全脳思考

読んだ本の感想。

神田昌典著。2009年6月11日 第1刷発行。



第1章 見えない、触れられない、
    感じられない世界で

ビジネス環境が高度に抽象・情報化され、その取り組みからどのように利益が出るのか直感的に分からない事例が増えているとする。知識社会の始まり。

情報社会:
情報を収集・整理する事が付加価値となる社会
知識社会:
情報から生み出されたアイデアを実体化する事が付加価値となる社会

情報社会は、1977年にアップル社が家庭用コンピュータを発売した時に始まり、2007年にブロードバンド普及率が50%を超え、社会インフラとしての情報網が整備された事で2008年末に終焉したとする。

対面での接触が減少していく中で、見えない顧客に見えない商品を提供する高度に抽象化された社会。

第2章 論理的に正しい提案は、
    なぜ実行されないのか?

3C等の問題解決のための戦略立案フレームワークが有効に機能するためには、以下の4つの条件が必要になる。

①目的
競争戦略の立案
②対象
経営者・経営幹部
③過程
事実の整理・分析
④実行
トップダウン

上記①~④について掘り下げる。

①目的
戦略立案フレームワークが開発された年代は、1950年代(PDCAサイクル)から1970年代(組織の7S)の工業化社会の頂点に向かう過程で開発されている。商品を製造すれば旺盛な需要が存在する社会。こうした状況下において、競争相手から顧客を奪う方法論が必要とされた。

⇒知識社会においては、競合戦略よりも、抽象度の高い市場を創り出す需要創造戦略が必要とされる。

②対象
戦略立案に使用されるフレームワークは、経営者に向けて学者が提案するために使用された。現在では、営業や社内会議に使用するための物語作りが必要とされる。そのためには丁寧なヒアリングが大切であり、論理的に正しい提案は感情的反発を招く可能性がある。

③過程
戦略立案フレームワークは、複雑な情報を整理するために使用されたが、知識社会においては情報が整理し易い市場は魅力に乏しい。既に競合相手が存在している可能性が高い。さらに、発想をフレームワークという旧来の枠に押し込めてしまうかもしれない。知識社会においては新しい世界を創り出す必要がある。

④実行
競争戦略時代の組織はトップダウン型だったが、現在の組織はフラット型になっている。情報・権限が分散した結果ヴィジョン強要が難しく、論理的に正しいだけでなく、結論に至った背景や過程が実務担当者に納得出来るものでなくてはならない。

◎U理論
社会変革過程における思考のあり方の体系化。

レベル1:ダウンローディング
自分の中に視点があり、情報をダウンロードするだけの状態。過去の思い込みから脱する事が出来ない。未来が過去の延長にある場合は効果的。
レベル2:事実的
自分の境界に視点があり、事実に基づく判断をしている状態。過去の経験でなく、客観的な情報に基づいて判断する。一時的な対症療法となり、本質的な解決に至らない場合がある。
レベル3:共感的
自分の外側に視点があり、他者に感情レベルで共感出来る状態。他者と感情的に結び付くほどに外部を理解した状態。
レベル4:創造的
境界線は開かれており、自由な視点で大きなものと繋がっている感覚。自分が想定した以上の未来が出現した状態。良い社会構築に向けて取り組みが影響力を持っていると感じられる状態。

⇒自分の正しさを証明し、外部の誤りを変えるアプローチには限界がある。提案を実行するには外部との協調が必要であり、正しく論理を積み上げても他者は動かない。

論理の積み上げだけではレベル2止まりである。そして、レベル3からレベル4に移行するには既存の経験や知識を手放す必要があるとする。

第3章 営業せずとも顧客が集まる、
    五つの新原則

以下の五つの新原則。

①指名検索
商品が比較検索される場合、既に他社との競合を前提にしている。指名検索で直接検索されるようなオリジナリティーが必要。
②検索を促すネーミング
好印象を持たれる、常に話題にされる、Webで検索されるネーミング。面白い話、短い言葉に凝縮された情報。
③自己投影型消費を支える物語
顧客が共感出来る物語。未来において、本当の自分になるために、自己投影出来る物語を持った商品。
④物語に入り込む導線
情報を効果的に流通させるために、信頼性が高い情報を体系化して伝える。
⑤サブエピソードを共有する場
物語の主人公に自己投影した顧客には共演者や観客が必要。

