恐怖の法則

読んだ本の感想。

キャス・サンスティーン著。2015年2月10日 第1版第1刷発行。



政治は恐怖に対してどのように対処すべきであるか。

人々の恐怖によって規制がかけられ自由が侵害される事に対する著者の解決策は分からなかった。

①明白な法律上の授権無しに市民的自由を侵害してはならない
②特定少数者の自由の制限は疑うべきである
③自由と安全を個別事例において比較衡量すべきでない

限定された情報と合理性という前提条件があるのだから、感情的恐怖による過剰保護の問題は、制度や教育によって抑制出来ないかもしれない。

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著者の主張する以下の2つの理念。

①熟考民主主義
恐怖への応答は、熟考と理由付けによって補完されなくてはならない
②完全に理論化されていない合意
異質性を孕んだ社会においては、高レベルの理論に基づく合意よって解決出来ない問題がある。多様性を有する人々の間では、意見が収斂するような実践的で低レベルの原則に基づく合意が現実的である。

予防原則:
不確実性に直面した場合には、脅威を未然に防ぐべきという思想。

弱いバージョンでは、害悪の決定的証拠が欠けている事が規制拒否の理由にはならないとする。強いバージョンでは、あらゆる意思決定において安全マージンを構築すべきとする。

潜在的な危険が認められる場合、因果関係が明確でなく、現実となるか分からなくとも対策を取るべきとする。恐怖に関する実際的な議論の基盤となり、意思決定に関して多くの論点を提起する。

しかして、予防原則は特定のリスクを回避しているに過ぎず、飛行機のリスクを回避すると、自動車運転に関するリスクが増大する等の問題がある。

予防原則が指針となるのは、人間の認知が社会によって規定されており、特定の少数のリスクのみが過大に認識されるためである。

以下は、予防原則が具体的指針を与えると思われるための5つの人間の思考様式?

①想起可能性ヒューリスティック
容易に思い浮かべる事が出来る危機は過大評価される
②確率無視
ほとんど発生しない事でも最悪のケースを考えてしまう
③損失回避性
現状を変える事に抵抗を感じる
④自然への信頼
人為的な決定や過程よりも、慈しむべき自然を信頼する
⑤システムへの無理解
特定事象を操作すると、他の分野に影響を及ぼす事を理解困難

特に、対策を練る事による費用が現実に発生しない場合は、対策を過剰に求めてしまう?感情が確率的判断を抑制する?

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社会的影響に関する考察:
人間の認知は社会的影響を受ける。逸話や実例によって感情が伝播し、他者の反応が自らに影響する(カスケード)。そして似た意見を持つ人々が議論すると、極端な観点が受容される(集団極化)。
自らの知覚出来る中で最も説得力のある意見に従うべきと感じるし、集団メンバーに好意的に受け入れて貰うために、自らの意見を調整してしまう。

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著者は、恐怖への政治的対応について結論を出せていないように思えた。

予防原則の4つの要素:

①不確実性の程度
ある活動が損害のリスクを「幾らか」齎すだけでは禁止の理由にはならない。一定の閾値以上の証拠が必要
②対応を正当化するための損害規模
③予防のための手段
リスクを0に出来ない事を認識すべき
④疑わしい場合における安全マージン
マージンの規模を選択するべき。大規模な対策か小規模な対策か

公の信頼性の問題もある。政府が国民を管理すべきなのか?それとも、国民の要請に対して、政府は従うべきなのか?

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感情によって歪められる認知に対抗する手段として、費用便益分析がある?規制によって、理不尽な費用が必要となる事を意識出来る?

支払意思決定額(WTP)
統計的生命価値(VSL)

上記の金額は、人々が対策に幾らの金銭を費やすのかアンケートする、現実の市場における対策の値段を表す?

あらゆるリスクを金銭的問題に変換出来るなら、首尾一貫した規制体系を構築可能。首尾一貫性が無いと、利益集団の権力によって規制が決定されてしまう可能性がある。

問題点は、各個人において価値観が多様であり、支払う費用を均一化出来ない事?全知の規制主体が存在し、各個人が直面する統計的リスクに応じた支払意思決定額を決める事は困難。誰もが情報の欠如と限定合理性に起因する問題に直面しなくてはならない。

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リバタリアン(私的自由の追求)とパターナリズム(幸福を促進する方向へ導くべき):

選択の自由と、規制推進は両立可能とする。

そもそも選択するためには、選択肢が限定されていなくてならない。選択においては、デフォルト・ルール、フレーミング高価、起点といった文脈的影響が不可欠である。問題提起がなされなければ選択は不可能。

法律や組織の設計が選択に影響を与えるのだから、ルールは影響を受ける人々の厚生を改善するように組み立てられるべきである。

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