激動予測

読んだ本の感想。

ジョージ・フリードマン著。2011年6月20日 初版発行。

2010年代の予測を書いた本。



以下は、「100年予測」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-796.html

日本語版刊行によせてで、米国社会を変化が絶えないが、大変化は発生しない「氷河型」、日本社会を変化は少ないが、大変革が発生する「地震型」としている。
2011年の東関東大震災について、日本のエネルギー自立に貢献していた原子力発電が困難になった事をポイントと見ている。当面、日本はエネルギーを中東原油に依存せざるを得ず、米国の中東政策に工業国家として依存する事になる。こうした脆弱性に日本の政治構造が対応出来ないと明らかになった場合、社会に変革が発生する可能性がある。

序章 アメリカの均衡をとり戻す
2010年代の米国は、テロリストとの戦争が齎した混乱からの回復を志向する事になる。そのためには、各地域の諸勢力を競わせ、勢力を均衡させなければならない。イスラエル(対アラブ)から距離を置き、パキスタン(対インド)を強化し、イラン(対イラク)と折り合いをつける。
また、欧州の技術とロシアの天然資源の協調を阻む努力も必要。
米国は「Deep Power」を持っている。それは、経済力・軍事力・政治力であり、行動に枠組みを与える文化的、倫理的規範を拠所にしている。
その力故に、米国は世界の問題に関わらざるを得ない。アメリカ帝国の力は本質的に破壊的、威圧的であり、他国への影響を無くす事は出来ない。

第1章 意図せざる帝国
米国はソビエト連邦崩壊によって、意図せずに世界に影響を与える唯一の国になった。
米国の力は強く、輸出入の観点から国内総生産の10%を米国に依存している国は多い。歴史的に相互依存度が高まれば摩擦や戦争が発生する。戦争による消耗が無い限り、国際影響力の再編は何世代にも渡るプロセスになるだろう。
帝国となった米国が共和制を維持出来るかは、大統領制にかかっている。大統領は道徳律に基づいた戦略を非情に行使するべきである。エイブラハム・リンカーン(奴隷制廃止)、フランクリン・ルーズヴェルト(第二次世界大戦時のソビエト連邦との同盟)、ロナルド・レーガン(ソビエト連邦への攻撃)は、道徳的目標を達成するために、違法かつ非情な手段を用いている。
冷戦後の世界に、以下の三原則の下での機構を作るべき。

①諸地域で勢力均衡を図り、米国から脅威を逸らす。
②同盟を利用して、紛争の負担を他国に担わせる。
③軍事介入は最後の手段。

第2章 共和国、帝国、そしてマキャヴェリ流の大統領
帝国となった事で米国の共和政は危機に瀕している。ローマ帝国の共和政を倒したのは、関心を買おうとする市民や帝国の首都に流れ込んだ巨額の金だった。
米国でも海外との経済活動との関連で、民主的機構が管理困難で道徳律とも折り合わない体制が生み出されている。
共和国を維持するためには、大統領という個人の力に頼るべき?組織の全員が共通の何かを主張する事は無いが、大統領は主張して指導力を発揮する事が出来る。大統領は国内問題に関しては、憲法や議会、裁判所に規制されるが、外交政策を通じて世界と向き合う。軍隊の指揮権は大統領にある。

以下の2つの主義がある。2つの折り合いを付ける事は難しい。

①理想主義
米国は憲法で保障された自由という原則に基づいている。そうした道徳律に従って行動すべきである。米国は、独立国とでも言うべき州の連合体であり、道徳的目標を共有する事が不可欠である。
②現実主義
米国は自国の国益を追求すべきである。

著者の意見では、理想と現実は「力」の表裏である。理想の無い力は何も生み出さず、力の無い理想は空虚である。力の無い理想は現実化しないが、理想の無い力は残虐であり非現実的だ。

第3章 金融危機とよみがえった国家
2008年の金融危機は、2001年のテロ事件が原因となっている。ブッシュ政権が対テロ戦争の資金を増税でなく、通貨発行によって賄ったため、景気が過熱する事となった。

同様の経済事象は、第二次大戦以降、米国で3回発生している。

①1970年代には米国の地方債市場が危機に陥った。
②1980年代の鉱物・エネルギー資源の価格暴落
③1980年代のS&L危機

経済危機の怖さは、国民の窮乏によって体制が揺らぐ事にある。危機時の大統領は心理的に国民を鼓舞し、国家と市場の境界を動かした。ルーズヴェルトは連邦政府の権限を強化し、レーガンは縮小した。

