スピリチュアル・マシーン

読んだ本の感想。

レイ・カーツワイル著。2001年5月18日 初版第1刷発行。



以下は、「ポスト・ヒューマン誕生」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-283.html

読んでいると、やはり安部公房の話に似ていると感じる。以下は、そう思った時に書いた記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-240.html

手塚治虫の「火の鳥」も想起させる内容であり、多くの人間が同様の事を考えているのだと思う。原型はどこからやって来たのか?

プロローグ
計算機械の革新による社会変化が予想される。計算機械の計算速度は、20世紀初頭には3年で2倍、1950年代~1960年代に毎年2倍、1990年代には12ヵ月で2倍になっている。この傾向が2020年まで継続すると、人間の脳の記憶容量、計算速度を達成する。人間の知能と機械の知能を区別する事が困難になる。

第Ⅰ部 過去
第1章 時間とカオスの規則
宇宙は150億年前に始まった。その10のマイナス43乗秒後に、重力が誕生し、10のマイナス34乗秒後に電子等の物質が誕生。さらに、核子を結合する力、電弱力が誕生。

10のマイナス10乗秒後には、電弱力は電磁気力とベータ崩壊を引き起こす力に分裂。10のマイナス5乗秒後には、宇宙の気温は1兆度まで下がり、反陽子が作られた。

このように、宇宙開始後の1/10億秒以内に、重力の誕生などのパラダイム・シフトが起きた。長期間の安定は、時間を直線的に見せるが、指数関数的な変化が発生する時間もある。

人類の誕生も同様で数万年で驚異的な変化が発生する。技術は継続的変化であるため、指数関数的に変化速度が速まる。

時間とカオスの法則:
特定の過程において、新たな出来事が発生するまでの時間感覚は、カオスの量によって左右される。多量のカオスが存在すると、重要な出来事が発生するまでに時間を要する。逆に秩序が増加すると時間感覚は狭まる。カオスとはランダムな出来事の量である。

カオス増大の法則:
カオスが指数関数的に増大すると、時間は指数関数的に遅くなる。

収穫加速の法則:
秩序が指数関数的に増加すると、時間は指数関数的に速くなる。

進化過程は閉鎖系でなく、多様性を獲得するために混沌を利用する。進化は増加していく秩序を基礎にしており、進化過程においては秩序が増加し、時間は指数関数的に速まる。

********

著者は、ムーアの法則は、それが必要となった1958年~2018年まで有効としている。収穫加速の法則は一時的な原理体系で無いため、ムーアの法則が有効性を失った後に、別の技術が機能するとしている。進化過程は過去に達成した成果を基盤にするために加速するとしている。

第2章 進化の知能
人間が遺伝子によってコーディングされている話。機械による進化も同一である?

第3章 心と機械
脳をスキャンする事で、仮想空間上に同一の人格を構築出来る可能性。人間は素粒子の永久不変の集合体ではなく、物質とエネルギーのパターンであると考える。川の水の流れは独特な形状を作り出し、数秒間は変化しない。パターンを構成する物質は入れ替わる。

人間の自由意志に関わる以下の意見。

①意識は内省する機械に過ぎない
自由意志は幻想である。著者は、この意見の弱点を主観的経験を説明出来ない点にあるとしている?人間の心理は神経発火パターンに還元出来ない?
②論理実証主義者
内的経験を「ハード・プロブレム」とする。脳がどのように機能するかは「イージー・プロブレム」である。こうした客観主義的見解は、ヴィトゲンシュタインが提唱した哲学であり、語るに値するのは直接知覚に基づく経験、そこから構築出来る論理的推論である。しかし、ヴィトゲンシュタインの没後1953年に出版された『哲学探究』においては、黙殺されるべきと説いた問題を塾考に値するとしている。
③我思う、故に我有り
2030年頃になると、デカルトの言明を主張する機械が登場するとしている。デカルトの提唱した問題は、脳からどのように心が生じるかという心身問題ではないかと著者は考えている。
④意識は違う種類のもの
意識を、粒子や力のように、別の基本現象と見なす。科学による検証が行われるか、神秘主義を生み出す。
⑤人間は愚かである
人間に、自由意志を理解する能力は無いと考える。著者は、人間が自由意志に関する疑問を思い付くのなら、回答を理解出来るのではないかとしている。

⇒著者は、見解を総合するとしている。全て一緒にすれば正しいが、個別にすると十分でない。

以下は、別の意見。

⑥思考とは考える事なり
チューリングテストで示されるのは、意識された意図性である。機械が人間の特性を具現化すれば、機械に意識があるように感じられる。

第4章 地上に現れた新しい形態の知能
19世紀にチャールズ・バベッジが提唱した計算機械が、後の世に影響を与えた話。人工知能は、あらゆる領域に普及しつつある。

チューリングの意見:
我々がある物の行動を説明したり予測したり出来るのであれば、我々はそれに知能が有る等と考えないだろう。それ故、同じ物に関して、それを知的と判断する人間もいればそうでない人もいる。後者はその物の行動の法則を見抜いている人間だ。

