学習する組織

読んだ本の感想。

ピーター・M・センゲ著。2011年6月30日 第1版 第1刷。



絶えず変化する世界に組織が対応するために、志の育成、内省的な会話の展開、複雑性の理解が必要とされる。相互に繋がった社会は階層を弱めるが、目先の対応に追われる状況も作り出す。

以下の教育の一般的体系が企業管理の一般的体系に悪影響を及ぼしている。

・評価による管理
 短期的指標を評価し、見えないものを低く見る。
・追従を基盤にした文化
 恐怖による管理、上司を喜ばすと出世する。
・結果の管理 
 経営陣が目標を設定し、部下が達成責任を負う。
 (現行システムで達成可能に関わらない)
・「正解」対「誤答」
 専門的な問題解決が重視され、意見の分かれる問題は無視。
・画一性
 相違は解消すべきとされ、対立は表面的な調和のために抑制。
・予測と操作が可能
 管理とは操作であり、計画・組織化・操作が重視される。
・過剰な競争と不信
 競争は不可欠である。
・全体性の喪失
 断片化、局所化によってイノベーションが広がらない。

第Ⅰ部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を
    生み出すか……
    そして私たちはいかにそれを変えられるか

第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
独立した関連の無い力で世界は創られていない。細かく問題を分けても解決しない問題があり、全ての要素を並べて全体像を把握する事は不可能だ。

複雑で相互に左右する状況に対処するには、学習する組織―帰属者の決意や学習力を引き出す方法を見つける組織が必要である。

以下の5つの要素技術。

①システム思考
パターン全体を明らかにして、効果的に帰る方法を見つける概念的枠組み。各要素を融合して一貫性のある体系を作る。
②自己マスタリー
継続的に個人のビジョンを明確にし深める。学習する組織の精神的基盤。
③メンタル・モデル
世界を理解するための前提、一般概念。組織としての学習は、自分達が共有するメンタル・モデるを変える過程である。内面の世界観を変える。
④共有ビジョン
組織全体で共有される目標や価値観、使命。
⑤チーム学習
チームのメンバーが前提を保留して一緒に考える。個人では獲得出来ない洞察を集団として発見する。

第2章 あなたの祖s機は学習障害を抱えていないか?
以下は、組織が陥りがちな7つの学習障害。

①「私の仕事は○○だから」
多くの人間は、自分の職業について毎日の職務の事を語るが、自らの属する事業全体の目的を知らない。属するシステムに自分が影響を及ぼす事は考えない。結果として責任範囲は自分の職務の境界に限定されると考える。生み出される結果が失敗だった場合、相互作用を理解しないので他者に原因があると思う。
⇒自己認識が固定されると、自分の他の可能性について考えられなくなる。
②「悪いのはあちら」
自分自身の職務について焦点を当てると、自らの行為の影響が見えない。あちらとこちらはシステムの側面である。
③先制攻撃の幻想
外敵に攻撃的になる事は受身である場合がある。真の積極策は、自らがどのように問題を引き起こすのか知る事である。
④出来事への執着
短期的な事象に囚われて、背後にある長期的な変化に気付かない。
⑤湯で蛙の寓話
徐々に進行する脅威への不適応。
⑥「経験から学ぶ」という妄想
多くの場合、意思決定が齎す結果を直接は学習出来ない。学習には視野があり、行動の結果が遅かったり遠かったりする。1年~2年のサイクルを持つ循環は、見え難く、学び難い。
⑦経営陣の神話
経営陣は、表面的な調和を好み、前提や経験の違いから学習する事が少ない。不確実や無知を表明する事は困難。

第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?
1960年代にMIT スローン経営学大学院で開発された「ビール・ゲーム」について。プレイヤーは、小売業者、卸売業者、ビール工場の役割を担う事で、チームとしての意思決定の困難を学ぶ。

⇒ゲーム序盤でビールの注文が増えると、小売業者はビールを大量に発注する。しかし、卸売業者やビール工場は供給を急には増やせない。小売業者が受注残の事を考えずに注文を増やすと、需要の伸びが止まった時に大量の在庫を抱える事になる。

⇒ゲーム終了後にプレイヤーに質問すると、ビールの需要が急増し急減したように感じている。しかし、実際にはピールの需要は増加した後は横這いである。届かないビールに焦った業者が大量の注文を出し続ける事で、一定時間後に需要以上のビールが生産されてしまう。