1929年の恐慌では信頼を失った金融エリートから政治エリートに権限を委譲し、1980年代には逆の権限移譲を行った。失敗者から権限を取り上げている印象を国民に与える事で無力感を和らげるのだ。

近代の自由市場は、国家によって作られた。近代経済の基盤は株式会社であるが、その管理は自然法ではなく会社法である。企業は法が生み出したのだ。

2008年の金融危機によって企業と国家の境界が引き直され、政治力が強化された。2010年代には世界的に国家権力の強化が進むだろう。

第4章 勢力均衡を探る
米国が中東で選択する戦略は、イランとイラクを互いに争わせる事だ。しかし、2001年のテロ事件によって、米国は国民の安心や復讐を求める気持ちに応えるために、テロ戦争にのめり込む事になる。それはイラクを崩壊させ、イランの脅威を増す事に繋がる。

さらに中東に重点関与する事で、他地域への介入が困難になった。

第5章 テロの罠
民主主義では、敵の脅威を明確にし、敵と戦う目的を打ち出す事が国民の支持を得る基本である。対テロ戦争ではイラクとアルカイダの結び付きを明確化出来なかった。

テロでは米国を滅亡させる事は出来ないし、テロを根絶する事は不可能だ。危険は無限にあり資源には限りがある。国家に出来る事は派手で不便な対策システムを構築する事で国民に安心感を与える事である。
テロと執拗に戦う事は、米国を弱体化させる。

第6章 方針の見直し―イスラエルの場合
米国とイスラエルの関係は、現実主義と理想主義の論争の縮図でもある。

理想主義:
イスラエルは、独裁主義の国家の中にある民主主義国家である。しかし、パレスチナ人への人権侵害も行っている。
現実主義:
イスラエルは対テロ戦争の同盟国であり、アラブ諸国との関係改善の障壁でもある。

今日のイスラエルは戦略的に安泰である。それは周辺国に勢力均衡とイスラエルへの依存を生み出しているからだ。

エジプト:
イスラエルと戦うには、シナイ半島に構築困難な後方支援体制を築く必要がある。また、イスラエルも7000万人超の人口を持つエジプトを支配する資源を持たない。エジプトはイスラム政権だった事はなく、ムスリム同胞団等のイスラム組織に脅かされている。そのため、エジプトはイスラム原理主義組織ハマスが成功する事を恐れており、イスラエルがハマスをガザ地区に封じ込める事に協力している。

ヨルダン:
ヨルダンの人口は少なく脅威ではない。イスラエルはヨルダン人と敵対するパレスチナ人を抑圧している。

シリア:
軍隊が小規模。レバノンのシーア派民兵組織ヒズボラを支援するが、根本的な脅威ではない。

国内:
イスラエル国内のパレスチナ人は脅威であるが、十分な資源を持たない。パレスチナは社会主義組織のファタハとハマスに分裂しており、脅威は軽減されている。

イスラエルを脅かす事が出来るのは、エジプトであるが20~30年は必要であり大国の後ろ盾がある場合に限る。安定しているため、東地中海の勢力均衡に米国が出来る事は少ない。イスラエルは米国の同盟国であるが、米国無しでも存続出来るため、距離を置いて強大化したイスラエルを牽制すべき。

第7章 戦略転換―アメリカ、イラン、そして中東
インドとパキスタンの関係について。インドがインド洋を支配する事のないよう、パキスタンを強化する必要がある。
イランについては、同盟を結ぶ事が最良である。米国と合意しても、イランの地域支援には限界がある。

そして、米国は勢力のバランスを再編せざるを得ないだろう。パキスタンは西方に勢力を拡大出来ない。イスラエルは、イランの対抗になるには小規模。アラビア半島は分裂しており、イランの対抗勢力にはならない。ロシアがイラン国境まで勢力を拡大する可能性があるが、大きな問題を生む。

イランの対抗勢力足り得るのはトルコである。トルコは2010年代に地域大国となり始める。

第8章 ロシアの復活
現在、ロシアは天然資源に依存した経済運営を行っている。それは短期的には効果があるが、長期的には弱い。ロシアの都市は互いから隔てられ、インフラも貧弱である。ロシアの河川は障壁にしかならず、連結性に問題がある。
ロシアは、欧州がロシアのエネルギーに依存し、米国が中東に集中している間に構造を構築する必要がある。
ドイツとロシアが協調するなら、東欧諸国が重要な意味を持つ。米国とポーランドの協調は、ドイツ・ロシア協商を制限し対抗勢力にする。

