動物が幸せを感じるとき

読んだ本の感想。

テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン著。
2011(平成23)年12月25日 第1刷発行。



1 動物の幸せ
動物の幸福とは、脳の情動システムに基づいて待遇を改善する事。基礎となる情動が満たされない動物は、常同行動(変化の無い、無意味な反復行動)を始める。

以下の4つが最も大切な常同システムである。

①探索
調べ、理解したがる衝動。入手、期待、好奇心等が混じり合っている。欲しがったり、楽しみにしたり、興味を持つ情動。

②怒り
捕食者に捕まって身動き出来ない経験から進化した?拘束された状態から逃げ出そうとする。欲求不満は、怒りの穏やかな形態であり、精神的抑圧が原因となる。閉じ込められた状態は抑圧を感じさせる。

③恐怖
生存が脅かされた状態で恐怖を感じる。

④パニック
身体的苦痛から進化した?他者との分離不安は、身体的苦痛を司る脳部位が刺激されると発生する?

他に、ポジティブな3つの衝動がある。

(1)欲情
性交と性欲を司る。

(2)保護
母性愛と慈愛を示す。

(3)遊び
遊びは楽しい気持ちを生み出す。

動物の幸福度を測定困難な原因の一つは、動物が幸福な状態に示す行動パターンが明確でない事である。原則は、怒り、恐怖、パニックから遠ざけ、探索や遊びのシステムを刺激する事であり、常同行動をしないような環境を構築する。

2 犬
狼は野生では群れでなく家族で暮らし、優位性を維持する階級構造は存在しない?人間に飼育される狼の群れにおいて階級性は存在する。

自然な状態では、数十匹の狼が群れを形成する事は無く、平和を維持するには階級が必要とされる。犬は遺伝的には幼形進化した狼である。

<英国のデボラ・グッドウィン博士の研究>
顔が狼に似ている犬ほど、狼と似た行動をする。狼の「攻撃」、「服従」の行動の中から15種類の行動を選択し、10種類の犬種の行動と比較する。姿形が狼に似ていない犬種ほど、精神的に成熟しない。

シベリアンハスキー:15種の行動を全て実施可能
ゴールデンレトリーバー:12種類の行動を実施可能
フレンチブルドック:4種類の行動を実施可能
キャバリア:2種類の行動を実施可能

例外としては、猟犬4種類の内の3種類は予想よりも狼に行動が似ており、牧羊犬2種類は予想よりも狼に行動が似ていなかった。

牧羊犬(特にシェパード)は、外見が狼に似るように改良された犬種であり、一度失った行動は取り戻せない可能性がある。猟犬が狼に似ているのは、狩猟に狼の特性が必要であるためと考えられる。

犬の集団を飼う場合、狼の行動特性(服従)を実施出来ない犬種の場合、争いが発生する可能性が高い。狼も人間と同様に、幼い時には同胞を傷つける力が弱いため、攻撃行動を優先して発達させる。服従行動や社会的技術は成熟した段階で習得する。犬は、生後18ヵ月~36ヵ月まで社会的に成熟しないらしい。

幼形進化した犬種は愛情への欲求が強く、服従行動が発達しない。

3 猫
猫は、他の多くの家畜ほどには幼形成熟していない。罰や負の強化によって訓練出来ない。猫の訓練には、正の強化(報酬を与える)が有効である。

猫の前頭葉は小さく脳全体の3.5%程度である(人間は29%、犬は7%)。前頭葉は実行機能(計画立案や系統立てて考える等)に関わり、実行機能が弱いと行動の切り替えが困難である可能性がある。猫には新しい環境に適応出来ない事が多々ある。

また、猫は社交的であり飼育されている猫は穏やかな階級性を形成する。階級は体の大きさで決まり、混み合った場所でも平和に暮らす。

4 野生の動物
正規の試験で学者になれなる事の出来ない発達障害者の意見が尊重されない危険について?動物の研究においては統計モデルを研究対象とする「抽象化」が盛んになっており、実施調査が疎かになっている可能性がある。

言語を使用した思考は抽象化を伴い、細部に集中出来ない。自閉症者の思考は言語に問題があり、感覚的な思考である。研究室の抽象化モデルを扱う学者とフィールド研究者が協力する必要がある。

全ての状況に適応可能な一般法則は無い。想定外の事象を考慮する。

5 動物園
動物園において動物の幸福度を計測する4つの基準。

①正常な行動
 常同行動、自傷行為等をしていない
②行動のレパートリーが広い
③安心している
④休んでいる時に寛いでいる

動物園の動物では、大型の捕食種で活動範囲が広い動物ほど常同行動が多い。探索システムを満たす環境が必要である。そのためには、何かする物、目新しい物を与える事が簡単な方法。自分で周囲の環境を操作出来る感覚は、探索システムを刺激する。

6 馬
走って逃げる動物は、恐怖が主要な情動となる?馬は目新しい物を怖がり、細部に拘る。馬の恐怖心は強く、消え難いため、最初から恐怖経験をさせない事が重要となる。

7 牛
牛は群れで暮らす動物であり、仲間と一緒にいる必要がある。牛の行列では、好奇心旺盛な牛が先頭を歩き、優位の牛は安全な真ん中にいる。

群れの決定は多数決でなされるようであり、群れの62%の牛が立ちあがった時に、群れの移動が始まるという研究結果がある。牛は同時に行動を開始する事が多い。また、牛の階級は直線的でないため、階級構造は三すくみのようになっているため、分かり難い。

牛や人間を含め、恐怖は以下のように分類出来るという。

①強烈な刺激
②種が「進化の過程で学習した恐怖」
③社会的に学習した恐怖
④個別に学習した恐怖(無害なものでも嫌な物と結び付くと怖くなる)
⑤目新しい刺激

牛の場合、明暗の対比が強い物が強い刺激となり、恐怖の対象となる事がある。また、高い場所や速い動きを怖がるように生まれついている。

目新しい刺激に対しては、「恐怖」と「探索」のシステムが交互に切り替わる事があり得る。怖い物見たさの真理だ。脳は、予測出来ない物の良し悪しを見極めるようにプログラミングされており、結果が予想出来ない物を選択する傾向がある。

扁桃体の研究から、確実でない状況によっても「恐怖」システムは活性化するらしい。

8 豚
豚は好奇心の強い動物であり、日中の時間の52%を餌を探したり草を食むのに費やし、歩き回って周囲を調べるのに23%を費やす。

「探索」システムを十分に満足させる必要があり、「探索」の機会が減少すると、「恐怖」システムが敏感になる。

9 ニワトリ
鶏の肥育環境の劣悪さについて。また、食肉として優れた鶏を選別した結果、遺伝的に質の悪い遺伝子が選別されている可能性について。

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