・構造が挙動に影響する
 構成員が変わっても、同一構造の中では同じような結果が発生。
・構造は捉え難い
 構造は、個人に対する外的制約でなく、
 挙動を制御する相互関係である。
 人間システムには、認識や行動の拠所である行動方針が含まれる。
・レバレッジは新しい考え方によって齎される
 人間は自分自身の意思決定に着目し、決定が他者に及ぼす影響を
 考えないため、レバレッジを活用出来ない。

人間のシステムにおける構造は、自らが構造の一部であるため捉え難い。

ビール・ゲームで勝つためには、自らの行動が及ぼす影響について考える必要がある。外的要因である他プレイヤーの在庫や受注量を推測する。大量の注文は、他プレイヤーの在庫を減らし、大量注文を誘発する。自らが影響を与える範囲を広げる。以下の2つの指針。
 ①注文したが届いていないビールを念頭に入れる
 ②パニックに陥らない
  注文が即時に届かない時に安易に発注量を増やしてはいけない

ビール・ゲームは以下の学習障害を示す。

・自らの役割になる事で、自分の行動が他者に
 及ぼす影響を考えない
・問題が発生すると他プレイヤーのせいにする
・プレイヤーが積極的に発注すると事態が悪化する
・注文過剰が徐々に蓄積されるため、手遅れになるまで気付かない
・結果が自らの認知外で発生するため、経験から学べない
・問題を他プレイヤーのせいにする事で互いから学習出来ない

ビール・ゲームのプレイヤーが短期的な出来事、自らの役割内の情報に閉じている内は問題を解決出来ない。

説明のレベル1:
出来事の説明 = 誰が誰に何をしたかは、現代文化で一般的だが人々を受身にする。自らの意思決定について質問されると出来事の説明をする。「私が○○週にビールを■本注文したのは、小売業者がビールを△本注文してきて、在庫が無くなったからです」

説明のレベル2:
挙動パターンの説明は、長期的傾向を見て、それが示す意味合いを評価する。「生産・流通システムは、循環や不安定性に陥り易い。小売業者から遠い役割ほど問題は深刻である。従って工場は危機に見舞われる可能性が高い」

説明のレベル3:
構造の説明。挙動パターンを引き起こした要因に焦点を当てる。発注量や出荷量、在庫が如何に相互作用して、不安定性のパターンを生み出すかを示す。

構造の説明が挙動パターンを変えるレベルで原因に対処出来る。

第Ⅱ部 システム思考―「学習する組織」の要
第4章 システム思考の法則
①今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる
30番街で麻薬密売を取り締まると、40番街で麻薬の密売が発生する。システムの特定部分から別の部分へと移動させるだけの解決策は気付かない内に継続される。解決者と引き継ぎ者が異なるからだ。
②強く押すほど、システムが強く押し返す
相殺フィードバック。商品の積極的な売り込みは、多くの顧客を失う原因になるかもしれない。相殺フィードバックによって発生する苦しみを美化する事もある。
③挙動は悪くなる前に良くなる
多くの介入は短期的には上手くいく。相殺フィードバックには遅れが伴う。
④安易な出口は元の場所への入り口に通じる
問題に見なれた解決策を当て嵌める事で安心するが、根本的な問題が放置されている事が多い。見なれた解決策を強く押し進める事を、「より大きな金槌を求める」症候群と呼ぶ。
⑤治療が病気よりも手に負えない事もある
見なれた解決策は中毒にもなる。長期的な依存に繋がる短期的な解決策。
⑥急がば回れ
最適な成長率は、最速の成長率よりも小さい。
⑦原因と結果は、時間的にも空間的にも近くにある訳ではない
結果に問題があっても認識出来ない事がある。
⑧小さな変化が大きな結果を生み出す可能性がある
 ―が、最もレバレッジの高い場所は最も分かり難い
レバレッジとは、小さく的を絞った行動を正しい場所で行えば、持続的で大きな改善を生み出す事を意味する。根底にある構造を見る事。
⑨ケーキを持っている事も出来るし、食べる事も出来る
 ―が、今すぐでない
長期間で、二者択一的な問題の両方を改善出来る事がある。
⑩一頭の象を半分に分けても、二頭の小さい象にはならない
システムには全体性がある。混乱とはレバレッジを見つけられない複雑な問題である。
⑪誰も悪くない
切り離された他者は存在しない。

