水素エコノミー

読んだ本の感想。

ジェレミー・リフキン著。2003年4月25日 第1刷発行。



2000年頃の情報に基づいた本。エネルギー資源の埋蔵量や分散型電源については、新しい情報を参照した方が良いと思った。

文明をエネルギーの観点から考える。

<熱力学の法則>
宇宙におけるエネルギー量の総和は一定であり、エントロピーの総和は常に増加している。

エントロピーとは、使用可能エネルギーの消失である。エントロピー増加とは、エネルギーが形を変える時は必ず利用可能なエネルギーが失われる事を示すとする。

エネルギーが仕事に変換されるためには、エネルギー密度が高い状態から低い状態への変化が必要であり、例えば、蒸気機関が働くのは一部が冷たく、残りが熱いからだ。熱い部分に集中し、有用だったエネルギーは冷たくなる事によって無秩序に分散する。

エントロピーの総和は常に増加している

⇒エネルギーの変化は一方向だけで、使用可能状態から使用不可能状態へ、有効から無効へ、秩序から無秩序へしか変化しない。

文明が人間の生存を支えるために、環境から取り込んだエネルギーを使用済みエネルギーに変える努力を中心に構成されているならば、全ての文明は崩壊すると定められる?

<生物>
生物は単体として見ると、熱力学の法則を無視して秩序を保っているように思えるが、秩序を保つために利用可能エネルギーを糧としており、環境の総体的エントロピーを増やしている。

死と懸け離れた非平衡状態を維持する過程は高くつき、生物内部で発生するエントロピーの減少は、環境全体における遥かに大きなエントロピーの増大を代償とする。

そして食物連鎖を考えると、捕食の過程でエネルギーの8割~9割が浪費され、熱となって環境に放出されるとする。生物は進化の階層を昇るほど、多くの無秩序を環境全体に起こす事で秩序立った非平衡状態を保つとする。

進化した生物ほど平衡状態を逃れるために大きなエネルギーを必要とするため、生理学的に有利な機能を持つ必要がある。進化とは、より複雑な構造の生体組織を形成する事であり、進化する毎に分化して特殊化し、多くのエネルギーを取り込む。

◎文明の発展
エネルギー使用量増大を文明の発展と同一視する思想。

文明は、自然の混沌に対してエネルギーを組織し、秩序立った社会的領域を生み出す、体系化の原理と図式で構成されているとする。

人間にとって最初の動力装置は自らの身体であった。人類は歴史の大半を狩猟採集民として生き、野生の動植物に蓄えられたエネルギーを取り込んだ。

その後、農耕を営むようになった人類は、周囲からさらに多くのエネルギーを取り込む事が出来るようになり、余剰農産物によって一部の人間が労働から解放され、社会の階層化と仕事の分化が始まったとする。

⇒複雑な制度体系の始まり。

人類の生活が工業中心に変化した時も化石燃料を動力源に利用可能エネルギーが増加した。エネルギー量増大は、それを管理するより複雑な制度体系を必要とし、社会構造の階層化が促進され、権力が上位に集中するようになる。少数者に権力が集中する事の弊害は、柔軟性が無くなり、混乱に脆弱になる事とする。

◎文明の衰退
社会組織が進化して複雑化するほど、維持費用が増加してエントロピーも増える。

あらゆる文明は、自らが生み出す秩序のために多くの秩序を周囲から吸い取るために環境を疲弊させる事になる。

外部環境から使用出来るエネルギーが少なくなると、複雑な制度を維持するためにエネルギーの蓄えを費やす事になり、制度から得られるエネルギーが減っていくと崩壊が始まるとする。

文明の初期においては外部の征服にエネルギーが使用され、戦利品として得られたエネルギーは獲得のために費やされたエネルギーよりも多いが、文明の末期には外部からの侵略を阻止するために多量のエネルギーを費やす事になり、戦利品の見返りは得られなくなる。

社会が崩壊を防ぐために、形骸化した秩序を維持しようと残っているエネルギーを注ぎ込む事によって、さらにエネルギーを浪費してしまう。

崩壊を防ぐには、他者を征服するか、新しいエネルギー源を見つけるしかない。

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イスラム原理主義の台頭について。

イスラム教徒は世界で最も急速に増えている人口集団であり、2025年までに世界人口の1/4はイスラム教徒になっているという予測がある。

イスラム教はユダヤ教を根源とする一神教という点でキリスト教と同様だが、現生の捉え方に違いがある。

キリスト教:
来世での永遠の救済を重視する。カエサルのものはカエサルに。

イスラム教:
現世を重視する。信者が一つになる普遍的共同体ウンマ。

キリスト教社会では理性と信仰が分離され、宗教と無縁の独立国家が出現し得るが、イスラム教社会では様々な民族を超えた普遍的同胞社会を築く事になる。

そのため、人間を万物の支配者とする方法を探求する科学的思想はイスラムに馴染まないとする。神を知るための手段という限界。

20世紀初頭には、イスラム社会に以下の2グループが生まれたとする。

①西洋化主義者
西洋モデルをイスラム世界に取り入れる。
②近代主義者
イスラム社会を基本として、キリスト教社会の技術を取り入れる。

既に植民地政策の影響によって西洋化主義者による民族国家モデルが中東一帯に導入されたが、イスラム教徒による普遍的共同体の生活体験と西洋モデルの融合は困難だった。

中東における民族国家は、共通の政治的目標を追及するよりも、資源や軍事戦略上の利益を守るために作られたもので、そこから問題が生じる。

第二次世界大戦後に、エジプトにて汎アラブ主義という形で民族独立運動が盛り上がった。アラブ世界をアラビア語を話す一つの国家に統合する思想。しかし、エジプトの社会主義は国を発展させる事が出来ず、アラブ世界総掛かりでも1967年のイスラエルとの戦争に敗北した事で汎アラブ主義は失敗したと見なされた。