第4章 全脳思考モデル
SSC:ストーリー・ストリーミング・コンセプト
物語を溢れさせる中核。

物語を構築するツールとして、1枚の紙(チャート)を使用する。

ステップ0:準備
横長の長方形を紙に書く。2行3列。

ステップ1:顧客の未来
自らが喜ばせたい人間を思い浮かべる。この段階では抽象的概念を持ち出さず、具体的な人名を考える。V(視覚)、A(聴覚)、K(感覚)、F(名声)、M(金銭)の面から喜ぶ姿を想像する。
そしてステップ0で準備した長方形の右上にイラストで喜ぶ姿を描く。

ステップ2:顧客の現在
長方形の左下に現在の姿を描く。

ステップ3:クライマックス
左下の現在から右上の未来に至る道筋を描く。一直線に幸福な状況にシフトするのでなく、起伏のある過程を辿る事が現実的。

ステップ4:気付きのホップ・ステップ
クライマックスに向かう段階的アイデアを出す。3段階とする。ホップ(今までと違う視点で考える段階)、ステップ(新しい観点に裏付けがあると考え出す段階)、クライマックス(新しい観点を得た事による変化を確信する段階)

ステップ5:オープニング
顧客に提供する最初の情報や体験を考える。

こうした発想は現在から考える競争戦略立案フレームワークからは生まれないとする。現在の分析からは、将来に向けた計画は見い出し難いとする。クライマックスから逆算する発想。

第5章 発想・行動・結果を生み出す
    ストーリーの法則

論理と物語の両方が必要とする。

知識社会においては論理的に正しい戦略を構築しても、背景に物語が無くては戦略が浸透しない。事実を羅列するだけでなく、自分を重ね合わせる事が出来るキャラクターや直感的に理解出来る比喩を用いた物語。

論理は事実を積み上げて分析し解決策を見い出すが、物語は得たい結果から逆算して創造的な行動シナリオを導き出す。

第1メカニズム:発想
顧客の幸福な状態をイメージする事から思考を始める。脳は「好き」と判断される対象について考える事により活性化する。自らに関わる判断の場合、既に多大な情報が自らの中に存在する。それならば、外部の分析情報を集めるよりは内部の感覚に基づいて判断した方が現実に即した仮設構築が可能になる場合がある。

一人の顧客に深く共感する事は、市場全体を情報として分析・理解する事とは別の角度から多くの人を巻き込む。

<例>
2008年にオバマ大統領は演説において、106歳の女性アン・ニクソン・クーパーが投票した物語を持ち出した。演説会場に集まった20万人が一つのイメージを共有したとする。
米国の106年間について客観的な情報を分析しても、このような効果を生み出す事は出来ない。特定人物を切り口とした思考は単純だが協力。

第2メカニズム:行動
未来についての物語によって行動が変わるとする。仕事が抽象的になるほど、物語の構造を学ぶ事が大きな武器となる。

物語:
有り触れた日常からの出立 → 変化への挑戦等の試練 → 通過儀礼としての大きな変化 → 日常への帰還。

日常から非日常を経験した主人公が成長して日常に帰還する事が物語の典型的パターンである。

物語の効果:
事実や情報の羅列は記憶し難いが、物語の文脈で提示された情報は記憶し易い。そのため、物語がある商品は指名検索される。物語が無い指示は機械的な命令でしかない。そして物語は伝え易く、共感した人々の間でサブエピソードを生み、伝説となる。

第3メカニズム:結果
現実は、結果に向けて一直線に進むのでなく曲線を描く。人間は無意識レベルでは葛藤を望むとする。

<例>
6人の人間に1~100までの数字を順番に読み上げてもらう。数字を読み上げる数は自由であるが、感情を入れて数字を読み上げてもらう。観測者に、読み上げにおいて、トーンが盛り上がる箇所を記録してもらう。

