「弱いリーダー」が会社を救う

読んだ本の感想。

井上健一郎著。2015年12月31日 初版第一刷。



以下は、「経営組織アカデミー」へのリンク。

http://www.acala-cr.co.jp/service/%E7%B5%8C%E5%96%B6%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%BC/

著者の持論 = 組織運営を円滑に行いながら人材育成するには、5人程度の少人数集団を中心に組織を運営する事が効果的である。小集団には弱い指導者が適任?

弱いリーダー:
東洋的、調和、柔軟、忍耐力、分析、静。周囲との調和を図る事は、小集団活動に適している。他者の意見を傾聴し、メンバーの自発性を促す。

強いリーダー:
西洋的、洞察、剛強、行動力、発想、動。明確なビジョンを掲げ、強烈なリーダーシップを発揮する。

⇒強い指導者によって集団が発展していく場合もあるが、それは指導者の選択と決断が間違っていない場合に限る。

強い指導者は、常に指示に従う組織を生み出す?が、自立し、自ら考える組織は弱い指導者が作り出すのかもしれない。

第1章 「強いリーダー」から「弱いリーダー」へ
    ―新時代のリーダーシップ論

第1節 リーダーシップ論は時代とともに変化しています
1950年代以降、様々な指導者論が誕生している。以下の2つの要素。

①生産体制高度化、効率化
経済活動主体が個人から組織に移行
②競争激化

成果主義、人の管理がテーマとなり、強い指導者が求められた。

○リーダーシップ特性論
ギリシア時代から1940年代までの指導者論。
優れた指導者に共通する身体的特徴、性格を研究し、生来の資質を重視した。

○リーダーシップ行動論
1950年代以降?の経済発展により、多数の指導者を輩出する必要性から作り出された。米国を中心に、指導者を作り出す思想が発表される。代表は以下の2つ。

①システムⅣ理論
ミシガン大学 社会調査研究所所長 R・リッカートが提唱。組織を一つのシステムとして、以下の指導者を分類。
 ・独断的専制型(システムⅠ)
 ・温情的専制型(システムⅡ)
 ・協議型(システムⅢ)
 ・集団参加型(システムⅣ)
上記の内、システムⅣの指導者が理想的とした。

②PM理論
1966年に大阪大学 三角二不二教授が提唱。リーダーシップを集団機能の概念として捉える。
 ・Performance(成果を重視)
 ・Maintenance(チーム維持を重視)
リーダーシップは、上記のPとMのバランスによって機能するとした。

こうしたリーダーシップ行動論が発展し、以下の理論を生み出した。

○状況リーダーシップ論
1977年に、P・ハーシー、K・H・ブランチャードによって提唱。メンバーの成熟度や仕事の達成度等の状況に応じてリーダーシップの型を以下の四段階で変化させる。
 ・教示的
 ・説得的
 ・参加的
 ・委任的
後ろに行くほど、指導者の関わりは軽くなる。

○ヴィジョン志向のリーダーシップ理論
1980年代に登場。組織の長期発展には、未来のヴィジョンを創造し、メンバーと共有する事が必要であり、それが指導者の役割とする。世界的に経済が成熟した停滞感、環境変化による競争激化を背景にするらしい。

○変革型リーダーシップ
ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授 ジョン・P・コッターが提唱。以下の2つから考える。
 ・リーダーシップ(変革型リーダーシップ)
  変革を成し遂げる創造的指導
 ・マネジメント(維持型リーダーシップ)
  環境に対応して組織を維持する

⇒強い指導者という思想は、ジョン・P・コッターが提唱した「変革型リーダーシップ」に基づく

以下は、強い指導者に必要な技術。

①指導者が示すもの(ヴィジョンとルート)
 1.どこへ向かうのか
  Why(何のために)、What(何が最適か)
 2.どうやって向かうのか
  What(何を使って)、How(どのように)
②指導者の行動
 1.先頭を行く
 2.周囲を巻き込む
③周囲を巻き込むための指導者の姿勢
 1.周囲の状況把握・理解
 2.発信・働き掛け
 3.あり方

