木材・石炭・シェールガス

読んだ本の感想。

石井彰著。2014年5月2日 第一版第一刷。



第一章 「エネルギー反革命」の時代
再生可能エネルギーへのシフトは、復古運動であるとする。産業革命によって向上したエネルギー効率と供給可能量増加に逆行する。
風力発電は原理的に風車と変わらず、太陽光発電も太陽光を光合成に利用している薪炭と原理的に大差無く、エネルギーの産出/投入比率は良くない。

原子力は、石炭、石油に次ぐ第三のエネルギー革命を期待され、1970年代には世界の一次エネルギー源に占めるシェアは0%近い水準だったが、2014年現在で5%程度まで上昇した(石油33%、石炭28%、天然ガス22%)。日本では2005年時点で一次エネルギー供給の12%、全電源の31%を占めていた。

再生可能エネルギーが原子力発電所や化石燃料を代替出来ないのは、原理的なものとする。

第二章 再生可能エネルギー世界史
人類の歴史は、人口増大による森林伐採の歴史でもある。木炭不足が産業革命の原因。

ドイツ語圏は西欧と比較して人口密度が少なく、森林資源が比較劇豊富であったため、産業革命の進展が遅れたとする(2000年頃?の森林面積比率はドイツ3割、英国1割弱、日本6割弱)。

動力源としての家畜を増やすには、森林を大規模伐採して草地を確保しなくてはならない。フランス革命直前にラボワジエが数えたところでは、フランスの農作業用の牛は300万頭、馬は178万頭で、馬一頭を飼育するのに2ヘクタール、牛のその半分の土地が必要であるとした。およそ600万ヘクタール、フランスの約1割が飼料用農地となる事になる。

馬利用の最盛期は19世紀後半で、英国では約350万頭の馬が年間400万トンの穀物・干し草を食べ、必要な農地面積は600万ヘクタールと英国全面積の約3割だった。

⇒木材不足による危機は、薪炭・牛馬から石炭への強制的移行の原因となった。

<水力発電史>
最古の水車は、古代キリシャ等で発明された。水車は大型化、効率化され、産業革命直前には、フランスで6万、欧州全体で50万~60万の水車小屋が存在したとする(ブローデルの推定)。

1870年代には英国で世界初の水力発電所が誕生し、日本では1888年に宮城県で水力発電が開始された。1924年には大型ダムを伴う大井ダムが建設sれ、1960年代~1970年代頃まで水力発電用大型ダムが日本中に建設される。

しかし、水力発電は効率が悪く、1963年に竣工した黒部川ダムの出力は33万kwで、通常型原子力発電所一系列の1/4、天然ガス火力発電所一系列の半分強の発電能力しか無い。

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大型水力発電は、再生可能エネルギーの中では効率が良い。日本は、年間平均降水量が1500mmを超え、地形が急峻という水力発電に有利な土地であるが、それでも電力需要量の8%~9%を賄えるに過ぎない。スウェーデンの再生可能エネルギーの大半は水力発電だが、人口密度が日本1/20であり参考にならない。

<風力発電史>
風車は紀元前1000年頃のエジプトから灌漑用に使用され始め、7世紀のイスラム圏で本格的に使用され、十字軍によって12世紀に欧州に伝わる。

北海からの風向が一定しているオランダでは、10馬力(約7kw相当)の出力があり、19世紀半ばには1万基近い風車があったが、蒸気機関に代替され、19世紀末には2000基以下まで激減した。

1930年代の米国中西部にて風力発電のブームがあり、数十万台の風力発電機が動いたとされる。しかし、風力発電の効率は非常に悪く、ニューディール政策によって送電線網と大型火力発電所が整備されると、1950年代には風力発電ブームは完全に駆逐された。その後、1970年代の石油危機時にはカリフォルニアで風力発電のブームがあったが、1986年に石油価格が暴落するとブームは下火になった。

第三章 第一の反革命―
    再生可能エネルギーは環境に悪い

歴史学者 F・ブローデルの意見では、産業革命以前の経済の最大制約は、エネルギーであったとする。産業革命以前の欧州の牛馬の動力は総計1000万馬力、薪炭の火力が総計500万馬力、水車が総計200万馬力、人力が総計90万馬力、帆船が20万馬力で、全てを足しても2000万馬力であり、21世紀初頭の欧州におけるエネルギー使用量の1/50~1/100程度である。

