恐怖の地政学

読んだ本の感想。

T・マーシャル著。2016年11月7日 第一刷発行。



第一章 中国
華北平原を遊牧民から守るため伝統的陸軍国。華北平原は農業の重心であり、米国の半分の広さに約十億人が暮らす。

現代ではゴビ砂漠が北方の防壁であり、北から中国を侵略する国は、砂漠に補給路を確保しなくてはならない。西部のチベット高原も黄河、長江、メコン川の源流がある重要地点。2006年に開通したラサに通じる鉄道はチベットにおける漢民族を増やす効果がある。

東部の海岸線防御には日本列島確保がじゅうようであり、特に沖縄が問題になる。

第二章 ロシア
広大を武器とする。領土の約75%がアジアにあるが、そこには人口の22%しか居住せず、東西を結ぶ鉄道はシベリア横断鉄道とバイカル・アムール鉄道の二本しかない。南北の輸送路も無いため、モンゴルや中国に対して力を誇示する事は難しい。

西郡ではバルト海と黒海が弱点であり、今後はバルト海やモルドバが争点になる可能性がある。

第三章 日本と朝鮮半島
朝鮮半島の国境は人為的なもので、地形によって分けると人口が集中する平坦な西郡と山がちな東部に分けられる。反対に日本は侵略され難い地形(ユーラシア大陸との最短でも約193㎞離れている)で国土の3/4が山岳地帯で集約農業の適地は23%程度であるため交易が盛んになった。

第四章 アメリカ
以下の三つのエリアから成る。

①東海岸平野からアパラチア山脈:
水に恵まれ肥沃な土壌
②大草原地帯:ミシシッピ川流域
③太平洋岸

ミシシッピ川流域は広大で、世界中の航行可能河川を繋いだよりも長い距離を流れ、天然水路として活用される。

第五章 西ヨーロッパ
メキシコ湾流によって大規模農業に最適な降水量に恵まれる。そして主要河川のほとんどは合流しないため、河川が土地の境界線となり、他に依存しない経済圏を多数生み出し、各河岸にある都市が首都となる。

欧州南部は農業に適した海岸平野が少なく、北部に比較して自然災害が多い。南部欧州の一例であるスペインは海岸平野が狭く、国土が短い川と高原大地で分割され北部との交易がピレネー山脈によって阻まれるため統一が困難。

第六章 アフリカ
米国の三倍の大きさ。アフリカの河川の水源は高地にあり険しい斜面を流れ落ちるので船舶の航行が困難で巨大経済圏成立を妨げた。
21世紀においては、ナイル川の水源や資源を巡る争いが激化するかもしれない。東アフリカのGDPの約40%はケニアをしめており、タンザニアとともに経済成長が著しい。

現在、サハラ以南で11億人程度の人口が2050年までに24億人に増加すると予想される。

第七章 中東
砂漠に人為的に引かれた国境線が混乱を引き起こしている。1867年にオスマン帝国が行政上の「県」を設立したが、部族毎の大雑把な分け方であり、多くの専門家は独裁者がいなければ統治は出来ないとする。

レバノンはキリスト教アラブ人のために1920年代に造られ、1950年代後半まで続いたが、イスラム教徒の出生率の方が多く、アラブ・イスラエル戦争による難民流入等で崩壊した。

現代でも独立国家の経験が無い状態で民主主義が実現した地域では混乱が生じている。

第八章 インドとパキスタン
インドは河岸によって隔てられた多様性を持つ。パキスタンはパルチスタン地方の天然ガスや鉱物資源に依存した国家運営を行っており、インドへの恐怖が国をまとめている。

インドはヒマラヤ山脈があるために陸上では中国と衝突せず、インド洋で利害がぶつかると予想する。

第九章 ラテンアメリカ
沿岸部に都市が集中する。どの海岸線も充分な深度の天然港が無く、交易には限界がある。特にボリビアは1879年の太平洋戦争でチリに敗れて内陸部に封じ込められ貧しく、南米三位の天然ガス埋蔵量があるがチリには輸出していない。

他にチリとアルゼンチンのビーグル水道を巡る争い、ベネズエラによるガイアナの領土半分の要求、エクアドルはペルーを自国領と公言し20世紀には三回の戦争を行っている等。

アルゼンチン:
19世紀にブラジル、パラグアイからラプラタ川流域の農地と航行可能な川を入手し、ラプラタ川からブエノスアイレス港へ続く商業圏を確立。しかし、経済多角化の失敗により20世紀初頭にはフランス、イタリアよりも上位だった経済は低迷している。

第十章 北極圏
温暖化により航路や資源開発の可能性がある。北極圏の通商ルートはパナマ運河経由より約40%短い。ロシアは北極軍を創設し、北極支配に積極的になっている。