⇒強い指導者は明確な目標を語り、そのために成すべき事を提示する。常に前向きで明るく、周囲を気遣う。そうしたカリスマになるには、高レベルの思考力と行動力が必要になる。

第2節 「強いリーダー」の頭の良さは
    「論理的思考力」から生まれる

1990年代以降のIT化やグローバル化を背景に、欧米発の国際基準に基づく経営方針や管理が必要とされた。そこで重視されるのは論理的思考力である。

経営コンサルタントやMBAがブームとなり、論理的思考力に裏打ちされた経営哲学が重視されるようになる。



ハーバード・ビジネス・スクールで以下を学んだとする。

①合理的意思決定のための思考法
不完全な情報下で判断する方法論。結果が重要なのでなく、そこに至るまでの思考過程を重視。
②理論的フレームワーク
ハーバードの授業科目には、学習上の基本的枠組みがあった。

<論理的思考>
思考の流れ(前提 → 推論 → 結論)に筋道が通っている事を重視。

前提:
重なり無く漏れなく網羅・分類・整理する事による「問題の見える化」
推論:
偏りの無い判断をするための「全体感の把握」
結論:
優先順位付けによる「取捨選択」

上記を段階的に進めるために、各過程においてフレームワークを設定する。問題の構成要素を枠内に入れ、細分化した要素について白黒を二者択一し、思考を積み重ねる事で合理的解決策を見つけ出す。

****************

論理的思考における以下の要素。

・効率性
論理的思考を実践する体系。無駄を取り除く事であり、置き換えると時間短縮となる。

・客観性
論理的思考の信頼性を保証する。個人の主観でなく、多くの人間が幅広く共有可能。客観性は情報を徹底的に活用する事で生み出されるとする。情報共有により、「皆が知っている事」になって信頼性が向上。

第3節 「強いリーダー」の動きの良さは
    「積極性」から生まれる


強い指導者は迷わず意思決定する。



自分自身に対する自信が素早い状況判断を可能にする。自分を肯定し、自らの言動に責任を持つ事で意思決定力が生じる?

ハーバード・スタイルの指導は外向的で高エネルギーとする。



第4節 本当にそうなのでしょうか?
   「強いリーダー」の弱点とは


以下は、論理的思考の弱点。

①想定外に対応出来ない
論理的思考は、客観性を背景にして、漏れの無い前提と根拠のある推論によって精度の高い結論を導き出す。

各過程において、思考を進めるための枠組みを活用するが、枠組みが一度構築されると、その中に入れる要素と入れない要素の基準が出来る。そうする事で思考を整理して解決策の焦点を絞る。

この過程で、枠外に入れない要素は考慮から排除されてしまう。

限定的な目的の場合には良いかもしれないが、共同体の活動方針や計画策定等の幅広い曖昧な目的には適用出来ないかもしれない。

フレームワークを使用した施策は成功した時にこそ注意が必要。枠が正しいと思うと、枠外を間違っていると認識し、意外性を許容出来なくなる。

②目的設定が苦手
自社製品(What)をどのように(How)売るかを追及するために論理的思考は力を発揮する。
しかし、何のために(Why)売るかという問題には回答困難。

Whyは人間の感情の問題であり、論理的思考はWhatやHow等の分類・整理・取捨選択とは相性が良いが、正確に分類出来ず、状況によって変化する感情を扱う事が困難。

顧客の共感を呼び覚ます物語の構築には論理的思考では対応出来ない。

*************

以下は、積極性の問題点。

・人材育成
主体性の発揮は出発点であり、最終目標ではない。単なる依存から自己を確立し、自立した個が相互に補完し合う状態を理想とする。

簡単な問題については積極的な指導によって対応出来るが、複雑な問題については構成員全体の協力が必要になる。

積極的指導者は静観しなくてはならない時にノイズを振り撒く。また、長期的には負ける事に意味がある場合もある。成功体験が多過ぎると、固定概念が強まり、柔軟性に欠けたパターンに固執する状態になる。

第5節 なぜ今、「弱いリーダーシップ」が必要なのか

グローバル化やIT化によって、2000年代から新興国の台頭が顕著となり、世界経済への参加者が増加している。日本が世界経済において果たす役割が大きな課題となり、労働集約的な新興国に対して、資本投下や知的付加価値の必要性が認識されている。

それは大企業のみに限定された課題でなく、高度情報化社会においては幅広い主体に影響する。

20世紀のビジネスは、欧米型の以下の2つの思想を中心に発達した?

