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共感する女脳、システム化する男脳

読んだ本の感想。

サイモン・バロン=コーエン著。2005(平成17)年4月25日 第1刷発行。



以下は、「男女の脳の違い」に関する講習会に参加した時の記事。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-399.html

第1章 男性型の脳と女性型の脳
男性の脳(空間把握能力に優れる)と女性の脳(言語能力に優れる)には、傾向として差異があるという説。

共感:
他者の思考等に適切な感情を催す傾向。他者の感情が引き金となり、自らの感情が喚起される。

システム化:
パターンを支配する規則を探り出そうとする傾向。システムを構築しようとする傾向。

物事の動きを理解し、予測するにはシステム化が適しているが、人間の行動や感情は一定の法則に従うほど規則的になっていない。システム化では微妙な感情を予測出来ない。

男女の区分けは、統計的な平均値の問題であり、ステレオタイプ化は出来ない。

第2章 男の子・女の子
2人の兄妹に関する記述。兄は物に興味を示し情報を集める。妹は人間に興味を示し人間関係を構築する。

男性:
物理的手段に訴える事が多い。自己中心的に振る舞う傾向が強く、周囲が見え難い。一定のルールに従う活動に興味を示す。

女性:
手段として言語を使用し、交渉や説得を重んじる。公正さを重んじて、利己的な欲求を満たす場合にも相手が譲歩するように仕向ける。

女性は6歳になると99%の割合で人形遊びをするが、男性は17%である。人形遊びはルールに従う遊びとは正反対であり情緒的な関係を構築する。「ごっこ遊び」は共感傾向を観測する機会であるが、女性が役割りを分担するグループでの遊びをするのに対し、男性は一人で遊ぶ事が多い。その目的は殺すか殺されるしかない敵を倒す事である場合が多い。

遊びの目的が相手に共感する事であるか、勝つ事であるかが男女の傾向的な違いと言える?男性の場合は一人で戦う自分中心の話を好むが、女性は友人や家族との話を好む?

男性は、女性よりも相手が敵意を持っていると勘違いする例が多いらしい。

第3章 共感とは何か
共感とは、無意識的に他者の感情と自分を同調させる事である。共感によって他者の気持ちの原因や変化を感じ取り、気配りする事が出来る。

共感には以下の2つの構成要素がある。

①認知的要素
相手の立場になって考える。脱中心化。他者の行動や心の状態を予測する。
②感情的要素
他者の感情に合わせて適切な感情を催す。同情。自らの反応が引き起こされる。

共感の認知的要素は、以下のM表象で表現出来るとする。

・動作主―態度―主題

⇒具体例は、ジョン―思う―サラは美しい

感情的要素は上記を用いて、以下のように表現出来る。

・主体―感情(動作主―態度―主題)

⇒具体例は、
 ジェイン―心配している(ジョン―悲しんでいる―母親が死んだ)

感情は、動作主を観察している主体の感情を指す。()内で囲んだ認知的要素によって引き起こされる感情である。

第4章 共感にすぐれた女性型の脳
女性は男性よりも心の理論が早く発達し、気遣いを重視するとしている。相手に尽くす関係や相互に利益が得られる関係を好む。平等な関係を大切にする。肉体的な特徴よりも個性や情緒的な側面を重視する傾向。

人類学者 リッチ・サヴィン・ウィリアムズの実験:
男女別に子供達をサマーキャンプに参加させ、集団内の様子を観測する。
男女共に集団内の序列を決めようとする。男の児童は、弱者を痛めつける事によって上位に位置しようとする。女の児童の場合は、良い人という印象を与えて友人関係を確立する事を重視する。

女の児童が序列を決める場合、腕力ではなく無視や噂話等の間接的な形式を多用する事が多い。意地悪だと思われると序列が低下するため、他者との親密さを損なわないようにしながら高い地位を獲得しようとする。

男性の場合、弱者が確定すると一斉に他のメンバーも襲いかかり、最下位を確定しようとする。誰もが上位を得ようと機会を伺うため、序列は確定しない。

女性の場合、確定した権力者を受け入れ、尊重する事が多い。御世辞を言ったり機嫌を取ろうとする。男性とは違い小規模のグループに細分化し、競争意識は働き難い。男性の場合は小グループが競い合いを続ける。