化石燃料は、再生可能エネルギーよりも効率が良い。風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギーは、化石燃料等に比べて数倍の費用がかかる。しかも、常に電力を使用可能にするには、機動力のあるバックアップ電源が必要である。

このバックアップ電源は、蓄電池や水素貯蔵等になる。リチウムイオン電池の蓄電量1kw時当たりの費用は、100円/kw時前後以上で、現在の日本発電費用平均の10倍以上である。ナトリウム・硫黄電池の費用はリチウムイオン電池よりも低いが、それでも数倍の費用がかかる。

近未来においては、欧州にてバックアップ電源に必要な費用上昇の問題が顕在化するとしている。

日本での報道は、ドイツ、デンマーク、スペイン等の個別の国における再生可能エネルギー導入事例しか紹介しないが、実際には、これらEUの国は、欧州全体の大送電線網に寄り掛かり、他国の電力需給の変動吸収能力をバックアップ電源として活用している。

ドイツでは、風況の良い北海沿岸に大規模風力発電設備を作ったが、産業の集積地である南端のバイエルン州、西側中部のルール工業地帯まで数百㎞の大送電線網を建設する必要があり、現実には風力発電を活用しきれていない。日本に当て嵌めると、風況が良いのは東北北部や北海道の海岸地帯くらいで、そこから東京、仙台等へ大送電線網を建設するのは現実的でないとする。

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原理的に再生可能エネルギーは、面積当たりの出力(出力密度)が化石燃料や原子力と比較して低い。年間通して考えると、出力密度が高い天然ガス・コンバインド・サイクル発電所の発電能力は、大型太陽光発電所の2000倍~3000倍である。

そのため、再生可能エネルギーを本格的に導入しようとすると、広範囲の自然破壊が前提になってしまう。地熱発電でも50基で原子力発電所1基分の発電能力であり、導入のためには国立公園等の自然破壊を行わなくてはならない。

第四章 第二の反革命―
    シェールガス革命

シェール(頁岩):
シダや藻の死骸が河川に流され、河口付近の海底や湖の底に埋もれて堆積し、数百万年以上をかけて圧縮され、薄片状になった岩石。地下2000m~4000m付近に広範囲に分布する。

頁岩は、圧力と地球内部からの高温によって、泥の中の有機物がメタン等の炭化水素に化学変化する。こうした有機物を含む泥岩を根源岩と呼ぶ。

根源岩の中にある天然ガスが石油の量は、通常型の油田、ガス田よりも遥かに多く、シェールガス革命までは採掘出来なかった。

水平坑井掘削技術:
地表から深度数千mのシェール層まで、垂直坑井を掘削し、シェール層に達する直前から直角に坑井を曲げ、水平坑井を数㎞掘削する。薄く水平に広がるシェール層内で、坑井の接触面積が最大になるようにする。

多段階水圧破砕技術(フラッキング):
水平坑井内を風船状に広がるパッカーと呼ばれる道具を使用して20~40セクションに区切る。各セクションに対して、その部分のシェール地質に合わせて、水とポリマー等の各種化学物質混合物を数百気圧の高圧をかけて、多数の微細な割れ目 = フラクチャーを作る。

精密地震探査技術:
フラクチャーが出来る際に、微細な地震が発生する。その地震波を高感度地震センサーでキャッチし、計算し、割れ目の場所を㎝単位で把握する。その位置情報によって微妙に水圧を操作し、フラクチャーの最適化を図る。

ガスを生産するには、フラクチャー生成に使用した水を地表に戻すが、フラクチャーが閉じないように、プロッパント(石英等で出来たパチンコ玉のようなつっかえ棒)を粘性のあるポリマーに混ぜて圧入水に混ぜておき、フラクチャーを保持する。

シェール層にあるナノレベルの狭い隙間では、クヌーセン拡散という現象によって天然ガスが流れ易くなり、シェールガスの回収率は20%前後にまでなる。在来型ガス田の回収率は、70%~80%であるが、資源量自体はシェールガスの方が多い。