汎アラブ国家樹立のためには、国民の日常生活に対するイスラム教の支配を弱める必要があり、イスラム教の影響を一掃しようとする公共キャンペーンが世俗社会に対するイスラム教徒の憎悪を募らせたとする。

イスラム原理主義の精神的創始者は、エジプトのサイイド・クトゥブである。ムスリム同胞団の活動家として、エジプト警察による弾圧を経験した結果、イスラム教と世俗社会の基本的原理は両立しないと思うようになった。

『道しるべ』を著述し、当時のアラブ諸国指導者ほぼ全員を信仰の敵とした。イスラム世界が衰退している原因は、統治者と人民がイスラムの教えを放棄した事にあるとする。問題を解決するには、イスラム教の伝統的な行動規範を厳守し、西洋の影響を一掃すべきとした。

そして、1973年のアラブ・イスラエル戦争においては、「神は偉大なり」という言葉がスローガンとなり、信仰によって良い結果が生み出されたように感じられた。1979年のイラン革命もイスラム教復興も原理主義運動の励みになったとする。

さらに、1970年代の石油ブームはイスラム世界を強大化させた。宗教団体に石油マネーが流れ込み、イスラム化が加速した。そして新たな富は政治の腐敗と不平等を生み、イスラム教が理想とする公正な社会との違いを際立たせる事になる。

若く貧しいイスラム教徒にとって、イスラム原理主義の完結なメッセージには真実が感じられる。世界にはイスラム教徒と野蛮人の二種類しかない。真のイスラム教徒になれば重要な役割を果たす事になる。自らの尊厳が回復し、人生が意味を持ち、主張が正しいと認められる。

****************

化石燃料活用による大量エネルギー消費が19世紀半ばからの人口爆発の原因とする。人口が増えれば、より複雑な社会構造が必要とされ、その制度体系を維持するためにエネルギーをより多く利用する事になる。

鉄道と電信による商業や公益活動の地理的広がりは、新たな政治的纏まりとしての民族国家台頭を招いた。広範囲の資源を確保し、多様な労働力を動員し、複数の巨大消費市場を連携させる包括的統治形態。

16世紀初頭の欧州は、都市国家や王国等の500以上の小さな自治政府から成り立っていたが、1975年には、自治政府の数は35に減っていた。さらに欧州には一つの政治組織に纏まろうとする動きがある。

巨大国家が増加するように、莫大なエネルギーを処理される巨大都市も増加している。古代バビロニアの最盛期の住民は10万人程度であり、アテネの人口は5万人未満。1820年頃にロンドンは化石燃料時代の都市として初めて人口が100万人に達した。

1920年には人口が100万人を超える都市は11だったが、1950年には75になり、1976年には191となる。地球人口の半分以上が密度の高い都市圏に暮らすようになる。都市を維持するためには食料とエネルギーの安定した流れが必要であり、人口100万人の平均的都市は、毎日2000トンの食糧と62万5000トンの上水と9500トンの燃料を必要とする。

都市は、農業という危うい土台の上に載る不安定な形態。

1980年代に情報化社会が誕生すると、階層制度がネットワークによって代替され、業務上の連携と活動のネットワークを管理するために「企業」が拡大するようになる。

世界規模の商業と貿易による企業の集約化は進展しており、2002年現在?では、世界の経済組織の上位100の内、51は企業である(企業の売上総額と国内総生産の比較)。

上位200社の売上総額は、世界上位10カ国以外の国内総生産を全部合わせた額より大きく、1999年には、トップ5企業の売上高のどれもが、182カ国の国内総生産を上回った。1983年の上位200社の半数以上が1999年のリストでも健在である。

経済力の統合と集中により、全ての商業活動が500の企業の周囲に集中するようになったとする。巨大な企業に管理された新しい帝国の出現。

次世代において、各地域社会での自給自足が実現すれば、こうした流れが反転すると考える。

経済の自給自足によって物質面での安定が得られれば、社会としての団結意識が生まれるとする。歴史上、エネルギー体制の変化は人間と社会の関わりを変えてきた。

農業社会においては、厳密な階層構造が存在し、義務が規定された教理に支配されたとする。定められた義務と役割を果たせば現世における心の平安と来世における幸福が得られると信じられた。人々は現世で土地に帰属し、来世で神に救われた。

工業社会においては、自分の意のままに動く機械の出現により、幸福は神や自然に左右されるのでなく、自律的に手に入れるべきとする精神が少しずつ浸透した。

鉄道等によって行動範囲が拡大し、自由に動き回る機動性が生活に革割、安定感の欠如と絶えざる変化が新時代の特徴となる。革新がスローガンとなり、新しい事を試す事が善となる。

個人の自律 = 他者に依存しない事や機動性が美徳となり、そこに政府が人々が自律した生活を謳歌する義務を負う事になる。

情報化社会における変革は、各個人がネットワークによって結ばれている事に由来する。自律と排他の観点から自由を捉える思想は、情報化社会には馴染まない。孤立は死であり、大勢の人間と接続する権利としての自由を捉える。

中央集権のピラミッド型商業ネットワークは、化石燃料体制と工業中心の生活様式と一体になったものであり、自律と機動性に安心を見い出す近代的価値観に基づいているとする。

それは、分散型商業ネットワークや個人が社会に埋め込まれる双方向型ネットワーク社会では古い発想であるかもしれない。

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