伝承を活かすリバース薬理学の挑戦

日経サイエンス2014年10月号P76~P82。

スイス ローザンヌ大学グラーツ、英国 オックスフォード大学ウィルコックスの研究。

自然界由来の薬を探す従来の手法では、植物等から純粋な化合物を単離し、実験室で最適化し、動物で安全性を評価してから人間での臨床試験に進む。この手法による治験薬の95%は臨床試験で失敗に終わる。

単離した化学物質が動物で有効であっても、人間でも有効とは限らない。例えば、試験管による実験では強い抗マラリア活性を示すベルベリン(ケシの成分)は、鼠や人間のマラリアには効果を示さない。米国では、創薬から当局の承認を得るまでに12年の歳月と8億ドルの費用がかかる。

そこで、天然薬探索方法を逆転させる方法論(リバース薬理学)が試みられている。最初に人間で研究し、その後に活性物質を単離する。様々な伝統的薬草を使用している患者を観測し、有望な薬草を特定する。然る後に薬草内の活性物質を特定し、新薬を開発する。

リバース薬理学において重視されるのは、観察的研究?これは観察に基づいて治験効果を推論するもので、患者を治療群と対照群に振り分けるランダム化比較試験とは対照的。

薬の効果の有無を確かめるには、ランダム化比較試験しかないが、非現実的な状況で一部の患者のみを対象に行われる試験には問題がある?患者の経過を記録、解析する必要性。

<後ろ向け治療成績研究、コホート研究>
2002年12月に、スイス ローザンヌ大学グラーツがマリで行った観察的研究試験。マラリアに罹患した患者の治療に使用された植物66種類をリストアップし、メキシコ減算のアザミゲシの葉が有望であると考える。
この情報を、英国 オックスフォード大学ウィルコックスに知らせ、マラリアに対する薬草の効果を調べる臨床試験を行って貰う。
グラーツが過去の事例を調査する後ろ向き研究を行うのに対し、ウィルコックスは治療された患者集団のその後を追跡するコホート研究を行った。

アザミゲシ茶の有効性を調査するランダム化臨床試験を行ったところ、アザミゲシでは患者の89%が回復した。試験の総費用は50万ドル。アザミゲシをマラリア治療に使用すれば、マラリアの治療費を75%削減出来るらしい。

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従来の創薬プロセスでは、最初に調べる化合物が多過ぎるため、問題のありそうな化合物は切り捨てられる。リバース薬理学では、効果が高くて安全である事が確実な化合物が候補に上がる可能性が高い。

スイス ローザンヌ大学グラーツ、英国 オックスフォード大学ウィルコックスは、アフリカの数カ国で母乳の出を良くする薬草エイズの症状を改善する薬草を研究する科学者を訓練しており、2013年には、太平洋諸島のパラオで30種の植物を調査して、コーヒーノキと同じアカネ科のヤエヤマアオキと体重減少の関連性やファレリア・ニシダイと血糖値低下の関連性を明らかにした。

2人は、スイス ジュネーヴを拠点とするメディシン・フォー・マラリア・ベンチャーの協力を得てマライア医療の研究を進める。アザミゲシの活性物質を特定し、体内での代謝を調べる。

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リバース薬理学は、ゲノム解析等から治療の標的となる遺伝子を特定し、薬物を設計するアプローチを指す場合もある。

無限に対処する方法論の1つだと思う。

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