以下は、知能の枠組み。

①再帰的手法
自分自身を呼び出す手法。膨大な数の組み合わせを調べる。チェスを指す機械では、自分の駒の動きに対する相手の動きを考える時に、再帰が入って来る。
②ニューラルネット
人間の脳を模倣する。パターン認識の選択手法。

以下は、「脳丸ごとシミュレータ」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-842.html

③進化的アルゴリズム
幾つかの規則をランダムに作成し、仮想空間上で模擬進化させる。プロセスの最後には目的に合致した規則が残る。

第5章 文脈と知識
第4章の理論的枠組みの他に知識が必要である。再帰的検索、並列的なパターン認識、反復的進化は知識が無ければ機能しないとしている。再帰的検索がチェスを行うには、チェスの規則を知っている必要がある。

第Ⅱ部 現在
第6章 新しい脳をつくる
知的機械を作り出すには以下が必要?

①手法の組み合わせ
第4章で提示された3つの手法。
②知識
過程が結果を生むには知識が必要。
③コンピュテーション

人間の脳のハードウェア性能:
人間の脳には、約1000億個のニューロンがある。各ニューロンが、平均的に隣り合う約1000個のニューロンと結合すると、総結合数は約100兆になる。各ニューロン結合部は、毎秒約200回の計算を行う。よって脳全体では1秒間に2京回の計算を行っている。

1997年には、2000ドルのニューラル・コンピュータ・チップが毎秒約20億回の計算をした。それが1年で倍増するとすると、2020年には、人間の脳に匹敵する事になる。

人間の脳の記憶容量は、約100兆シナプスで、ビット換算では約10の15乗ビットである。1998年に、10億ビットのRAM(128メガバイト)は約200ドルだった。メモリ回路の容量は、18ヵ月毎に2倍になっており、2023年には約10の15乗ビットの値段が1000ドルになるとしている。

*********

進化的過程は、以下の2つの資源を必要とするとしている。

①過程自体の増加していく秩序
②過程が起きている環境の中の秩序

知能は複雑であるが単純でもある。人間の脳をスキャンする事で、コンピュータ上に心を再現可能?

第7章 …そして身体
心の活動は、生存、安全、栄養、姿、etcといった身体に関連する事項と結び付いている。自己複製技術は、現実世界を変える可能性がある。

2030年代までにはセックスロボットが普及し、2040年代までには、体内神経移植による仮想体験の時代に移行するとしている。

霊的体験:
日常の物質的、現生的束縛を超越して、深い真実に至る感覚。

人間が体験する霊的体験と神経学的相関が明確になれば、意識を持つ計算機械も、自らが霊的体験をしていると確信する?

第8章 現在
現代は計算機械の継続的動作に依存する時代である。文芸や音楽を創作する計算機械は、既に存在し、活動の幅を広げると予測する。

第Ⅲ部 …そして未来
第9章 二〇〇九年
コンピュータ:
ポータブル・コンピュータ(メモリは電子的であり、キーボードが無い)が普及している。ほとんどの人間が10個以上のコンピュータを身に付けている。
1000ドルの計算機械が、毎秒1兆回の計算をする。スーパー・コンピュータの計算速度は、毎秒2京回である。

教育:
あらゆる学生が自分のタブレット型コンピュータを持つ。知的な教育ソフトが学習の一般的手段となる。

障害者:
視覚障害者用のテキスト朗読機、難聴者用の音声テキスト変換機等。歩行支援機も登場し、一部の身体障害者が義肢として活用する。

通信:
翻訳電話の技術が使用される。

ビジネスと経済:
知識コンテンツの台頭により、継続的な経済成長が見られる。物価の下落は悪い事で無い。取引の半分はオンラインで行われ、連続音声認識、自然言語理解、問題解決、イメージ・キャラクタを統合した「インテリジェンス・アシスタント」が手助けをする。本や音楽は、物理的に物を取引するのでなく、情報オブジェクトによって取引される。仕事のメンバーが地理的に離れて仕事をする傾向が強まる。家庭用ロボットは、十分には受容されない。長距離移動には計算機械管理の自動車が使用される。一般道は従来のまま。

政治と社会:
個人情報が政治問題となっている。技術の梯子に取り残された下層階級の問題。

アート:
高品位の画面と描画ソフトによって、コンピュータはアートの選択メディアの一つになっている。大抵のビジュアル・アートは人間とアートソフトの合作である。音楽活動も同様で、作家は音声入力ワープロを利用するようになる。文体チェックや自動編集ソフトの普及。

戦争:
無人の飛行装置による戦場の支配。情報通信のセキュリティが米国国防総省の焦点であり、国家安全の最大の脅威は生物工学兵器である。

健康と医療:
生物工学的治療によって、癌、心臓病等の死者が減少する。遠隔医療が広く利用される。計算機械によるパターン認識を利用して画像化情報を解釈。診断は医師とエキスパートシステムの連携で行われる。患者の生涯記録は計算機械に保存される。