第5章 意識の変容
システム思考は、全体を見るために相互関係を見る。変化のパターンを知る枠組みである。多くの変数がある複雑性と異なり、動的な複雑性は原因と結果が分かり難く、長期的な効果が明らかでない。あらゆる事象は原因であると同時に結果であるため、線形の思考ではなく環状の思考が必要となる。

例えば、コップに水を注ぐ場合、自らの手が水量を調整しているとも言えるし、水量が自らの手を操作しているとも言える。こうした思考は責任の概念を困難にする。システムが生み出す問題は、全員が責任を共有する。

自己強化型フィードバック:
成長の原動力。
バランス型フィードバック:
平衡型。何も発生していないように見えるため、自己強化型フィードバックよりも見え難い。

特定の変数が他の変数に影響を及ぼすのに時間がかかる場合、遅れはシステムの基本構成要素となる。

第6章 「自然」の型―出来事を制御する型を特定する
人間は無自覚の構造に規定される。システムの構造を学ぶ事は、自分自身の解放を意味する。特定の型が繰り返し発生する。以下のシステム原型。

①成長の限界
自己強化型プロセスが、成功を減速させる副次的影響を生み出す。成長を無理に加速させずに、制約要因を取り除く。
レバレッジを得るために、強く押すのでなく、それまでに考えた事のない選択を考える。

②問題のすり替わり
問題の負担を、簡単な応急措置にすり替える。関税による保護を求める企業は、保護無しに事業が出来なくなる。長期的な方向と共有ビジョンの意識が必要となる。

第7章 自己限定的な成長か、自律的な成長か
構造が見えないと、最もストレスが大きい症状に焦点が当たる。原型を暗示する手掛かりを見つけ、挙動パターンから始める事。

第Ⅲ部 核となるディシプリン
     ―「学習する組織」の構築

第8章 自己マスタリー
個人の学習に取り組むには、組織哲学を改める必要がある。自己マスタリーとは、個人の成長と学習であり、自分の人生と一体化させて取り組む活動である。以下の2つの動き。

①自分にとって重要な事を明確にする
②現実を見る方法を絶えず学ぶ

ビジョンと現実を対置した時に、創造的緊張が生じる。それは解決策を生み出そうとする。自己マスタリーに達した人の学びに終わりは無い。

自己マスタリーに対する抵抗は冷笑的態度であり、そうした人間は高い理想を持っていた人間に多い。自分の理想に裏切られたからだ。また、纏まりの無い企業で自己マスタリーを追求すると逆効果になるかもしれず、ビジョンの共有も大切である。

個人ビジョン:
何かから逃れようとする事はビジョンではない。究極の本質的目標を目指す。目的意識が伴わないビジョンは良い考えに過ぎず、ビジョンの無い目的は適切な尺度が無い。望ましい結果に焦点を当てる事は重要な技術である。

ビジョンを低下させようとする無力感もあるが、構造を理解する事が対策となる。意識していない構造は人間を囚われの身にする。問題を明確にして、システム原型に当て嵌める。

目標が完全に達成された時に手に入る物を考える。その結果、目標の背後にある真の願望に気付く事もある。真の願望が満たされなければ満足出来ない。

第9章 メンタル・モデル
新しい見識が失敗するのは、慣れ親しんだ行動が邪魔している場合がある。世界を規定する概念を検証し改善する必要性。異なるメンタル・モデルを持つ場合、同一事象に対しても異なる意見を持つ。以下の3つの側面。

①個人の気付きを促し振り返りの技術を向上させるツール
 ・言う事と実践する事の違い
 ・観察から一足飛びに一般化していないか
 ・普段言わない本音を明確にする
 ・探求と主張のバランスは効果的な共同学習を実現する
②日常的実践を根付かせるインフラ
③探求と問い直しを推奨する文化

階層性の文化では、開放的な意見交換や自分の出世のためでなく組織の利益を考えて意思決定する事が困難。人間の世界観が仮定から成り立つ事を自覚すべきだし、他者の仮定を探求する事も大切である。

第10章 共有ビジョン
共有のビジョンは、複数の人間の支持を受けられれば抽象概念でなく明白な実在となる。共有ビジョンの多くは、外部と比較した何かを達成する事に主眼が置かれる。敵を倒した後は、守りの姿勢に転じ易い。相手を倒す事よりも内発的な卓越を重視すべき。
心から成し遂げたいと思う目標へと引っ張る力が重要である。共有ビジョンを築くには、まず個人のビジョンを大切にする。大切だと思う行為は個人的なものである。個人のビジョンが組み合わさって共有ビジョンになる。ビジョンは上から申し渡されるものとは考えない。
以下は、経営陣によるビジョンの問題点。
①単発であり、継続性や柔軟性が無い
②個人ぼビジョンに基づかないため、個の力を引き出せない
③問題が無くなるとエネルギーが消える

以下が、共有ビジョンを広める方法?

