閉じこもるインターネット

読んだ本の感想。

イーライ・パリサー著。2012年2月20日 初版印刷。



2009年12月4日からグーグルは57種類のシグナルを使用して、各ユーザの好みを推測するようになった。グーグルの検索結果が個人化される事になる。こうした傾向が加速すると、個人が自らの情報宇宙に閉じ込められる事になる(フィルターバブル)。

①孤立
自分と同じ価値観の情報のみ取得する事になる。
②見えない
自分に対して、どのようなフィルターがあるか知る事が出来ない。
③選択の余地
フィルターバブルは、ユーザーが選択した訳ではない。

個人化は、情報量の増加に対応した結果かもしれない。人類の誕生から2003年までに人間の行った意思疎通は50億ギガバイトになる。2011年現在?では、2日で同量の情報が生み出される。自らが必要とする情報を取捨選択する必要性。

以下は、フィルターバブルの対価。

①個人的
メディアが自動プロパガンダ装置になり得る。馴染みのものばかりを欲しがるようになる。新たな選択肢を見つける事が出来ずに、自分自身の進路の決定権をフィルターに委ねる事になる。

②社会的
社会資本には2種類あるとする。(1)繋ぐ資本(同窓生同士に生じる)、(2)橋渡し資本(異なる人々の集う集会)。繋ぐ資本ばかりが増加し、橋渡し資本が増加しない傾向がある。自分の身の回りや自己主義を超える場(公)の意識が形成され難い。

第一章 関連性を追求する競争
個人が直面する情報は増え続けており、注意力の限界に達している。各自の興味に訴えるコンテンツを提供するために、関連性が追求される事になる。

各個人の嗜好を過去履歴の関連から分析し、傾向に合わせた検索結果をカスタマイズする。amazon、google、facebook等は、ユーザー情報を多く収集しており、オンライン体験が関連性に基づいて個人化されている。

第二章 ユーザーがコンテンツ
かつての広告は新聞社等に頼るしかなったが、オンライン広告に駆逐されつつある。ニュースは、人間の世界に対する認識を形成する。重要事項、問題の特色等についての認識を形成する。それは共通の体験、知識という基礎として民主主義を支える。

2010年現在においては、ブログ記事からのリンクの99%は新聞や放送ネットワークによるもので、ブログは新聞に強く依存している。今後、放送の時代が終了し、ニュース環境が細分化した場合、重要事項等について世間の共通認識が形成されないかもしれない。

<ニュースシステム誕生の背景>
16世紀半ばの欧州では、宮廷政治の世界であり、新聞は経済や海外ニュースを中心に都市部の商人に提供された。近代的な中央集権国家が誕生し、裕福な個人が生まれてから大衆向けのニュースシステムが誕生する。

個人の体験に収まらない複雑な社会問題の登場や技術的進歩が新聞や放送の普及を促した。印刷機が世間一般への情報伝達を可能にする。

中産階級は、国家の動向に影響される一方で、エンターテイメントに興味を持つ傾向があり、ニュースとドラマを求めた。ヲルター・リップマンは1925年に『幻の公衆』を発表し、十分な情報を与えれば大衆が正しく判断出来るという民主主義の原則に異議を唱えた。

そのため、ニュース政策は倫理的責任を伴うとされるようになる?

インターネットの普及は旧来のメディアによる公の観念を破壊する可能性がある。2007年~2010年に米国における報道機関への信頼は、それ以前の12年間以上に落ち込んだ。インターネットの普及によって、報道の差異が明確化し、一つ一つの意見に対する信頼性が低下した可能性。同時に、facebook等を仲介した友人や親族からの情報に対する信頼性は上昇している。

同質性の高い社会が形成される可能性。クリックの少ない情報が捨象され、重要な事項を優先する仕組みが用意されていない。

第三章 アデラル社会
イメージを明確に把握するには、情報以外に、情報が通過するレンズについて熟知しなくてはならない。個人化によって狭い領域の知識を拡大しても、接する範囲が制限されるかもしれない。

既存の観念的枠組みに合致する情報に囲まれた結果、自信過剰になるかもしれない。学びの切っ掛けを失うかもしれない。フィルターは確証バイアスを高める。

注意欠陥障害の処方薬としてアデラルという薬がある。集中力を維持するために、健常者の中にもアデラルを服用する人間がいる。しかし、アデラルには副作用があり連関による創造性を弱めてしまう。他の全てが意識から排除され、一つの事だけに集中してしまう。

同様に、インターネットの個人化も以下の観点から創造性を妨げる事になる。

①解法範囲
探索範囲が狭まる。
②無刺激
情報環境が特質に乏しくなる。
③受動的
受動的な情報収集によって発見に繋がる探索と相性が悪くなる。

インターネットに漂白を組み込む必要があるかもしれない。また、狭まる範囲に対抗して全体的な位置を把握する情報ツールが必要かもしれない。全体を俯瞰すれば気付く事象に気付かない可能性。

第四章 自分ループ
匿名性を持つオンライン空間が縮んでいる。googleではクリックによって個人化を行い、facebookでは公開情報や友人関係から個人化を行う。

以下の利点、不利点がある。

◎google
利点:
クリックから個人化する事で隠している自分を個人化可能。
不利点:
ポルノやゴシップ等を熟読している人物として個人化される可能性。

◎facebook
利点:
社会に受け入れやすい自己を演出しているため、良く思われるような個人化が成される可能性が高い。
不利点:
私的興味関心の余地が小さい。

⇒自分を情報セットで表現する事は不可能かもしれない。

各人の振る舞いは周辺環境によって変わる。行動の全てが永久記録として残り、自己同一性が一つしか無いという状態に陥ると、一人の人間が複数の役割に対応出来なくなるかもしれない。

各人の個性を把握される事で、知らない内に行動を誘導される可能性がある。過剰適合によって自分好みの情報のみを見せられた結果、個人の傾向が過剰になるかもしれない。そのため、モデルが間違っている可能性に基づいて、好みとは異なると推測される情報も提示する対策を著者は提示している。

ドストエフスキーの『地下室の手記』では、組織化された秩序ある暮らしは、人間を法則に従って説明する冒険の無い世界としている?

