レイヤー化する世界

読んだ本の感想。

佐々木俊尚著。2013(平成25)年6月10日 第1刷発行。



国民国家を基盤とした民主主義が揺らいでいる。企業に人々が雇用され、経済成長が前提となっている現代社会の来し方行く末を考察する。

現代:
今の社会は、19世紀後半から始まった第二次産業革命(大量生産)が前提となっている。世界全体を先進国(ウチ)と発展途上国(ソト)に分け、先進国にて製品を生産し、発展途上国が資源を輸出する構造が確立される。

他国との競争に勝つため、国内の企業は代表的な巨大企業に統合され、人々は企業に雇用されるようになる。

1990年代から始まった第三次産業革命が状況を変えつつある。先端的な企業は先進国に集中していた雇用を世界的に分散するようになり、企業や国家の結束は揺らいでいる。

中世:
欧州中心の世界システムの起源を考える。18世紀頃まで欧州は辺境だった。

古代から中世にかけての『帝国』の特徴は以下の通り。

 ①多民族国家
 ②緩やかな世界的交易網

「民族」という概念が求心力となり、一つの民族が一つの国家を形成する国民国家のコンセプトは近代以降に確立されたものである。それまでは言語や宗教を基盤として、明確な境界線を持たない帝国が一般的だった?

欧州の国々が発展した理由は以下の通り。

 ①中世帝国の衰退
 ②アメリカ大陸の植民地化
 ③国民国家の軍隊の活用

欧州は、古代から中世にかけての以下の3つの世界的交易ルートから外れた位置にあった。
 ①中央ルート
  バクダッドからペルシャ湾を経てインドや中国まで結ぶ
 ②南方ルート
  カイロから紅海を経てインド洋へ通じる
 ③北方ルート
  中央アジアを通る

そのために、新市場(アメリカ大陸)を開拓する必要があり、巨大な市場が産業革命の遠因となる。

近代:
欧州の国民国家が中世の帝国を蹂躙出来た理由は、国民国家の団結力に起因すると考える。中世以前のローマ帝国が崩壊した後の欧州においては、キリスト教が人々の拠所となっていた。宗教的な『聖』の世界と、政治的な『俗』の世界に支配構造は分かれる。

『聖』と『俗』の両方を兼ね備えた帝国を復興させようとする動きは大規模な戦争を引き起こし、小国が乱立する状態が固定されるようになる。17世紀に起きた「三十年戦争」終結後のウェストファリア条約にて相互的な領土尊重や内政干渉を控える合意が確立される。

こうして小国家が乱立し、権威が消滅した状態が近代社会の前提となる。

近代の歴史は、人々の精神的な拠所を探索する歴史でもあり、帝国崩壊後には宗教紛争によって教会の権威が崩壊し、埋め合わせるが如く絶対王政が志向される?資本家階級が育成され、封建領主と農民という契約関係が社会を規定出来なくなり、革命が発生すると王権も消滅する。権威が崩壊した世界では、「理性」によって自分自身を操作する事が推奨されるようになり、合理的に人間が真理を発見する機運が高まる。

権威が消滅した世界で「国民の権利」が作り出される。国民を基盤とする国民国家は、国民全てを兵士として総動員出来るため戦争に強く、また国家間の境界線を巡って戦争を引き起こし易い。

巨大企業の外部と内部、国民国家の外部と内部、先進国の外部と内部、近代では内部の結束を固めて豊かになる仕組みが確立された。

 ・国民国家である事
 ・国民国家の結束を固め、強い軍隊を持つ事
 ・国民国家の外部を利用し、経済を成長させる事
 ・民主主義で国民国家内部を固める事

上記が近代の世界システムである。こうした体制は、グローバリゼーションによって全ての国家、全ての国民が内部に存在する事によって成り立たなくなる。

以下が近代が衰退する原因。

 ①国民国家の終わり
  国民国家とは、欧州において偶発的に発生したシステムである。
  国民国家は幻想によって成立しており永続しない
 ②経済成長の終わり
  1970年頃から経済成長を後押しする産業は無い
 ③分散化
  情報技術の進歩によって、世界的に仕事が分散している

世界的な富の分散と、国内における格差拡大によって民主主義は引き裂かれている。

未来:
情報技術によって作り出された<場>が境界を破壊し、国民国家と民主主義を破壊する。<場>を運営する側とされる側による新しい支配関係が生まれる。

内部と外部を分ける構造では、皆で協力して一つの目標に向かうが、<場>では試行錯誤が尊重される。インターネット上の市場において、多くの失敗と少数の成功が散見される事になる。

音楽を例にすると以下のようになる。

【これまでの音楽業界】
レコード会社という大きな権力の下に、音楽家、楽曲、社員、販売店等の要素が存在する。

【これからの音楽業界】
様々な役割毎に切り分けられた構造が成立する。インタネットのインフラ、音楽を販売するサービス、音楽を再生する機器、音楽を批評するソーシャルメディア等。

内部と外部の違いは無くなり、層 = レイヤーの違いとなる。形式を強制する権力は無くなり、レイヤーの組み合わせによって社会は成立するようになる。

人間同士の関係も変化する。同一の民族という切り分けでなく、各人の保有するレイヤーが意識される。国籍、職業、出身地、出身校、好み、趣味、etcの無数のレイヤーの集合体が個人である。同じ趣味、同じ職業、同じ出身校によって同一のレイヤーを持つ人間が接続されるようになる?

権力は、国民を法律と道徳で縛る国家から、行動の土台となる<場>へと移行する。国境を越えて広く活動する企業、分散化に伴う政府税収の減少、一つの世界市場、社会システムの分断、etcは国民国家を消滅させる?

共同体に帰属する事によって規定されていた個人が、レイヤーの重なりによって規定されるようになる。内部と外部を分けた社会システムでは、内部の結束を固めて強い軍隊を構築し、内部の人間同士で伝えあえる国語と文学が普及した。境界線の自覚が国家を強くする原動力であった。

レイヤー化した社会で生きる戦略は以下の2つ。

①レイヤー化した個人
 様々なレイヤーの重なりとして、レイヤー毎に他者と接続する
②<場>との共犯
 <場>の技術の利用

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