①自らが参画する
②正直に説明する
③他者に選択させる。進んで参画して貰う

最も難しい問題は、他者を参画させるために自分が出来る事は一切無い事だ。参画に好ましい状況を作りだす事は出来ても、参画を引き起こす事は出来ない。

第11章 チーム学習
共通の方向性を持つ事が、チームが目的を達成するために重要である。

以下の側面。

①複雑な問題を大勢で考える
②革新的に強調しえて行動する
③チームのメンバーが他のメンバーに果たす役割がある

人間の思考は非一貫的であり、①思考は思考自体が参加している事に気付かない②思考は現実を追跡せずに自動化する③自らが一因となった行動を解決する独自の枠組みを確立する

ダイアログに関する記述が難しい。自らの前提を公開し、互いを仲間と思い、文脈を維持する。議論とは異なるとしている。前提条件を保留して意見を出し続ける事?

ダイアログの基本原則:
・立場に固執したり反対しない。前提条件を検証し弁護しない
・肩書を持ちこまず、仲間として行動する
・意見の裏付けとなる論拠を探求する

第Ⅳ部 実践からの振り返り
以下は、様々なインタビュー。

第12章 基盤
BP社の上級副社長ビビアン・コックス。自己マスタリーが重要としている?

第13章 推進力
国際金融公社ドロシー・ハマチ=ベリー、フォード社マーブ・アダムス、シンガボール警察クー・ブーン・ホイへのインタビュー。
社会が複雑化した結果、トップダウン型の組織でなく、連携を基盤にした学習し続ける組織が大切としている?

第14章 戦略
学習する文化を定義付けるものは何か?どのように文化を創り出すか?
学習サイクルには、以下の5つの要素がある。
①信念と前提
②慣行
③技術と能力
④関係のネットワーク
⑤気付きと感性

当たり前とされる前提が慣行を作り、技術や能力の種類を決定する。それは関係のネットワークに影響し、気付きを形成する。

一貫性のある戦略には、以下の3つの要素がある。

①基本理念
組織の存在理由、達成しようとしているもの
②理論・ツール・手法
物事が作用するかを示す理論、実践的な手段
③組織インフラにおけるイノベーション
正式や役割や管理の仕組み

以下の戦略。

①学習と仕事を一体化させる
組織学習を妨げるのは断片化である。社員の仕事の現状を理解し、振り返り等のアプローチがどのように機能するか見抜く事である。
②そこにいる人達と一緒に、自分のいる場所から始める
経営陣ではなく、身近にいる人達と始める。
③二つの文化を併せ持つ
情熱を持つ事は目標達成に必要だが、同時に取り組みに参加していない人達への配慮を怠る要因になるかもしれない。
④練習の場を創る
新しい事を試したり、多くの間違いが許容される場。
⑤ビジネスの中核と繋げる
急進的な手法が根付くには肥沃な土壌を必要とする。変革しようとする人間は、自分を真に喚起する対象と、組織を象徴する何かを知る必要がある。組織が何を大切にしているかを知る。
⑥学習する共同体を構築する
⑦「他者」と協働する
分野を超えて多様性を受け入れる。
⑧学習インフラを構築する
情報を共有し、繋がり合うような練習の場等。

第15章 リーダーの新しい仕事
変化を齎すのは、組織の上層部にいるリーダーであるとするのは間違っている。様々な階層の人々が多様な役割を担っている。
現場のリーダー:
職場環境を創り出す
ネットワーク・リーダー:
新しいアイデアを組織間で広める
幹部クラスのリーダー:
組織全体の基本理念を構築する

方向を定め、重要な決定を下し、帰属員を鼓舞するのがリーダーである。

第16章 システム市民
システム市民とは、複雑なシステムを見る能力を備えた人々である。そうなるためには自らを形成するシステムを熟知する必要がある。

システムを見る2つの観点。
①相互依存性のパターンを見る
②未来を見通す

第17章 「学習する組織」の最前線
著者は、自らが新しい組織管理体系を創る最前線にいるとしている?

第Ⅴ部 結び
第18章 分かたれることのない全体  
宇宙飛行士の話やらガイア理論について。何か宗教みたいになっている。

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