教団X

読んだ本の感想。

中村文則著。2014年12月20日 第一刷発行。



失敗作だと思う。

新興宗教 教団Xが引起そうとするクーデターに関する話。その真の目的は教祖 沢渡の自殺であり最後を破滅で飾りたかったらしい。物語は変革を夢見る信者達と事件を利用して日本の右傾化を目論む公安との関係が主軸になる。

テロは失敗するが、公安が教団Xの幹部 高原を射殺する動画がインターネットに流出し国家への不信感が高まる。

作者が学んだ事と作品の流れが一体化していないので、無駄な雑学が多い印象。それと第二次世界大戦に拘った結果、松尾正太郎の年齢がおかしくなっている。

戦後70年くらいの日本が作品世界の舞台としているけど、登場人物の年齢を考えると矛盾しているように思う。

【登場人物】
楢崎透:
30代前半の探偵見習。失踪した恋人 立花涼子を探して松尾正太郎の主宰する宗教施設に赴く。高校生の時に地下鉄サリン事件?が発生したらしい。

立花涼子(リナ):
有能な探偵である小林に近付くために、楢崎透に接近した教団Xの信者。義兄弟である高原と肉体関係にある。

松尾正太郎:
無名の宗教団体を主催する老人。妻は芳子。外見は70代以上という事だけど、第二次世界大戦に従軍しており、作品世界が戦後70年くらいというから90歳以上の超高齢者という事になる。

峰野:
30歳くらいの女性。松尾正太郎の主宰する宗教団体に出入りしているが、敵対する宗教団体 教団Xの幹部である高原雄介と愛人関係にある。

高原雄介:
教団Xの幹部。教祖の命令を偽装してテロを計画しているが、実際には教祖 沢渡に操作され計画通りに動いている。6年前にNGOで訪れたアフリカでYGという武装組織に拉致されて一員となり、脱走して帰国した後もその存在に怯えている。発展途上国の生活改善等?を目的にテロを計画している。最後は公安の人間に撃たれて意識不明になる。

沢渡:
教団Xの教祖。元医者。かつて松尾正太郎と同じ新興宗教に所属していたが、教祖 鈴木の発狂に伴い、濡れ衣をきせられそうになって、松尾正太郎と一緒に教団を辞めている。

****************

内容が整理されていないので、素粒子や自由意志否定に関して論じている部分からは学べる事が少ない。

ただし、思想サンプルとして有効だと思うのは独特の閉鎖的思考様式。極端なゼロ・サムを前提に、自分が幸福になるために、他人から奪う必然性が登場人物達に広く共有されている。

そして、「日本人」と「外国人」を対等に見ていない。

著者は作品世界において、「日本人」がインターネット上で不満を募らせ、外国人を貶める事を懸念し、不満が日本政府による右傾化に利用される展開を進める。

対照的に、作品世界の発展途上国における争いは大企業による利益追求が引起す格差が理由となっている。「外国人」が差別意識や不満を持つ事を認めていない。「日本人」と「外国人」を対等に考える事が出来ていない。

それは差別意識が理由なのでなく、著者の思想が既存理論を忠実に記憶したものであるため、範囲を超えて応用されないためだと思う。だから、松尾正太郎の語る宇宙や人間精神の理論が物語と一体化せず分離している。

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