、類似も現代的下位検査も6.72ポイント上昇した)。

WAISでは、逆に類似の上昇が大きい。2006年~2016年?で類似が9.36ポイント上昇し、現代的下位検査は5.01ポイントの上昇。

**************

著者は栄養改善を先進国におけるIQ上昇の要因とはしていない。各国における富裕層と貧困層のIQ上昇の記録は栄養改善説を支持しない。

以下は、各国の状況。

ケニア:
1984年~1998年で、レーブン色彩マトリックス検査では13.85ポイントの上昇を見せた(著者はこの値は実際より5ポイント程度課題評価されているとする)。1984年以降もIQが上昇し続けているノルウェー以外では存在しないとする。

トルコ:
1977年~2010年で、ブルサ市等の村の小学5年生に人物画法テスト(DAP)を実施。IQは17ポイント程度上昇していた。1977年時点では男女のIQに有意な差は無かったが、2010年には女性が約6ポイント男性を上回ったとする。21世紀末の早い時点でトルコの経済や平均IQはフランスと並ぶとする。

スーダン:
1987年~2007年にかけて全国的にIQが上昇している。全検査IQが4.05ポイント上昇。サンプルの年齢中央値は50歳であり、1937年生まれ(1948年頃の学校教育)と1957年生まれ(1968年頃の学校教育)を比較している事になる。

動作性IQが7.2ポイント上昇し、組合せ、符号の上昇が著しい。一方で類似は3.45ポイント下がっている。

著者の意見として、スーダンの人々は実用的見方に縛られている。教育制度はイスラム教に基づき、人間性、宗教的価値、物理的本質の普遍性が基礎になっている。一方では、テレビやインターネットによって現代文化と接する機会も増えている。

1964年と2006年に人物画知能検査(DAM)の標準化テストを行う(サンプルは4歳~10歳)と、12.19ポイント上昇し、トルコより上昇値が劣る。

中国:
1936年~1986年にかけて都市部の成人IQが22ポイント上昇し、欧州の上昇を下回る。中国のIQ上昇パターンでは言語性IQと動作性IQの上昇値が同じで、類似や積木模様は下がっている。分類能力や抽象概念の利用を促す社会的近代化が発生していないため?

4 死刑、記憶喪失、政治
米国の最高裁判所では、IQ70以下の人間(人口の下位2.27%)の死刑を免除している。しかし、これは知能の全体的上昇を反映していない。20年前の基準でIQ76であっても、現在の基準ではIQ70となる。

◎ドーバート基準
専門家の証言を証拠として採用する基準?

・理論や方法は検証可能か
・理論は同業者から評価され、発表されているか
・手法の誤差率が評価において明確化されているか
・標準的手法が明確にされているか

平均的米国人のIQは20世紀において30ポイント上昇しており、知能指数分布も上昇している。

この問題は複雑で、IQ項目の全体が向上しているのなら、IQ40以下の人間だけを臨床的な知的障碍者とするだけだが、IQ上昇は部分的に発生している。下位者のIQは、語彙力や分類能力で一定程度上昇しているが、実用的知能では上昇していないとする。

シュナイデスル = オーメン非言語式知能検査(SON):
3歳~6歳向けの知能検査。

オランダにおいて、精神年齢3歳~6歳の成人(IQ35~IQ55)に1975年~1996年に実施?3歳児~6歳児では、21年間で5.9ポイントの上昇を示し、年間0.281ポイントの上昇で、米国の基準値0.3ポイントに近かった。同程度の精神年齢の知的障碍者に実施したところ、粗点は正常児の2倍上昇した。

***************

同様の問題は記憶障害にもあり、海馬が萎縮した患者にもフリン効果が現れると、過去の人間と比較する事で記憶喪失の症状が見過ごされるかもしれない。

5 若さと老い
①世代間の差について
1950年?~2004年間のWISCやWAISの下位検査(知識、数学、単語)を比較する。

「単語」では成人では17.8ポイント上昇している。成人と児童の上昇値の差は13.4ポイント。知識の差は6.25ポイントで、数学の差は1.2ポイント。

単語項目の上昇は、学校卒業後のビジネスの世界に関係していると思われ、就職は大学生活よりも影響力が大きいとする。

単語で上昇幅が大きいのは表現語彙力で、理解語彙力の上昇は表現語彙力の28%に留まる。それは社会の変化にも現れ、1950年まで10代のサブカルチャーは存在していなかったとする。若者独自の話し方の登場。