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シェール層と飲料用の帯水層の間には、堅い地層が数千m存在するので、圧入水内の化学物質が飲料水に紛れる事は無い。2012年にIEAが出したレポートでは、シェールガス開発に伴う地下水汚染の懸念は7%の費用負担で全く問題を生じる事は無いとしている。

真の問題は、浄化リサイクルされるフローバック・ウォーターの存在であり、現在では濃縮された汚染物質を深度数千mの井戸を掘って地中処理し地得るが適地確保が困難になっている。

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<天然ガス・コンバインド・サイクル方式>
天然ガスを直接ガス・タービンの回転翼に燃焼噴射して発電し、高温な排気で蒸気タービンをもう一回まわす発電方式。従来のボイラー型発電方式よりも50%以上の効率アップで、発電効率は60%程度になる。米国では、シェールガス革命による天然ガス価格低下により、天然ガス・コンバインド・サイクルが普及し、2012年には二酸化炭素発生量が前年比3%以上減少したとする。

<電熱併給技術>
発電時の排熱を利用する省エネ方式。従来の大型火力発電所、長距離送電線網のスタイルでは、投入化石燃料が持つエネルギー量の約65%が廃熱となる(発電効率40%、電気抵抗による送電ロスが5%)。分散型コージェネレーションに切り替えると、最大有効利用率は90%にもなるとする。

第五章 第三の反革命―
    「石油の世紀」の終焉

2012年に世界の一次エネルギー需要に占める石油の割合は33%未満で、石炭との差は2%余り。2012年末にIEAが発表した中期エネルギー見通しでは、2016年頃までに、石油需要は石炭需要に追い越されるとの見通しがある。

石炭と石油の違いは価格水準であり、石油は石炭より4倍~5倍高い。石油価格が低下しても、産油地域は政情不安定であり、石油価格低下による不安定化発生が予想されるため、石油からの代替は継続する可能性が高い。

第六章 エコという迷宮
環境問題の複雑性について。

電気自動車が排出する二酸化炭素は、①発電時に排出されるものと、②リチウムイオン電池を製造する過程で作られるものと2つある。リチウムイオン電池1㎏を製造するのに、50㎏弱の二酸化炭素を排出しなくてはならない。早稲田大学 松方正彦氏の推計では、リチウムイオン電池の充電回数寿命を考慮すると、走行距離約10万㎞までは電気自動車の二酸化炭素排出量はガソリン車を下回る事は出来ない。

2010年の日本の最終エネルギー消費に占める自動車燃料のシェアは20%だが、電気は25%である。電気の内、約1/4が原子力であるため、最終エネルギー需要全体の6%でしかない原子力をエネルギー議論の中心に据える事には無理がある。

地球温暖化への疑念。1950年~20世紀末まで地球全体の気温は上昇したが、その後の上昇は止まったとする。人工衛星による全球観測。スペンスマルク効果という学説があり、太陽の磁気活動周期が地球気候変動に影響するという仮説。

第七章 エネルギーの将来
超長期で考えると、再生可能エネルギー、化石燃料に次ぐ、真の意味で新しいエネルギー源は原子力しかないとする。

日本とデンマークを比較すると、デンマークは日本の北陸地方の1.7倍ほどの大きさで、人口も約500万人で北陸地方に等しい。デンマークの再生可能エネルギー(風力、バイオマス)による年間発電量は、2010年で約120億kwだが、北陸地方の再生可能エネルギー(水力)による年間発電量は約130億kwで、デンマークよりも多い。

そして、デンマークは発電費用が高い再生可能エネルギーの比率が高いため、IEA統計によると2012年第二四半期で、家庭用電気料金が38米セント/kw時(フランス:18米セント/kw時、英国:22米セント/kw時、日本:27米セント/kw時)と高額である。

このように、デンマークと日本の小規模地域の個別事例を比較する事に意味は無いとする。エネルギー市場が完全に統合されているEU全体と日本を比較すると、電源構成比率に大差は無い。

原子力発電の穴を埋めるのは天然ガスと考えるべきであるが、それでも固定費用の高い原子力発電所を止めて、可変費用の高い火力で代替すると発電費用は大幅上昇するため、日本経済が費用上昇をどこまで許容可能かを考えなくてはならない。

日本で脱原子力発電を実現するのであれば、人口が大きく減少してエネルギー需要も減少するであろう21世紀半ばを待つ必要があるとする。

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