「超」入門 失敗の本質

読んだ本の感想。

鈴木博毅著。2012年4月5日 第1刷発行。



戦力論、日本人の文化論。

以下は、『木を見る西洋人 森を見る東洋人』の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-722.html

第1章 なぜ「戦略」が曖昧なのか?
日本人は大局的、俯瞰的な視点から最終目標に向けた道筋を考える事が苦手?

01 戦略の失敗は戦術で補えない
戦略とは目標達成に繋がる勝利を掴む事。戦略を実現する方法が戦術である。戦術で勝利しても最終目標に結び付かなければ意味は無い。

02 「指標」こそが勝敗を決める
戦略とは、達成すべき指標を決める事。有効な指標を見抜く事が大切である。
石原莞爾の「時給総力戦」思想について。国家間の戦争は、補給が続く限り行われ、国家の生産力を総動員する総力戦で勝敗が決すると考えた。
そのために対米開戦前に以下の構想を練った。

①満州国を興隆させる事で日本の国力を増強する
②中国戦線に深入りしない
③日本の国力が増強した時点で日米最終決戦を行う

現実の日本軍は、「決戦戦争」という思想で行動し、一つの大戦闘で勝利すれば戦争に勝利出来ると考えてしまった?

優先すべき指標は、「国力、生産補給力」であったのに「戦闘における勝利」を達成すべき指標にしてしまった?

03 「体験的学習」では勝った理由はわからない
第二次世界大戦中の日本軍が、効果的な目標を指定出来なかった事について。米軍は、「空母を最優先で沈める」等の有効な指標を設定出来た。

1959年のホンダ自動車が米国に進出して小型バイクを販売した事について。大型バイクを販売するはずだったが、偶然にも小型バイクの需要を見つけ、人気商品とする。

こうした偶発的発見を生み出す体験的学習の積み重ねが日本企業の特徴であるとしている。偶然に新戦略を発見する。理屈や理論でなく、事実を積み重ねる事が重視されるが、成功した定義が曖昧であるため、成功体験に埋没し、教条主義に陥り易くなる。

発見した新戦略に内在する指標を理解出来ないため、再現性が無い。

04 同じ指標ばかり追うといずれ敗北する
体験的学習に頼る場合、自らの成功を曖昧な形で誤解してしまう傾向がある。体験自体を再現する事に執着し、同じ型を追いかける事になる。

第2章 なぜ、「日本的思考」は変化に対応できないのか?
革新が苦手で練磨が特異な傾向。

05 ゲームのルールを変えた者だけがかつ
日本軍の強さは、訓練による反復演習によって達人を生み出す文化にあったと考える。対して米軍は達人を不要とするシステムで対抗した。操縦技能が低いパイロットでも勝ち残れる飛行機、命中精度が低くとも撃墜出来る砲弾、敵を捉えるレーダー、etc。

零戦の初期の相手であったF4Fは空中戦では零戦に劣ったが、新型機のF6Fで空中戦の性能を諦めてスピート、防弾性、重武装を重視し、集団で攻撃する戦略を採用する。勝利するための指標を「空戦性能」から切り替える。米軍はゲームのルールを変えた。

ゲームのルールを変える破壊的発想で無く、型の習熟と改善を基本とする思想の違い。

06 達人も創造的破壊には敗れる
創造的破壊を生み出す3つの要素。

①ヒトと組織の柔軟な活用
ダイナミックな指揮官・参謀の人事。
②技術による創造的破壊
戦闘機や爆撃機等の技術革新。
③技術の運用方法による創造的破壊。
サッチ・ウィーブという二機一編隊での飛行方法等。

07 プロセス改善だけでは、問題を解決できなくなる
「過程、経過」を極度の練磨するプロセス改善では限界がある。

スタートラインとなる思想、手法を変えずに過程を最大限改良しようとするため、努力至上主義や精神論と結び付き易い。目標や問題の基本構造が自らの想定と違うという疑問を持たない学習スタイル(シングル・ループ学習)。基本構造を再定義するダブル・ループ学習を実施するには、組織上層部が現場の問題を理解しなくてはならない。

第3章 なぜ、「イノベーション」が生まれないのか?
ルールを作り出すのでなく、既存のルールに習熟する事を目指す傾向が問題。

08 新しい戦略の前では古い指標は引っくり返る
日本軍の堀参謀が、米軍の戦闘方法を研究し、戦闘の勝敗を決するのは「使用される鉄量」だとした話。鉄量が威力を発揮しないように、水際戦闘を避けて内陸部に堅陣を構築する戦略で米軍を悩ませるようになる。

同様に、イノベーションを生み出すには以下のステップが必要としている。

①戦場の勝敗を支配している「既存の指標」を発見する
②敵が使いこなしている指標を「無効化」する
③支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う

09 技術進歩だけではイノベーションは生まれない
スティーブ・ジョブズの発想について。他社が機能性や技術を有効な指標として採用したのに対抗して、デザイン性や操作性という指標を打ち出した。

10 効果を失った指標を追い続ければ必ず敗北する
高性能とイノベーションは別の存在である。画像が美しくとも、スピードが速くとも消費者が購買欲求を抱かなければ商品は売れない。