②賢い脳への老化の影響
WAISにおいて、下位検査を4つのグループに分ける。

・言語理解:単語、知識、類似

・作動記憶:算数、数唱

・知覚統合:積木模様、視覚パズル、行列推理

⇒分析能力。その場で問題を分析して解く能力

・処理速度:符号、記号探し

上記の4項目で調査をすると、IQの高さは「言語能力」で有利に作用し、「分析能力」では不利に作用した。

高齢者と若者のIQ値を比較すると、同年齢の平均より30ポイントIQ値が高い88歳の言語理解は、同時代の平均より30ポイントIQ値が高い17歳の平均を4.2ポイント上回った。

「分析能力」では、賢さの負担が大きく、平均より30ポイントIQ値が高い人間同士で比較すると、72歳では17歳の22.5ポイント下回るのに対し、低い人間同士では13.35ポイント下回る。

⇒言語能力における賢さの特典と、分析能力における賢さの負担。賢いほど分析能力が老化によって衰える事を示唆している?

著者は、神経細胞や脳構造を計測する事で加齢の影響を調査出来るとしている?

6 人種と性別
GQ差:
流動性知能によってIQ検査の下位項目に重みづけをする。単語のは符号の2倍等。

黒人と白人のGQ差はIQよりも差があり、流動性知能の違いから複雑な問題を解く事が困難とする。1972年以降、黒人のIQは白人のIQに5.5ポイント近付いているが、GQは5.13ポイントしか近づいていないとする。

**************

女子の方が早熟であり、男子は時間をかけて成長する。RPMでは、14歳頃に男子が女子に追い付き、差は5ポイント程度になるとする。

大学生の平均IQを比較すると、男性の方が高く、女性の自制心の高さを表す?

この辺りの記述は歯切れが悪かった。人種間や男女間の問題は差別の問題が絡むため、明確な結論を出せないのかもしれない。

7 社会学的想像力
個々の人間を社会的存在と考えて、互いに作用して影響を及ぼし合う事を想定しなければ、以下の14のケースのような誤りに陥るとする?

ケース1 脳の神秘
知能を脳だけに還元して説明するのでなく、個人や社会での人間行動でも説明するべきとする?

ケース2 gの神秘
流動性知能 = gについて。認知的複雑性の高さと関係する。

ケース3 測定値の神秘
IQ上昇を複雑な認知的作業を簡単にこなす事とすると、人間の知性は時代によって変化していない。

ケース4 双子の物語
双子の研究により、個人間で強く働く環境要因は存在しない事になった?1万1000組の双子を調べると、IQ差の内で遺伝子の占める割合は9歳で0.41だが、17歳では0.66まで上昇する。遺伝子が周囲の環境に影響し、正負のスパイラスが発生する。

ケース5 エリートの勝利
遺伝子の影響についての社会的見解について。著者の語る実力主義によらない社会分析は難しいと思った。

ケース6 イギリスの栄養の歴史
この問題を調べるには、階級や民族に注目しながら栄養史を踏まえて調査すべきとする。著者は自身の調査から栄養と知能向上の歴史的相関に否定的?

ケース7 トルコの都市化の歴史
1970年~2009年でトルコの人口は2倍(3610万人から7260万人)、都市部の人口は4倍(1400万人から5400万人)になった。中産階級が大量に作り出され、事務職や専門職となる。
旧階級と新階級のIQ差を調べてもトルコが都市化に成功した事しか分からない。現代化による科学的見方や視覚文化の普及によりIQが上昇した?

ケース8 10代のサブカルチャーの歴史
サブカルチャーの発展によって成人と子供の表現語彙力の差を説明可能?

ケース9 知能は単一か、それとも複数か
多重知能(M理論)として、言語的、論理数学的、音楽的、空間的、身体運動的、内省的、対人的の7項目を知能としても、社会的評価は項目によって異なるかもしれない。

ケース10 知能は「全てに勝るもの」ではない
東アジア出身者を親に持つ物は米国の人口の約2%だがハーバード大学生の14%となる。IQが白人より4.5ポイント低いアジア系生徒でも、SATでは白人と同程度の記録となる事から、家庭環境の影響があるとする。

ケース11 女子大生の知能の低さ
女子は男子より4ポイント~5ポイントIQが低くても大学に入れる。一般的女性のIQは低くないと主張している?

ケース12 黒人女性の結婚の苦しみ
異人種間の婚姻が一般化していないために、将来性のあるパートナーと結婚出来ないとしている?

ケース13 頭の悪い人は暴力的である
暴力的であるかはIQではなく文化と関係するとする。

ケース14 頭の悪い人は車を運転する
余暇の過ごし方によって知能を推測可能とする?乗馬をする子供との比較によっており、乗馬を可能にする経済的地位を考慮していないとする。

8 進歩と謎
これまでの章のまとめ。暗記型の教育よりも、複雑な関係性を掘り下げる教育の方が重要になりつつある。

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