①競争
戦い勝ち取る意識。市場が拡大する中で、強者が弱者を打ち負かす。東洋は調和を重視するが、西洋は対象を駆逐しようとする。

②縦軸を主体とした組織
指導者が決定し、部下が実行する上下関係を基礎とした縦軸の組織。こうした組織は、競争概念と相性が良く、指導者の決定は絶対なので、迷いも無駄も生じない。

以下は、「ピーターの法則」の記事へのリンク。競争と縦軸主体の組織を前提にしている。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-898.html

縦軸の組織が機能するには、指導者が正しい事が絶対条件となる。方針が誤っているのに行動規範が制限されると、組織全体が危機に陥る。創造性に相応しい組織ではない。

高度成長期には、強い個人が必要であったが、正解が複数ある複雑な社会では組織全体が考える必要性が高まる。発見には強さは必要でない。確実な正解があるならば強い指導者が組織を鼓舞すれば良いが、正解が見えない時は弱い指導者が必要になる。

第2章 「弱いリーダー」ってなんだ!?①
    ―「論理的思考力」を疑ってみる

第1節 若手社長、川上武(42歳)の改善計画は
   なぜうまくいかなかったのか?

竹芝機械という架空の会社の業務改善について。

川崎、鶴見、横浜に工場があるが、完成品を保管する倉庫が川崎にしかないため、鶴見と横浜に倉庫を増設した。その結果として、拠点間の人員交流が減少し、倉庫が情報共有の場として機能しなくなったために不良品の発生率が増加したとする。

○無駄の効用
マサチューセッツ工科大学 ダニエル・キム教授は、結果の質を高めるには、行動の質を高める必要があり、そのためには思考の質を高め、さらにそのためには関係の質を高めるべきとする。

チーム内の相互関係が良好でなければ良い思考にならない。

創造的な仕事のためには、余裕が必要であり、無駄が余裕の源泉であるのかもしれない。

失敗にも大きな価値があり、成功確率を上げようとすると、既存の手法や判断基準が優先されるため、新しい価値を生み出し難い。無駄は人材育成の肥料でもあり、無駄と思われている人間が状況変化によって必要になる場合もあり得る。

第2節 二代目当主、橘光男(39歳)がつまずいた
   近代経営手法の落とし穴

華橘荘という架空の老舗旅館について。

美容と癒しをコンセプトに女性客を取り込もうとするが思ったように顧客が増えない。都会と同じような利便性を重視した結果、自然の提供する価値を逃していたのかもしれない。

売り上げ拡大に終始するのでなく、自分達の使命を自覚すべき?

○情報に振り回される
SWOT分析(強味:Strength、弱味:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Theatの4つの視点から施策を考察)等の思考過程では戦略立案が容易になるが、こうした論理的方法論では、強弱や機会・脅威等の両極で分析するため、中間的要素や強味と弱味が状況次第で変化する事を見逃し易い。

自らの使命(何のために、Why)が定まる必要性。使命のために役立つか否かを判断基準にする。

目的が無い状態で膨大な情報を入手すると、迷いが増える。

第3章 「弱いリーダー」ってなんだ!?②
    ―「積極的行動力」を疑ってみる

第1節 笹田光輝(34歳)のドン(純)なリーダーシップ
イベント企画会社「立木プランニング」という架空の会社の話。

存在感が薄い人間が良い影響を与える事について。笹田リーダーが、「地味な企画でも良いんじゃない」と言った事で新しい発想が生まれる。その影響を誰も自覚してない。

常勝はあり得ず、退く事も大切。最終的勝利のためには局地的敗北も必要。

第2節 カリスマリーダー候補、荒川美穂(34歳)の迷い
ABコンサル会社という架空の会社の話。

自らが全てを背負うのでなく、各メンバーに委ねて手を差し伸べる方法への転換。創造性は押し付けられる環境からは生まれない。

実行のためには強い指導者が必要であるが、発見のためには必要でない。先頭に立つ者が正解を知らない場合への対処。特定個人の意見を中心に動く組織では、特定個人の方法が誤っていた場合に代替案を考える事に余計な時間がかかる。