第五章 大衆は関連性がない
中国における情報管理の基本は自己検閲である。ブロックするキーワードや禁止する語句を公表しない。閲覧可能なサイトは毎日変わる。普通の人間が情報を入手する際に手間がかかるようにしている。

問題を孕む情報の流れに摩擦を生み出し、大衆の注意を体制側フォーラムに引き付ける。情報を隠すのでなく、情報を中心とした力関係を変える。

クラウドの普及によって、政府は自宅のコンピューターよりも簡単に個人情報を入手出来る。社会契約の基礎は、互いの事を知っている事であるが、各自の情報が非対称になるかもしれない。

友好的世界症候群:
重要な情報が視界に入らない可能性。友人同士の共同体が形成され、新しい考え方を入手出来ない。

<細分化>
政治運動も個人を対象に行われるようになり、公の場で大きな問題が協議されなくなる可能性。それは先進国で発生している価値観の変化の結果かもしれない。脱物質主義。生存の心配をする事無く育った事により食糧難の時代とは異なる価値観が生まれる。不足する物が主観的価値の対象となる。自分の象徴する何かを求める。

⇒権威や伝統に対する敬意が薄い(生存の恐怖が権威への魅力を生み出す?)。異質に対する許容性が高い。生活に対する満足度が高いほど、同性愛者に対する安心感が増すらしい。自己表現と自分らしさに価値を置く。

⇒自分の目標を体現する人物を選ぶ人間が増えると、ブランドの細分化が発生する。自己同一性の異なる複数のグループにアピールする必要性。

著者は、共通の体験が浸食され、政治上のリーダーシップが崩壊する可能性を心配しているようだ。

第六章 Hello,World!
プロフラミングは新しい世界の創造であるとする。小説や絵は創作物と分かるが、プログラムは能動的な行動が可能で現実と誤認され易い。プログラムの世界は拡張可能で、自分ルールの領域を作り出す事が出来る。

社会や権力構造からも疎外され、孤独感を持った人間がいるとする。数式は理解出来ても人間は難しい。社会的信号は正しく解釈出来ない。プログラムは秩序立った記号体系を齎し、無力な自分と決別出来る?体系を支配するルールを学べば、体系を操る力を入手出来る。

体系を理解するシステム化には微妙な理解を失う代償があるが、プログラム文化ではシステム的思考が評価される。仮想世界は立法や司法の関与も無く完璧に施行される。法で取り締まるまでもなく、破壊行為を設計から弾けば良い。

著者は、技術的進歩を完全には信用していないようで、技術者が責任を持たないように感じているようだ。

第七章 望まれるモノを―望むと望まざるとにかかわらず
人間の周辺環境全てが環境知能を持つ可能性。その場合、フィルターバブルから逃れられなくなる。顔認識技術の普及は一例。

・モノのインターネット
RFID等の普及によって、製造物を地球規模で個別に追跡可能になった。

・DNA
1990年にDNAの塩基配列を1組決定するのに10ドルが必要だった。1990年には90セントになり、2004年には1セントを下回り、2010年現在は0.01セントである。各人のヒトゲノムと位置情報を組み合わせる事で、フィルタリング精度が劇的に高まる可能性。

2010年12月に、ハーバード、google、ブリタニカ百科事典、アメリカン・ヘリテージ英英辞典が4年に渡る共同研究の成果を発表した。500年間に出版された総計520万冊の本をデータベース化した。
新語が死語になる期間、表現の変化等、人間性を定量的に測定出来る研究の基礎。

このような巨大データベースの構築が科学的理論終焉の切っ掛けとなるかもしれない。兆単位のビットを解析して相関関係を発見出来るのであれば、仮説を構築する必要は無い?モデル無しで出来る事が増えている?人間はモデル無しに理解出来ないため、人間の及ばない領域が拡大するかもしれない。

第八章 孤立集団の街からの逃亡
フィルタリングが組み込まれた結果、インターネットにおける体験は変わりつつある。その結果、インターネットにおける多様な情報源や選択肢に気付かない可能性がある。

自分の好みを自賛する無限ループから逃れるシステムを構築する?成功する都市のパターンについて以下を考察する。

①混合の街
ライフスタイルや背景と関係無く人々が混じる。
→文化の最大公約数となり多様性が削がれる。
②孤立集団の街
特性で人々が区分けされる。
→小さな世界に囚われる。

孤立集団が混合するサブカルチャーのモザイクを理想とする。互いに往来が可能で、自分に適した場所に居住する。小集団が関係を持ちながら独立する構図。

個人の行動としては、普段とは違うWebサイトを閲覧したり、インターネット・ユーザーを特定するクッキを定期的に削除したりする等してフィルターに揺らぎを齎す方法がある。

こうした個人の行動には限界があり、企業活動も変える必要がある。人間社会はアルゴリズム化が進展し、警察、電力網、学校に至るまでコードで動く公的機能が増えている。揺らぎを齎し、自己同一性をニュアンスの面から把握し、公的問題を積極的に啓蒙し、市民意識を向上させる。

facebookの「いいね!」ボタンの横に「重要!」ボタンを押す、普段は体験しない話題を提示するようにフィルタリングシステムを変更する等の施策が提案されている。

政府として個人情報保護の法案や機関の設立等。少数の米国企業がインターネット動向を左右する社会を著者は望んでいないようだ。

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