⇒女性は序列を上げるために共感を活用し、男性は共感が働かないようにして序列を上げようとする。他者を痛めつける場合には共感は障害となる。

新参者がグループに入る場合、女性の場合は新しく加わるグループの様子を眺めるが、男性の場合は自分に注意を向けさせ主導権を握ろうとする。受け入れ側の対応としては、女性の方が新参者に親切な傾向がある。

以下は、男女の人間関係の違い。

①一対一
女性は一対一の親密な関係を好む傾向がある。互いが利益を得て、親密さを表現したがる。

②関係維持
女性は友人同士の関係が上手くいくかを気にする傾向がある。自分の秘密を教えたり、心配や苦手を打ち明ける。男性と違い、体に触れ合う事が多い。

男性の場合、一緒に活動するグループに入る事で関係を構築し、競争に勝つ事が重要であるが、女性の場合、感情的な繋がりを重視する。男性が高い順位を獲得する場合には、攻撃性を見せる以外に、一緒に行う活動に高い技能を見せる必要がある。

男性は携わる活動によっては大きいグループを構築するが、女性はネットワーク状の人間関係を築く事はあるが、少人数のグループを構築する傾向がある。

男性はグループに属する事で恩恵を受け、グループ内での地位を守る事を重視する点で自己中心的な社会的態度を示すと言える。女性は相互に満足が得られるような友人関係を構築しようとする。

女性は協力的な話し方をするとされ、相手の意見に同意する事が多い?同意出来ない場合には、断定を避けて疑問文を用いて表現を和らげようとする。男性の場合は自分と異なる意見には反対する傾向がある?

⇒男性の場合、絶対的な事実が存在し、自分が事実を把握可能という前提がある?女性の場合、異なる見方がある事を前提にしている?

幼児期の男性が独語的談話(自分の視点しか話さない話し方)を良く用いるが、幼児期の女性は対話的談話(相手の希望を取り入れようとする)を良く用いる?自分の知識や地位を誇示しようとする男性に対し、女性は親密さを築こうとする?

イェール大学 ベネット・シェイウィッツの研究:
言語を用いる際のブローカ野を含む特定領域の男女差の研究。一対の単語を読み、韻を踏むか解答する場合、女性の50%は左右の前頭葉でブローカ野が活性化するが、男性は左半球のブローカー野しか活性化しなかった。女性の方が言語能力が高い事の裏付け?

第5章 システム化とは何か
システム化 = システムを理解したり構築しようとする衝動。システムとは、入力―作用―出力という関係で表現可能な規則に従う全てを指す。

システム化を行うには、対象の様々な要素を分析し、各要素を変化せる事で生じる結果を詳しく観察する。観察を繰り返す内にシステムを支配する規則を理解する。

システム化には細かい要素を観測する眼力が重要であるし、対象となるシステムが限定可能で一つに確定可能な結果を生じ、規則性を持つ前提が必要である。

システム化によって外部を操作する力を獲得出来る。

第6章 システム化にすぐれた男性型の脳
男性は、力や競争を重視する。自分が社会階層というシステムのどこに位置するかに価値を置く。

男性は、集団になると序列を決めようとする。AはBよりも強く、BはCよりも強い、よってAはCよりも強い。こうした論理に基づいたシステムによって社会を構成する。

序列を決める戦いに勝つためには、思いやりよりも自分の感情や印象を大切にする事が重要である。高い共感性は序列を上げるための障害となる。男性は、他者に下位を感じさせても何とも思わない。自分の地位が高い事を喜ぶとしている。

*************

文化的背景に関係無く、工学や建築等に関連する職業には男性が就く場合が多い。大学適性試験の数学問題(SAT-M)では男性は平均して女性より50点高い成績を出す。成績上位者では男女差がはっきりし、800点満点で500点のグループでは男女差が2:1で、600点のグループでは6:1、700点のグループでは7:1になる。

以下のテストにおける男女差について。システムを理解する能力以外に、本質に関わらない要素を無視し、本質に細かく注意を向ける能力が測定される。男性は平均的に、対象から特定の特徴を探し出す脳量に秀でているとしている。

以下の記事で書いた「知性誕生」に同じような記述があった。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-255.html

①水位推測テスト:
被験者に傾けた瓶を見せ、水位を推測して貰う。女性には、水面を表す線を瓶の傾きと垂直に描く傾向がある。

②ロッド・フレーム・テスト:
被験者に長方形のフレームの立体モデルを見せる。回転するフレーム内には光る棒(ロッド)があり、被験者にロッドが垂直になるようにフレームを置かせる。
ロッドの置き方がフレームの傾きに影響される場合、場依存型(決断に際して周囲の環境から影響を受け易い)と判断される。女性には場依存型が多い。