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世界史で学べ!地政学

読んだ本の感想。

茂木誠著。平成27年6月15日 初版第1刷発行。



地理的条件から世界史を理解する。

以下は、「もぎせか資料館」へのリンク。

https://www.mogiseka.com/

以下は、「経済は世界史から学べ!」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2792.html

以下は、「学校では教えてくれない地政学の授業」の記事へのリンク。

http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-2867.html

<米国>
欧州大陸から2000㎞離れた孤立性を地政学的特質とする。

成り立ちは以下の二種類の人々。

①清教徒
英国のカルヴァン派でキリスト教清浄化を目指し、勤労と祈りを喜びとする。清教徒革命(1649年)を起こすが、強過ぎるモラルによって英国から追われる。キリスト教原理主義となり、共和党の支持基盤となる。

②貧農
開拓農民の祖となる。社会保障を求めず小さな政府を志向する。

以下は、第二次世界大戦前に策定された対日戦争計画(オレンジ計画)の概要。

①フィリピン、グアム、ハワイは防衛不可なので放棄
②カリフォルニア、パナマ運河を死守
③パナマ運河経由で北太平洋に艦隊を派遣

同時期に、日本でも佐藤鉄太郎による帝国国防方針が策定される。

①太平洋上に米艦隊を誘き出し、徐々に攻撃
②上記①の後に艦隊決戦
③対米七割の戦艦を常備すれば勝利可

上記における対米七割を巡って激論になったのがワシントン会議(1921年~1922年)で、日本政府は対米六割までの軍縮を受諾した。この時には航空戦力が意識されておらず、より早く航空兵力を活用した米国が有利となる。

以下は、ニコラス・スパイクマンが1942年に「平和の地政学」で予測した第二次世界大戦後の状況。

①ユーラシア大陸の縁(リムランド)争奪が大戦の原因
②日独を倒すため、米英は中ソと同盟している
③大戦後は中ソがリムランドに進出する
④米国は空軍を強化して日濠比に空軍基地を持つべき
⑤中ソは長い国境を接するため、対立するようになる

ただし、ニコラス・スパイクマンは核ミサイル登場までは予測出来なかった。

<中国>
著者は漢人の居住地域を中国と呼び、中華人民共和国は漢人がチベット、ウイグル、内モンゴルを征服して成立した帝国とする。

以下は、歴代中華王朝が北方騎馬民族に対抗した戦略。遊牧民のランドパワーに対抗するため、自らもランドパワーになる。

①攻撃
②守備(万里の長城)
③買収(冊封:周辺民族を臣下に任命)

朝貢貿易は中国側の赤字であり、下賜品を用意出来なくなると、遊牧民への買収が不可能になり、遊牧民に征服される。明代には海洋民族(倭寇等)が中国を脅かすようになり北虜南倭と呼ばれる。

清朝末期では、李鴻章等の海防派:シーパワーが新疆をロシアに割譲して大艦隊建造を主張し、左宗棠等の塞防派:ランドパワーが陸軍増強を主張した。西大后は両者を折衷し、ロシアによる新疆占領地の半分を返還させたが、準備不足まま日清戦争に敗れた。

著者は、現代中国はシーパワーを志向するものの完全には海軍に注力出来ないため、周辺国の同盟によって抑え込めるとする。

<朝鮮半島>
朝鮮半島は黄海、鴨緑江、白頭山が障壁になっているが、冬に凍結する鴨緑江の防備は弱く、侵略し易く大陸の支配を受けた。19世紀以降は海洋勢力である日本の支配を受けるようになり、現在も南半分は米国の勢力下にある。

歴史的影響は現在でも韓国に残存し、古代新羅(釜山を中心とする慶尚道)、古代百済(光州を中心とする全羅道)の対立がある。朴正煕、全斗煥、盧泰愚は慶尚道出身で彼等の軍事政権時代は全羅道のインフラ整備が後回しにされた。

全羅道出身の金大中大統領からは、慶尚道政権の敵である北朝鮮が味方に見えたため、太陽政策が行われたのかもしれない。

冷戦崩壊後、北朝鮮はソヴィエト連邦の保護を失ったために核開発を行い、地域の問題となっている。

<東南アジア>
儒教文化圏とヒンドゥー文化圏がチベット高原や雲南高原によって隔たり多様性が維持されている。

メコン川流域の稲作民クメール人が建国したアンコール朝は12世紀に全盛期を迎えるが、タイ人のスコータイ朝に領土を奪われ、スコータイ朝は現在のタイに繋がる。そのため、両国間には対立があり、2010年にプリアヴィヒア遺跡がカンボジアの世界遺産に登録されると武力衝突が起こった。

カンボジアはベトナムにもコーチシナ地方(メコン川下流域)を奪われ、フランス植民地時代にはベトナム移民が送り込まれため、ベトナムとも対立がある。共産党のポル・ポト派によって国を追われたシハヌーク(カンボジア元国王)が親ベトナム政権に対抗してポル・ポト派と手を組んでいる。