バルト諸国は防御に不向きであり、維持するには費用が必要だ。グルジアも人口400万人で維持困難。よって、この2つの地域でロシアに譲歩する戦略があり得る。

第9章 ヨーロッパ―歴史への帰還
2010年代の欧州では、地政学的緊張と対立が予想される。

①ロシアとの関係
②ドイツの役割

欧州では、1492年の新大陸発見以来、大西洋・北海に面する国が植民地獲得競争を繰り広げ、ドイツは封建的な公国によって分裂していた。欧州の中心は、デンマークからシチリア島まで緩衝地帯となっていた。
ナポレオンが均衡を破壊し、プロイセンがドイツを統一する事になる。ドイツは、自国が隣国に威圧感を与える感覚を持つ事による不安感を持つ。

ドイツ統一以来、ドイツの欧州での役割が戦争の引き金となってきた。さらに1960年代以来の欧州には、世界大国はソビエト連邦以外は存在しない。欧州は衰退したのだ。

欧州はソビエト連邦の脅威によって統合を志向する事になる。それはドイツとフランスを結びつける事で戦争の危険を軽減し、東欧を欧州に組み入れる器を作る事を目的としていた。欧州連合は、道徳的目標として安全と幸福を掲げており、理想を守るための戦争と犠牲を呼び掛ける根拠を持たない。そのため、欧州連合は他国民国家に発展しない。

欧州連合というドイツを封じ込める枠組みは崩れかけている。切っ掛けは2008年の金融危機だ。ドイツは他国を救済したがらないし、EU内の経済弱国は自国経済を管理出来ない。この不均衡にどうやって対処するのか?

英国は、国家安全保障のために欧州統一を阻止する戦略を採用してきた。英国の国家戦略は欧州への全面的な献身とは相容れない。よって英国は米国と協調して危険を分散しようとする。

フランスと友好関係を保ち、ロシアとの間にポーランドという緩衝地帯を持つドイツはロシアを警戒しない。人口減少に対応するため、ロシアとの経済協力関係を築く事になる。

米国は、ドイツとロシアの協調関係に楔を打つためにポーランドとトルコを支援する。

第10章 西太平洋に向き合う
西太平洋地域における最大の敵対関係は中国と日本である。中国は東西に4000キロの広がりを持つが、人口のほとんどが東部沿岸の700キロに集中している。太平洋の縁に張り付く細長い島とイメージする。

日本は海洋国家であり、資源の確保を海外に依存している。中国は原材料を自前で確保出来るが、日本は輸入無しでは数カ月で原材料を確保出来なくなる。日本は自国の補給線を維持可能な軍事力を持たない限り、米国に従属する。中国は、対米輸出が自国の安定に寄与しなくなった場合、米国依存からの脱却を目指すだろう。

中国では、世帯年収2万ドル以上の中流層が6000万人、世帯年収1000ドル未満の人口が6億人、世帯年収1000ドル~2000ドルの人口が4億4千万人となっている。港の周辺地域は貿易で豊かになるが、それ以外の地域は恩恵を受けない。現在は、全体的な生活水準が向上しているため問題が発生しないが、生活水準が全体的に低下した場合、中国政府は、貧しい大多数と豊かな少数を天秤にかけなくてはならない。

中国は、2010年代に国内治安を強化するために、沿岸部の富裕層に課税し、人民解放軍に分配する必要がある。富裕層を弾圧し鎖国し海外権益を追放する方策を選択するか、地方分権主義と不安定のパターンを選ぶか。

日本では1990年代に、同様の衰退を経験した。日本が失業を回避する必要があったのは、終身雇用という社会契約のためだった。完全雇用を維持するために経済成長を犠牲にした。2010年代には、公的・民間部門の債務を増やして完全雇用を維持する方法は選択出来ない。しかし、日本には貧困層がいないという強みがあり、社会不安を起こさずに乏しさに耐える事が出来る。

2010年代に中国と日本で変化が発生する。

中国:
国内の経済問題が世界との関係を変える。ただし、中国は原材料の確保の点で日本ほど世界に組み込まれておらず、強力な海軍を育成するにも時間が必要なため、強硬姿勢を取る事は無い。

