ライトノベル「超」入門

読んだ本の感想。

新城カズマ著。2006年4月27日 初版第一刷発行。



ライトノベル:
キャラクターを素早く伝える方法としてイラスト等を意識し、キャラクターを把握して貰う事に特化した一手法。

第一章 ライトノベルは、どんな小説なのか?
1990年末までに、当時のパソコン通信大手である「ニフティサーブ」にて、「ライトノベル」という呼び方が誕生した。ニフティの、SFファンタジーフォーラムのシスオペである神北恵太氏の考案であるらしい。

ライトノベルの始まりは、1970年代末にソノラマ文庫やコバルト文庫等のレーベルが、アニメのようなイラストを用い始めた事にあり、1988年には角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫が誕生する。

ニフティの、SFファンタジーフォーラムでは、「若者向けの小説」を全て一纏めにする事に問題があるとし、ソノラマから富士見ファンタジアまでをカバーする「ライトノベル」という用語が作られた?

当時、ジュニア小説やジュブナイル、ヤングアダルト等の「若い読者向けの小説」を表す単語は存在していたが、イラストがアニメである事で既存のカテゴリーには収まらない新しい潮流とされた?

ジュブナイルやヤングアダルトは、英語圏での小説の分類方法であり、未成年向け物語文学の総称である。本来の意味は少年期で12歳~18歳を対象にした小説。

それらは『ライ麦畑でつかまえて』(J・D・サリンジャー著)のように「青春の悩み」をモチーフにしており、アニメのようなイラストが付いている小説というニュアンスは無かった。日本では「非日常の愉しみ」をモチーフにアニメのようなイラストが付く事になる。日欧の文化の違い。

ライトノベルは主な購買層が学生であるため、読み易さと低価格、刊行速度が速い事を特徴にしている。500円~600円程度の価格帯では250ページ~350ページ程度のページ数となり、その中で物語を展開するため、読み易くし、会話で人物を引き立てる。イラストで人物の外見が区別出来れば便利なのでイラストは必須になる。

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オタク文化やライトノベルの経験則では、革新的変化は最初に少女向け文化で発生し、その余波を10年後~20年後に少年向け文化が受容して変動する?

少女漫画で「恋愛もの」が本格的に開花したのは1960年代だが、その影響が1970年代末から1980年代初頭の少年漫画にあるとする。

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ライトノベルのレーベル区分は雑誌に知覚、連載が物語毎に分冊されている月刊誌のように考える事が出来る。文とイラストで綴られ、同時進行で連載されている物語。

著者の予測として、今後、ライトノベルの読者は青春小説を中心とした非ライトノベルと融合していく方向と、オタク文化内の約束事に特化していく方向の2つに分かれるとしている?

第二章 ライトノベルを読んでみよう
『スレイヤーズ!』が始まった1990年を狭義のライトノベル元年とする?アニメのようなイラストを大量に駆使した小説形式の確立。

以下の分水嶺があるとする。

『スレイヤーズ!』以前:
安彦良和に代表されるアニメ絵 + アニメ塗り

『スレイヤーズ!』以後:
あらいずみるいに代表されるアニメ絵 + アニメ塗り

アニメ塗りとは、セル画を塗るように、輪郭の中を単色で塗り潰し、立体感は影(単色よりも濃い別の単色)で表現する手法?

この変遷は、短期間で大量のイラストを、忙しいイラストレーターに描かせる必要から生じたものとし、主線を描く人と色を塗る人間が別であるという分業によるものとする?

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以下の3要素の影響。

①コミックマーケット
1990年代後半には、編集者が新しいイラストレーターを探すためにコミックマーケットやインターネットを利用するようになった?

②CG
1990年代後半からCG系のイラストが増えた。幾何学模様やメタリックな照り返しの多い緒方剛志の作品が読者を驚嘆させ、水彩画のような抒情的雰囲気をCGで描くようになる?

③美少女ゲーム
1990年代前半に発売された『卒業』、『同級生』等の影響?

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<キャラクター>
圧縮され類型化された登場人物の外見(イラスト)から物語全体を見る傾向。

架空の登場人物の内面を伴った行動様式とは異なる。幾人ものキャラクターが登場し、主人公との間で固定した関係 = 性格 = 出自 = 外見を担当する形式。

ゲームという方法が、近代的文学における登場人物をキャラクターに変えたとする。ゲームでは、複数の結末が最初から組み込まれており、「一本の曲線として表現される物語」ではなく、「複数の枝分かれする曲線の束として表現される物語」である。

複数の結末が等価であり、消費者の選択によって結末が変わり、やり直しも出来る。

近代文学の登場人物:
何かを選択し、決断する、内面や人格を持った人物

ゲームのキャラクター:
所作事や決め台詞の束

結末が複数あるという事は、キャラクターは実質的に葛藤も決断もしていない。若きウェルテルは自殺するかしないかの葛藤や決断で、内面がある事を証明するが、自殺する場合と自殺しない場合の複数の結末が等価で存在するのなら、葛藤や決断は存在しない。ありがちな状況の重ね合わせとして理解される。

近代文学的理解:
ウェルテルは自殺した人物

ゲーム的理解:
ウェルテルは、自殺しそうな人物型

さらに創り手と消費者の双方に共通理解を構築するために、キャラクターの性格を分かり易く外見や持ち物に対応させる = 記号化。

主要キャラクターの人数は、一つの物語の中で4人~7人くらいが良いとされる。3人では関係が3通りしかないが、4人なら関係が増える。7人~9人くらいには印象の壁があり受け手が混乱する。

第三章 「ライトノベルという手法」を考える
纏め直すと、ジュブナイルやヤングアダルトは、「大人が子供向けに書いた小説」であり、ライトノベルは「同世代感、同時代感、ライブ感を重要視した小説」とする。

キャラクターのイラストによって、キャラ意識から物語を眺める。

文字を経由すると物語中の登場人物を把握するのに2分~3分は必要だが、イラストならば瞬間的に理解出来る。

キャラクターを素早く伝える方法としてイラスト等を意識し、キャラクターを把握して貰う事に特化した一手法。テーマや哲学、人生観、整合性のあるストーリーは優先されない。

この手法は歌舞伎においても行われており、平和で暇のある時代に物語の消費者層が欲する事は同じなのかもしれない。

ドストエフスキーのキャラクターも、名前が語呂合わせだったり、性格設定が固有名詞であったり、性格 = 行動 = 外見という論理が使用されている?

第四章 ライトノベルのウソ、ホント
ライトノベルに会話が多い事について『三銃士』等も会話が多いとする。

他にはライトノベルは流行しているのか、子供に読ませて良いのかについての回答。

第五章 ライトノベルはどこにいくのか?
平和な社会で、読書人口が定着・拡大し、フィクションを楽しむ人々が増えた事がライトノベルを読む人間の増加に繋がる?

ライトノベルの未来は以下の3パターン?

①崩壊
増えすぎたライトノベルの点数が一気にオーバーシュートする。

②平衡
一旦はオーバーシュートするが、ギリギリのところで平衡する。

③成長
読者の購買力向上により市場が大きくなる。

ライトノベルは児童小説と一般小説の隙間を埋めたはずだったが、今ではオタクにはなりきれないが、オタク的素養を持っている読者層のための少し薄い物語 = ゼロジャンルが求められているのかもしれない。

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