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遠い山なみの光

読んだ本の感想。

カズオ・イシグロ著。2001年9月15日 発行。



きっと佐知子も万里子も実在しない。

英国人と再婚して英国で暮らすシュリンガム(緒方)・悦子は、英国人と再婚後に出産した娘ニキ(20歳くらい?)の訪問を受け、前夫 緒方二郎との娘 景子が自殺した話をして、終戦後に景子を妊娠中だった長崎での日々を思い出す。

夫とは景子が七歳の時に離婚したらしい。

その時は夫 二郎との関係も良好で、近所に住むシングルマザー佐知子が米国人と結婚して渡米する事を批判的に見ていた。佐知子の娘 万里子(10歳くらい)は米国行きを嫌がって反抗している。

これは語り手が、佐知子・万里子に仮託して、英国人と再婚して渡英した自分と娘の葛藤を思い出しているのだと思う。語り手と悦子の対話は、自らの価値観が変化した事の表現であり、佐知子が万里子に行っている論難は、且て語り手が自分の娘 景子に行ったものだと思う。

終戦間もない時期を舞台に、語り手の義父 緒方誠二が、戦争を賛美する教育を行った事で批判される事に憤ったり、民主主義によって夫婦が異なる投票先を選ぶ事に憤慨したりして、物語の背景には価値観の変転がある。

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