欧米においては、経営が独立した職業になっており、経営のプロが現場にトップダウンで命令する。日本の場合は、実際の決定の多くが現場で為され、稟議と言う形式で順番に上に回して確認していく。意思決定の中心が現場に近い中間管理層によって為される。

トップダウン型の組織運営は責任の所在が明確で意思決定が素早いが、ボトムアップ型の組織は現場が当事者意識を持ち、指導者に依存しない。

「ビジョナリーカンパニー」に登場する企業は、指導者が全てを決めるのでなく、現場を育成するために指導者が意思決定を放棄する事がある?



上司が下に位置し、部下の補助をする。

第4章 「弱いリーダー」が生み出す4つの理想像
   ―「弱いリーダー」だけが創造型チームを
    作れる!

第1節 ビジネスでもっとも大切なこと―
   「問題解決力」こそリーダー必須の条件

問題解決への参加の仕方の違い。

強い指導者:
メンバー全員の上に立ち、積極的に引っ張る。具体的な解決策も自分で決め、会議進行も主導する。

弱い指導者:
メンバー全員が問題解決を進めているのを、客観的に眺める位置に自分を置く。補助的な立場にいる促進的存在。

また、問題解決過程における最終目標の捉え方も異なる。強い指導者の組織はトップダウン型であり、会社が決めた目標に対して、各部門、小規模チーム、個人へと目標をブレイクダウンする。
弱い指導者の場合、経営側が常に正解を知っている訳でないと考え、現場から新しい発想が生まれると期待する

第2節 「弱いリーダー」とはこんな特徴を持っている
弱い指導者は、個々の力を集約する事を大切にする。そのための以下の特徴。

・周囲からの受信を優先
・柔軟な思考を評価
・強い表現で指示を出さない
・流れを感じ取ろうとする

以下の比較。

○目的
強い指導者は競争に勝とうとするが、弱い指導者は争わずに勝つ事を選択する。市場シェア獲得か、異なる価値の提供か。

○信条
強い指導者は行動力が必要として、組織を統率する影響力を持とうとする。弱い指導者は発想が大事としており、常に自分自身と向き合って自らの柔軟性を検証する。

○意思疎通
強い指導者は、自分の意見や指示を発信する。弱い指導者は受信を大切にする。

○管理手法
強い指導者は明確な指示と、指示の徹底を意識する。命令的管理スタイル。弱い指導者はメンバー自身で考える機会を多く設ける。自分の意見は押し付けず、質問による問い掛けから出てきたメンバーの考えを尊重する。

○判断基準
強い指導者は合理性や効率性を重んじる。弱い指導者は組織全体の理想や思いを重視する。戦略の重視か、精神的展開の重視か。

○意思決定
強い指導者は、迅速に決断し、動的に行動する。弱い指導者は、メンバーの意見を吸い上げる事に価値を置く。

○部下育成の方針
強い指導者は、個々のメンバーが自分の役割を全う出来る技術や知識を身に付ける事と、段階的な経験によって役割遂行レベルを上げる事を求める。万バーの機能性向上。弱い指導者は、メンバー個々が多くの気付きを生む事を期待する。そのため、段階的に経験させるのでなく、積極的に任せ、部下の発想を豊かにしようとする。

第3節 「弱いリーダー」が率いるチームの4つの理想
①当事者意識を持つ事が出来るチーム
当事者意識を持つ事の重要性。人間は自分で決めた事や自分の発言には5倍のコミットメントを見せるらしい。



強い指導者が迅速に意思決定する事によって、メンバーの当事者意識が薄れるかもしれない。

②豊かな発想を生み出すチーム
制約を少なくする事で、新しいものを生み出す。前提条件を外して違う視点から見る事の重要性。

③現状を的確に把握出来るチーム
多くの意見を集約する事で現状を把握する。

④自主的に動くチーム
当事者意識は自主性にも繋がる。

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