哲学:
チューリングテストへの関心が高まる。計算機械がテストにパスする考えが強まる。

第10章 二〇十九年
コンピュータ:
眼鏡等に組み込まれた三次元ディスプレイが普及する。仮想現実を現実の環境に投影する。三次元環境の特定の場所に、高品位の音を流す聴覚的レンズもある。
計算機械との対話は、主にジェスチャーや自然言語によって行われる。コンピュータ・アシスタントの人格が注目される。4000ドルの計算機械の計算能力は毎秒2京回程度で、人間の脳とほぼ等しい。全ての人間と計算機械の計算能力を合算すると、10%以上が非人間の計算能力となる。
スキャンニングを基本とした脳の逆行学が進歩し、ニューラルネットの設計に応用される。量子ベースの回析装置を使用したレンズ。

教育:
仮想環境に文章を投影して読む事の普及。学習は模擬教師を使用して行われる。

障害者:
眼鏡型のリーディング・ナビゲーション・システムの利用。視覚障害者に文章内容を伝える。網膜や視覚神経の移植は、幾つかの制限があり、少数者にしか利用されない。

通信:
電話には、三次元イメージが付く。三次元ホログラフィ・ディスプレイも登場する。日常的に利用出来る会話翻訳。

ビジネスと経済:
業務のほとんどに模擬人間が関わる。イメージ・キャラクタと双方向音声意志疎通を特徴とする。家庭用機械は広く普及している。自動運転システムは、ほとんどの道路に設置される。

政治と社会:
人々が自動パーソナリティと関わる事が増える。機械知能より人間が優れていると明言困難。

アート:
全ての分野に仮想アーティストが登場。

戦争:
ウィルス・ソフトを用いた情報チャネルの破壊や、生物工学的に作り出された病原体が脅威となる。国家に対する小集団の脅威。飛行兵器は小型だが、ミクロの飛行兵器を研究される。

健康と医療:
平均寿命が100歳を超える。生物工学の普及が潜在的な脅威とされる。

哲学:
計算機械がチューリングテストに合格したという報告が相次ぐが、有識者の基準を満たすには至らない。計算機械の主観的経験は論じられるが、機械知能の権利は論議にならない。

第11章 二〇二九年
コンピュータ:
1000ドル単位のコンピュータは、毎秒20の19乗の計算能力を持つ。全ての人間と計算機械の計算能力を合算すると、99%以上が非人間の計算能力となる。脳の専門的領域の多く(数百カ所で大部分では無い)が解読され、 ニューラルネットに使用される。
ディスプレイは目に移植される。聴覚障害の改善策だった蝸牛殻移植が広く普及する。様々な神経移植が可能になりつつある。

教育:
人間の学習は仮想教師によって行われ、神経移植によって強化される。意味のある知識が機械によって生み出される。

障害者:
全盲者用の視覚ナビゲーション装置、聾唖者用の音声文字化ディスプレイ等により、生涯に伴うハンディキャップはかなり解消されている。

通信:
三次元ホログラフィ技術の改善。触覚通信が直接神経結合によって利用可能になる。

ビジネスと経済:
人口は120億人のまま横這い状態になる。大多数の人間が生活の基本を手に入れる。知的所有権を巡る争いが増える。製造業、農業、運送業には人間の雇用はほとんど無く、最大の雇用機会は教育関係で、医者よりも法律家の方が多い。

政治と社会:
計算機械がチューリングテストにパスする。人間と機械の明確な境界線は存在しない。人間的認識が機械に移植され、多くの機械が個性、技能、知識ベースを持つ。反対に、機械知能を基盤にした神経移植によって人間の知覚や認識機能も向上する。人間とは何かが法的、政治的問題として浮上する。

アート:
著名な芸術家の多くが機械になる。

健康と医療:
遺伝情報により制御されている情報処理過程が完全に理解された結果、老化の解明と改善が進む。人間の平均寿命は120歳である。

哲学:
機械の知能が人間に匹敵するかについての議論。

第12章 二〇九九年
人間の思考は、機械知能の世界と合体しつつある。人間の脳の逆行学の完成。ソフトウェアベースの人間の数は、神経細胞ベースの人間の数を大幅に上回る。機械知性体の基本的権利は既に同意されている。

機械知性体の基本的権利については、以下に書いた「脳はなぜ「心」を作ったのか」の第4章に似たような話があったような気がする。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-26.html

エピローグ
技術を創造する種と、種が創造した機械の合体について。地球の知能密度(1立法マイクロメートルあたりの毎秒の計算回数で表す)は低い。人間の脳の総重量は1000億キログラム程度で、地球上の物質の約1/100兆程度である。

その対局として、ナノチューブのコンピュテーション性能は、上限を持たない。そのため、地球上のコンピュテーション密度は、21世紀中に天文学的な数値になると予想する。

こうした知能が、宇宙の力によってさえ無視出来ない力になる。物理学の法則が知能によって無効にされる事は無いが、知能の前に実質的に消滅する。

宇宙の運命は知能によって左右される?

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