③埋め込み図形テスト:
単純な図形を複雑な図形の中から探して貰う。男性は女性よりも早く図形を見つけ出す事が出来る。
⇒複雑な模様から単純な規則を見つけ出す能力 = システム化する力が測定される。

④心的回転テスト:
2つの図形を提示し、一方が一方を回転移動させたのか、鏡に映したように面対称になったのかを問う。入力に作用(回転)を及ぼして出力を予測する能力が問われる。男性の方が正答率が高い傾向がある。

地図を読む能力もシステム化の一例であるが、男女が地図を描くと以下の相違点が傾向としてあるらしい。

男性(方角を利用する戦略):
方角やルート、道路を強調する。空間を幾何学的システムとして把握し、道路やルートをシステムとして考える。相対的な位置関係を再現する。

女性(目印を利用する戦略):
目印となるポイントを強調する。目印や通りの名前等を男性よりも正確に記憶する傾向があり、記憶力で劣っている訳ではない。言語的に地形を記憶する。

⇒システム化する傾向は球技にも影響するとしており、目標を定めて投擲する行為は男性の方が正確に行う事が出来るとしている。

ペルー北部 アグアルナ族:
100種類の標本を分類して貰う。アグアルナ族の男性の基準は西欧の生物学者の基準に近く、多くの下位区分を持つために細かい差異で区分け可能で一貫性が高いとしている。
他の文化を持つ部族でも、男性は分類に複雑な基準を採用する傾向がある。女性の場合は形態学的な特徴(色や形)で分類するが、男性は関連する特徴(生息地、食物、人間との関わり方)を分類基準とする傾向がある。

同じような話が「木を見る西洋人 森を見る東洋人」に記載されていた。西洋人と東洋人の違いに関する記述だったけれど、男女差も存在する?

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-722.html

第7章 文化の影響
性別による固定観念等による影響について。文化によって性差が決定するという説には一定の根拠があるが、生物学的要因の方が説得力があるとしている?

第8章 生物学的要因
ラットや猿を用いた実験から。
霊長類は幼い時から、雄の方に取っ組み合いをする傾向がある。他人の感情に配慮するより、自分を誇示する欲求が強い。雌は平均して赤ん坊に興味を示す傾向がある。

ラットを用いた実験では、雄の方が空間把握能力が高く、迷路を早く抜ける傾向がある。空間を把握する場合、目印を使う戦略は応用が利かない。「A地点を右へ曲がる」では、常に同じ方向からA地点に向かわなくてはならない。システム化した場合、「A地点がB地点の右にあるなら、180度回転した場合、A地点はB地点の左に位置する」のように系統だった規則を見出す事が可能。

テストステロン:
男性ホルモン(アンドロゲン)の一種で遺伝子型・生殖腺が男性なら睾丸から、遺伝子型・生殖腺が女性なら副腎から分泌される。男女の行動傾向に影響が大きい?胎児期のテストステロンが体の右半分の成長(大脳右半球)の成長を促進させる?

そのため、男性は右足、右の睾丸が左側よりも大きく、女性は左足、左の乳房、左の卵巣が右側よりも大きい傾向があるという研究がある?

左側が大きい人の方が言語テストで高い成績を出す?

男性の発達過程でテストステロンの分泌量が高まる時期は以下の3回。

①妊娠八週目~二十四週目の胎児期
②生後五カ月頃
③思春期

性ホルモンは脳に重大な影響を及ぼすらしい。男性から女性への性転換者は、間接的な攻撃性(女性的)な傾向を見せるとされる。

胎児期のテストステロン値が高い場合、人間関係を築く能力が低く、興味が限定される。胎児期のテストステロン値が低い場合、言語能力が高く、人間関係を築く能力が高くなる?