⇒盛り上がる箇所は、平均すると33近辺、50近辺、66近辺、85~90近辺となる。

上記のパターンは神話のパターンであるとし、プロジェクト全体で見ても、全体から33、50~66、85~90近辺の三回の葛藤が発生する事を予測すべきであり、こうしたシナリオを理解すれば問題が発生する時期を予測出来るとする。

TEFCAS:
目標を実現するプロセス管理サイクル。以下の段階で行う。

Success
最終段階。成功した状態を明確にイメージする。

Trial
仮説を試す。100%を期すまで考えるのでなく、小規模で全てやってみる。

Events
実施したトライアルの結果を観察する。

Feedback
イベントからのフィードバックを受け取る。

Check
フィードバックが確かな情報に基づくか確認する。

Adjust
目標実現に向けた最終調整。具合策を考えるためにTrialからTEFCASプロセスを繰り返す。体験を積んでいるのでスムーズなはず。

Success
明確にイメージしていた成功を遂げる。

そして成功した後は祝う事が大切。記憶によって意欲が喚起されるため、今後、良いパフォーマンスをあげるためには目標が実現した時は祝う。

第6章 行動するための、ロジカル思考とは
多くの論理的・分析的思考法は、経営コンサルタントが企業分析に使用するものであり、会社員が日常的に推進する業務には馴染まない。

説明責任よりも行動と結果に対する責任が求められる。確かな分析ではなく、仮説―行動が目的となる。正確さよりもスピードが重要であり、仮説を実行した事によるリスクを最小化するための論理構築と周囲に理解してもらう技法が必要とされる。

◎納得してもらう
マトリックス図を使用する。以下の5ステップによる整理。

ステップ1:全体像の把握
ブレインダインプと呼ばれる方法であり、紙に思い浮かんだ言葉を次々と書き出す。

ステップ2:グループ化
書き出した言葉を幾つかのグループに分ける。

ステップ3:横方向の仕切り
上記ステップ2で見い出したグループよりも大きなグループで区分する。

ステップ4:縦方向の区切り
上記ステップ3とは異なる基準でグループを区切る。

ステップ5:仕切り直し
情報をバランス良く整理出来る基準で区切られているか再考する。

◎理解してもらう
スピーチの方法論。
最初に話すべきポイントを決める。そして、以下のようにスピーチの全体像を定める。

・オープニング
聞き手に安心感を与えるエピソード等。1分~2分。どのような聞き手でも頷けるメッセージ。聞き手を安心させて論理的な話を処理する準備とする。
・テーマ(主題)
テーマをマイ核に述べる。話の要点の明確化とゴールの明示。
・プレミス(前提)
自分の主張を述べる。
・バックグラウンド(背景)
自分の主張を形成するに至った背景の説明。
・プルーフ(根拠)
意見の根拠を詳細に説明する。この部分でスピーチ全体の時間が決まる。最初に、地図で目的地を説明するように根拠の数を示す。適切な根拠数は3とする。
・コンクルージョン(結論)
プレミスをそのまま繰り返す。

◎応援してもらう
目的とする変化を起こすには、周囲の人間が反論する隙も無い正しい論理よりも、批判されながらも多様な発言を引き出し、集団でより良いアイデアに昇華させていく人間的な論理が必要とする。

全員が積極的になるのは一時的な出来事であり、反動も生じる。ポジティブに物事を変革しようとすると、等価のネガティブな力が働く。

チームメンバーにおける以下の役割。

・桃太郎(長期的、影響・効果)
起業家の象徴。長期的視点を持った指導者。
WHYが関心事項
 何のためにするのか
 ビジョンは何か
・犬(短期的、影響・効果)
実務家。目標実現のために何をすれば良いか明確化する実務家。
WHATが関心事項
 具体的に何をするのか
 資金はどのくらい必要か
 計画は
 誰がやる 
・猿(短期的、安定・効率)
管理者。実務家の立てた計画に欠点が無いか考えて、業務をシステム化する。
HOWが関心事項
 どのように処理するのか
 どのくらい作業するのか
 既存システムで処理可能か
 法的リスクは
・雉(長期的、安定・効率)
統合者、政治家。根回しをして誰もが納得する事を言う。
WHOが関心事項
 人間関係に影響するか
 誰がどのように感じるか
 どのように意思疎通するか