第4章 なぜ「型の伝承」を優先してしまうのか?
創造でなく方法に依存する事がイノベーションを潰す。

11 成功の法則を「虎の巻」にしてしまう
日米軍の強味について。

日本軍:
 ・体験的学習によって偶然生まれるイノベーション
 ・練磨の極限を目指す文化
米軍:
 ・戦闘中に発生した「指標」を読み取る能力
 ・相手の指標を明確にし、差し替えるイノベーション

成功の本質(指標)でなく、型と外見だけを伝承する場合、戦略は鈍化してしまう。視点が固定化し、闇雲に同じ行動を繰り返す事になってしまう。

12 成功体験が勝利を妨げる
戦略を以前の成功体験をコピー・拡大再生産する事であると誤認すれば環境変化に対応出来ない。型の伝承と勝利の本質は違う。

13 イノベーションの芽は「組織」が奪う
開発されたレーダーを日本軍が活用しなかった事例について。技術的イノベーションを個人が行っても、組織内の意識構造によって成果に育たない。型を伝承している人々は、イノベーションを敵対視してしまう。

第5章 なぜ、「現場」を上手に活用できないのか?
現場活用が下手。中央部と現場を結び付ける必要性。

14 司令部が「現場の能力」を活かせない
組織運営の失敗に関する以下の視点。

①上層部が現場を蔑視する
 机上の空論に近い作戦立案
②上層部が現場の人間の意見を採用しない
 
権威主義や無理解は一方的な独断による指示を生む。意見交換やフィードバックを重視する必要がある。

15 現場を活性化する仕組みがない
合衆国艦隊司令長官/作戦部長 アーネスト・キング元帥が中央の作戦部員と最前線の要因を一年前後で交代させた事例について。最前線の緊迫感を中央部に伝播する。

有能な人間をフル活用し、優秀性を証明した少数の者に重要な仕事を集中させる。

日本軍は上層部が固定化していたため、教条主義や同一パターンの作戦、現場の意見が活かせない等の問題が発生した?

16 不適切な人事は組織の敗北につながる
米軍がガタルカナル作戦において、極度に悲観的だったフランク・フレッチャー提督とハルゼーと交代させた話について。評価制度が有効に機能する事で有能な人間が力を発揮する。

第6章 なぜ「真のリーダーシップ」が存在しないのか?
環境変化を乗り越えるためにリーダーが行うべき事について。

17 自分の目と耳で確認しないと脚色された情報しか入らない
珊瑚海海戦の後で、米軍が生き残りの兵士から情報収集した話。激戦地は新たな戦略(指標)が生まれる場であると考える。

1960年代に、ハロルド・ジェニーンが指摘したピラミッド型組織の危険性。

①縄張り主義、派閥主義によって、自分の義務と責任以外に
 無関心になる
②重要な情報が組織内で要約され、概略しか上層部に届かない

現場を重視する事で正確な情報を入手する。

18 リーダーこそが組織の限界をつくる
機会を潰す人間の特徴。

①自分が信じたい事を補強する事実だけ見る
②他人の能力を信じない
③階級の上下を超えて他社の視点を活用しない

一方通行型のリーダーシップは組織内に内在する才能を活かせない。

19 間違った「勝利の条件」を組織に強要する
達成すべき指標が誤っている場合、集団に混乱が生じる。

20 居心地の良さが、問題解決能力を破壊する
自己革新型組織の原則は、安定した均衡状態への変化である。

①客観的環境を主観的に再構成するリーダーの洞察力
②異質な情報・知識の交流
③抜擢等による権力構造の均衡破壊

居心地の良さとは正反対の、成果を獲得するための緊張感を維持出来る不均衡を生み出す組織が生き残るとしている。認めたくない問題を直視する覚悟。

第7章 なぜ「集団の空気」に支配されるのか?
思考の集団感染等について。

21 場の「空気」が白を黒に変える
空気の醸成によって、問題の全体像と主張の影響の比率を考慮する事を止めてしまい、一個所から類推を拡大し、一つの正論で結論全体を決めてしまう。

体験的学習の文化・習慣によって「何が正しくて間違っているか」を論じる基準がなく、一つの正論によって関係の薄い全体像まで同じ結論であると誤認してしまう?

体験的学習の延長線上にある「連想」によって全体像を大幅に誤認してしまう。影響比率に注意すべき。

22 都合の悪い情報を無視しても問題自体は消えない
方向転換を妨げる要素について。

①多くの犠牲を払ったプロジェクトは撤退困難
②未解決心理的苦痛からの逃避
 集団内で合意されている事項を議論する事は心理的苦痛を伴う
③建設的議論を封じる人事制度
 異論をさしはさむ人物の左遷等
④幻想を共有する
 集団の和を尊重する場合、安全や採算性よりも個人的配慮が
 重視されてしまう

23 リスクを隠すと悲劇は増大する
リスクを隠し、万一を想定した計画(コンティンジェンシー・プラン)を軽視する危険。希望的仮定が一部でも狂うと惨状が生じる。

リスクを周知する事で具体的管理が可能になる。

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