日本:
耐乏と失業に甘んじるか、景気を過熱させるしかない。市場経済を受け入れられない日本は、政府主導で効率化を進め、企業連合の力を弱める。金融に関して大きな役割を政府が担う。高齢化のため、他国の労働市場を積極的に活用する。その筆頭は中国である。

中国と日本は2010年代に地域覇権国とはならない。米国の戦略は中国を分裂させず、日本と友好関係を保つ事にある。中国が統制されていれば、中国の労働力を日本が利用し難い。原材料の確保が保証されれば、日本は海軍力を増強しない。

そして米国は、以下の国との関係を構築する。

①韓国
北朝鮮との統一後、米国に頼る必要がある。韓国から中国への技術移転を左右出来れば、中国への影響力を強める事が出来る。
②オーストラリア
食料や鉄鉱石を輸入に頼っている。脆弱性に対処するために、西太平洋の支配的な海軍国と同盟を結ぶ戦略を取る。
③シンガポール
マラッカ海峡を押さえる拠点。

インドについて:
国を構成する各州が独自の法律を持ち、経済発展の妨げになっている。インドの結束を保証するのは軍である。軍は以下の機能を担っている。
 1.パキスタンとの均衡を保つ。
 2.北部国境を中国から守る。
 3.国内治安の維持。
インドが海軍力を増強しないようにパキスタンを強化し、インドを陸地に集中させる必要がある。

第11章 安泰なアメリカ大陸
南米大陸はアンデス山脈やジャングルによって寸断されており、統一勢力の台頭を阻んでいる。

米国は、戦略的に重要な場所が強国に支配されない限り、南米からの脅威にさらされない。その戦略的な脅威となり得る唯一の場所は、キューバである。

キューバに駐留する海軍は、メキシコ湾を通るシーレーンを支配し、ニューオーリンズを掌握可能。

ブラジル:
南米で単独で米国の対抗勢力になり得る唯一の国。ブラジル沿岸と西アフリカに挟まれた大西洋を支配可能な空軍力を持つ場合のみ、米国の脅威となる。アンゴラはブラジルと同様ポルトガル語を母国語としている。アルゼンチンを対抗勢力として育てる必要がある。

メキシコ:
移民と麻薬がポイントである。両方ともに米国に需要がある事が問題を大きくしている。米国の失業率10%を失業者数にすると1500万人。米国には1200万人の不法移民がいるが、彼等を追い出すと失業数300万人、失業率2%になるとは思えない。不法移民は既存の労働者と競合しない。麻薬も需要がある限り米国に流入し、メキシコに資本が流入する。メキシコの暴力はカルテルが安定するか一つの集団が他を駆逐するまで続く。

麻薬については、目標に取り組む振りをして、達成出来なければ部下が断固たる行動をとれなかったせいにする事である。成功するはずのない計画で、適切な措置を講じている錯覚を国民に与える。

第12章 アフリカ―放っておくべき場所
アフリカには国民国家はほとんど存在しない。国家が民族から自然発生していないため、同国人という意識が弱い。国民国家の権力が実効性を持つには、一致団結した民族を基盤とした国家が必要である。

戦争が幾世代も続き、民族が正当な国家として纏まるしかない。米国は、援助計画を通してイメージアップを図るのである。

第13章 技術と人口の不均衡
景気を動かしているのは、人口学的要因と技術革新である。

2010年代に、米国ではベビーブーマー(1945年~1961年生まれ)が退職年齢を迎える。それによって技術革新の危機が浮き彫りになる。真の経済成長を促す飛躍的進歩は発生していない。

①経済的問題
2008年~2010年の経済危機で技術開発に必要な資金が不足しリスク志向が後退した。2010年代後半に、こうした傾向は薄れるが画期的技術は2020年代にならないと現れない。

②軍との関係
軍が技術開発を牽引する。アフガニスタンとイラクでの戦争は軽歩兵戦であり、技術革新は必要とされなかった。

介護に必要なロボットを開発するには、マイクロプロセッサとバッテリーの問題を解決する必要がある。2020年代までにロボットを実用化させるには課題が山積みしている。

第14章 帝国、共和国、そしてこれからの10年
米国は帝国となってしまい、世界と関わらざるを得ない。米国は海洋を支配するように努めるべきだし、宇宙部隊を強化する必要がある。2010年代は、宇宙兵器への移行期になる。

そして帝国として米国が共和制を維持するには以下が必要となる。

①状況を冷静に理解する国民
②現実と価値観を折り合わせる指導層
③力と道徳律を理解する大統領
④成熟した国民

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