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十字軍物語1

読んだ本の感想。

塩野七生著。2010年9月15日 発行。



十字軍に関わる連作物。本書では、第一次十字軍を中心とする。

〇十字軍の背景
1088年にローマ教皇に選出されたウルバン二世によるキリスト教振興策。1072年にはノルマン人によって南イタリアとシチリアが、1085年にはイベリア半島のトレドがイスラム教徒から解放されており、対イスラム教徒を軸にキリスト教の威を高める意味があった。

1077年の「カノッサの屈辱」ではローマ教皇グレゴリウス七世が神聖ローマ皇帝ハインリッヒを神権によって屈服させている。

1095年にクレルモン公会議で聖戦を呼び掛け、十字軍に参加する者は完全免罪とした。

1097年にウルバン二世は神聖ローマ皇帝に追われたラテラノ宮に復帰する。十字軍によって法王の権威を再認識する人が増えた結果かもしれない。

〇十字軍の構成
神聖ローマ皇帝ハインリッヒ四世はローマ教会と険悪であり、フランス王フィリップも自身の離婚によって破門されていたため、皇帝や王は参加せず、「諸侯の十字軍」と呼ばれる。総兵力は5万人程度とされるが指揮系統は一元化されなかった。

トゥールーズ伯サン・ジル:
50代半ばで参戦。法王代理の司教アデマールが一緒にいて、総大将格となる。

ロレーヌ公ゴドフロア・ド・ブイヨン:
低ロレーヌ地方(ベルギー)の領主。1096年時点で36歳。弟のユースタス、ボードワン、従兄弟のボードワンを伴っての参加。遠征の中で総大将格になっていく。

プーリア公ボエモンド・ディ・アルタヴィッラ:
地中海にノルマン王朝を打ち立てたアルタヴィッラ家に属する。1096年時点で47歳。シチリア王位は弟のルッジェロに決まって痛め、領土を求めての参加。甥のタンクレディ(1096年時点で22歳)、騎兵1万を伴う。

ヴェルマンドワ伯ユーグ:
フランス王弟。1096年時点で39歳。大規模な軍事力を持たず総大将にはならない。

ノルマンディー公ロベール:
征服王ウィリアムの長男。

ブロア伯エティエンヌ:
裕福で、征服王ウィリアムの娘を妻とする。

フランドル伯ロベール:
精鋭騎兵500を率いての出陣。

〇ビザンチン皇帝アレクシオスの失敗
オリエントへ向かう海運力をビザンツ帝国のみが持っている事を利用して十字軍と交渉する。ビザンツ帝国皇帝への忠誠を誓わせる等するが、援軍を出さない、食糧援助を渋る等の行為によって信頼を失い、十字軍が獲得した領地には干渉出来なかった。

十字軍はジェノヴァの船団と独自に交渉するようになり、ビザンツ帝国の主導権は失われた。

〇軍事的成果
十字軍は指揮系統は一元化されていなかったが、聖都解放という大義を共有していたために一丸となる事が出来た。対してイスラム教徒側は領土侵略という視点からしか考えないため、自らの領土への侵入でない限りは黙認する傾向があり、各個撃破されていった。特にパレスティーナは、セルジューク・トルコからエジプトの支配下に入って短いため、十字軍はエジプト覇権を覆す解放者にもなれた。

鎖帷子の上に鋼鉄製甲冑で武装した騎士集団に、トルコ兵の矢が通用せず、ゲリラ戦で対抗される。

エデッサ:
オリエントにおける戦略上の要衝。メソポタミア地方から西に攻め込む場合、シリア砂漠を大軍勢が超える事は不可能であるため、ユーフラテス河に沿って北上する必要があり、ユーフラテス河上流に位置する都市は重要だった。

第一次十字軍以後、エデッサ一帯は、ロレーヌ公ゴドフロアの弟ボードワンが統治するエデッサ伯領となる。

1099年のイェスサレム攻略戦においては、事前にパレスティーナ沿岸部を支配下に置いていたため、戦略物資補給が可能になり、木材を調達して攻城用塔を構築した。

〇十字軍以後
ロレーヌ公ゴドフロアはイェルサレム統治(キリスト墓所の守り人)、その弟ボードワンはエデッサ伯領、プーリア公ボエモンドはアンティオキア公領、その甥であるタンクレディはガリラア領を認められる。

イェルサレム支配維持には海運による補給が不可欠であり、ヴェネツィア等のイタリア商人との交易が盛んになる。イェルサレム財政は海港都市と内陸部との交易による通行料に依存していた。

1100年にロレーヌ公ゴドフロアが亡くなると、弟のボードワンがイェルサレム王になる。タンクレディのガリラア公領を摂取する代りに、アンティオキアを渡す。後にタンクレディはエデッサ伯領も引き継ぐ。

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