土の文明史

読んだ本の感想。

デイビッド・モンゴメリー著。2010年4月15日 初版発行。



あらゆる文明が「土壌」という天然資源を使い果たした事で崩壊している。

文明の歴史は共通パターンがあり、当初は肥沃な谷床で農業を行って人口が増加し、後に傾斜地での耕作に頼る。その後も農業の集約化によって養分不足や土壌喪失が発生して収量が低下し、文明全体が破綻へと向かう。

一般的な文明は、800年~2000年、30世代~70世代存続するとする。農耕によって使用可能な土壌を使い果たした時点で文明は崩壊する。

土壌は環境変化に対応する動的システムであり、土壌が積もれば岩が土壌生成過程が及ばない深さに埋もれて新たな土壌が作られる速度が鈍り、土壌が無くなれば風化が岩に直接作用して土壌生成が速まる。

<地球と土壌の関係>
土壌は植物が育つための養分の源となる。

地球が出来上がった頃は、剥き出しの岩が地面を覆っていた。雨水による溶脱作用によって、岩が少しずつ粘土に変わり、無機質土壌となる。粘土から養分を吸い上げる植物が無かったために、初期の化石土壌は多くのカリウムを含む。

やがて、バクテリアによって風化速度が速まり、原始的な土壌が形成される。バクテリアが二酸化炭素を消費する事で、地球の温度が30℃~40℃低下したとする。

土壌が発達した事で植物が陸地に定着するようになる(紀元前3億5000万年頃)。植物の根と土壌生物相の呼吸により、土中の二酸化炭素濃度が大気中の10倍~100倍高くなり、土壌成分を弱い炭酸に変える事で、岩の破壊が進む。

石英等の造岩鉱物は変質せずに細かくなり、長石や雲母は風化して粘土になる。砂は水はけが良過ぎて植物が育つ事が難しい。粘土鉱物は養分に富むが水はけが悪く、乾くとクラストを形成する。砂と粘土の中間の大きさであるシルトが植物を栽培するのに最適とする。

有機物が土壌を肥沃にして、より多くの植物が成長するようになる。土壌は有機物を循環させて、植物を支える。

土壌は地球の表皮数十センチ以内であり、それ以上は岩が覆われて風化が妨げられるので生成され難い。地球の半径6380㎞の1/1000万程度の土壌は壊れ易い資源である。

<人類の農耕>
紀元前3万年頃に最終氷期が終了すると、農耕が開始されるようになる。

農耕開始の理由は人口密度の増大にあるとする。少ない土地から集約的に食料を調達する方法。農耕に転換すれば、食物一カロリーを生産するために必要な時間と労力は増加する。人口増加による土地不足が定住化を促したとする。

欧州氷河が解けた時の世界人口を約400万人として、その後の約5000年間で、世界人口は100万人増加したとする。農業社会が発達すると、世界人口は1000年毎に倍増し、紀元0年頃には二億人に達したとする。

増大する人口によって、雨量不足の土地も耕作対象となり、灌漑農業の必要性が高まる。そのためには水路の建設、維持、運営を行うための組織による支配 = 政府、官僚制が必要になり、紀元前5000年頃には宗教指導層が食料の生産と分配を行う文明がメソポタミアにおいて発生する。

メソポタミアの灌漑には危険性があり、多量の溶解塩を含む地下水を地表に撒く事で、塩類が土壌に堆積していく。

エジプト文明が、数十世代しか文明が栄えない法則の例外となっているのは、ナイル川の氾濫によって上記のような塩類堆積が発生しなかったためとする?

<帝国の盛衰>
○ギリシア文明
ギリシアでは農業となる土地は国土の1/5しかないとされ、土壌侵食が社会に与える影響は知られていた。それでも土壌侵食は止められず、紀元前431年~紀元前404年頃のペロポネソス戦争の頃にはエジプトとシチリア島がギリシア諸都市の食糧の1/3~3/4を生産していた。

ギリシアに農耕民が到着したのは紀元前5000年頃とされ、鋤が導入されて急傾斜地に農業が拡大した紀元前2300年頃~紀元前1600年頃に土壌侵食が広範囲に渡って発生したとする。

○ローマ帝国
紀元前3000年~紀元前1000年頃に農村がイタリア一帯に広がったとする。紀元前500年頃には鉄が広く使用されるようになり、大規模な森林伐採が可能になる。

ローマでも土壌保持の必要性は意識されており、輪作や肥料が奨励されていた。しかし、やがてはイタリア半島ではローマを維持する食料生産が不可能になり、北アフリカから食料を輸入するようになる。

ローマ時代に失われた土壌の回復に1000年が必要であったとしている。

********************

現代の農業生産性向上は化学肥料によって支えられている。全世界の窒素肥料使用量は第二次世界大戦から1960年までに3倍になり、1970年までにさらに3倍になり、1980年代までにさらに倍増したとする。

輪作や定期的な休耕に頼らない農業サイクル。

そして品種改良による緑の革命は1970年代までに第三世界の農業生産を1/3以上増加させたが、並行して人口が増えたために飢餓は終わらなかったとする。

1970年~1990年にかけて、世界の飢餓人口が16%減少したのは、緑の革命に影響されなかった中国における農業生産向上のためであり、土地の再分配が効果的であったとする。

膨大な石油資源を消費する化学肥料の不利について指摘。

著者は生物学や生態学に基づいた新しい農業哲学が必要としている。

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