********

言語処理の左右差には性別による違いがある。男性は右耳で聞いた情報の方を正確に聴き取れる度合いが高い。女性は言語処理に対して右脳も利用しているから、言語能力が高く、そのために空間把握に右脳を使用出来ない可能性がある。脳に損傷を受けた女性は損傷が左右のどちらにあっても言語テストの結果に違いは無いが、男性は左半球損傷の場合、失語症になる確率が高いという研究がある。

第9章 男性型の脳と女性型の脳はどう進化してきたか
男性的なシステム化は、道具の製作や利用、狩猟や追跡に有利であり、女性的な共感は仲間作りや子育てに有用であるという話。

社会的地位はシステムの一種であり、システム化する能力の高い人物は全てを把握し、適切な情報を素早く評価して決断出来るように見える。子孫を残す確率は社会的地位の高い男性ほど高く、共感傾向の低い方が他者を傷つける事に抵抗が少ないため、序列が高くなる可能性が高い。

反対に共感する能力に秀でていれば、安定した人間関係を構築出来る。

一方は物事を予測して操作する事に適応し、他方は人間社会で生き抜く事に適応している。それはトレードオフであり、両方に秀でる事は出来ない?

システム化と共感の両方に秀でる脳が多く見られないのは、共感とシステム化がゼロサムの関係にあるからかもしれない。

第10章 自閉症―極端な男性型の脳
自閉症は、男性脳の極端なケースであるという説。自分で解決しようし、他者が何か知っているとは考えない。規則性を見出す事に夢中になり、細部に集中するため周辺情報が入らない。

法則を知る事で結果を予測出来ると考える。感情は確実に予期出来ないため、興味の対象外である。

自閉症者は、他者の感情や思考、行動を理解・予測する事が難しいが、細部に注意し細かな相違を区別する事が出来るとしている。そのため、社会生活に参加する場合、予測可能性や画一性を周囲に強要する事がある。有限性、正確性、予測可能性を持つシステムを好む。

自閉症者やアスペルガー者は自らの環境を操作したいという欲求に突き動かされている人々と考える。そうした人々と付き合うには、彼等のルールを一方的に守るしかない?

第11章 ある数学者の場合
英国の数学者 リチャード・ボーチャーズの話。アスペルガー者の特徴を持つが、フィールズ賞を受賞した数学者である。「目から心的状態を読み取る」テストでは、平均36問中30問正解のところ、25問正解。共感指数(EQ)測定結果では、平均値が80点中40点のところ、12点、友人関係質問リスト(FQ)では平均値が135点中80点のところ、55点。

自閉症スペクトラム指数は50点中32点でアスペルガー者と同等である。そしてシステム化指数(SQ)は80点中41点で、平均値の27点を大幅に上回る。

リチャードは数学的才能のために、社会的に特異な行動を許容して貰える例外と言える。

他に、トランジスタを発明したウィリアム・ショックレー(優生学思想に基づき、知能指数100以下の人間は不妊手術を受けるべきとした?)等の共感性の低い貢献者の存在。

物理学は、興味の幅が狭く、一度に一つの事しか考えられずない人間に適性があるという研究。自分は正しく、他の人間は間違っているという横柄さが研究に必要とされる?物理学者 ポール・ディラックの例。

古代クレタ文字を解読したマイケル・ヴェントリスも極端な男性脳の持ち主と推測される?

ハンス・アスペルガーは、知能が損なわれていない自閉症者は職業人として成功する可能性が高いとしている?抽象的内容を扱い、専門性が高く、学術的な職業に向いている?

科学や芸術には自閉症的な要素が不可欠なのかもしれない。

第12章 極端な女性型の脳―未知なる領域
極端な女性脳を持つ人間は存在するのか?著者は、理論的には推測出来るが、実在するかは定かでないとしている?

共感とシステム化に関する3つの問題。

①モデル化
平均的な男性と女性の脳の差異は全て共感とシステム化に還元可能か?2つのプロセスは、別のプロセスの構成要素であるかもしれない。

システム化―厳密さや詳細な注意力が必要とされ、
      原則に従い、状況に依存しない。
共感―不正確を伴い、大きな枠組みに注意する必要がある。
   状況に依存し、法則に頼る事が出来ない。

共感とシステム化は、一つの能力を別の側面から捉えた認識である可能性がある。

②自閉症の心
自閉症者は実行機能(先を見通した行動や注意の切り替え、衝動的な行動の抑制等)に障害を持つとされる。実行機能障害は、システム化能力の強さと矛盾しないか?自閉症の他にも男性に多い脳障害は存在し、自閉症を超男性脳と考える事は正しいのか?

自閉症を共感とシステム化のモデルで把握する事は可能なのか?

③社会の責任―介入すべきか
医師が科学的処置によって胎児の脳の発達に介入する事は正しいのか?

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