中国はカンボジアとラオス(中国国境が山岳地帯であるため、中国には無警戒)に経済支援を行いベトナムを牽制している。

<インド>
ユーラシア大陸から突き出た半島で、1877年に英国が全土を統一し、ヴィクトリア女王を初代皇帝として成立した。

それまでは無数の小国に別れ、チベットやアフガニスタンを外部からの防壁とした。英国がロシアからのインド防衛のためにチベットと国境条約を締結して確定したマクマホン・ラインは現在でもインドが中国との国境線として主張している。

現在のインドの外交的柱は非同盟中立となっているものの、ソヴィエト連邦と軍事同盟を結ぶインディラ・ガンディー等の現実派もいた。

<ロシア>
9世紀にノルマン人のリューリクの一団がスラヴ人を征服して建国したノヴゴロド国を起源とする。10世紀にはキエフ大公ウラディミル一世がビザンツ皇帝の妹を妃にしてギリシア正教が一般化。13世紀から200年間、モンゴル人の支配を受け、モンゴル・ハンの後継者としての側面も持つ。

現代のロシアはモンゴル帝国の幻影を与えるため、中央アジア諸国との連携がし易い?

マッキンダーはユーラシア大陸の最奥部をハートランドとして、難攻不落の安全地帯とした。

<欧州>
ユーラシア大陸 + アフリカ大陸の西側から突き出た半島。海洋進出し易い反面、半島の付け根(バルト三国、ベラルーシ、ウクライナ)を制した大国に攻め込まれ易い。

ウクライナ東の草原地帯を拠点とする遊牧民が西進する時に欧州には危機が訪れた。5世紀のフン族、9世紀のアヴァール人、10世紀のマジャール人等。

19世紀に、マッキンダーは英国をシーパワー、ロシアをランドパワーとして以下を提唱した。

①ロシアは世界島の中心部ハートランドを押さえている
②英国海軍はハートランドに侵入出来ない
③鉄道普及による大陸内部移動の容易化はロシア膨張を加速
④東欧を制する者が欧州を制するため
 ロシアの東欧支配を阻止すべき

⇒ロシア打倒でなく、地中海にロシアが進出出来ないようにするべきという意見

クリミア戦争、第二次アフガニスタン戦争、日露戦争は、上記の理論に基づいて行われた。

<中東>
スエズ運河の重要性。英国からインドまでは喜望峰経由では1万6000㎞だが、スエズ運河を経由すると1万㎞まで短縮される。

スエズ運河の輸送量には限りがあるため、地中海東岸のシリアからペルシア湾まで鉄道を敷設する構想が生まれ、ロシアの地中海進出政策とも合わせて近代の中東は各国勢力が衝突する地域だった。

第二一次世界大戦においては、メッカの豪族ハーシム家のフサインが英国外交官マクマホンによる援助を約束され(フサイン・マクマホン協定)、同時期に結ばれたサイクス・ピコ協定(英仏露による中東分割)との矛盾もあり現地は混乱した。

現在の中東各国の国境線はサイクス・ピコ協定に基づいており、シリア(内陸部のスンナ派、地中海沿岸のアラウィ派)、イラク(スンナ派、シーア派、クルド人)と民族・宗教の分布を無視した領土分割が紛争の火種となっている。

ハーシム家のフサインはシリアまで北上するもフランス軍によって侵入を阻止され、リヤドを拠点とするサウード家(サウジアラビアの起源)とも対立した。英国はハーシム家の人々をトランスヨルダン王、イラク王として擁立してヨルダンとイラクを実行支配した。

現代アラブには19世紀に英仏の支援によってオスマン帝国と戦った結果、英仏の植民地となり、第二次世界大戦後にはソヴィエト連邦の支援を受けて一党独裁社会主義体制を樹立するもソヴィエト連邦が崩壊した事から、外国を模倣するのでなく、本来のイスラムに回帰しようとする動きがあるらしい。

<アフリカ>
紀元前3000年以前のアフリカ大陸は湿潤だったが、徐々にサハラの砂漠化が進み、ナイジェリアに居住していたバントゥー語族(農耕牧畜民)が鉄器を携えて南方へ移動して狩猟採集民を征服した。

8世紀頃までには西アフリカにガーナ王国が誕生し、その後のマリ王国はイスラムに改宗している。

スエズ運河の影響はアフリカにもあり、紅海がインド洋とつながるバブ・エル・マンデブ海峡支配のため、英国によるイエメン占領(1839年)、フランスによるジブチ市建設(1888年)、仏領ソマリランドによる植民地化(1896年)等が発生している。

イタリアはソマリア(イスラム教徒中心)を占領した上でエチオピア(キリスト教徒中心)のエリトリアを奪い、フランスはジブチ防衛のためにエチオピアを支援した。その結果、アドワの戦い(1896年)にエチオピアがイタリアに勝利している。

ソマリアとエチオピアの対立は第二次世界大戦後も続き、ソマリアがエチオピア領内オガデン地方のソマリ人の独立運動を支援したため、オガデン戦争が始まり、米国に支援されるソマリアとソヴィエト連邦に支援されるエチオピアの戦争となった。

現在のアフリカでは民族・言語分布を無視した国境線や地下資源を狙った大国の介入が争いを引き起こしているとする。

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