上記のチーム・メンバーの特性を適切なタイミングで活用すべき。起業家と管理者は対立し易いとする。起業家は変革を求め、管理者は安定を重視する。起業家が管理者を蔑ろにすると、事業がシステム化されないので成長軌道に乗らない。会社は家業のだ段階に止まる。そして、実務家は起業家の持ち込み続ける課題に疲弊してしまう。

実務家と管理者は、実施すべき目標に共通の興味があるので、当初は上手くいくが、時間が経過するにつれて管理者が官僚的になるので対立する。

政治家タイプは、必要以上に失敗する等のネガティブな行動でプロジェクト全体の進行をスローダウンさせ、空中分解を避けるとする。そうした人間関係を優先する政治家は、計画に従って行動する実務家と相性が悪いとする。

全員がポジティブでは、全員が起業家となり具体的にプロジェクトが進まない。導入期には起業家が活躍し、成長期前半には実務家が事業を軌道に乗せ、成長期後半には管理者が事業を安定させる。成熟期には統合者が人材育成に活躍する。

変化にポジティブ(男性的)な起業家と実務家、ネガティブ(女性的)な管理者と統合者。

ネガティブな意見は質問と考えて、プロジェクト推進のためのヒントとする。特に、対極者の視点には丁寧に回答する。起業家と管理者、実務家と統合者。

<原初の図形>
文化人類学者アンジェレス・アライエンの意見。

人類が原初から描いた図形を大別すると、以下の五パターンになる。

△:目標、推進
□:安定、管理
○:完成、調和
◎:飛躍、成長
+:関係性

こうした各図形が持つ意味を考えると、議論を推進したい場合は△をベースとした図形で説明し、議論を収束させたい場合は□の図形、終盤においては解説した要素の関係性を開設する◎や+が組み合わされた図表が多い事に気付くとしている。

第7章 行き詰まりを突破するCPS
CPS(Creative Problem Method)
創造的解決手法。

質問に対してイメージで答える事により、思い込みによる思考から自由になる。本質的な解答は言語化出来ないイメージにあるとする。ハイシンクタンクと呼ばれるメソッド。

ステップ1:
質問を六以上用意し、紙に一つずつ書いて折り畳む。その結果、どのような質問が書かれているか分からないようにする。

ステップ2:
折りたたんだ紙を封筒に入れ、よく混ぜてから一つ取り出す。

ステップ3:
リラックスした状態で目を閉じ、三つのイメージを思い浮かべる。イメージを声に出して詳しく描写する。レコーダーに声を録音後、自分で聞きながらイメージを紙に書く。

ステップ4:
三つのイメージの共通点を見つける。

ステップ5:
質問を書いた紙を開く。質問の解答が、上記で描いたイメージとする。

ステップ6:
答えとして提示されたイメージを言語に翻訳する。描かれたイメージが質問の答えとなった理由を考える。イメージは象徴であり、質問とイメージを意味付ける言葉を書き出していく。

潜在意識レベルでは、折り畳んだ質問の内容を把握しており、無意識的な解答が導き出されるとする。

こうした方法論は、現実的であるかに囚われずに拡散思考として様々なアイデアを0から考える場合に有効とする。ただし背景を知り過ぎていると既存情報とこじつけてしまうし、正しい思考であるかはイメージ思考だけでは分かり難い。また、他者が共有出来るようにする方法も不可欠。

拡散したアイデアを論理的思考によって収束させる必要があるとする。

第8章 社会変革のためのマーケティング
全脳思考モデルを個別的な影響を生み出すだけでなく、波及効果を生み出して社会全体を変革するモデルとする。

U理論におけるレベル2 = 客観的分析、レベル3 = 共感に基づいたブランディング、レベル4 = 社会変革。

出会いの深層背景として、当人を意志を超えて、人間的な成長を成し遂げるのに相応しい背景を持った空間に自然と引き寄せられる。人間は無意識的に出会いを選択しているとする。

偶然を必然と考えた場合にどのような理由になるのかを説明して説得力に繋げる。

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